プレスリリース
小林製薬は、人的資本に関する取り組みを可視化するために「人的資本レポート2022」を公開しました。この中で紹介されている、「小林製薬のキャリア開発支援の環境」は、2022年に始まった「キャリアプロジェクト」によって取りまとめられたものです。
今回、プロジェクトメンバーや各制度を考案した担当者に対してインタビューを実施。プロジェクトが生まれたきっかけやメンバーの想いなどをあらためて確認し、小林製薬のキャリア支援の現在地と今後目指す方向について語ってもらいました。
写真上段 左から:
人事部 堀田、人事部 近藤、サステナビリティ戦略推進室 関、人事部 唐澤
写真下段 左から:
人事部 内川、人事部 中園、人事部 河野
−1. キャリアプロジェクト メンバー座談会−
◆◆ キャリア支援をもっとわかりやすい形で伝えていきたい ◆◆
■2022年に「キャリアプロジェクト」が立ち上がった経緯について教えてください。
中園:
スタート地点は2020年の「いきいきシニア制度」にさかのぼります。これは、60歳の定年を前にセカンドキャリアをどう考えるかをテーマに、52歳以上を対象にしたキャリア支援制度です。当時は、「これを全ての世代に展開するにはもっと議論が必要だよね」という雰囲気でした。
河野:
いきいきシニア制度の利用者からも、「もう少し若いときからこんな情報が欲しかった」みたいな声があって、やはりニーズがあるんだなと思いました。中園さんが「もっと議論が必要」と言ったけれど、もっと他の世代にも支援を広げていく必要があるんだろうなとみんな確信して、このキャリアプロジェクトが立ち上がったんです。
■「もっと議論が必要」という話がありましたが、それはどうしてですか?
中園:
人事部の私たちだけが「キャリア支援を!」と言っても、その支援に不可欠な経営層・管理職層が本気にならなければ意味がない。会社を挙げての支援を行うためにも、経営層ときちんと議論を行うことが必要だと考えました。
■社員から「キャリア支援が欲しい」という声はありましたか?
中園:
退職をした若い人の退職届の理由に、「キャリア支援がない」ということを書いている人がいました。「今度転職する会社はすごく従業員のキャリア支援が充実している」みたいに。小林製薬にキャリア支援がまったくなかったわけではないのだけれど、それが伝わってないな、もっとわかりやすい形で伝えられたらいいのになっていう想いはありました。
◆◆ まずは「キャリア支援の棚卸し」から ◆◆
■キャリアプロジェクトでは、まず、どのようなことに取り組まれたのでしょうか。
唐澤:
キャリア支援についての大きな構想を作って、まずはその中に既存の仕組み(制度)を配置しました。その後に、新たに始めたい仕組みを考えていきました。
河野:
例えで言うと、プロジェクトで“テーマパーク”というコンセプト(構想)を作り、“アトラクション”(具体的な制度・施策)を作っていく。メリーゴーラウンドを動かしているのが中園さん、観覧車を動かしているのが私、みたいなイメージでした。それぞれの人が想いをもって、それぞれアトラクションを動かしていましたね。
■新しく作りたい“アトラクション”には、具体的にどんな制度があったのですか。
唐澤:
例えば「キャリアサポート窓口」です。今は社内外のキャリアカウンセラーにキャリアの悩みを相談できる仕組みがあるのですが、当時はなかったです。他には「キャリア開発ワークショップ」のような自分自身のキャリアを考える機会や、「他のグループはどんな仕事をしているか」を把握できる仕組みも少なかったですね。
■新入社員研修で小林製薬の全体像を学んで以来、他部署のことを知る機会がない、みたいなイメージでしょうか?
