プレスリリース
知名度0だったホテルが非日常を楽しめるホテルとして一躍有名になった裏側 「Village&Hotel志摩地中海村」創業30周年を記念して
“伊勢志摩”といえば「伊勢神宮」をはじめとする観光スポットに、伊勢海老やあわびといった海鮮グルメの魅力に溢れる、国内外より多くの観光客が訪れる人気のスポットです。
その中で、リアス海岸の絶景が広がる伊勢志摩半島の海と森が交差するロケーションに突如現れた地中海の街並み、それが体験&滞在型のリゾートホテル「Village&Hotel志摩地中海村」(以下、「当ホテル」)です。
ひとたび敷地に足を踏み入れると、異国に迷い込んだような景色が広がります。青い英虞湾に映える本格的な誂えの白亜の建物がずらりと並び広がるその様子は、ひとつの“村”として存在しています。
2023年に開業30周年を迎えた「志摩地中海村」
開業30周年を記念し一泊二食付300円(税込)のプランに、計65組の宿泊分を抽選式で募集したところ4万件を超える応募が殺到し一時サーバーがダウンするほどの反響をいただきました。
当初は知名度0だったというホテルに、今や全国から多くのお客様が来るようになった裏側を大西晶社長に訊いてみました。
株式会社志摩地中海村 代表取締役社長 大西晶
三重県生まれ。地元伊勢市の高校を卒業後、大阪の大学に進学。コンサルタント会社、青年海外協力隊、地元CATV局勤務を経て志摩地中海村へリニューアルオープンの2010年に入社。2012年に取締役社長に就任。
地中海の風を感じる志摩地中海村、別荘村からリゾートホテルへの転換
─「志摩地中海村」はどういう特色のあるホテルでしょうか?
キャッチフレーズは“パスポートのいらない地中海旅行”。非日常感を満喫できる場所として、全国から多くの観光客の方に訪れていただいています。1棟1棟の建物に宿泊するヴィラスタイルに加えて、2018年春のリニューアルではエリアを拡大してカジュアルタイプの客室とラグジュアリーな客室もオープン。レストランやショップ、クラフト工房や英虞湾クルージングなどのアクティビティも充実しております。
─広大な土地で一日中楽しめますね。このホテルはどういう経緯で誕生したのでしょうか?
1993年に地中海沿岸のリゾートの美しく壮大な景観や、楽しみ方に魅せられた人々が自分たちの理想のリゾートを作ろうと集まり、会員制の別荘村「志摩地中海村」が誕生しました。
その後、別荘会員の高齢化に伴い利用頻度が落ち込んできたことを受け、運営会社の組織改編などを行い一般へ開放したホテル 「志摩地中海村」として2010 年から営業を開始しました。そもそも、ホテルとして作られたわけではないというのがこの「志摩地中海村」の歴史のスタートです。
「パスポート不要の地中海」として非日常を提供する。
─「ホテルとしてスタートした訳ではない」事のメリットはありますでしょうか?
決して地中海“風”なのではなく、本物にこだわって作られている完成度の高さという点が、他のリゾートホテルにはない圧倒的な魅力となっていると考えております。
建設の際、別荘村の会員たちはスペインを中心とする地中海の各所(スペイン:セテニール、カサレス、マルベージャ、トレド、イタリア:サルジニア島など)を数回にわたり訪問し、スペイン人の建築デザイナー、ルイス・コルベーラ氏に監修を依頼しました。
施設全体のイメージや雰囲気づくり、独特の風合いや色合いについてのアドバイスを受け、スペイン瓦、テラコッタタイル、木製扉や窓、舗石から室内装飾の小物に至るほとんどの建築材料をスペインから直輸入し、本物にこだわり建設されました。
ホテルに転換後も本物にこだわるという方針は変わらず、入村してすぐにあります「プラザマジョールの噴水」が老朽化によって2021年にリニューアルした際は、歴代の噴水と同じくスペインの製陶会社「アルテサニア・タラベラーナ社」に制作を依頼しました。
当時の図面から忠実に再現して現地でも希少な技法となりつつある鮮やかな色使いが特徴的なスペインの伝統的なタラベラ焼きを使用して復元し、今もシンボル的存在としてお客さまに愛されております。
会員制別荘村から一般向けホテルへ大転換。知名度獲得への道。
─会員制の別荘村からホテルに転換する際はどのような状態だったのですか?
当初はプライベートな「別荘村」としてスタートしましたので、地元の方でさえそこに大きな施設が存在している事を知らない状態でした。つまり、ホテルが存在することなど誰も知らない、まさに知名度0のホテルということです(笑)
広告宣伝費も0円でお客様へのアプローチも行っていない状態でしたので、稼働率も低く正直な所ホテル存続が危ぶまれるような自転車操業の状態が数年間続きました。
自社での販売だけでは目標売上に到底届きませんので、大手の旅行代理店やネットエージェントに登録し、宿泊プランの販売をお願いする中においても、あまりの知名度の無さに「そんなホテルあるの?」と相手にもされないという悲しい思いをすることもありました。
伊勢神宮式年遷宮とSNSブームで知名度急上昇
─そのような状態からどのようにして知名度を上げていかれたのでしょうか?
