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日本最大のプログラミングコンテストサイトAtCoder 中高生に特化した学校対抗リーグ「AtCoder Junior League」開催にかける思いとは

(PR TIMES STORY) 2023年09月18日(月)15時37分配信 PR TIMES

国内最大級※、世界でも3大コンテストのひとつと言われる競技プログラミングコンテストサイトAtCoderは、2023年の春から参加者を中高生に絞った新たなリーグ「AtCoder Junior League(以下、AJL)」を開催しています。学生に特化したリーグを始めた理由、現在の状況や今後の展望など、AtCoderの創業者であり代表取締役社長の高橋直大さん(chokudai)ならびに、AJLの運営担当者であるかえでさん(kaede2020)に聞きました。


※2023年4月時点で、日本人登録者数236,585名、外国人登録者数264,731名

 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000038.000028415.html



GAFAなども開催。プログラミングコンテストはオンラインで気軽に参加できる


――まずは競技プログラミングとはどういったものなのか、教えていただけますか。



高橋:いろいろなジャンルや種類がありますが、プログラミングコンテストとも呼ばれるように、ある問題を出され、その問題に対して要件を満たすプログラミングを書き、提出します。


正解・不正解かはもちろん、問題の難易度、提出するまでのスピードなどが採点対象となり、結果をポイントとして獲得。そのポイントの総数で参加者全員の順位を競うが、一般的な競技プログラミングコンテスト、略して「競プロ」です。


オンライン上で取り組むことが大半ですので、eスポーツ感覚で取り組むことができるコンテスト、とも言えるでしょうね。



日本に限らず世界中でも行われていて、アメリカ、中国、ロシアなどが特に盛んです。アメリカにおいてはGAFAのようなメガテック主催のコンテストも多く、マイクロソフトは2003年から「Imagine Cup」という学生向けコンテストを、グーグルは「Google Code Jam」、メタは「Meta Hacker Cup」などを開催しています※。


※Google Code Jamは2022年をもって終了。


かえで:直大さんは学生の頃から今に至るまで海外のコンテストで実績を残されていて、Imagine Cup 2008 Algorithm部門では世界3位、最近出場されたGoogle Hash Code2022でも直大さんのチームが優勝しています。


――具体的にどのような問題が出されるのか、紹介してもらえますか。


高橋: AtCoderでは、成否や正解までの時間を競う「アルゴリズムコンテスト」と、できるだけいい答えを出すプログラムを考え得点を競う「ヒューリスティックコンテスト」の2つを提供しています。各コンテストでは以下のような問題が出題されます。


<アルゴリズムコンテスト 問題例>

https://atcoder.jp/contests/abc187/tasks/abc187_d


<ヒューリスティックコンテスト 問題例>

https://atcoder.jp/contests/ahc002/tasks/ahc002_a



楽しみながらアイデアの創発力、論理的思考力、プログラミングスキルなどが身につく


――AtCoderを創業するまでに至った高橋さん。プログラミングコンテストの魅力はどのあたりでしょうか。


高橋:純粋に「楽しい」「おもしろい」というのが、僕の場合は最大の魅力ですね。きっかけは高校生のときでした。パソコン研究部に仲の良い友だちがいて、その友だちが競プロの存在を教えてくれたんです。


試しにチャレンジしてみると、まるでパズルを解くような感覚でこれはおもしろいなと。順位も良かったので味を占めてしまって。その後は先ほど紹介したような海外のコンテストにも参加するようになりました。次第に競プロの楽しさをもっと多くの人に広めたい、このように思いAtCoderを創業しました。


まず、どうやって解を見つければよいのか。答えが閃いたときが気持ちいいんです。そこからさらに試行錯誤を重ね、アルゴリズムやプログラムを考え実装していく。特にヒューリスティック問題は最適解を常に探していきますから、まるで育成ゲームをするかのごとく、プログラムを成長させているような。プログラムそのものに愛着が湧いていくあたりも、魅力だと考えています。


かえで:私の場合は子どもにプログラミングをやってみたいと言われたのがきっかけでした。大昔にC言語をかじったことはあったのですが、ほぼ忘れている状態でしたから、親として何かしてあげたいと思い調べ始めました。ネットでもいろいろと検索したんです。プログラミング教室などの情報がたくさん出てきたのですが有用な情報がなかなか見つからず、地道に調べ続けたところ、AtCoderにたどり辿り着きました。無料だということもあり、子どもと一緒にアカウントをつくり、実際に参加してみました。


