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株式会社KOALA Tech

30年来の夢の技術に挑戦する「KOALA Tech」の創業秘話。誰も成し遂げたことないOSLD実用化実現に向けた道のりと懸ける想いとは。

(PR TIMES STORY) 2024年01月30日(火)18時04分配信 PR TIMES





株式会社KOALA Techは、有機材料を用いた有機半導体レーザー(OSLD)の実用化を目指し、2019年3月に創業した九州大学発のディープスタートアップ企業です。 

OSLDは有機EL(OLED)の技術を応用し、有機材料を用いてレーザー光を発生させます。スマートフォンやTVなどのディスプレイとして普及したOLEDに、光が真っすぐ進む(直進性)、色の純度が高い(単色性)といったレーザーの特長を組み合わせることで、スマートグラスや医療機器の光源として、これまでにない価値を生み出します。 

創業メンバーの一人であるCEO兼CTOのファティマ・ベンシュイクが、30年来夢の技術とされていたOSLDの実用化に挑戦する思いを語りました。 



30年間もの間世界中の研究者が挑戦してきた技術

有機半導体レーザー(OSLD)の着想は、1980年代まで遡ります。OSLDは、スマートフォンやテレビの画面に使われている有機EL(OLED)と兄弟関係のような技術ですが、OLEDの開発が始まった頃には、もうOSLDのアイデアがあったんです。

それ以来、世界中の多くの研究者が、OSLDが実現可能であることを実証しようとしてきました。実証に成功したという発表がされたこともありますが、再現性がなかったり特性評価に欠陥があったりして、気がつけば、30年の歳月が経っていました。実証が困難を極めたこともあって、OSLDの実現に懐疑的な見方も、学界の中に少なくなかったと聞いています。


有機レーザーは、なぜ難しかったのか

無機材料を用いた半導体レーザーは、すでに私たちの日常生活に深く根付いています。たとえば、スマートフォンの顔認証機能では、無機半導体レーザーが重要な役割を果たしています。スマートフォン内のレーザーから顔に向けて目に見えない近赤外線の光を照射することで、顔の特徴を正確に認識することができるんです。

一方、OSLDは、ガリウムヒ素や窒化ガリウムなどの無機材料の代わりに、炭素ベースの有機材料を使用しています。この技術は、OLEDに非常に似ており、電気を印加することで有機材料の薄い膜を発光させる仕組みです。しかし、レーザー光を生み出すためには、OLEDよりも大きな電流が必要です。これは、レーザー発振に不可欠な「反転分布」と呼ばれる状態を達成するためですが、有機材料の高い電気抵抗のため、十分な電荷を得る前に材料がダメージを受けることが問題になります。さらに、大きな電流を流した際に生じる特有の現象により、光の生み出される効率が低下し、それを補うためにさらに大きな電流が必要になるという問題もあります。

九州大学が世界に先駆けてOSLDを実現

九州大学はOLEDをはじめとする有機光エレクトロニクスの基礎研究で世界をリードしています。その研究活動の中核となっているのが、最先端有機光エレクトロニクス研究センター(OPERA)です。センター長を務める安達千波矢教授は、画期的な材料技術である「熱活性化遅延化蛍光(TADF)」の開発に成功するなど、学理の深化と産業の振興に多大な貢献しているOLED研究の第一人者です。

OSLDの特有の課題に対処するため、安達教授の研究チームは、大きな電流を流しても損失が少ない有機材料、と同時に効率的なデバイス構造の探索を進めました。世界中の多くの研究室は、材料またはデバイスのいずれかのみに焦点を当てて研究を進めていますが、安達研究室では、OSLDの課題を克服するために材料とデバイスの両方に細心の注意を払って作成されるため、ユニークなアプローチが生まれます。ダイナミックな環境での研究の中で、有機材料の薄い層に電気を注入するために使用される電極基板上に、光を制御するための特殊な構造を作りつけることが着想されました。格子状のこの構造は「共振器」や「グレーティング」と呼ばれ、絶縁材料を使用します。共振器は、光が何度も反射し増幅されることで、より強い光を生み出す役割を果たします。共振器を使用して光を増幅する技術はレーザーにおいて一般的ですが、化学者による有機材料の戦略的設計と、物理学者によるOSLDに特化したデバイス設計、最適化を通じて、望ましい光学特性を実現すると同時に、OSLD内部の電気の動きを制御し、必要な電流を最小限に抑えることに成功しました。


