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【ドライバーの日】「スマホ」でトラックの待機時間を削減!?〜物流のDXによって2024年問題の解決に貢献〜

(PR TIMES STORY) 2023年10月18日(水)13時21分配信 PR TIMES

突然ですが、皆さんはオンラインで買い物をしますよね?今では当たり前化しているオンラインショッピング……、自宅にいながら注文ができ、時間通りに商品が届くので大変便利ですよね。この便利さの裏側には、昼夜問わず商品を運んでいるトラックドライバーの存在があるのですが、彼らの労働環境が問題視されていることをご存知ですか?


少子高齢化による労働力不足やオンラインショッピング市場の急成長による宅配便の取扱個数の増加によって、実はトラックドライバーの長時間労働が慢性化しているのです。このような中、労働基準法による残業時間の上限規制が2024年4月からドライバーにも適用されることになりました。


しかし、これによってドライバーの労働時間が短くなることから、1日の走行可能距離が約20%減少する一方で、物流需要は引き続き高く推移するため、輸送能力が2024年には約14%、2030年には約34%不足することが予想されています。つまり、ドライバーの残業時間の規制によって「物流の停滞」といった新たな問題(いわゆる「2024年問題」)が懸念されており、物流業界における業務の見直し・効率化が急務となっています。



これまで当たり前だった、欲しいモノが欲しい日に届くことがなくなる…。これは、これからもお客様の快適な暮らしを実現していくために解決すべき問題であり、お客様の生活に欠かせない水まわり商品を扱うTOTOも例外ではありません。そこで、TOTOとユーピーアール株式会社(以下、upr)は、AIを用いたパレットカウントアプリ「パレットファインダー」を2022年6月に共同開発し、従来の物流業務の大幅な効率化を実現しました!今回は、その「パレットファインダー」を開発するまでのストーリーや今後のさらなる可能性についてお伺いしました。


聞き手:TOTO株式会社 広報部 宮副

トラックドライバーの作業負荷を“ゼロ”にした、「パレットファインダー」


――そもそも、「パレットファインダー」とはどういうものなのでしょうか?



齋藤 圭介

TOTO株式会社 物流推進部 物流革新グループ


齋藤:スマートフォンのカメラでパレット(※1)を撮影することで、瞬時にパレットの枚数を種類別にカウントし、その情報を社内の在庫管理システムへ自動で反映するアプリです。



永山 佳範

ユーピーアール株式会社 DX本部 先端開発部 スペシャリスト


永山:具体的には、「AI画像処理技術」というものを使っています。トラックに積まれているパレットの画像を、現場を想定した様々なシーンで数千枚収集し、事前にAI学習を行うことで、どのような環境下であっても正確にパレットの色・形を判別できるようにしているんです。


※1:パレットとは、輸送・荷役・保管するため、荷物を単位数量にまとめて載せる台















――なるほど、AIで画像に写っているパレットを瞬時に判別・カウントできるスマートフォン用アプリなんですね。では逆に、従来はどのような手法でパレット管理を行っていたのでしょうか?



中村 勝也

TOTO株式会社 西日本物流部 小倉物流製品課


中村:まず、トラックに積み込まれたパレットを、構内作業者とドライバーの2名で目視によるカウントを順番に行います。そして、互いに枚数の照合を行い、間違いが無いことを確認した上で、パレットの種類・枚数を記した紙伝票を作成します。その後、別の担当者がその紙伝票の情報を在庫管理システムへ手入力し、在庫登録を行うというのが基本的な流れでした。


――従来のパレット管理は完全に人によるアナログ作業ということだったんですね。このパレットファインダーによって、成果としてどれほどの効率化を実現できたのでしょうか?


中村:これは、とある日の実際の作業現場の写真です。どのパレットが何枚あるか、何秒で正確に数えられますか?