するとまさに直大さんが話していたように、シンプルにおもしろかったんです。目の前の課題を解くことも純粋に楽しいですし、コンピュータが瞬時に答えを判定してくれるのも心地よかったですね。そして気づけば子ども以上に、私が競プロにハマっているような状況となりました(笑)。


――かえでさんは競プロにハマった結果、現在はAtCoderに入社し、メンバーとしても働いています。AtCoderと他のコンテストとの違いなどについても聞かせてもらえますか。


かえで:他のコンテストとの違いはたくさんあります。週に一度定期的に開催していること、日本語で参加できるコンテストであること、すべてのコンテストに無料で参加できること、過去のコンテストの他人の解答(プログラム)を見られること、そしてこれまで開催してきた400以上のコンテストで出題された5000問以上の過去問の解説記事や解説放送もすべて無料で見られること、です。当たり前ですが、プログラミング教室などはすべて有料ですし、他の参加者の解答(プログラム)を見られないコンテストもあります。


またコミュニティ的な要素や雰囲気が強いことも他のコンテストサイトとの違いと言えるかもしれません。たとえば参加者の多くが提出したコードの解説や、別のアルゴリズムなどについて発信したり議論していたりしています。私のようなプログラミング初心者にとっては、勉強という意味でも、とてもありがたい存在であり環境だと感じていました。


ただ次第に、無料で何もかも与えられている状況に何だか悪い気がしてきてしまって。何か私もAtCoderに恩返しがしたい。このように考えていたところたまたまエンジニア職以外での求人が出たので応募し、現在に至ります。



競プロでの成果が求職・採用活動に活用されている


――競プロの上位ランカーは先端IT人材として、先のメガテックなど大手IT企業で活躍している優秀なエンジニアが多いと聞きます。


高橋:AtCoderの登録者数は国内外合わせて約50万人いますが、おっしゃるように有名大手企業に勤める人が少なくありません。大学生の参加者も多いですが、東大が1100人ほど、京大が500人ほど、東工大が400人という状況ですから、確かに優秀な人材が競プロに参加している傾向はあると思います。


目の前の問題をどのように解けばよいのか。まずはゼロベースで問題解決をする発想力。実際に出たアイデア、アルゴリズムをどのようにプログラムとして実装するのか。その際には論理的思考も養われます。


さらには競プロに参加すれば、先ほどかえでさんも話したように、自分よりも優秀な参加者がいて、その人たちが考えたソースコードを見ることができますから、別のロジックやプログラミングスキルを学ぶこともできる。そのため1人で黙々とプログラミングしているよりも、はるかに速いスピードでスキルアップできます。これは、僕自身のこれまでの経験から言えることでもあります。


そもそもGAFAなどが競プロを実施しているのは、優秀なエンジニアを囲い込むことが狙いですからね。そこでAtCoderでは、参加者のレベルを示す「AtCoderレーティング」という指標を提供しています。優秀なエンジニアと企業をつなげる、いわゆる大手リクルーティング企業が行っている人材マッチングサービスも手がけています。「AtCoderJobs」です。


<AtCoderレーティング>



















<AtCoderJobs>

https://jobs.atcoder.jp/


IT企業のコーディング試験の内容が、AtCoderの問題と似ていたりしますし、スポンサードというかたちで、実際の企業課題をAtCoderの問題として提供しているケースも多々あります。


また競プロを就職活動に活用する流れは日本に限ったことではなく、アメリカやインド、特にインドでは就活における一つのツールとして重要視されています。



競プロの楽しさを中高生にも知ってもらいたい


――2023年の5月から「AtCoder Junior League(AJL)」を始めた理由を聞かせてください。


高橋:国内外いろいろな属性の人たちがAtCoderに参加してくれていますが、国内に限ると中高生の層が少ないと、以前から感じていました。そもそもAtCoderに限らず、競プロの存在を若い人は知らないことが多いですしね。


