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株式会社主婦の友社

世代を超えて繋がれていく親子の絆を描く『ちいさなあなたへ』が母の日のNO.1絵本になるまで

(PR TIMES STORY) 2023年06月16日(金)09時26分配信 PR TIMES




世界中の出版社やエージェントが集まる世界最大の書籍の見本市、フランクフルト・ブックフェアで、編集担当者がのちに『ちいさなあなたへ』となる原書『Someday』と出会ったのは2006年秋のこと。まだ完全な絵本になる前のプルーフ(製本前見本)だった。


今なお多くの読者に感動を与え、愛されつづける絵本『ちいさなあなたへ


「あのひ、わたしは あなたの ちいさな ゆびを かぞえ、 その いっぽん いっぽんに キスを した」

生まれたばかりのわが子を抱く、母の独白で始まるこの絵本は、発売から15年で発行部数70万部目前まで迫り、母の日のギフトとしていちばん選ばれる絵本となっている。


今年の母の日は5月14日(日)。実用書の出版社である主婦の友社から刊行されたこの翻訳絵本が、「母の日にもっとも売れる」絵本になるまでの軌跡を追う。


お母さんの不安や悩み、そして喜びに寄り添う絵本づくりを

主婦の友社は、大正5(1916)年に創業、社名を冠した雑誌『主婦の友』(2008年に休刊)からスタートし、料理や健康、家庭医学、インテリア、ファッションなど実用分野の雑誌や書籍を得意としている出版社だ。しかし、絵本の刊行は昭和40年代を最後にとぎれていた。


30年近く手がけていなかった絵本分野に参入することになったのは、2000年の「子どもの読書年」がきっかけだった。「これからは子どものための本づくりが必要だ」と考えた当時の経営陣から、絵本刊行のミッションが、育児分野の担当者におろされた。


実用書と絵本では、編集のノウハウがまるで異なる。著名な絵本作家との人脈や情報もなければ、用紙や印刷などの絵本制作の知識もない。社として経験のない分野にとりくむときは、外部から経験者を招くというのが手っ取り早いが、このとき、その方法はとらなかった、と当時の編集長が語る。


「育児雑誌や育児書でおつきあいがあったフリー編集者さんや子どもの本の研究者さんなどの協力を得て、社内で編集・制作にあたることにしました。社内の人材で経験を積み上げていくことが大事だと思ったからですし、育児分野に長くかかわってきたことで、ほかの絵本専門の出版社とは違うアプローチができるかも、と考えたからです。子育てするお母さんの気持ちは、私たちがいちばんわかっている、という自負もありました」


絵本と一口に言っても、いろいろなジャンルがある。主婦の友社は「赤ちゃんのすこやかな成長に役立つ、親子のコミュニケーション絵本」にターゲットを定めた。お母さんが赤ちゃんをひざに抱いて、読み聞かせ、いっしょに楽しい時間を過ごすための絵本である。


2003年、主婦の友社の絵本分野はスタートした。シリーズ名は「主婦の友はじめてブック」というストレートなものだった。


「すやすやと ゆめを みている あなたを みながら、わたしも ときどき ゆめを みる……」眠っているわが子を見ながら、母は子どもの成長や未来へ思いをはせる。



フランクフルトでの幸運な『Someday』との出会い

海外書籍の版権をいち早く買いつけるには、代理店である著作権エージェントとのコネクションがものをいう。幸いなことに、当時主婦の友社には、絵本ではないが、翻訳の読み物を担当する部署があり、浜本律子氏(現在は主婦の友社を退職、著作権エージェント勤務)が育児休業から復帰したところだった。自分も子育て中の編集者である浜本氏が絵本分野に参加することで、イギリスで人気を博していた、赤ちゃんが触って楽しむ『BABY TOUCH』シリーズなどのヒット作も生まれることになった。


「児童書の版元はボローニャ・ブックフェア(児童書に特化したブックフェア)を重視していて、フランクフルトへ行く版元は少ないので、他社より先に見ることができ、ラッキーでした。あとから聞いた話ですが、フェアのミーティングで、プルーフを読んで思わず涙している私を見て、エージェントは『この絵本はこの人が編集するべきだ』と思ってくれたそうです」


帰国後、編集長に「幼児向けではない、大人向けの絵本なんですが」と相談すると、「浜本さんがそんなにいいと思うなら、やればいい」と、すぐに社内の企画会議に発案し、承認された。フェア直後に来日した権利者とのミーティングの席上でオファーを出し、競合もなく、すんなり版権を獲得できた。


「うれしくて たのしくて ひとみを きらきら かがやかせる」日もあれば「ほのぐらい もりへ さまよいこむ」日もある。「人生は決して美しいだけでは終わらず、心が張り裂けそうなことや傷つくことも、子どもが豊かな人生を歩むうえで必要なこと」と、著者のアリスン・マギー氏はいう。


原書の魅力を最大限に引き出した最適な翻訳

原書『Someday』は現在20以上の言語に翻訳され、各国でベストセラ−となっているが、最も売れているのは、本国アメリカ、そして日本だという。


成長していくわが子を見守り、その豊かで実りある人生を願う親の心情は、どの国でも共通。しかし、より多くの人に受け入れられたのは、『ちいさなあなたへ』の日本語訳の力が大きい。浜本氏は語る。


