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【リコー社内起業家インタビュー】「言語化できない想い」を共有し、コミュニケーションをもっと豊かに。ビジュアルコミュニケーションツール「piglyph」

(PR TIMES STORY) 2023年02月22日(水)16時06分配信 PR TIMES

コミュニケーションを円滑に進めるためには、感情やイメージといった非言語的な情報の伝達が欠かせない。そうした感覚的なことが相手に伝わりにくい時、対面環境であれば、図や絵を紙に描いたり、写真を見せたりして、非言語的な部分を補って意思疎通を図ることもできるが、オンライン上のコミュニケーションでは、それが困難になりがちだ。コロナ禍を追い風にさまざまなコミュニケーションツールが登場しているが、既存のツールでは、伝わりにくい、伝えられないと、悩みを抱える人も少なくない。リモートワークが普及した今、実感している人も多いのではないだろうか?

 

TRIBUS 2020で採択された「piglyph(ピグリフ)」は、そんな課題に着目して開発された、全く新しいビジュアルコミュニケーションツールである。piglyphは、発話した音声や入力された文字をリアルタイムでイラスト化し、画面上に提案してくれる。ユーザーは、その中から求めるイメージに最も合ったイラストを選び、自由に配置・共有・編集することができる。言うなれば、「言語化できない想い」を共有することを可能にしたホワイトボードのようなシステムだ。


「言葉の壁を越えて、自由に意思疎通できる世界を実現する」というビジョンを叶えるべく生まれたpiglyph。検証段階を経て、今年度のベータ版リリースに向けて活動するプロジェクトチームのメンバーに、piglyphが生まれたきっかけやアクセラレータープログラム後の展開、今後の展望など、さまざまなテーマについて話を伺った。

 

 

インタビュイー

渡辺恵里氏  TRIBUS推進室|リーダー

田中宏昌氏  TRIBUS推進室| 事業開発

安田拓郎氏  RINS オプティカル事業部 商品企画・営業部| 企画・マーケティング

小山輝憲氏  RINS エレクトロニクス事業部 技術開発室 システム設計グループ| 技術統括

堀悠貴氏 プロフェッショナルサービス部 総合デザインセンター UXデザイン室 UXデザイン2グループ| デザイン

鈴木友規氏 先端技術研究所 HDT研究センター 第一研究室 第三研究グループ| ソフトウェア開発

内藤拓朗氏 TRIBUS推進室| 営業・マーケティング





エチオピアで見つけた、piglyphの原点

 

 

―piglyphのプロジェクトが始まったきっかけについて教えてください

 

渡辺「かねてから、途上国の社会課題を技術で解決するという個人の目標がありましたが、研究開発という仕事柄、外に出る機会にはなかなか恵まれなかったんですね。そこで、自ら機会を創ろうと思ってボランティア休暇を利用してエチオピアに渡り、現地の学校で理科の教員として活動することにしました。そこで実感したのは、たとえ言葉が通じなくても、絵を描いたり、実際にモノを見せたり、ビジュアルを使えば意思疎通をうまく図れることでした。piglyphは、この時に自身が経験した『非言語コミュニケーション』に着想を得て生まれたものです。



言葉の壁を越えて、自由に意思疎通できる世界を実現したい。このビジョンを描いた背景には、オンライン上のコミュニケーションが増えたコロナ禍で自身が抱えていた悩みを解決したい想いもありました。対面なら、感情やイメージなどの非言語的な情報も、ボディランゲージを交えつつ、簡単な絵を描いたりして伝えられていたのに、オンライン上ではうまく伝わらないことがたくさんあって、モヤモヤしていたんです。話している内容をリアルタイムでイラスト化することができれば、もっと直感的にアイデアを共有したり、議論もしやすくなるのではないか。双方向性を高めたコミュニケーションが可能になると同時に、私のように言語化が苦手な人でも、その場に参加しやすくなるのではないかと思いました。

 

また、2019年にTRIBUSの社内向けの起業支援プログラムにチームメンバーとして参加した際、提案したアイデアが具現化されていく様子を目の当たりにして、いつか自分のテーマでプロジェクトを立ち上げてみたいと思っていたので、これを機にチャレンジしてみようと思い、応募に至りました」

 

―メンバーはどのように募っていったのですか?

