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株式会社サンマルクイノベーションズ

地域で起きる課題へ先駆けて取り組む、新しい形のイタリアンレストラン。「トラットリア ケナル」1年の軌跡。

(PR TIMES STORY) 2023年04月05日(水)20時03分配信 PR TIMES

岡山県真庭市・蒜山高原に開店し、2023年3月14日で1周年を迎える『トラットリア ケナル』(以下、ケナル)。運営会社はサンマルクホールディングスの新事業会社、サンマルクイノベーションズだ。2021年1月というコロナ禍に置かれた厳しい環境下でも、外食産業に携わる企業が持続的な成長を続けるため、新たな挑戦に取り組む場として設立された会社である。


フードテック技術の開発や導入、非外食事業領域の拡大によるビジネス機会の創出など、DX・フードテック・サステナビリティを実践すべく、さまざまな取り組みを行っている。



ケナルは、サンマルクホールディングス初の「サステナブル」を主軸としたイタリアンレストランだ。「誰ひとり取り残されないサステナブルなイタリアンレストラン」「ハレとケ」をコンセプトに、フードロスゼロを目指した店舗運営を実施。これらの取り組み内容が評価され、2022年11月14日に東京・大手町で開催された「FOOD MADE GOOD Japan Awards 2022」において3つ星を獲得した。ノミネートされたレストランのうち、3つ星を獲得した店舗はわずか5店舗であり、中国四国地方では初となる快挙だ。


https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000112060.html


しかし、オープン前から開店後、そして現在へ至るまでには、地方がゆえの働き手不足、店舗オペレーションとサステナブルレストランのあり方との両立など、さまざまな壁への挑戦があった。ケナル挑戦に加え、地方でサステナブルレストランを運営する意義や想い、2年目以降の展望について、サンマルクイノベーションズ代表取締役社長 江下健一氏に話を聞いた。

蒜山高原との縁から「サステナブルレストラン」への取り組みが始まった

サンマルクイノベーションズがケナルを出店した背景には、コロナ禍に生まれた蒜山高原との関わりがある。小中学校の休校による牛乳需要の急激な落ち込みを受けた蒜山酪農農業組合から相談を受けた江下は、当時社長を務めていたベーカリーレストラン バケットで「蒜山ミルクロール」を開発した。


その後、蒜山高原で蒜山ホークパークを経営している原田オーナーより、岡山理科大学専門学校の学生向けに新たに作る宿泊施設の1階部分をレストランとして借りてもらえないかという相談が持ちかけられる。


「その宿泊施設は、ホーストレーニングコースを受け持つことになった原田オーナーが自らアパートを建てて作ろうとされているものでした。学生の宿泊費用だけでは賄えないとして、僕らに相談してくれたのです」。


蒜山の人口は5000人ほどと、サンマルクホールディングスの出店規格には該当しない規模だ。しかし、江下は社内で議論を重ね、会社として出店を決意する。未来ある学生が勉学に安心して取り組める環境づくりに貢献できるならば、という気持ちが決断を後押しした。


出店するにあたり、次に検討されたのが業態だ。さまざまなブランドを有するため、サンマルクカフェや鎌倉パスタといった既存ブランドを出店するという選択肢もあった。しかし、江下はあえて新たなレストランの出店を決める。


「せっかく出店するならば、やはり地域に根差したレストランを目指したい。蒜山高原について調べていくと、蒜山高原のある真庭市がSDGs未来都市に選定されていることがわかりました。2021年7月には建築家の隈研吾氏が設計監修した『GREENable HIRUZEN(グリーナブルヒルゼン)』というサステナブルの価値の発信拠点施設もオープンするなど、蒜山高原=SDGsというブランドを強く感じました。ならば、当社としても新しいカテゴリのレストランを開こうと思ったのです」。