「翻訳者は、なかがわちひろさん以外に考えられなかったです。絵本の翻訳はとてもむずかしいのですが、なかでも『Someday』は、お話ではなく詩で、とりわけ間が広くて深いので、「小手先の翻訳ではだめだ」と思いました。なかがわさんの翻訳でなかったら、抽象的で何も伝わらないか、ひどく陳腐になるか、どちらかだったでしょう。なかがわさんのことばに関するセンスには、絶大なる信頼を寄せていましたし、その前にご一緒した仕事を通して、子どもや子育てに対する考え方にも触れて、『Someday』の根っこにあるものに、きっと共感していただけるだろうと」



原文では「baby's skin」を「まあるいほっぺ」と訳している。「あかちゃんのすべすべ、ぷくぷくした肌の質感が、その温度とともに目に浮かんできますよね。すごい名訳だと思います。」(浜本氏)



翻訳作業では、いつもと同じように、翻訳者と編集者それぞれが気になっているところについて、とことん話をして決めていったという。


「でも、最初にいただいた訳が、そもそもとてもよかったので、それほど議論が必要なところはありませんでした。原書を初めて読んだときも、その場で涙しましたが、日本語訳を初めて読んだときも、また同じように涙しました」


「タイトルは、なかがわさんからいくつか候補を出してもらって、話しあって決めました。原題(Someday)を生かした『いつかきっと』という案もありましたね。最終的には、書店で絵本をさがすお母さんに『そこのあなた、ほら、あなたのための本ですよ』と呼びかけるようなタイトルにしようということで、『ちいさなあなたへ』になったと記憶しています」



お母さんが日記を書いているような、あたたかみのある手描き文字

この絵本を読む人は、テキストに使われている文字がユニークなことに、気づくだろう。実はこの文字は、装丁を担当したブックデザイナー、水崎真奈美氏が手描きした文字なのだ。原書も手描き風ではあるが、こちらはフォントを使っているという。26文字しかないアルファベットは手描き文字風のフォントがつくりやすいが、日本語ではそうはいかない。



「手描きのあたたかみを出したいね、という提案はなかがわさんからでした。原書の文字はポップで、遊びがありますが、日本語版は、お母さんが日記を書いているような、ごくふつうの女性の文字にしよう、ということになりました。水崎さんが何案も文字を提案してくれて、その中から選びました。文字の置き方も、見てもらえればわかるとおり、普通の絵本とは違っていて、文字がイラストの一部になっています。このレイアウトも、こまかな点を何度も何度もやり直してもらいました」


100人を超える書店員に、初校を読んでもらうことで販促に

試行錯誤しながら編集作業が進むかたわら、営業サイドも苦労していた。どんな良書でも、書店で読者の目に触れなければ、売れることはむずかしい。しかし、当時は雑誌『主婦の友』や実用書の営業がメインだったため、児童書を担当する書店員さんたちとのパイプもない。


「絵本担当の書店員さんは、ロングセラーの良書を常に扱っていて、新刊への評価も厳しい。とにかく何度も足を運んで、まずは主婦の友社を知ってもらうことから始めました。当時、当社には「ブックメイト」という定期的に書店を訪問し、商品の在庫状況の確認と新刊をご案内をする営業組織があり、全国で70名ほどが所属していましたが、そのほとんどがお母さん。彼女たちに『ちいさなあなたへ』の初校を渡したところ、感動する人が続出。顔見知りの書店員さんへ『とにかく読んでもらえば、この絵本の魅力がわかるはず』と、とても熱心に働きかけをしてくれました」

(当時の営業担当、現副社長の矢崎謙三氏)



結果、100人を超す書店員さんに読んでもらうことができ、さらには彼女たちの提案で、絵本コーナーだけではなく、育児書を求めて来店するお母さんたちにアピールできるように育児書コーナーにも展開してもらうという、実用書版元ならではの販売策が実現することとなった。


「この絵本を主婦の友社が売らなくてどうするんですか」

部数と定価(本体価格)を決定する部決会議の席上で、初校を見ながら、出版部長が強い口調で言った一言を、浜本氏は今もよく覚えているという。


「お母さんのためのこの絵本を、主婦の友社がちゃんと売らなくてどうするんですか」


定価を決めるときには、初版だけではなく、重版時の用紙・印刷代、印税などの原価が重要になってくる。『ちいさなあなたへ』は良質なつくりを目ざして、用紙にもこだわっていたので、もし重版が小部数だと利益が出ない。


しかし、利益を真っ先に考える立場の販売部長も「ベストセラーをねらうなら、小部数での重版は考えなくてもいいだろう。出版社側の事情より、子育て中のお母さんが手にとりやすい価格にしないとだめだ」と英断を下し、定価1000円(税抜*現在は物価高騰による用紙値上げ等により1200円)、初版部数は絵本としてはかなり破格な12000部に。