唐澤:
新入社員研修は、小林製薬の全体像を学ぶため、「事業部単位で何をしているか」のようにどうしてもマクロな情報になってしまいます。先程のは、「グループ単位」のイメージで、それぞれのグループが「どういう業務をしているか」というようなより詳しい情報の見える化です。
河野:
例えば、他部署への異動希望を検討するシーンを例に挙げると、「あなたは何がしたい?」と聞かれても、「どんなスキルを持っていればいいのだろう?」「そもそも何をしたらいいの?」ということがわからない。だったら、まず会社側がそれを見せなきゃねっていう意味ですね。
唐澤:
「私は『広告グループ』に異動して、クリエイティブを作りたいんです!」という希望をお聞きしたことがあります。しかし、「実際にクリエイティブを作っているのはブランドマネージャーだけど?」みたいな認識のズレが起きたのですが、各部署の業務が見える化されていないので、このズレは致し方ないようにも思いました。見える化された情報ですべてを伝えることは難しいかもですが、このような認識のズレが少なくなるきっかけになったらと思います。
◆◆ 社内ヒアリングで見えてきた意外な実態 ◆◆
■個別のキャリア支援の制度が生まれるときの「プロセス」はどのようなものだったのですか。
唐澤:
プロセスは結構シンプルです。小林製薬は比較的、階層が少ない会社なので、人事が役員会議に提案して承認されれば制度になります。まず、キャリアプロジェクトでは、「4つの機会」という一番大きな構想をスライドにまとめて、いろんな事業部を回り新入社員からベテランまで、性別年齢問わず幅広くヒアリングをしました。「こんなこと考えているけど、率直にどう思う?」と尋ね回って、そこで集まった声をブラッシュアップに活かし、役員会議で、「こういう考えでこういう構想で今後やっていきたい」ということを提示しました。そこで大きな異論が出なかったので、ポータルサイトなどを準備し、全社員に告知したというプロセスでした。
中園:
実際にヒアリングをしてみると、意外にも「キャリアのことについて考えられていない」と答える人の方が多かったんです。それには人それぞれ理由がありましたが、「仕事が楽しすぎて考えられなかった」という人もいれば、中には「ふと30歳になって我に返って、やばいと思った」という人もいました。
唐澤:
「自分のキャリアについて考えよう!」と世の中ではよく言われるけれど、「何をどう考えたらいいのかわからない」「考える材料や情報が少なくない?」などの声もありましたね。
河野:
きっかけを作れたらなと思っているんです。その結果、「いや、今は考えなくていいな!」というのはもちろんありです。
◆◆ メンバーが考える「キャリアをつくる」ということとは? ◆◆
■今後、キャリア支援がこう在ってほしいという希望はありますか。皆さんの考えを教えてください。
中園:
「人事の立場として」って言われると難しいので、あくまで私の主観で話しますね。キャリアを考えることを、「意識の高い人のもの」と思っている人がまだ多いのかな、という気がします。ここでの「キャリア」とは、別に出世したいということではなくて、自分の人生そのものを考えることだから、誰でも当たり前に考えることなんですよね。
自分のキャリアを考える、デザインするっていうことを、そんなに構えずに気軽にやってみてほしい。自分のために勉強することに対しても、やっぱりまだ「あの人、意識高いよね」みたいなところがあるので、キャリアについて気軽に社内で語り合えるようになれたらいいなと思います。
河野:
自分のキャリアを真剣に考え抜いた上で今の居場所にいてほしい、と感じますね。何も考えずに時間が経って60歳です、という状態ではいてほしくない。外から見たら同じことなのかもしれないですが、しっかり考えた上で「ここが私の居場所なんだ」、という納得できる形で過ごしてほしいと思います。
唐澤:
めぐり合わせや運もあると思いますので、自分の思い通りにキャリアを歩めないときもあると思います。それでも、「今はこうだけど、将来はこういうことしたいな」と考えていると、自分の現状に納得できることも増えて、前向きに過ごせるようになったらいいな!と感じます。
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◆参考情報◆
小林製薬は、2023年に新たにオウンドメディア「おっ!?小林製薬」、「小林製薬
公式note」をスタートさせました。
本ニュースレターの
‐1.「キャリアプロジェクト メンバー座談会」‐
‐2.「4つのキャリア開発支援制度の特徴は? 各起案者に聞いてみました」‐
以外にも、製品開発の経緯や企業風土など小林製薬の“内側“がわかる様々なストーリ
ーを発信しています。
おっ!?小林製薬なんかええやん、が見つかるメディア
https://www.kobayashi.co.jp/koba/
小林製薬公式note
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−2. 4つのキャリア開発支援制度の特徴は? 「各起案者に聞いてみました」−
キャリア開発支援のコンセプト「自ら育つ環境」の一つである「経験する機会」には、「社内FA制度」 「社内副業」 「社外副業」 「プロボノプロジェクト」があります。
これらの制度の起案者に、起案の経緯や制度利用の現状などについて答えてもらいました。
(1)社内FA制度 ==========
現所属を飛び越え、異動を希望する所属先に直接自己申告書を公開し、人事異動の
検討を行う制度。
従来の自己申告書での「異動希望」と異なり、現所属の上司はFA利用の有無や内容
を閲覧できないのが特徴。導入初年度となった2022年異動に向けては90名の応募が
あった。
■従来の自己申告書内での異動希望との違いは?