 

安田「何か新しいことにチャレンジしたいと思っていたタイミングで、渡辺さんに声をかけてもらったのがきっかけで、初期メンバーの一人として参加しました。私は、話の内容を絵や図で構造化しながら話すのが好きなのですが、対面環境では伝わっても、オンラインではやはり伝わりにくい側面があります。piglyphの構想を聞いた時、これを実現できたらもっとコミュニケーションをとりやすい世界になるだろうと思いました。piglyphチームでは、マーケティングを担当しています」

 

田中「ミスコミュニケーションを解決できる手段の一つとして、piglyphに大きな可能性を感じました。渡辺さんとは別のプロジェクトでご一緒して面識があったので、自ら手を挙げて参画しました。現在は、piglyphのさまざまな活用方法を研究しています」



小山「TRIBUS 2020の社内ピッチで渡辺さんが登壇しているのを見て、面白そうだなと思い、興味を持ちました。そんな折、安田さんから『3Dでイラスト作れるよね? もっといろんなイラストを追加したいんだけどできないかな?』と相談があり、迷うことなく参加しました。このチームでは、技術統括リーダーを務めています」

 

堀 「私はリコーに転職する前から、TRIBUSの取り組みに魅力を感じていました。いつか自分も社内発の起業に携われたらいいなと思っていたところ、私も安田さんに声をかけてもらいました。お客様へのヒアリングや実施検証をもとに、デザイン開発を行っています」

 


鈴木 「同じプレゼンテーションでも、文字だけでなく、ビジュアルの情報があるか否かで、相手の興味の持ち方や反応が全く変わってくることを日々実感していました。だからこそ、安田さんからpiglyphのコンセプトを聞いた時、これは素晴らしい!と思ったのですが、残念ながら現行業務との兼ね合いで難しくお断りしたんです。ところがその半年後、直属の上司を通じて再び打診してくれたんです。本業とのバランスをうまく取りながらやっていくことを周囲に宣言し、ソフトウェア開発者として参加することになりました」

 

内藤 「皆さんと同じように新しいことに挑戦したいけど、どうすればいいか分からずモヤモヤしていたんですね。そんなときに、先輩の安田さんに相談したところ『それなら面白いプロジェクトがあるよ』とpiglyphを紹介してもらいました。私自身も言葉で表現するのが苦手な方なので、言葉の壁を越えたコミュニケーションの実現を目指すプロジェクトと聞いて、その一端を担いたいと思いました。現在は、マーケティング営業を担当しています」



―プログラムを通して、のべ2000人を対象にした検証や社外2社との共同検証などを展開されていましたが、プログラム参加によって得た気づきや苦労された点について教えてください。

 

渡辺「言葉がうまく伝わらなくて困っている人は、どんな領域にもいると思っていたので、プログラム期間中は、教育や医療など、さまざまな分野の方たちにヒアリングを行いました。興味を持ってくださった方も多く、piglyphを実際に体験した方からは『面白い、すごく楽しい、感動しました』といった声が挙がったのですが、その一方で、『すぐにお金を払ってでも利用したい』というところにはつながらないことが、気づきであり課題でした」


田中「良い反響をたくさんいただきましたが、いかにビジネスとして成立させていくかが難しいところです。私はこの10年ほど、研究開発に携わってきましたが、じっくり時間をかけて一つずつ精査・検証を重ねていく従来の仕事の進め方とは違って、piglyphでは多少荒削りでもスピード感をもって開発し、どんどん外に出していきます。そうやって価値あるものをチームで作っていくのはとても新鮮で刺激的ですし、お客様の声を直接聞けることはモチベーションにもつながっています」



安田「このプロジェクトでは、リーンスタートアップの手法を取り入れています。仮説検証を繰り返しながら、顧客が求めるものをいかに見出していくかというプロセスは私も初めてで、非常に面白く感じています。ただ、面白いけれど何に使えるかよく分からない、あるいは、何にでも使えるものは何にも使えないものになりがちだと思うので、どこに焦点を絞り込んでいくのか、その見極めが難しいですし、絞り込みは今も課題の一つです」

 

小山 「私は、piglyphの3Dイラストを一つずつ手作業で単語登録しています。当初は、“公園”、“歩く”、“行く”など、思いついた単語の意味とイラストを紐付けて登録していたのですが、会話のテーマによっては、コレだ!というイラストが出てこない時があるという意見がありました。