業態はイタリアンに決まった。江下が鎌倉パスタの代表を10年間務めた経験と、年間200万人の観光客が訪れる蒜山高原に本格的なイタリアンレストランが無い点、加えて蒜山高原で学ぶ学生たちに本格的なイタリアンを食べてもらいたいという気持ちが理由だ。こうして、「サステナブルなイタリアンレストラン」というコンセプトが定まった。


「誰ひとりも取り残されない、サステナブルイタリアンレストラン」オープンへの道のり

当時のサンマルクグループにおいて「サステナブルなイタリアンレストラン」のノウハウはなかった。調べるなかで、「日本サステイナブル・レストラン協会」に行き着いた。そこで知人から紹介されたのが、サステナブルレストランの評価基準で3つ星を獲得した兵庫県芦屋市のイタリアンレストラン「BOTTEGA BLUE(ボッテガブルー)」の大島隆司シェフだ。


「大島シェフとはサンマルクホールディングスがメニュー開発の業務提携をさせていただいていたというご縁もあり、知人を通してすぐにお会いする機会を設けていただけました。ボッテガブルーへ食事をしに行き、サステナブルなイタリアンレストランについてお伝えしたところ、コンセプトへの共感を得られ、メニュー監修をしていただけることになったのです」。


大島シェフの考案するメニューは、チェーン店で扱うメニューとは大きく異なる。チェーン店ではオペレーションを重視し、誰でもスピーディーに料理を提供できることが求められるが、大島シェフのメニューはソースもゼロからスタッフが作る。本来のチェーン店であれば、ソースはメーカーで製造されたものを使用している。「本格的なイタリアン料理」と「店舗オペレーションに乗るかどうか」という2つをいかに両立させるか、当初は特に苦心したという。

(共に試作品を作る大島シェフ)


加えて、サステナブルという観点からの調理方法も江下たちサンマルク側のメンバーにとっては新鮮なものだった。


「シェフが常にゴミ箱を見ていたのが印象的でした。とにかく食材を徹底的に捨てないんです。野菜の切れ端を集めてブロード(出汁)にするなど、サステナブルへの熱量の高さを感じました」。


「サステナブル」は店内デザインにも反映されている。ケナルでは、天井、テラス、テーブル、ベンチなど、あらゆる場所にさまざまな木材を使用している。選定の基準は、「繰り返し使えるもの」「自然に還せるもの」「廃棄されるはずだったもの」。東京 2020 オリンピック・パラリンピックで使われる予定で余った木材も使用されている。


(店内は木材がふんだんに用いられており、暖かみを感じる作りだ)


材木店へは、江下も直接足を運んだ。基本は外部に依頼をするため、材木店の店主と直接話をし、材木の種類や経年劣化による味わいの変化について教わったのは、江下にとって非常に楽しい経験だったという。


店舗デザインが決まるまでには、一度デザインを白紙にするという出来事もあった。最初に社内から上がってきたデザイン案は、ショッピングモール内にあるレストランのようなもので、「サステナブルなイタリアンレストラン」には合わないものだったのだ。そこで、新たに株式会社シファカの作元大輔代表にデザインを依頼。そこで作元氏から提案されたコンセプトが、ケナルのコンセプトとなる「ハレとケ」だった。


「蒜山には観光客向けの店は多くありますが、蒜山で暮らす人たち向けの店はあまり多くありません。ハレのときだけではなく、ケ、すなわち蒜山で日常生活を営む人たちにとっても楽しんでいただける店を目指したい。誰ひとり取り残されないサステナブルレストランを目指したいと、よりイメージが具体化されました」。


(店外の壁には大きく「ケ」の文字が入っている)


メニュー開発、店舗デザインが進められていくなか、ギリギリまで難航したのが働き手探しだった。オープン2ヵ月前の段階で、アルバイトの応募者がわずか2名。「正直かなり焦りました。できれば10名ほどは人員を確保したいと思っていたものですから」と江下は話す。