豊田:
自己申告書の内容は全て上司が確認することができたため、本音を出しづらいケースがありました。社内FA制度では上司を通すことなく希望する異動先に意向表明できる形になったので、これまでよりも本音で希望を出しやすくなったと思います。
■実際に制度を利用した感想は?
内川:
社内FA制度を使って、私は研究から人事部に異動しました。これまでの自己申告書での希望表明では、「どれくらい自分の異動希望が検討されているのだろう?」という疑問が正直ありましたが、社内FA制度では、希望部署との面接の場も設けられているため、一人ひとりの想いをしっかりと聞いてもらえる点がとても良いなと感じました。
■今後、制度をどのように育てていきたい?
須田:
少し前までは(異動に)手を挙げることは気が引けるというような雰囲気もありました。そうではなく、チャレンジをすごく前向きにとらえて「チャレンジしてOKだよ」と、社内FA制度を通して、そういう風土をさらに作っていきたいですね。
(2)社内副業制度 =========
自部署の業務とは別に、異動することなく他部署の業務に携われる仕組み。
@ 多種多様な経験を積める場の提供
A 自ら手を挙げ、行動・挑戦できる風土の醸成
B 所属や立場を超えた人材交流・社内活性化 が目的。
■利用者の反応は?
近藤:
自部署にいながら別の所属の仕事に携われるので、自分の知らない世界で新しい経験を積めるところを利点に挙げる人が多いです。また、社内の人脈も広がることも良かったと挙げている方もいました。他には採用活動として学生に会社について説明することで、改めて自社の良さを知ることができたという意見もありました。
■社内副業で難しいところは?
近藤:
社内副業ではまったく知らないことを担当することもあるので、インプットは大変だと思います。短納期でやらなければいけない場合、時間的な負荷が掛かることもあります。
堀田:
社内副業をしている本人の「上司」のケアというのも重要だと感じています。「部下が何をしているのかわからない……」という状態にならないように、副業先所属や人事から、情報提供をしっかりする必要があると思います。
■社内副業で持ち帰ってほしいものは?
堀田:
新しい経験を積んでもらって、それを自分のキャリアや社会人人生のプラスにしてほしいというのが一つ、多様な人たちが集まることで、より大きな成果につながったら良いなというのがもう一つです。
近藤:
小林製薬は中期経営計画のスローガンとして「枠を超えたチャレンジ」をテーマに掲げています。いろいろ自分たちで手を挙げてやっていくことを善しとしている企業風土なので、社内副業もチャレンジの一つとして自分のキャリアを考えるきっかけになればうれしいですね。
(3)社外副業制度 =========
社外で業務に取り組める制度(いわゆる「副業」)。
社内だけでは得られない知識やスキルを獲得することでキャリアの幅を広げ、社員
の自己実現の支援が目的。利用者の業務内容は、アプリ開発、野菜の栽培、保育士
などバラエティに富む。
■副業申請の承認率は?
河野:
制度開始から2年目の2023年までに約70人が申請していて、その9割以上が承認されています。承認されなかったのは、労働時間や守秘義務の懸念があった一部のものです。承認された副業は、活動を逐一確認するようなことはしていませんし、期限も設けていません。
■利用者の反応は?
河野:
「自分が貢献できる場が社外にもあると、純粋にうれしい」「前の会社ではできなかった趣味の活動ができた」など、プラスの声が寄せられています。シニア世代の人からは、「定年後を見据えた活動ができる」という声もありますね。
■社外副業で持ち帰ってほしいものは?
河野:
副業先での学びや経験はもちろんのこと、社外の環境にも触れて、納得して、やっぱり小林製薬でよかったと感じて働いてほしいです。小林製薬を辞めて外に行ったけれど後悔している、という声を聞いたこともあるのですが、外を見ることで会社の良さを再認識してほしいという思いはありますね。
(4)プロボノプロジェクト ====
実在する課題解決に取り組む「社会課題解決型プログラム」。
社会的・公共的な目的のために、職業上のスキルや経験を活かす社会貢献を実践で
きる。小林製薬では、2022年からプロボノプロジェクトがスタートしNPO法人サー
ビスグラントのプロボノリーグに参加。2023年は青い鳥財団の助成先へと活動の場
を拡大。
■経験者が起案したプロボノプロジェクト。その経緯は?
関:
自分のプライベートでの経験から、プロボノは社員のスキルを活かせる場だと感じていました。小林製薬にはいろんな強みを持っている人たちがいるので、それを社会のために貢献できる場としていいんじゃないかな!と考えました。
唐澤:
関さんからプロボノの話を聞いて私もプライベートで参加したのですが、社内では当たり前だと思っていたことでも、支援先の方にとても感謝されるということも多く、社会貢献活動を通じて、自己肯定にもつながると実感しました。そこで、関さんと二人でプロボノを会社に起案することにしました。
■プロボノプロジェクト参加の条件は?