「パレットファインダー」を使えば、これを“一瞬で正確に”カウントし、その情報を“自動で”在庫管理システムに反映することができるんです。




パレットは、商品を運ぶ上で必要不可欠な荷役台です。数え間違いにより在庫管理が疎かになると、商品を円滑に出荷できなくなるリスクもありますので、正確にカウントすることが必須条件となります。そのため、従来の目視によるカウントの場合は丁寧に数える必要がありますので、トラック片面でも構内作業員とドライバーが照合を完了させるまでに大体3分はかかります。加えて、そこから紙伝票を作成し、パレット管理システムに手入力するまでの工程を考えると、トラック1台あたり合計で4分程度の作業時間になります。しかも、トラックは毎日約200台も来るんですよ。


結果として、パレットファインダーの導入によって、照合作業が無くなったため180時間/月あったドライバーの作業時間をゼロにすることができ、さらには構内作業員の作業時間も257時間/月→100時間/月にまで削減しました。そして、その結果、現場での作業時間(トラックの待機時間)も4分/台→1.5分/台まで短縮することに成功しました!



パレットファインダー開発のきっかけは「新型コロナウイルス」


――パレット管理作業を劇的に効率化させた「パレットファインダー」ですが、やはり従来のやり方に対する現場からの課題意識の声が開発のきっかけだったのでしょうか?


中村:実は、そうでもありませんでした。というのも、彼らにとっては従来のパレット管理作業が「当たり前」という認識だったので、それを「負荷」とは思っていなかったそうです。


――それは意外でした。では、一体何が開発のきっかけになったのでしょうか?


齋藤:きっかけは「コロナ」ですね。2020年に世界中で新型コロナウイルスが広がり、誰もがマスクをして「ソーシャルディスタンス」を意識する時代になりました。そんな中、ドライバーと構内作業員が近い距離でパレットの照合作業を行なっているのを目の当たりにし、「感染リスクが高いので、より安全に働ける環境にしたい」という想いが芽生えたのがはじまりです。そこで、非接触の体温測定など、コロナ禍で注目されていた「画像処理技術」に着目し、これをスマートフォンで応用してパレットを種類別にカウントできるシステムを新たに作れないかと考えました。スマートフォンなら誰もが扱いやすく、専用機器に比べてコストも抑えられますからね。そこで、様々な企業に実現可能性についてヒアリングした結果、upr様が「ぜひ一緒に開発しましょう」と私たちの案に賛同くださり、開発がスタートしました。

構内作業員に認めてもらうため……、たった1秒への強いこだわり


――「パレットファインダー」開発の流れについて教えてください。


齋藤:まずは、システム開発において一番大事な「何をしたいか(要件)」を明確にしました。今回の「パレットファインダー」で言うと下記2点ですね。

@:パレットを種類別で瞬時に枚数カウントできるようにしたい

A:その情報を自動でTOTOの在庫管理システムに反映しつつ、伝票として印刷できるようにしたい


その後、システムの本格運用日を決定し、そこから逆算してやるべきことをスケジュールに落とし込みました。あとは、要件に基づいて開発を進めていくのですが、今回は世の中に無いシステムの開発になるため、機能や操作性において具体的にどんなものがニーズとしてあるか参考データがありませんでした。そこで、「アジャイル開発(※2)」で試作品の検証と改善を繰り返すことで、ユーザーの要求を把握し、それを満たしつつシステムの性能を高めていく形で進めました。


※2:アジャイル開発とは、「計画→設計→実装→テスト」といった開発工程を小さいサイクルで何度も繰り返し、徐々に完成度を高めていく方法。何度も現場でテストを重ねるため、優先度の高い重要な機能から着手でき、マーケットインまでの期間を短縮することができる


――なるほど、ユーザーの具体的なニーズを把握するために「アジャイル開発」という手法をとったのですね。その中で、特にこだわったポイントはなんだったのでしょうか?