仮に知っていたとしても、参加者の大半が先ほど紹介したような一流大学や大手企業のエンジニアですから、それこそこれから競プロを始めるような中高生にとっては、あまりにもハードルが高すぎる。その結果、参加に二の足を踏んでいるのではないか、と思ったんです。


そこでコンテンストの内容やルールはこれまでと基本変えずに、評価する部分で中高生に特化した部門を設ければ、若い人たちが参加しやすくなるのではないか。これが、今回AJLを始めたそもそもの理由です。


さらに付け加えると、これはまさに僕やかえでさんが経験してきたこともでもありますが、競プロという共通の楽しみを通じて、仲間、友だちを増やしてもらいたい。そのためランキングでは個人の他に学校枠も設けています。


実際、僕の母校でもある筑駒など競プロが盛んな学校にはパソコン研究部などがあり、そこにメンバー所属しているメンバーが楽しみながら、切磋琢磨してスキルを高めているケースが大半ですからね。その輪が、もっと多くの学校で広がればいいと考えたんです。


<AtCoder Junior League2023>

https://atcoder.jp/contests/ajl2023


かえで:野球、サッカー、パソコン研究部など、学校にはいろいろな部活動があり、よい成績を出すと表彰されたり、まわりや親御さんからもすごいね、といった言葉をかけられますよね。競プロの世界でもそのような優秀な人たちがいることを広く知ってもらいたい。そして他の活動と同じように、学校から表彰されたり応援されるような。そのような広がりになればいいな、と考えています。


そのため参加に関しては特に両親や学校の許可は必要ありません。ランキングの上位者にはリーグ終了後、AtCoderから賞状を学校に送る予定です。



高校野球や情報オリンピックのような活動に発展してもらいたい


――はじめてから数カ月経ちましたが、実際どのような生徒が参加しているのか。手応えや反応はどうですか。


かえで:現在(2023年9月1日時点)は中学、高校、高専あわせて234校から812名が参加登録してくれていて、現在も1週間に30名ほどの割合で参加者が増え続けている状況です。上位の顔ぶれを見ると、予想していた通りパソコン研究部や数学研究部があり、ふだんから競プロに参加している学校が多いです。


一方、学校から1人だけで参加してくれていて、それでいながら上位にランクインしているような参加者も見られます。ランキングを見ると学校から一人で参加している人が一定数見受けられますが、今回の取り組みを通じて、同じ学校の人が自分も参加してみようと思ってもらうきっかけになればうれしいですね。また同学年の仲間と出会い、切磋琢磨しながらランキング上位を目指してもらえれば、と思っています。


――最後にAJLの活動も含めた、AtCoderの今後の展望などをお聞かせください。


かえで:今回の活動が広まることで、他の部活動などと同じように中高生が何かに取り組む際の選択肢の一つに競プロが上がってくる。そのような将来像を描いていますし、その活躍の場としてAJLが広まったらいいな、と思っています。


スポーツに限らず、ロボットコンテストや情報オリンピックなど、学生でいる間に熱中する対象はさまざまありますが、やってみたいと思う、やり続ける根幹の思いは、やっていて楽しいかどうかだと思うんです。その楽しさを1人ではなくまわりと一緒になってより感じ取れるような環境の整備や取り組みを行っていきたいと考えています。たとえば参加者が一堂に会し、家族、友だち、OBが応援に来られるような決勝大会の場を設けたり、すでにAtCoderで取り組んでいる上位ランカーのプログラミングの様子をライブ配信するイベントなどは取り組んでいきたいですね。


高橋:僕は元々は野球に夢中な子どもでしたが、肘を痛めてしまい続けることが困難になりました。でも競プロと出会ったことで、新たに夢中になる対象ができました。そして繰り返しになりますが、ここまで競プロを続けているのは、やっぱり楽しいとの思いがあるからです。


この楽しさを、もっともっと1人でも多くの、特に若い人たちに伝えたいですね。日本では大学生から競プロを始める人が多いのですが、「もっと前に知っておきたかった」という声が、少なくないからです。


ましてや競プロでも運動部でも、若いときに数年間夢中に継続していれば、大人になったときに大きな財産となっていることは間違いありません。楽しんだ結果として、先端ITスキルを備えた日本の若者も増える。そのようなことにもつながれば、と考えています。

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