唐澤:
参加条件で唯一つけたのは、「プロボノ未経験」ということです。「社会活動に触れるきっかけを提供したい」というコンセプトなので、その経験がある人には他の人にチャンスを譲ってほしいからです。
■利用者の反応は?
唐澤:
2022年のプロボノリーグ参加者は「業界が異なる他社メンバーだったので、チームビルディングの重要性を学べた」「社会活動は、無理のない範囲で自分にできることは何かを考えて実行することが大切だと気づいた」など、それぞれの表現でチームビルディングの経験を語っていたのが印象的でした。
■今後、プロボノプロジェクトをどのように育てたい?
関:
“あったらいいな”をカタチにするというのが小林製薬のブランドスローガンですが、プロボノプロジェクトでは、小林製薬のいろんな人が自らのスキルを活かして、社会へ“あったらいいな”をカタチにできると思います。モノだけではなくヒトそのものが価値提供をすることを、長く続く小林製薬の文化にしていきたいです。
◆関連情報◆
地域の社会課題に“あったらいいな”を目指し、プロボノ活動を実施 〜「パーパス」の実現に向けた、社員一人ひとりの“行動変容”〜
| ニュースリリース | 小林製薬株式会社
https://www.kobayashi.co.jp/newsrelease/2023/20230323_01/
◆プロフィール◆
中園 直子(人事部 人事1グループ)
1988年入社。医療機器営業、店頭販促企画などを経験し人事部へ。教育、採用、育児や介護との両立支援などの業務に携わる中で、相談対応・傾聴スキルを身につけたいと思い、「国家資格キャリアコンサルタント」を取得。その後、キャリアプロジェクト関連の導入メンバーに。今は「キャリアサポート窓口」として、社員との面談も実施中。
河野 貴治(人事部 人事3グループ)
2009年入社。評価制度・各種人事制度の設計と運用、採用、教育、関係会社の人事担当まで幅広く経験し、現在はダイバーシティ推進などを担当。キャリアプロジェクトに携わった影響もあり、最近は社会人マジックサークルに通うなど、社外のコミュニティとのつながりを模索中。
唐澤 慧記(人事部 人事1グループ)
2013年入社。研究開発職として芳香剤の香り創りにのめり込んだ5年間を経て、B to B向け新規事業である持続性抗菌剤「KOBA-GUARD」のPJリーダーを担当。その後、社内FA制度を活用し2022年より人事部に異動。「せっかくやるなら楽しく!」をモットーに、今は人事部のマネージャーと研究活動を兼務しながら活動中。
内川 美穂(人事部 人事1グループ)
2010年入社。研究開発職としてサラサーティやマスクなどの衛生用品の開発に携わった後、研究開発職能の人材育成活動を経験。この経験を機に、社内FA制度を活用して2023年から人事部に異動。社員が楽しく充実して働ける環境を目指して、自分にできることは何か?を考えながら様々な活動に挑戦中。
堀田 仁(人事部 人事3グループ)
2015年入社。他社メーカーで新卒から10年間 人事を経験したのち、当社の製造本部、グループ統括本社で幅広く人事の仕事に関わる。現在は、ダイバーシティ経営を推し進めるため、@多様な人材の採用・定着、A制約を感じることなく能力を発揮できる環境の整備、B多様な人材・価値観が交わる人的ネットワークの活性化に取り組む。
近藤 佑哉(人事部 人事3グループ)
2012年入社。給与計算や各種保険を担当した後、労務管理、制度企画、評価制度運用、キャリア採用などに携わる。現在は新卒採用、労組・専門協議会窓口、働き方PJなどに携わり、人事担当として会社の成長エンジンである「人」を集め、意欲高く働ける環境を整えるべく活動中。
関 雄(サステナビリティ戦略推進室)
2018年入社。サステナビリティ戦略推進スタッフとして、主に製品を通した社会課題
解決(CSV)やサステナビリティの社内浸透などに尽力。これまでなかったものをカタチにすることにやりがいを感じ、小林製薬においても社内外の様々な部署・セクターと連携した企画を立案・実施している。
豊田 早月(人事部 人事1グループ)
2018年入社。キャリア開発支援、人材開発等における各種人事制度企画を担当。キャリアの悩みに寄り添い、クライアントがありたい姿に向かって軽やかに一歩踏み出すための一助になれたらとの想いで、社外でもキャリアコンサルタント及びコーチとして活動中。現在、第二子の育児休業取得中。