中村:世の中にないシステムだったため、開発には構内作業員の協力が必要不可欠でした。そのため、発展途上の段階の「パレットファインダー」を実際の現場で構内作業員に頻繁に使っていただくことで関心を持ってもらおうと考えました。しかし、従来の作業を「当たり前」と認識して変化を嫌がる方、全くの無関心の方も一定数います。そこで私は、彼らが「パレットファインダー」にメリットを感じ、「使ってみたい」と思えるように、彼らとの密なコミュニケーションはもちろん、そこから分かる細かな使い心地にまでこだわり、それを彼らの“代弁者”として開発チームに届けていました。例えば、操作ボタンの配置や文字の大きさといった操作感はもちろんですが、特にパレット検出時間にはこだわりましたね。当初は、「パレットファインダー」で撮影した画像をサーバーに一度送って画像処理を行うことで、より高い検出性能を維持するといった案もあったのですが、それだとパレットの検出時間が3秒程度かかってしまうんですよ。理想は1〜2秒でしたので、高性能は維持しつつ何とかスマートフォン内で画像処理を完結させられないか、開発チームと繰り返し協議しましたね。


永山:結果的に、AIの計算処理における無駄な工程を極力カットすることでご要望にお応えしましたが、正直かなりハードでしたね(笑)




――元々数分かかっていた作業ですので、たとえパレット検出に3秒かかっても問題ないような気がするのですが……?


中村:そうですよね(笑)ただ、今まで全ての作業を自分の手でやってきた彼らにとっては、「何もしない時間(検出を待っている時間)」が3秒生まれるだけで、それは“ストレス”になってしまいます。たとえ良いものを開発できたとしても、それを使ってもらえなきゃ意味がない。「パレットファインダー」の最終的なユーザーである彼らに認めてもらうためには、このたった1秒にこだわることが非常に重要だったんです。

ブレイクスルーになったのは、「300枚のNG画像」


――それでは、次に「パレットファインダー」開発における苦労とは、どういったものだったのでしょうか?また、それをどのようにして乗り越えられたのでしょうか?


永山:「パレットファインダー」の開発において、一番の肝となるのは当然AIの「パレット検出性能」になるのですが、今回の要件が“100%に近いレベルまで精度を高めること”であり、これこそが最大の難関だったと思います。


先にお伝えした通り、現場のパレット画像を学習させることで検出性能を高めていくのですが、そのサンプル画像は、あらゆる環境下でも正確にパレットを検出できるように、作業現場で想定される“様々なシーンが大量に”必要となります。たとえば、晴れ・雨・曇り・雪といった天候の違いや、日の出や日の入りといった時間帯の違い、あとはパレットだけを積み重ねて輸送するケース(段積み)など色々あります。最初の試作品を開発した時は、サンプル画像を200枚程度学習させたものだったのですが、それだけでは検出率が50%にも満たなかったので、その後もTOTO様に3ヶ月で合計4000枚もの画像を撮影いただき、ようやく90%程度の検出率まで上げることができたのです。




ただ、本来AI画像処理技術で100%の検出率を実現するには、数万枚〜数十万枚ものサンプル画像を学習させる必要があり、それでも足りない状態でした。追加で撮影いただき4000枚となったサンプル画像を使って、限られた納期の中でどうやって検出率を100%近くまで上げるか、本当に苦悩しました。そして、試行錯誤を続ける中、ふと約4000枚の画像の中にあった計300枚のNG(検出失敗)画像に注目し、「このNGの原因を“全て”解析し、その傾向を掴んで対策ができれば、検出率を限りなく100%に近づけられるのではないか」と思いついたのです。元々NG画像の解析自体は個々に行っていましたが、全体の傾向を掴むまでには至っていなかったのです。そこで、300枚のNG画像を一つずつ地道に解析し、ようやく下記4つのパレットがNGが出やすい傾向にあることが判明しました。

@:極端な日光による影響を受けているパレット

 (例えば、直射日光が強い、或いは日陰が濃いパレットなど)

A:ストレッチフィルムが分厚く巻かれているパレット

B:遮蔽物がある状態で撮影されたパレット

C:斜めのアングルから撮影されたパレット



これら4つの要素のうち、@ABにおいては、これまでの画像学習が不足していたことによって検出率を下げていました。そのため、TOTO様に@ABのサンプル画像を追加で計200枚撮影いただき、それをAIに学習させ、さらには現場環境を実際に何度も視察し対策効果確認を行ったことで、検出率を上げることに成功しました。


齋藤:Cにおいては、技術的なアプローチではなく、運用面で解決を図りました。これは撮影者の“位置”が悪影響を及ぼしている事象であるため、予めルールとして撮影場所をトラック正面に定め、撮影方法を構内作業員にガイドすることで、AIが適切に処理できるアングルの画像しか生まれない仕組みにしたのです。