九州大学は人材の磁場

現代の科学技術は、国際的な人材獲得競争の舞台となっています。九州大学の有機光エレクトロニクス研究が世界的に認知され、高い評価を受けることで、世界中から優秀な若手科学者が集結し、九州大学の研究水準をさらに高めるという好循環が生まれています。この環境は、九州大学によるOSLDの実現と、KOALA Techの創業に不可欠な要素となっています。

OSLDを実証するプロジェクトには、日本国内外から集まった多くの研究者が参加しました。私自身もその一人です。アルジェリアでの大学卒業後、一度はグローバル企業に就職しましたが、研究者としての夢を追求するためフランスで博士課程を修了しました。その後、九州大学の安達教授の下で研究する機会に恵まれ、2016年に来日しました。そして、世界に先駆けてOSLDを実現するというエキサイティングなプロジェクトに参加し、KOALA Techの共同創業者となりました。私たちを取り巻く現実的な課題を解決できるアプリケーションに取り組むことを通じて、一個人としても成長できるというのは、本当に素晴らしい機会です。KOALA Techは、私の視野を広げ自分の限界を押し広げるプラットフォームも提供してくれています。

創業以来、KOALA Techには多国籍のメンバーが在籍し、インターナショナルな環境での開発を行っています。これは、KOALA Techだけでなく、九州大学を中心とした有機光エレクトロニクスエコシステムの特徴であり、私たちのアイデンティティの一部になっています。この多様性が、私たちの挑戦と革新をドライブするとても大きな力になっています。


国家レベルの研究支援

OSLDの実証にあたって、日本政府の力強いサポートがあったことも大きな追い風でした。科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業の一つであるERATOは、革新的アイデアにもとづく研究活動を5〜7年間にわたって継続的に支援する大型プログラムです。「安達分子エキシトン光学プロジェクト」(2013〜2019年)がERATOに採択され、OLEDの革新材料であるTADFの研究深化に加え、OSLDの実現がプログラムの戦略目標になり、研究リソースが重点的に投入されました。このことが、安達教授のチームによる世界に先駆けたOSLDの実証を大きく後押しすることになりました。


未来を拓く力、KOALA Techの強み

KOALA Techは、九州大学で生まれたシーズを実用化し、社会に実装することを最初のミッションとして創業されました。そのため、安達教授のチームがOSLDの実証に成功したアプローチとスピリットを継承することが重要でした。

独創的なアイデアに基づく研究開発や、誰も成し遂げたことのない高い目標への挑戦は、試行錯誤の連続です。目標を見失わず、あきらめない強い精神力と、変化に迅速に対応し、新しい状況や課題に適応する柔軟性が重要です。これは、スタートアップが生き残る上でも欠かせないことです。

国際的なチームを組むことで、さまざまな視点から問題に取り組むことができます。品質を最優先し、小さな一歩を踏み出すことを好む者もいれば、多くの新しいアイデアを探求して飛躍的前進に貢献したいという者もいます。このようなさまざまな視点を結集し、バランスさせることが、OSLDの開発を前進させる原動力になっています。

また、オープンマインドであることが重要です。新しいアイデアや異なる視点を受け入れ、尊重する姿勢を持つことで、異なる文化やバックグラウンドを持つメンバーの間に、大きなシナジーが生まれます。

柔軟性やオープンマインドは、私たちの眼を外に向けさせる意味で共通しています。これは、研究者のチームがスタートアップとしてKOALA Techを創業する上で特に重要でした。私たちは、大手企業とのアライアンスを含め、「外に眼を向ける」ことを大切にしています。

一方で、OSLDの開発を一企業の事業として進める以上、厳しい要求もあります。私たちの研究レベル、生み出される製品やサービス、関わるメンバーの仕事は、常に一定レベル以上でなければなりません。これは当たり前のようですが、スタートアップにとっては容易ではない目標です。

これらの考え方に基づき、KOALA Techは次の行動指針を掲げています:


Think outside


Dedicated in Distinction


Uniting in Diversity


これらを実践することが、OSLDを実用化し、未来を拓く力になると信じています。

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