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能美防災株式会社

10年で3回の提案を経て実現!震災の復興支援活動がきっかけになった「火災臨場体験VR」立ち上げ秘話

(PR TIMES STORY) 2023年01月17日(火)11時42分配信 PR TIMES

国内防災の最大手である、能美防災株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:岡村武士、資本金:133億2百万円、東証プライム市場)が提供しているVRコンテンツ『火災臨場体験VR〜混乱のオフィス〜』は、VR体験を通して災害の危険性や怖さを“自分事”として捉え、防災教育や防災訓練に対する意欲を高めてもらうことを目的に制作したサービスです。2021年9月1日“防災の日”より企業等法人のお客様向けに体験機会の提供を開始し、2022年4月15日からは機材とセットにしてレンタルでの提供を行っております。


初めてリリースした2021年9月1日“防災の日”から1年が経った本サービスは、防災教育への思い入れがある当社の佐々木が起案したものです。直近では、VRコンテンツを利用した防災教育プログラムを特別支援学校で実施する等、活用の幅も広がっております。


最初の社内提案から10年、3度の提案を経て実現した現在までのストーリーをお伝えします。


○防災への強い興味関心から、防災事業のパイオニアである能美防災へ


佐々木は2002年に新卒で当社へ入社し、これまで主に人事・教育の領域でキャリアを歩んできました。


大学時代は教育学を専攻。社会科コースの中で自然地理学のゼミに所属し、出身地でもある岩手県の三陸地方をフィールドに、リアス海岸における津波被害と地形の関係を研究。大学院進学後は、津波防災にも関心を拡げて研究を深めました。


(写真:大学院時代のフィールドワークで訪問した北海道の湖にてゼミの後輩と)


東日本大震災をはじめ、歴史的に津波被害を受けてきた岩手県釜石市の出身ということもあり、幼い頃から防災について学ぶ機会が多かったことや、大学・大学院で研究をしていた頃に、父親が釜石市の防災担当だったことが影響していたのではないかと語ります。修了後、防災への興味関心から能美防災への入社を決めました。


能美防災は、防災システム(自動火災報知設備や消火設備等)の研究開発・製造・施工・保守によって、約100年にわたって“火災”に向き合ってきた会社です。これまで、主に火災の発生を速やかに捉え、周知・抑制する技術で社会に貢献してきました。近年は事業領域の拡大を目指し、新たな取り組みを進めています。『火災臨場体験VR〜混乱のオフィス〜』は、火災・災害の発生に備えた、防災教育や防災訓練の効果向上につなげるための新たな取り組みとなります。


佐々木は入社後、専攻であった教育学を活かすことを考えて、人事への配属を希望。希望どおり人事部にて、2年強の時間を過ごします。採用等を経験した後は、人材開発室へ異動。社員の教育・育成に軸足を置いてキャリアを重ねてきました。一方で、学生の時から抱いていた防災への興味関心は薄れることなく、さらには「いつか自社の得意領域の火災だけではなく、別な災害も対象にした新しい取り組みを進めてみたい」という想いを佐々木は持ち続けていました。


そんな中、社会人として10年目を迎える目前に、自分自身だけでなく、会社のスタンスを考えなおす出来事が起こりました。2011年3月11日の東日本大震災です。

○復興支援活動の帰り道に聞いた一言が、サービス開発のきっかけへ


佐々木の出身地である岩手県釜石市は、湾の入り口に世界最大水深の湾口防波堤を整備する等、津波への対策は万全のはずでした。しかし、巨大津波の力によって防波堤は倒壊。津波は市の中心部にまで達し、1,000人を超える死者・行方不明者を出す大きな被害が生じたのです。


当時、佐々木は労働組合の書記長を務めており、東京も大きく揺れたあの瞬間、労働組合の執行委員15名と春闘に向けた会議を行っていました。断続的な余震と、都内のあちこちで鳴り響くサイレンや飛び交うヘリコプターの音、そして会議室に避難してきた多くの社員のこわばった表情に一層の不安をかき立てられながら、津波が街を飲み込んでいくリアルタイムの映像を、ただ呆然と見ていました。「あの時に流れていた映像のひとつの街が釜石だった」と佐々木は話します。


佐々木自身はもちろんのこと、あの瞬間を共にした執行部全員が「何かをしなければならない」と強く感じていました。震災直後、能美防災は義援金の寄付や支援物資の送付等を実施しましたが、「防災を社名に掲げる自社だからこそできること、しなくてはならないことはないものか」と考え、他の執行委員たちと議論を重ね、早々に様々な支援企画の検討を始めました。しかし、実施に向けて調整を進めていくうちに、被災地のニーズは“モノ”から“人の手”に変わっていったのです。そこで企画しなおした施策が、全国の組合員から有志を募り、被災地でボランティア活動を行う『東北応援隊』でした。会社のバックアップを得ながら、2011年7月、参加希望のあった組合員等総勢71名で宮城県石巻市へと赴きます。



