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花王株式会社(Kao Beauty Brands)

花王が化粧下地技術の新たな可能性の提案に挑戦。新たな技術開発と価値提案に取り組んだユーザー起点の研究カルチャー

(PR TIMES STORY) 2024年03月21日(木)13時45分配信 PR TIMES


メイクをする人にとって、最初に肌に塗布する化粧下地選びは非常に重要なポイントだ。その化粧下地には、メーカーが時間をかけて開発した技術が採用されている。化粧品事業を展開する花王株式会社は多様なユーザーのニーズに応えるため、さまざまな化粧品技術を自社研究により開発してきた。(※1)


花王の研究者たちが化粧下地の進化を模索する中で、あるひとりの研究員の気づきから新たな価値提案の道筋を見出した。その提案の実現に向けた新たな挑戦について、とことんユーザー起点の研究開発に取り組む3名のスペシャリストに開発の経緯と想いを聞いた。



化粧下地に「バリア機能がある」と気付いたことが研究の糸口に

メイクアップ研究所所属の為行舞斗(以下:為行)は、化粧下地の新たな側面を見つけ出すために、探求を続けていた。為行「当時は、皮脂や汗に加え、マスクとの擦れによる化粧くずれ防止に着目した技術開発に取り組む一方で、この技術開発で得た知見を新たな切り口の価値提案に広げられないかと日々考えていました」。



為行 舞斗

(所属:花王株式会社 メイクアップ研究所/「化粧下地の処方開発担当」)



進化の糸口が見つからないまま研究を続ける中で、これまでとは全く異なる価値に遭遇した。そのきっかけは、同じくメイクアップ研究所所属の白坏早苗(以下:白坏)が感じたある違和感だった。


白坏 早苗

(所属:花王株式会社 メイクアップ研究所/「化粧下地の性能評価担当」)



白坏は評価を依頼された試作品を複数試す中で、為行が開発したある化粧下地(サンプルX)を1日使用したところ、マスクを付け外ししたときの肌の違和感が少ないことに気が付いた。

白坏「この化粧下地を使用した日は肌の違和感が少なく、別の試作品を付けた日との違いを感じました。これは、新たな化粧下地の価値提案に繋がるのではないかと実感し、為行さんにすぐに相談しました」。この白坏が感じた「肌が守られているような感覚」が新たな化粧下地開発のきっかけとなった。



サンプルXがもつ緻密な均一塗膜が実感の鍵だった

白坏は自身の分析スキルを活かして、早速サンプルXだけがもつ特長を掴むために化粧下地の分析を始めた。為行にサンプルXから配合成分を1つずつ動かしたサンプルを調製してもらい、それらとの比較から、サンプルXの塗膜が当社従来の化粧下地には見られない緻密な均一塗膜を有していることがわかった。化粧下地の処方は少しでもバランスを崩すと、中に含まれる粉体やオイルがバランスよく塗膜の中に分布せずに不均一な状態を作ってしまう。しかしながら、サンプルXはその「バランス調整の難しさ」を絶妙にかいくぐった塗膜であることを突き止めたのだった。




均一であるからこそ、塗膜のどこもまんべんなく皮脂や汗に強く、バリア機能が肌全体に広がっている。白坏「自分の実験が徐々に確信に変わっていく感じは非常に嬉しく、ワクワクしましたね」。仮説を立てて実験を設計し、一つひとつ検証しながらデータを積み重ねた結果、均一な塗膜を形成する技術の掛け合わせにより、肌をバリアする機能が発現していたことがわかったのだった。



画像解析を行うため、サンプルを使用した肌を撮影する為行


塗膜を液体窒素で凍結させて観察を行い、塗膜の性質を調べる白坏



第三のスペシャリスト登場。サンプルXは誰のためにあるか

この化粧下地は誰のためにあるのか、誰のもとに届けるべきか。この疑問も解決するために2人が相談を持ちかけたのが、“ヒトを知るスペシャリスト”である前多瑞希(以下、前多)だ。前多はメイクアップ研究所で、ユーザーのニーズ探索や、技術の効果を説明するためのデータ作りを担当。これまでにユーザーの実態や髪・肌の評価を行い、肌感覚の抽象的な声の具体化や製剤に眠った真の価値を発掘するなど、花王のさまざまな技術を支えてきた研究者のひとりだ。白坏と同様に、前多も季節や使用する化粧品によって肌に影響が起きやすいタイプであると言う。前多「話を聞きサンプルXを使用してみると、私自身も塗膜によるバリア機能を実感しました。そして、同じような肌悩みを持つユーザーにこの価値を届けたいと強く思いました」。


前多 瑞希

(所属:花王株式会社 メイクアップ研究所/「技術の価値探索・性能評価担当」)



参画を決意した前多がまず取り組んだのは、この技術を必要とするユーザーの特徴を知るためのアンケートだった。より多くの声を集める必要があると考え、花王グループ会社全体でアンケートを依頼したところ、研究から開発、営業までを含めた1,700名を超える社員からの声が届いた。