そこで、バリエーションを増やしてみようと思い、イラストレーターとして活動している私のいとこに相談して、本の挿絵のイラストをいくつか提供してもらったんです。人がそこにポンと立っていたり、人の周りに顔がたくさんあったり、直接的な意味を持たないイラストだったのですが、その抽象的な感じが好評だったのは、大きな発見でした。イラストは、イメージを膨らませたり、雰囲気が伝わることが大事だと学びましたね。最初は50個からスタートし、現在は6,600個までに増えました。言語は日本語以外に、英語と中国語に対応しています。

 

単語の登録作業も大変ですが、それ以上に新しい分野に遭遇した時、どんなイラストを追加すればいいのかということに、いつも頭を悩ませています。例えば、まちづくりならビルなどの建物、小学校なら実験器具や時計というように、分野ごとに必要なイラストを考えて追加していくのですが、足りないものが次々と出てきます。いくらやっても追いつかないので、いい方法を模索中です」



堀 「コロナ禍で、いろんなオンラインコミュニケーションツールが登場する中、piglyphって本当に必要なのかな? と考えることがありました。しかし、ヒアリングを行う中で、参加者が主導で行う会議(アンカンファレンス)やワークショップなど、対話が中心となる場では、さまざまな課題があることが見えてきました。

事前に資料を用意していないこともあって、すれ違いが起きたり、それによって対話があまり起きずに、静かになってしまう。こうした場であれば、piglyphを活用できるのでは? と希望が湧いてきました。ただ、対話しながらツールを使いこなすためには、ある程度のスキルが必要になるので、普段あまりパソコンを使わないような人でも、誰もが簡単に操作できるようにUIをブラッシュアップしていきたいと思っています」


鈴木「大企業の中で、自分たちがいいと思ったアイデアを実現するためには、通常、さまざまな調整が必要ですし、お客様にサービスやプロダクトとして届けるまでには、さらに多くの時間を要します。でも、piglyphを含めたTRIBUSの活動は、自分たちで意思決定できるので、昨日チームで話していたことを、次の日にはお客様に試していただくなど、スピード感をもって進めることができます。その分、開発も大変になりますが、即座に試してもらえて、フィードバックを得られることがとても新鮮です」



当たり前のように、誰もが使えるシステムを目指して

 

―アクセラレータープログラム終了後には、教育現場を対象にした活用をいち早く実現しながら、アイデアコンペの実施など、より広い実用に向けて活動されています。さまざまなシーンでの活用が想定される中で、こうした展開に至った背景についてお聞かせください。

 

渡辺「この領域では、こんな困りごとがあるのでは? と仮説を立てて、検証を繰り返すサイクルを素早く回しながら、ニーズを探っていきました。オンラインで開催されるさまざまなワークショップでは、その内容をリアルタイムにイラスト化し、参加者の方に見ていただきました。それと並行して、ライブ配信やエンタメ領域での活用も検討しながら、リコーグループの社内イベントでも検証を行いました。仮説が違っていたら、また変更を加えて検証する流れで、徐々にフォーカスを絞っていくうちに、多様な価値観を持つ人たちが集まり、未来のことをみんなで議論しながら創造していく場でのニーズが高いことを分かってきました。教育は、エチオピアでの教員体験を通じて、相性が良さそうだなと思っていたので、今後も力を入れていきたい領域のひとつです

 

―2022年3月には、藤沢市未来共創セッションでpiglyphが活用されたそうですが、得られた反応や課題についてお聞かせください。


内藤「藤沢市の未来について、市民の方たちが語り合う場をサポートさせていただきました。オンラインで新しいツールを使いながら対話するのはなかなか難しいので、我々が参加者の発言をリアルタイムにイラスト化することで、言葉だけでは伝えにくい参加者の考えをイメージで共有し、共通認識の構築をお手伝いさせていただきました。学生から高齢者までさまざまなバックグラウンドの方が参加されたのですが、対話の内容がイラスト化されることで、共通のイメージを共有できていることが実感できた、分かりやすいし見ていて楽しかったという声が挙がりました」