ボランティアセンターから指定された活動場所は、石巻市北上地区でした。海に面した小さな集落があったはずのその場所は、津波で全ての家屋が押し流され、代わりに無数の瓦礫が一面を覆いつくし、人々が暮らしていたとは考え難いほど荒れ果てていました。




瓦礫を、可燃物・ガラスや石材・金属に分別しながら撤去作業を進めるうちに、瓦礫の中から人々の暮らしを物語る、衣服や食器、子どものおもちゃ、そして沢山の思い出が詰まった手紙や写真が見つかり、やりきれなさに胸が強く締め付けられました。それらを振り払うように黙々と作業を続け、71名全員の力で、家屋にしておよそ6〜8軒分に相当する広さの瓦礫を撤去することができたのです。終了後には、達成感や安堵感から洩れる声が聞こえましたが、同時に、その先にまだまだ広がる手つかずのままの荒地を前に、継続した作業を望む声も多くありました。


ボランティア活動を終え、東京に戻る東北道のサービスエリアでの一言が、新しい取り組みを考えるきっかけとなりました。


活動時に揃えたTシャツには会社名を入れていましたが、それを見た現地のおばさま方から「来てくれてありがとう、さすが防災の会社だね」と声をかけていただきました。感謝のメッセージではあるものの、現地の惨状を前日に見た後では、「防災の会社だからこそ、もっと何かできたのではないか」といった複雑な気持ちを抱かせるものとなりました。


それからおよそ半年後、共に『東北応援隊』を企画した労働組合のメンバー4人で、社内の創造提案制度を活用して、防災教育に関する新たな取り組みを提案しました。


被災地で目の当たりにした惨状から、設備面だけでの防災対策には限界があり、人々の防災意識を向上させる取り組みも推進しなくてはいけないと考えていました。自社に蓄積したノウハウを活用し展開していくことで、もっと社会貢献度の高い会社にしていきたいという、4人の想いを込めてまとめ上げた提案でした。


良い結果が出ることを期待していたものの、結果は落選でした。

○再び巡ってきたチャンスと、実現までの苦労と決断


その後、今までとは異なる部署を経験する等の環境変化がありました。そして、2016年に人事へ戻り、キャリアを積み重ねていた佐々木に、再びチャンスが巡ってきます。


2019年春から、選ばれた6名の社員によって新規事業の検討を行い、トップに提案する『新規事業創出活動』という、新たな社内施策が始まることになりました。その知らせを、主管部署であった総合企画室の内匠・加藤から聞きました。佐々木はこれに自ら手を挙げ、意欲を買われてその6名に選ばれたのです。


活動が本格化した2019年6月以降、防災教育への想いが再び燃え上がった佐々木は、精力的に動いていきました。自身の災害や防災に関する知識を拡充するために勉強をしなおし、『防災士』という資格を取得。また、机上で考えがちだった以前の反省を踏まえ、外に多く足を運びました。コネクションもない中で何とか文部科学省へアポイントを取り、学校教育の現場における、防災教育の課題についてヒアリングをする機会も得ました。そのときに対応してくれた方が、たまたま、震災前に釜石市の中学校で防災教育を推進していた先生であった、という縁にも恵まれます。


さまざまな検討を重ね、「防災意識向上のためには、子どもの頃から災害の危険性や怖さを正しく理解する教育が必要であり、普及啓蒙のためには、子どもたちを通して大人を巻き込むことが得策である」という考えが鮮明になってきました。


通常の人事の仕事と並行しながら、慣れない新規事業の検討を進め、何とかまとめ上げたのは『子どもたちの生きる力をはぐくむ防災力向上プロジェクト 防災訓練の充実につながる臨場感のあるVRコンテンツ販売事業』でした。役員の前での最終発表会当日まで何度もリハーサルを重ね、想いをぶつけました。



それを聞いた役員からは、「防災訓練の代用となるVR技術を活用したコンテンツは教育効果が期待できる」「ターゲットが将来を担う子どもたちであり、防災事業に携わる者として必要性を感じる」といった一定の評価を獲得することができました。反面、「自社にVRの技術がない」「社会貢献に重きが置かれており、収益性が薄い」といった厳しいコメントもありました。継続検討か、ここで止めるか。その判断は、起案者の佐々木自身に委ねられたのです。