見えた課題は、肌が蒸れた状態で擦れること

アンケートから見えてきたのは、敏感肌意識を持っている人が女性で半数と多い点、またマスクをしながら会話する時間が長い人ほど、「日中の肌状態の悪化の実感がある」ということだった。マスクの着用内部は温度や湿度が高く、その状態で肌がこすれることで赤みを生じると考えられている(※[2]) 。そこで前多は、会話時間とも関係があるならば、マスク着用内部でふやけた肌に擦れが加わって、「日中の肌状態の悪化の実感」を引き起こしているのではと考えた。ならば、日中に肌とマスクの間に塗る化粧下地で肌をバリアすることで対処できるのではないか、そして、人とコミュニケーションをとる上で日常的にマスクが欠かせない人々、例えばエッセンシャルワーカーや営業職の方などの肌悩みにも応えられるのではないかと考えた。



サンプルXの使用試験で見出された”レジリエント性”



前多はサンプルXが持つ価値の本質を解明するため、ユーザーへの肌測定を実施することにした。マスクを着用する生活で肌の悪化を実感している女性を対象に試験を行ったところ、サンプルXの使用による、つっぱりやチクチク、ごわつきへの効果がわかった。研究員達は、この化粧下地がもつバリア機能を、しなやかさや強さといった意味をもつ“レジリエント”という言葉で示し、その研究成果を前多は2023年6月開催の第48回 日本香粧品学会にて「レジリエント性を有する化粧塗膜の肌への効果」として発表を行なった。発表後の質疑応答では、同業の化粧品メーカー研究員から塗膜についてもっと知りたい、今すぐにでもこの技術を応用することはできないのかなどのコメントがあったと言う。前多「学術的な場とは言え、『メイクアップの塗膜と肌に着目した研究』は珍しい内容です。一度で理解していただくのは難しいなかで、新しさや可能性が理解されたことに安堵しました」。ユーザーの使用感だけでなく、学術的にも技術の素晴らしさが認められることとなった。



 “肌のバリア”の塗膜機能をもつ化粧下地が今後新たな選択肢に




3名のメイクアップ品開発のスペシャリストの異なる専門性を活かした研究によって化粧下地の新たな価値が見つかった。白坏はこの取り組みを通して「化粧品の可能性を感じた」と言う。白坏「メイクアップ研究所に異動した頃は、日々のベースメイクのアイテムの一つとして化粧下地を使っていました。 でも、為行の作った化粧下地と出会い、緻密な均一塗膜が肌の上でバリアの役割を果たす可能性があることを知り、非常に驚きました。今後も化粧品に秘められたさらなる可能性について、研究者としてユーザーの意見に寄り添いながら探索していく」と話す。


また為行は「勉強になることが多い取り組みだった」と話す。「これまで、私とは異なる肌悩みに対する新技術や商品開発をする時は、ターゲットに近い悩みを持つメンバーに評価をしてもらっていました。でも、”なぜ”、”どのように”効果を実感するのか、深く探索できていませんでした。今回、モノだけでなくヒトも隅々まで調べたことで、両輪の取り組みが化粧品の研究開発で大事なことを実感しました」。


コロナ禍を経て、最近ではマスクを着用しない方も増えてきてはいるが、職業や体質によって日常的にマスクを着用する必要がある方は多い。花王は、これまでの化粧下地の選択肢であった皮脂による化粧くずれ防止や保湿とは異なる“レジリエント”という新たなカテゴリーにおいて、ユーザーが快適な生活を送るための技術開発や価値提案を今後も続けていく予定だ。とことんユーザー起点で肌の悩みに応える研究開発に取り組む、花王の研究カルチャーの結晶に、今後も注目していただきたい。


※[1] 2021年3月22日公開, さらなる高みを目指して。花王の男性研究員たちが果敢に挑戦した高持続化粧下地の開発, https://prtimes.jp/story/detail/7bZJzRt5DKb

※[2]上田早智江, et al. "衛生マスク着用による皮膚性状への影響." 日本化粧品技術者会誌 57.1 (2023): 25-34.




<研究者プロフィール>

花王株式会社 メイクアップ研究所

高持続下地 処方開発 担当

為行 舞斗

2018年入社以降、化粧下地に限らず様々なベースメイクの製品開発を担当。皮脂による化粧くずれ悩みの実態を知り、化粧持続を高めた新処方の開発や、持続性能の分析技術の開発に取り組む。現在も新たな価値をもった化粧下地の処方開発研究を行っている。




花王株式会社 メイクアップ研究所

化粧下地の性能評価 担当

白坏 早苗

2009年入社。素材開発を行う研究所にて、化粧品や衣料用洗剤など幅広く消費財の新材料の開発を行う。2019年にメイクアップ研究所へ異動し、素材開発で身に着けた分析技術を活かしたベースメイク品の製品開発や技術開発を行う。現在は、ベースメイクに限らず幅広いメイク品のジャンルで製品開発や分析を行っている。



花王株式会社 メイクアップ研究所

技術の価値探索・性能評価担当

前多 瑞希

2010年入社。グローバルでの髪質実態・ヘアスタイル意識行動研究、若年層の染毛についての意識行動研究に取り組む。その後、研究対象を毛髪から肌へ移し、アクティブシニアのボディ肌実態・意識行動研究、そして現在はメイクアップと肌状態の関係性について、実態研究や技術の価値探索調査を行っている。



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