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一般社団法人リンクア

「透析治療を、患者が選ぶ社会」の実現に向けて。選択率3%の「腹膜透析」を広く認知してもらう【おうちで透析】プロジェクトの全容とは。

(PR TIMES STORY) 2024年03月12日(火)15時50分配信 PR TIMES

一般社団法人リンクアは「ICT・DXの活用による医療現場の改革促進」をミッションとして2019年に設立されました。情報発信やイベント・セミナーの開催、医療従事者教育動画を通じて、医療現場の仕事の効率を上げ、ひいては医療従事者の負担が減り、患者さんへのサービスが向上するという好循環を生み出すサポートを行ってきました。


柴垣圭吾理事は透析クリニックである「柴垣医院」の経営もしており、日ごろから「腹膜透析が選択されにくい」現状を見ていました。腹膜透析は通院回数が少なく済み、患者さんのQOL(生活の質)が上がることが知られています。また高齢の透析患者さんも自宅で多くの時間を過ごすことができます。


「超高齢社会にメリットが大きいはずの腹膜透析がなぜ選択されないのだろう。そこには情報格差の問題があるはずだ」


柴垣理事はそう考え、「透析患者さんとその家族に腹膜透析の存在やそのメリット/デメリットを分かりやすく伝える情報発信」が必要だと考えました。そうして生まれたのが「おうちで透析」プロジェクトです。


本ストーリーでは、柴垣理事がなぜ「超高齢社会には腹膜透析が重要になる」と考えるに至ったか、また「おうちで透析」プロジェクトのスタートから、運営が軌道に乗るまでのストーリーをお伝えします。


極端に低い日本の腹膜透析選択率

おうちで透析を行うことは、超高齢社会であるわが国において、通院困難な透析患者にとって重要な選択肢です。しかし日本では透析治療の97%が医療機関で行われ、在宅での透析はわずか3%に過ぎません。

引用文献:透析会誌54(12):611〜657,2021 https://docs.jsdt.or.jp/overview/file/2020/pdf/2020all.pdf


これは先進国の中でも極端に低い比率です。QOLが上がり、通院困難な高齢者であっても自宅で透析が続けられるなど多くのメリットがあるにも関わらず、普及率が上がらない。ここには何か構造的な問題があるはず、と柴垣理事は考えたのです。

父も拒んだ入院治療。最後まで患者が自宅で過ごすことのできるサポート体制をつくる決意

柴垣医院は1975年に腎臓内科医である柴垣昌功先生によって設立され、透析治療に重点を置いて運営されてきました。2003年に息子の柴垣圭吾理事によって継承され、腹膜透析の導入を進め、在宅医療における透析診療システムの確立に努めています。腹膜透析の導入に至ったのは柴垣理事が、高齢の透析患者が直面する運命に気づいたことがきっかけでした。


長く血液透析を続け、年齢を重ねていくと、体力が落ち、歩くことも困難になり医療機関に通うのが難しくなっていきます。送迎してくれる家族も同じように高齢になっていき、通院が難しくなり入院を余儀なくされるケースが増えてきました。柴垣理事は、このような患者が家族と過ごす時間が減少し、生活の質が低下していることに心を痛めていました。


亡くなるまで入院して透析を続けざるを得ない「永遠の入院透析」の実態も直視し、「なんとかならないか」という思いを強くしました。


父を見送った際の経験も大きなきっかけになっています。父は医師でありながら入院を泣いて嫌がり、家で最期を迎えることを選択しました。これまで入院透析が必要になった患者さんも同じ思いだったのではないか・・・。そうだとしたら、私たちにできることをしなければならない。入院を希望されない患者さんを最期までご自宅でサポートできる体制をつくらないといけない。