しかし、これも都心部以外で店舗を展開する際によく起きる事象だ。例えば、ケナルのある蒜山、真庭市の人口は2007年に設立されてから人口は減少し続けている。今後も日本全体で起きうるような少子高齢化の問題であるが、長く事業を続けるためにも一層力を入れてDXにも取り組んだ。配膳ロボットの活用やモバイルオーダーなど最新機器の導入も進め、限られた人員で運営できる体制を整えた。サンマルクイノベーションズが培ったノウハウも活かされた形だ。


(擬人化にデザインされた配膳ロボット「servi」)


こうして、2022年3月14日、ケナルは無事オープンを迎えた。

サステナブルへの取り組みが評価され、1年目で「FOOD MADE GOOD Japan Awards 2022」3つ星を獲得

開店1年目を振り返り、特に大変だったことについて、江下は「フードロス対策」を挙げる。食べ残しチェッカーを毎日使用し、廃棄量を記載。余った食材を活用したメニューの考案、飲みきれない量だったコーヒーのカップサイズの見直しなど、食料廃棄の削減対策に積極的に取り組んでいった。例えば、多かったフォカッチャの食べ残しは、提供のタイミングを変更することで解決に至ったという。


「当初はパスタやピッツァと同じタイミングでお出ししていたのですが、サラダや前菜と合わせて先に提供するようにしたところ、格段に食べ残しがなくなりました」。


ケナルの考え方に賛同して東京から入社したメンバーもいるが、働く人すべてがサステナブルに興味関心が高いわけではない。食材廃棄、残飯量を減らすために必要な記録作業は手間暇を要することから、どうすれば全員が一緒に考えることができるのか、「普通のこと」として店舗に落とし込めるのかの工夫を重ねていったという。


そのほか、開店前から行っていた食材を丸ごと調理に使い、廃棄物を減らす取り組みも継続。ゴミではなく資源として捉え、堆肥への活用にも取り組んでいった。


(野菜の切れ端を集めてブロードにする)


こうした取り組みが評価され、「FOOD MADE GOOD Japan Awards 2022」で3つ星を獲得。中国四国地方初の快挙だった。


「1つ星は取りたいというのが1年目の目標だったため、まさかいきなり3つ星をいただけるとはと驚きと喜びを感じています。2年目の目標をどうしようという感じですね(笑)」と江下は笑顔を見せる。


(受賞当時の様子)

2年目は地域活性化により目を向けた活動を

開店から1年近くが経った今見えてきた課題は、冬の集客だ。当初からある程度は想定していたものの、観光客が減少する冬季の客数は想定以上に厳しいものがあるという。これは蒜山高原全体の課題だが、長年こうした状況が続くと、当たり前のものとして受け入れてしまうと江下は指摘する。


「仕方ないことだと諦めず、何か新しいアプローチができないかを模索したい。ケナルだけの話ではなく、冬の蒜山高原にもっと遊びに来ていただけるよう考えたいです。まずはトラットリア ケナルを知ってもらおうと、年末からベアバレースキー場の一角をお借りし、カレーパンやマラサダ、ケナルチキンやクラムチャウダーの販売を始めました。そのほか、近隣でのイベントにも積極的に出店しています」。


店舗運営に集中した1年目を終え、2年目は地域活性化に目を向けたいと語る江下。SDGs未来都市である真庭市の市長と日本サステイナブル・レストラン協会の理事との対面も実現させたいと意気込む。


最後に、サンマルクと蒜山高原との意外なエピソードを語ってくれた。


「ケナルという名の由来は、サンマルクグループの創業者、片山直之が20年前に蒜山高原に建てた『ケナル山荘』が由来なんです。そうした関わりが過去にあったこともあり、地元コミュニティにケナルが温かく受け入れていただけたのかもしれません。SDGsやサステナブル活動をしていくために大切なことは、その地のコミュニティにしっかり溶け込むことだと感じています。溶け込むために必要なのは利他の心。蒜山では物々交換もよく見られ、ケナルにも収穫した野菜を持ち込んでくださる方がいらっしゃいます。非常にありがたいことですよね。私たちも自分たちの店だけを見るのではなく、蒜山全体が良くなることを考えていきたいと思っています」。

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