後日、佐々木は総合企画室の加藤に相談しました。能美防災では『新規事業創出活動』と並行して、事業構想大学院大学の『新規事業開発プロジェクト研究』へ社員を派遣する取り組みも始めていましたが、ここへ通ってより具体性のある事業構想計画にしていく意思を表明しました。


2020年春からは、隔週で大学への通学が始まりました。毎回の発表を通じて、教授や他社から派遣されたメンバーからフィードバックをもらい、アイデアを再考するというサイクルを繰り返し、役員からの指摘部分を中心に検討を深めていきます。



とはいえ、それぞれを具体化していくことは容易ではなく、一時的に別の可能性を探っていた時期もありましたが、それも壁にぶつかります。


一番思い入れの強い、当初の案の可能性を改めて探ろうと気持ちを切り替え、検討や調査を再開した頃、地震災害からの脱出をテーマにしたゲームソフト『絶体絶命都市』シリーズを制作しているグランゼーラ社を見つけました。


藁にもすがる思いですぐにメールを打ち、グランゼーラ社にコンタクト。数日後には、WEBでの打合せが実現します。『絶体絶命都市』シリーズが開発された背景や反響、『ゴジラVR』等の制作したVRコンテンツの評判を知った佐々木は、災害の怖さや危険性を体感できるVRコンテンツを制作したいことを伝え、後日、ブレストを行うことになりました。


進展が生まれたことを総合企画室に報告していく中で、徐々に社内の機運も高まりを見せていきます。当社の既存事業で関わりがあるお客様のもとを訪問し、グランゼーラ社と具体化したコンテンツのイメージを説明したところ、良い反応が得られたことも機運の高まりを後押ししました。2020年春から続いた事業構想大学院大学での取り組みは、格段に具体性が深まった事業構想計画を成果に修了を迎えました。


その後、「2021年9月1日“防災の日”にリリースする」というミッションのもと、動きを加速させていきました。未経験なことが多く、リリース直前まで苦労の連続ではありましたが、グランゼーラ社の全面的な協力、そして社内のメンバーからの多くのサポートにより、コンタクトから約8か月で無事に体験機会の提供までたどり着くことができました。


【参考】能美防災株式会社が株式会社グランゼーラと共同で火災を臨場体験できるVRコンテンツ「火災臨場体験VR〜混乱のオフィス〜」を制作、法人顧客向けに体験機会の提供を開始


○サービスを通じた夢の実現と、今後への想い


以降、体験いただいた方々からの声をもとにブラッシュアップを重ね、2022年4月15日からレンタルサービスを開始した『火災臨場体験VR〜混乱のオフィス〜』。これまで、グローバルでプラントエンジニアリング事業等を展開されている日揮グループ様や、緩衝材の開発・製造・販売を行うカネパッケージ様等、幅広いお客様にご利用いただいています。


事業は順調に進んできましたが、事業構想大学院大学での検討の中で、ひとつ先送りにしたことがありました。


「当初から構想していた、子どもたちに対する防災教育につなげていくことが、この先の目標のひとつです」


本サービスは自社の既存事業や経営資源の活用を考えて、オフィスで働く大人を対象にしましたが、サービス開始直後から佐々木はそう語ってきました。


そんな中で縁がつながって、2022年9月16日に茨城県立境特別支援学校にて、同コンテンツを活用した防災教育プログラムを実施することができました。災害が頻出する今、学校教育の現場でも、子どもたちに対する防災教育の強化が求められています。通常の防災訓練が難しい高等部の生徒の皆さんに、災害時の混乱の様子や避難行動を体感してもらうことで、通常の防災教育では得られない学びの獲得にも寄与できたのです。


【参考】茨城県立境特別支援学校にてVRによる防災教育プログラムを実施予定




同校での防災教育プログラムを実施してみて、子どもたちは大人と違って、純粋で素直な反応を示してくれることがわかりました。また、ゲーム感覚で災害時の混乱の状況と避難行動を体験できるこのコンテンツを通して、楽しみながらも真剣に防災について考えている様子を目の当たりにして、喜びを感じることもできました。防災教育に力を入れようとも、何をしてよいか困っている先生方に貢献できる取り組みであることも実感できました。


しかし、VR業界の取り決めでこのスペックのコンテンツは、小学生には体験してもらうことができません。


「次の目標は、子どもたちが制約なく、楽しく学ぶことができるコンテンツをラインナップに加えていくことです。そうすることで、子どもたちはもちろん、その周りにいる大人たちの防災意識向上に貢献していきたい。そして、いつの日か様々な災害に屈することなく、安心して暮らすことのできる社会に近づけていきたい」


佐々木、想いを共にする仲間、能美防災の挑戦はこれからも続いていきます。


【参考】火災、そしてあらゆる災害の脅威に屈しない「安全・安心な社会」を実現します。

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