大きな転機は“伊勢神宮の式年遷宮”と“伊勢志摩サミット”そして“SNSブーム”でした。
2013年に行われた「第62回 伊勢神宮式年遷宮」には、伊勢神宮の参拝者数歴代1位となる1,420万人以上が伊勢志摩に訪れました。そのおかげで、当ホテルも開業以来最高数の宿泊者数となりました。
その際に訪れた多くのお客様が、当時流行っていたブログに、当ホテルの情報や写真をアップしてくださったのです。今まで知名度が低かった分「伊勢志摩にこんな場所あるの?!」と投稿を見た方から多くのお問合せをいただくようになりました。
その後2016年「伊勢志摩サミット」が開催された際にはSNS、中でもInstagramで“映える写真”が撮れる!と我々の知らないところでも、お客様が村内の写真をInstagramに投稿してくださりその投稿に沢山の「いいね!」をしていただいた事で、一気に認知が広がっていきました。
─「志摩地中海村」のどの点が多くの方を惹きつけたと思いますか?
やはり「本物」であるという点ではないでしょうか。訪れてくださった方が「見た目だけではなく、本当に素敵な場所だったよ!」と当ホテルの持っている空気感や雰囲気をSNSを通して伝えてくださったと思っております。
実際に私達も様々な投稿を拝見して、改めてこんなに素敵な所だったのかと再認識する事ができ、もっと楽しんでいただけるようにと、村内の美観整備にとても気にかけるようになりました。お客様からはゴミひとつ落ちておらず、驚いたという声を頂くことがスタッフの喜びにもつながっています。
また、どこで撮影してもフォトジェニックな写真が撮れるように日本語の看板もなるべく目立たないようにするなど、空間作りにも配慮しました。
2018年リニューアル、温泉&新バスク料理で魅力アップ
─2018年には大幅なリニューアル工事を実施されましたが、その詳細を教えてください。
監修は引き続きルイス・コルベーラ氏に依頼し、既存の施設の両端エリアを開発し、ミコノルカゾーンとアルハンブラゾーンを増築しました。客室はコンパクトな客室を増やし、31室から53室へと生まれ変わりました。
さらに大きなリニューアルの一つが、以前より多くのお客様からご要望いただいていた、天然温泉の開設です!当ホテルらしい、スペインの世界遺産コルドバのメスキータなどをイメージした浴場などモザイク装飾で彩られたハマム(中東由来のスパ)のようなエキゾチックな雰囲気が自慢の内風呂と、英虞湾の美しい景色を眺めることができる露天風呂を備えております。
─「食」についてもさらなるリニューアルを行われたそうですね。
“世界一の美食の街”と謳われるスペイン・バスク地方サン・セバスティアンの1つ星レストラン「Kokotxa」と業務提携し、「Rias by Kokotxa」としてリニューアルしました。
新進気鋭のシェフ、ダニエル・ロペスが伊勢志摩の食材を使用して考案する、ここでしか味わえない“新バスク料理”がお楽しみいただけます。
さらに、自慢の料理と共に、エキゾチックなレストランの内装デザインや窓から見える英虞湾の景色もこのレストランならではと評判をいただいております。
地域と共生、学生支援と防災活動で貢献
─地域との交流も積極的に実施されているとのことですが事例をお聞かせください。
レストラン「RIAS by Kokotxa」で地元の水産高校の生徒さんが航海実習で釣ったカツオの料理「地元の水産高校性が釣り上げたカツオのコンフィ」を出している縁もあり、レストラン「Kokotxa」のオーナーシェフ、ダニエル・ロペス氏が来日した際には県立水産高校の生徒さんとの交流会を実施しております。
ダニエル氏の拠点バスク地方の紹介など意見交換会のあと、水産高校の生徒が釣り上げたカツオを使用した、ダニエル監修の新バスク料理を召し上がっていただくことで、地元から遠く離れたスペインという地の良さ、そしてまた地元の良さも改めて認識いただけると考えております。
また、志摩の特産品である「あおさ」や「オリーブ」「アカモク」を使った商品の開発や販売を行い伊勢志摩の地産地消・地域連携に積極的に取り組んでおります。
─場所柄、地域防災に対しても力をいれていると伺いました。
実は私自身が、昨年の10月から徳島大学の大学院に入学して地区防災を学び始めました。当エリアは南海トラフ地震が発生すると地域で孤立する可能性があるということ、地元の自治会は高齢化も進んでおり、災害時には地域の住民をぜひ安全なホテルで受入れして欲しいとの要望があがったことがきっかけとなっています。
2020年4月には、志摩市と株式会社志摩地中海村間で「大規模災害時における避難所としての使用に関する協定」を締結しました。
地元自治会との連携を重視し、防災並びに災害支援に関する検討を共同で行うことで、南海トラフ大地震などの大規模災害発生時には従業員、地域住民、観光客の避難場所となるべく準備を進めています。2023年にはスタッフ1名が防災士を取得し、防災用にも使える井戸掘削なども実施いたしました。
これらの取組によって、南海トラフ大地震など大規模災害発生時には被災者の受入れから地域の早期復興まで、宿泊施設ならではの特性を生かした貢献を行いたいと考えております。
地元重視のホテル運営で全国的な知名度獲得を目指す
─様々な取り組みの中で歩まれてきましたが、今後の展望をお聞かせください。
ホテルとして開業当時約30名ほどだった従業員は現在120名になり、客室も31室から53室へとおかげさまで大きくなりました。
弊社のスタッフの多くが地元である伊勢志摩の出身者で構成されていますが、自ら考えて行動できる環境をサポートすることで、都会に出ていかなくても誇りをもってやりがいのある仕事ができる会社となることを目指しています。
そして、今後も独自の魅力を発信し続け、全国的な知名度をもっと上げていき「志摩地中海村に行ってみたいから伊勢志摩を訪れた」というお声を多くいただけるように、そして「Village&Hotel志摩地中海村」のファンの方をたくさん作っていけるよう、取り組んでいきたいと考えています。