プレスリリース
◆関西大学による授業・学生生活に関する学生・教員アンケート調査◆遠隔授業の困りごとは減少。最大利点は''反復学習''。双方向性の確保は難しいものの、理解度は対面と同等
関西大学では、教育改善やコロナ禍の学生の実態把握等を目的に、学生・教員に対して定期的にアンケート調査を実施しています。2022年度の調査では、「遠隔慣れ」を背景に、遠隔授業の長所(反復学習がしやすい等)をうまく活用することで、対面授業と同等の学習理解度・到達度に達していることがわかりました。「双方向性」や「協働性」などの部分でまだまだ改善の余地はあるものの、遠隔授業での困りごとは大きく減少し、調査開始当初(2020年春)と比較すると、各項目で1/2〜1/3程度の値となっています。
本調査を実施した本学教育推進部の山田剛史教授は、これからの大学における教育のポイントとして、「遠隔授業の教育効果として、知識伝達系の基礎授業などで優位性があるといえる。今後は遠隔授業の良さに磨きをかけつつ、対面授業の質を高めるための教育改善が一層求められる。対面の現場でもコロナ禍で蓄積したノウハウやデジタル環境をうまく取り入れていくことが重要」と述べています。
【本件のポイント】
・''遠隔慣れ''を背景に、授業での困りごとが大幅減少。学びの充実度や成長実感も軒並み上昇
・''学力の3要素''の獲得実感では、多くの項目で対面と同等の評価となった
・学習意欲・効果が高まる遠隔授業のポイントには、「反復学習できる教材があること」が支持を集めた
<アンケート調査基本情報>
調査期間:2022年9月21日(水)〜10月16日(日)
調査方法:インターネットによる無記名方式でのアンケート
回答状況:〔学生版〕有効回答数3,303件(回答率11.9%)
〔教員版〕有効回答数 159件(回答率47.6%)
<結果の詳細>
・学生版ダイジェスト https://www.kansai-u.ac.jp/ir/research/asset/index/student_survey_2022sp_digest.pdf
・教員版ダイジェスト https://www.kansai-u.ac.jp/ir/research/asset/index/teacher_survey_2022sp_digest.pdf
<ご参考:これまでの授業方針>
2020春 :原則遠隔
2020秋以降:原則対面(一部遠隔) ※2021年度は社会情勢に鑑み、学期途中で一時的に緊急的な遠隔授業を実施
2022春以降:原則対面(一部遠隔) ※一部において、科目特性を考慮した上での遠隔授業を試行的に開始
※2020秋以降の通常時の遠隔授業は、主に履修者数250名以上の科目を対象にオンデマンド型で実施
■ 遠隔授業での困りごとは激減!?
コロナ禍で遠隔授業が開始された当初は、「課題の多さ」を筆頭に学生の戸惑いが指摘されましたが、今回の調査で授業での困りごとは各項目減少しており、例えば「課題の多さ」は、第1回調査から−53ptとなっています。
これらの背景には、まず学生・教員ともに''遠隔慣れ''したことが挙げられます。加えて、本学では授業の質向上のために、授業支援ツールの拡充をはじめとする教育環境の整備や、科目特性を考慮した上で遠隔向きの授業を適切に配置するよう工夫した点なども要因の一つとして分析しています。
■ 遠隔授業の評価は年々上昇(満足度、理解度など)
「満足度」については対面より遠隔の方が高く、「理解度」「参加意欲」「到達目標の獲得」の3項目については大きな差異はみられませんでした(表1)。これまでの調査結果と比較すると、対面においては大きな数値の変化はみられませんが、遠隔においては、特に「満足度」や「理解度」が大幅上昇しています。その影響からか、大学における「学びの充実度」や「成長実感」においても、全学年で上昇する結果となりました。
■ 「授業の復習」や「不明点への自主的な探究学習」は遠隔授業の方が高い傾向に
「普段の授業への取り組み方」について、対面と遠隔それぞれの内容を調べたところ、「予習」「メモを取りながらの学習」「教員への質問」など、多くの項目で対面優位の結果となりました。なかでも「グループワーク等で意見を言う」は37.8pt差、「友だちと進捗や内容を確認しながら学習する」は12.4pt差と大きな開きがみられました。一方で、「復習」「授業中の不明点を調べたり、興味を持ったことについて学習する」は、わずかな差ですが遠隔優位の結果となりました。(表2)