日本に先行して発売されたアメリカで、NYタイムズやアマゾンの児童書分野で「ハリーポッター」を超える売れ行きとなっている、というニュースが入ってきたことも、積極的に動こうという社内の空気を後押しした。


発売まもなく、読後の感想を書いた愛読書ハガキが続々と届いた

発売後の売れ行きは、想定以上に順調だった。20日ほどで10000部、その1カ月後にも10000部、さらに3週間後には20000部と重版を重ね、最初の1年間で発行部数は累計185000部に達した。絵本としては画期的な大ヒットである。


絵本に挿入した愛読者ハガキも、数多く寄せられた。現在進行形で子育て中の母親は、わが子の未来へ思いをはせ、子どもが巣立った母親たちは、自分が通ってきた子育ての日々を振り返っていた。


2019年にNHK『おはようニッポン』でとりあげられたときには、60〜70代の購買層が多く、2021年TBS「ラヴィット!」で紹介された際は、20〜30代の子育て世代の支持が増えた。現在も購買者層は、この二つの年代で山が見られるという。


「わが子を出産した日のことを思い出し、ますます子どもが愛しく感じられました」

「言うことを聞かない思春期のわが子にイライラする毎日ですが、もっと子どもとの時間を大切にしようと思いました」

「成人して家を離れた娘が家族を持つときに、この本をプレゼントしようと思います」

「折り合いのよくなかった母が、今認知症に。この本を読むと、ああ、産んでくれたのは母なのだ、とちょっぴりやさしい気持ちになれます」「そうしていつか ながい としつきの はてには、あなたじしんの かみも ぎんいろに かがやくひが やってくる」ストーリーは終盤に向かい、時の流れを感じさせる。


普遍的な広がりと深さをもつ絵本を、もっと多くの人に届けたい

「この絵本がもっとも心に響きやすいのは、やはり母親である人だと思います。自分が子どもに対して抱く思い、そして自分自身の、母親に対する思い。『ちいさなあなたへ』を読むと、その両方が一気にどっと押し寄せてくるのだと思います。これまで想定してきた読者像も、お母さん中心でした。でも、最近それだけではないのかも、と思うようになってきました」

(書籍事業部 部長 山口香織氏) 


愛読書ハガキの中には、中学生や男性からのものもあり、関係者を驚かせたが、考えてみれば、人は必ずだれかの子どもで、すべての人には母親がいる。


「先日、翻訳者のなかがわちひろさんとお話しする機会があり、そのときになかがわさんが『産んだ人にしかわからない絵本ではない』とおっしゃっていました。家族の在り方がますます多様化している今、子どものいる人、いない人、血縁のない子どもを育てる人、などさまざまです。その立場の違いの間には、ときには、ある種の溝があることも事実です。しかし、性別や年齢、立場を超越して、お互いを尊重しながら、それぞれが無理のないかかわり方で、社会全体が『子どもは宝物』という共通の意識でいることができたら、今より少しずつ誰もが過ごしやすい世の中になるのではないでしょうか。『ちいさなあなたへ』が、そんなお互いの立場の間にある垣根を取りはらうきっかけを、担うことができたらいいなと願っています」

(山口氏)


母から子へ、そしてさらにその子へと、はてしなくつづく命の繋がりを描いて、読んだ人の心を揺さぶり、熱い思いをかきたてる絵本『ちいさなあなたへ』。多くの人が、手から手へと渡し、その感動を伝えてきた。今年の母の日、手に取ってみてはいかがだろうか。


【商品概要】


タイトル:ちいさなあなたへ

文:アリスン・マギー

絵:ピーター・レイノルズ

訳:なかがわちひろ

定価:1320円(税込)

発行:主婦の友社

発売日:2008年3月7日

ISBN:978-4-07-255993-2

<販売サイト>

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4072559938/

楽天ブックス https://books.rakuten.co.jp/rb/5441462/


<68万部突破時のプレスリリース(2022年4月)>

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文:アリスン・マギー ALISON McGHEE

作家。”Rainlight”でミネソタ・ブック・アワード受賞、”Shadow Baby”でピューリッツァー賞にノミネートされるなど、高い評価をえた作品を発表し続けている。メトロポリタン州立大学で創作を教えている。ほかに『たくさんのドア』『きみがいま』(ともに主婦の友社)。米国ミネソタ州在住。


絵:ピーター・レイノルズ PETER H. REYNOLDS

絵本作家、イラストレーター。『テスの木』『きみがいま』『こころの おと』『ゆめみる ハッピードリーマー』(いずれも主婦の友社)、『てん』(あすなろ書房)など作品は多数。米国マサチューセッツ州在住。


訳:なかがわちひろ CHIHIRO NAKAGAWA

創作絵本や海外絵本の翻訳など、児童書のさまざまな分野で活躍。著書に『おえかきウォッチング 子どもの絵を10倍楽しむ方法』(理論社)、『かりんちゃんと十五人のおひなさま』(偕成社)、日本絵本賞読者賞を受賞した『天使のかいかた』(理論社)、『のはらひめ』(徳間書店)など。本書のほかにもピーター・レイノルズ作品の翻訳を多数手がけている。

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