小山「対話が進むごとに、同時通訳のようなイメージでイラスト化していくのですが、藤沢市さんの方でも、話の内容をリアルタイムに議事録としてまとめる画面を同時に表示されていたんですね。その場で文章を書くとなると、話すスピードの方が早いので、少し遅れる形になります。その内容がまとまってから次の話題のイラストに移った方がいいのか、イラストはイラストで先に進んでいいのか、良きタイミングを見計らうのには少し苦心しました」

 

―成果発表から1年以上が経つ中、これまでの活動を振り返りつつ、今特に注力されていること、今後の展望についてお聞かせください。

 

渡辺「藤沢市未来共創セッションのように、まちづくりやSDGsに関連したテーマなど、創造性の高い議論を通じて、みんなで未来を一緒につくっていくような場は、これからもっと増えていくことを実感しています。その意味では、ニーズと私たちが提供するpiglyphがマッチしてきた状況です。プロジェクトを進める中、piglyphの価値を具体化していったことで、使い方やユースケースについても、ちゃんと伝えられるようになり、そこに共感してくださったお客様が、有償で利用されるケースも徐々に増えてきました。最近は、対話型のイベントやワークショップなど、複数人の方たちが集まる場で、対話の可視化を提供させていただいています。

 

今後は、音声や入力された文字をもとに、イラストをレコメンドする機能やユーザーが自由にイラストを辞書登録できる仕組みをつくっていきたいですね。いろんな分野の人たちに使っていただくことで、イラストのバリエーションも増えるので、より提案しやすくなりますし、ユーザーがそれぞれに求めるイメージに最も合ったイラストを選びやすくなると思います」



内藤「私自身の内発的動機も含めた展望になりますが、piglyphとしての価値を高めていきながら、人それぞれに異なるバックグラウンドの差分を埋められる手助けになればいいなと思っています。

ここで言うバックグラウンドとは、文化や言葉だけでなく、同じ言語を話す人同士の間でも異なる考え方や文字認識力、聴覚に障がいのある方なども含みます。例えば、ろう学校に通う子どもたちのために、piglyphを価値あるものに磨いていくといったことができたら、大きなやりがいにつながると感じています」

 

堀「学生をはじめ、デジタルリテラシーの高い方には、自由に楽しく使っていただけているのですが、そうではない方にも使っていただくためには、UIをもっと簡易化していく必要があると思っています。 絵や図というのは、日本語とはまた別のひとつ言語のようなコミュニケーション手段だと思うので、同じ日本人で、同じ言語を使っていてもうまく伝わらないことがありますが、piglyphを通じて、もっと伝わるコミュニケーションができるようになるよう取り組んでいきたいです」



鈴木「現状、私たちがpiglyphを操作して、お客様にご覧いただくことが多いのですが、今後は、コミュニケーションに困っている人なら誰でも、パソコンを立ち上げたら一緒に起動して、自由に日常使いできるツールになれるよう、磨き上げていきたいと思います」

 

安田「新規事業はやり始めることよりも、軌道に乗せることが難しいですが、それを生み出すことこそがTRIBUSの目標だと思いますし、まずは事業として成立させられるよう、チーム一丸となって尽力していく次第です」

 


―「オンライン&オフラインを含めた、コミュニケーションの未来に向けたデジタルサービスという新たな価値の可能性」について、どのように考えていますか?

 

渡辺「今なお続くコロナ禍ですが、多くの企業や人が、オンラインでのコミュニケーションにシフトした当初と違って、最近は、オンラインとオフラインを融合したハイブリッド型のコミュニケーションが徐々に増えています。その一方、まちづくりのイベントなどでは、リアルな場で参加者を集めて開催したいという話もよく聞きます。これは、リコーの社長山下も言っていることですが、どのような形態にしろ、創造性の高い会議や対話を行う場では、そこに参加する人全員が、アイデアを考えたり、議論することに集中することが大切だと思うので、piglyphを通じてそこに貢献していきたいです。

 

また、お客様にツールをお渡しするだけでなく、新しいファシリテーションの手法として、具体的な使い方をお伝えしていけば、もっと有効に使っていただけるのではないかと思います。言葉の壁やいろんなボーダーを越えて、伝えたい言葉にイメージをプラスして、コミュニケーションをもっと豊かにしたい。この想いのもと、当たり前のように、誰もが使えるシステムを目指して、これからも活動を続けていきたいと思います」


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