■ 学習意欲や学習効果が高まる遠隔授業のポイントは''反復学習''
「遠隔授業で経験した活動の頻度」を尋ねたところ、「問いかけ」「フィードバック」「LMS(学習管理システム)による課題レポート」が頻繁に行われている結果となりました。一方で、「質疑応答」「双方向性ある活動」の頻度は低く、特に「双方向性ある活動」は44.5%と半数未満となりました。(表3)
また、2021年度の調査では、遠隔授業の学習意欲・効果を高めるために学生が最も必要とするポイントは、「教員からのフィードバック」でしたが、今回の調査で最も声が多かったのは、「何度も復習できる教材が提示されていること」でした。(表4)
遠隔授業への取り組み方については、「倍速など再生速度を調整する」が83.8%、「巻き戻しや繰り返しなどを使用する」が95.1%と、オンデマンドの利点をうまく活用している学生が多いことがわかりました。
■ ''学力の3要素''の獲得実感は対面と同等。学びの充実度、成長実感は全学年で上昇
「学力の3要素の獲得実感」に関する質問では、要素(1)の「知識」ならびに要素(2)の「思考力」「判断力」「表現力」については対面・遠隔で大きな差異はなく、「実感がある」と回答した学生は8割程度に上りました。一方で、要素(1)の「技能」ならびに要素(3)の「主体性」「多様性」「協働性」については対面優位の結果となり、特に「協働性」では29.7ptの差がみられました。このあたりの差が授業満足度に影響しているものと推察できます。
■ BYOD推奨。PCやタブレットを持ち運ぶ学生は半数を超える
「対面授業への取り組み方」の質問では、「PCやタブレットを持ち込み、活用しながら学習する」と回答した割合は55.4%で半数を超えました。近年、ゼミやPBL型授業でのデバイスの活用に加え、大規模科目でも紙の資料を配布しないケースが増えてきています。デジタルを活用した学習スタイルが、大学の教育現場でも広がりをみせていることがうかがえます。
■ 教員が感じているコロナ禍以前の対面授業と比べた活動の変化
遠隔授業について、「コロナ禍以前の対面授業と比較してどのような変化を感じたか」を教員に尋ねたところ、「授業の理解度」「学びへの意欲・積極性」など、多くの項目で約7割が「良くなった」「変化なし」と回答しました。一方で、「双方向的な学びに対する意欲・積極性」に関してのみ、「悪くなった」の回答が約4割あり、依然として遠隔授業における双方向性の確保が課題であることがわかりました。(表5)
また、「遠隔授業における活動の頻度」について尋ねたところ、「定期的な課題の提示」「質問に対するフィードバック」などは9割以上の教員が実施していた一方で、「学生同士のディスカッション」「プレゼンテーション」などを実施していた教員は2割程度となりました。(表6)
その他、遠隔授業の良いところに関する自由記述では、「課題の管理が楽になった」「大人数の対面授業よりも、全般的に授業に対する取り組み意欲は向上したと感じる」「移動がないためその分じっくりと授業に取り組める」といった意見がみられました。
■ 「学生生活の満足度・充実度」は、依然としてコロナ初年度入学生である3年次生が低い傾向に
学年ごとの「学生生活に関する満足度」を尋ねたところ、「友達や先生との交流」が全体平均60.8%/3年次生54.4%、「大学の施設利用」が全体平均78.2%/3年次生71.8%、「課外活動」が全体平均51.2%/3年次生39.9%、「キャンパスでの大学生らしい生活」が全体平均57.6%/3年次生48.2%、「授業時間外での友人との勉強に関する交流」が全体平均64.2%/3年次生53.8%となり、いずれの項目においても3年次生が最も低い値となりました。
また、同様に「大学における学びの充実度」について尋ねたところ、全体平均82.3%で、3年次生のみ76.2%と最も低く、8割を下回る結果となりました。
コロナ禍初年度入学である現3年次生(2020年度入学生)のこうした傾向は社会的にもたびたび話題となっており、本学としてはこれから始まる就活へのフォローの強化など、少しでも大学生活の満足度・充実度が向上するよう、手厚い学生生活支援を展開していきます。
▼本件の詳細▼
関西大学プレスリリース
https://www.kansai-u.ac.jp/ja/assets/pdf/about/pr/press_release/2022/No44.pdf
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