そう考え、在宅医療で慢性腎不全の患者さんを診ていく体制を自分でつくろう、と柴垣理事は決意したのです。

患者にとっても医療機関にとっても、血液透析と腹膜透析は「全く別の医療」

実は、血液透析を中心にしている透析医院にとって、在宅腹膜透析をはじめるのはそう簡単なことではありません。「同じ透析だから簡単なのでは?」と思われるかも知れませんが、実はかなりハードルが高いことなのです。


まず、血液透析と腹膜透析は治療法としてまったく違います。血液透析は患者さん週3回来ていただきます。そしてベッドに寝ていただいて針を刺し、血液透析器(ダイアライザー)に血液を通すことによって老廃物や余分な水分を取り除きます。


あえて乱暴な言い方をすると、患者さんにはベッドに寝ていただくだけで、あとは機械がすべてやってくれます。医療側は最初に針を刺し、最後に針を抜く。単純に言うとそういう手法です。





一方、腹膜透析は患者さんご自身で、または介助者がサポートして透析を行う方法です。あらかじめ手術によってお腹に管(カテーテル)を通しておきます。患者さんは時間が来たらご自身で透析液が入ったバッグをお腹の管に接続し、腹腔内に透析液を注入します。


一定時間後、腹腔内の液を排出すると透析が完了します。医療側は定期的に患者さん宅を訪問したり、クリニックに来ていただいたりして患者さんの状態をモニタリングします。いちばん大きな違いは、在宅腹膜透析が「地域包括ケア(※)」の枠組みのなかで多職種連携で行っていくことが必須となることです。たとえばケアマネージャーさん、訪問看護ステーションなどとの密接な連携があってこそ、患者さんのサポートが可能になるのです。


このように、血液透析と腹膜透析では患者さんにやっていただくことと、医療側がやるべきことがまったく違うのです。血液透析のクリニックが「明日から腹膜透析をもやろう!」と思ってできることではないところに難しさがあります。


※地域包括ケア:「地域包括ケア」とは、「医療や介護が必要な状態になっても、可能な限り、住み慣れた地域でその有する能力に応じ自立した生活を続けることができるよう、医療・介護・予防・住まい・生活支援が包括的に確保される」という考え方です。そのしくみ(ネットワーク)を「地域包括ケアシステム」といい、2025年(平成37年)を目途に構築することを目指しています。地域の実情に合わせて、医療機関や施設、NPOなどが力を合わせることが必要とされています。

腹膜透析治療システムの体制は十分。しかし肝心の情報が届いていない

柴垣医院で腹膜透析を導入するために2013年から鷲田直樹先生(現:国際医療福祉大学大学院教授)を招きました。腹膜透析のご経験豊富な鷲田先生に来ていただき、実際に診療していただきながら、学ぶことにしたのです。

また、2015年ごろには石橋由孝先生(日本赤十字社医療センター 腎臓内科部長)にお声がけいただき日本赤十字社医療センターの臨床カンファレンスで学ぶようになりました。このカンファレンスに通う中で、在宅医療における腹膜透析の重要性、必要性を石橋先生から学ぶことができました。


このお二人のおかげで柴垣医院の中に、在宅医療における腹膜透析診療というシステムを作ることができたといっても過言ではありません。お二人には感謝してもし切れません。その後、腹膜透析の臨床経験が豊富な樋口千恵子先生(元東京女子医科大学東医療センター 内科)にも加わっていただき、万全の体制を整えることができました。


しかし、柴垣医院で腹膜透析を実施できる体制が整ったとはいえ、いちクリニックだけでは世の中の潮流を変えることはできません。リンクアは情報発信によって医療現場の改革を促進することがミッションです。


腹膜透析という選択肢がなかなか選ばれない原因には、そもそも患者さんご自身に情報が届いていないこと、医療機関も現在主流の血液透析以外の選択肢をお勧めしにくいことなどがあると考えました。


そこで患者さんやご家族、医療従事者に向けて腹膜透析という選択肢があるよ、それにはこんなメリットがあるよ、ということを分かりやすく発信していくことが有効だろうと考え、「おうちで透析」プロジェクトがスタートしました。