永山:これら4つの要因を、互いに協力して解決したことで、最終的に検出率を99%以上にまで高めることができました。加えて、万が一「パレットファインダー」が適正にパレットを検出できないことがあった場合の保険として、検出結果の手入力での修正機能や、撮影画像をサーバーへ自動保存し、追加でAI学習を行う仕組みを構築することで正確性を担保しています。


――構内作業員の使い心地を追求した機能や操作感と、99%以上のパレット検出性能。これらの相乗効果により、「パレットファインダー」は無事現場で本格運用され、劇的な作業効率化を遂げたということですね。今まで「パレットファインダー」に消極的な姿勢を示していた方々の反応はいかがでしたか?


中村:今では彼らも当然のように「パレットファインダー」を使ってくれています(笑)それこそ、以前に一度「パレットファインダー」に不具合が生じて、従来のパレット管理に運用を戻した時期があったのですが、その際に彼らが「無いと困るね〜」と口をそろえてコメントしているのを聞いて非常に嬉しかったのを今でもハッキリと覚えています。そして、トラックドライバーにおいても、作業負荷が一切無くなったことと、現場での待機時間が大幅に短くなったことで、非常に高い評価をいただいています。

競争は商品で、物流は共同


――「パレットファインダー」の今後の展望についてお聞かせください。


齋藤:まず、今回開発した「パレットファインダー」について、私はこの技術を自社で独占せず、物流業界に普及させることにこそ意義があると思っています。もちろん、私たちは一企業として、TOTOならではの良い商品を提供し、お客様の豊かで快適な暮らしの実現に貢献したいと考えています。しかし、それはあくまで「商品」の話であり、「物流」は別です。物流は社会全体で協力して最適化を図っていくもので、これによってお客様・企業・ドライバーのみんなが助かり、活気づきます。これこそがTOTOの社是にもある「協力と発展」の精神だと私は信じています。


永山:現在、「パレットファインダー」は数多くの企業から「自社にも導入したい」というお声をいただいております。uprは、物流の川上から川下までの多様な課題に対しての「ソリューション提案企業」を目指しているので、TOTO様のご意向を心強く思います。



2024年問題に向け、「パレットファインダー」は次のステージへ


――「パレットファインダー」の技術をベースに、さらなる進化の可能性もあるのでしょうか?


永山:大いにあると思います。例えば、パレットだけでなく、あらゆるマテハン機器(※3)を自動カウントできるような「マテハンファインダー」など、「パレットファインダー」の技術をベースに、uprでは物流の2024年問題に貢献する機能の開発に取り組んでいます。


※3:マテハン(マテリアルハンドリング)機器とは、モノの保管や運搬などの物流業務を効率化するために用いられるフォークリフトやカゴ台車、パレットといった荷役機器


齋藤:これまでの日本では、例えば製造業ではロボットやAIなどによる効率化が推進されてきたのに対し、物流業界は全体的にあまり手が付けられていなかった分野だと思っています。だからこそ2024年問題は物流業界における一つの“ターニングポイント”だと感じています。


物流業界では、不便のある現状を「当たり前」だと認識してきた節がありました。しかし、そんな状態が「当たり前」であって良いはずはなく、より便利になった「当たり前」をつくるために私たちは継続して“変化”していかなければいけません。だからこそ、今回「パレットファインダー」という形でTOTOが先んじて動き出せたことを私は誇りに思っているし、2024年問題に向けまだまだ改善できる点はたくさんあるので、これからも物流業界を牽引していきたいです。




会社概要

【TOTO株式会社】

トイレ、洗面、浴室、キッチンなど水まわりを中心とした、豊かで快適な生活文化を創造することで、社会の発展に貢献する企業を目指しています。

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【ユーピーアール株式会社】

パレットを中心とした物流機器のレンタルのみならず、循環型社会を支える事業活動を通じ、「お客様の最前線をDXとシェアリングで支えるスマートカンパニー」として、既存事業をより発展させると同時に新規事業を創造し、物流事業・コネクティッド事業を展開しています。

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