発足した「おうちで透析」プロジェクト。SNSやYoutubeを駆使するも、伸び悩みに直面する

まず、私たちはWEBサイト「おうちで透析」を開設しコラムの投稿を始めました。そしてTwitter(現X)とFacebookページを開設し「おうちで透析」の更新情報を発信しました。


開設当初、「おうちで透析」のアクセス数は月に100〜300UUと期待に遠く及ばず、Twitterのフォロワーも数百人にとどまり、Facebookページも同様に成長が見られなかったのです。なかなかアクセスが集まらない日々が続きましたが、新たな方法を探しました。

リンクアには映像制作が得意なメンバーがいたので、YouTubeチャンネルの開設に踏み切ることにしたのです。


「腹膜透析のメリットとデメリット」「腹膜透析と血液透析の違い」「透析患者さんの食事で気をつけること」などの内容で動画をテンポよく制作、投稿していきました。またイメージビデオも制作し、「おうちで透析」の理念が伝わる工夫をしました。さらに動画内容をテキスト化して「おうちで透析」にも掲載しはじめました。


これらの施策が功を奏し、再生数万回の動画が現れ始め、Twitter(現X)のフォロワーも1000人を超えました。フォロワーとの交流も活発になりました。


しかし、成功の道はまだ遠く、YouTubeチャンネルの材料不足による更新の滞りや、チャンネル登録者の伸び悩みに直面しました。


腹膜透析のレジェンドたちをゲストに招いた動画がプロジェクトを成長軌道に。患者や医療機関に認知されていく腹膜透析

そこで私たちは、Youtubeチャンネルにゲストを招き始めました。宮崎正信先生(宮崎内科医院院長)、正木浩哉先生(正木医院院長)、松本秀一朗先生(川原腎・泌尿器科クリニック腎不全外科科長、腹膜透析センター長)などの専門家に腹膜透析への想いや、患者さんへのメッセージを語ってもらったのです。結果としてチャンネルの信頼度を高め、コンテンツの多様性にもつながったと思います。


これが転機となり、チャンネル登録者数は上向き始め、Twitter(現X)はさらに活性化し、WEBサイトのUUも劇的に向上しました。コメント欄には「腹膜透析を選ぶきっかけになった」や「うちの近くには腹膜透析をサポートしてくれる病院が見当たらないがなんとかならないか」などの質問やメッセージが日々飛び交う状況です。


認知度が高まるにつれ、「おうちで透析」プロジェクトの趣旨に賛同する病院も現れ始めました。「おうちで透析」では腹膜透析を実施する病院のリストを作成し公開していますが、リストへの追加をリクエストする病院が現れ始めたのです。


またこれは計画段階ですが、血液透析のクリニックが腹膜透析をスタートする際のサポートやコンサルティングも視野に入れています。血液透析のクリニックが腹膜透析もカバーする事例が増えることで、家に最期まで居たいという患者さんの願いを叶えることができると考えています。


透析患者が自分で選択できる社会の実現に向けて

私たちは腹膜透析を礼賛しているわけではなく、血液透析に偏っている現状、腹膜透析という選択肢を知らないでQOLを下げてしまっている人に正しい情報を届けることが使命と考えています。


また、腹膜透析という選択肢を知った患者さんが、スムーズに腹膜透析を導入できるようにするためには地域のクリニックが腹膜透析を実施できることが必要です。訪問医療や介護施設との連携も重要になります。


「おうちで透析」がそのハブとなり、「透析医療を、患者が選ぶ社会へ」という理念を実現するまで力を合わせて取り組んでいきたいと考えています。

おうちで透析運営メディアへのリンク

おうちで透析Youtubeチャンネル https://www.youtube.com/@ouchide_toseki

おうちで透析X https://twitter.com/ouchide_toseki

おうちで透析公式サイト https://fukumakutouseki.com/

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