プレスリリース
プラント設備をいつまでも競争力の源泉に。豊かで安心な社会・産業の継続的発展を支援する設備保全統合管理クラウド『EMLink』の開発秘話
株式会社設備保全総合研究所(EML)は2022年創業のプラント・工場の設備管理DXを専門とする、Maintenance-Tech companyです。「社会・産業インフラを黒子として支える」というミッションの下で開発されたプラント・工場向けの設備保全統合管理クラウド『EMLink』は、化学・素材業界を中心に多くの製造業で採用されています。
EMLinkは現場の声から始まりました。これまで断片的であった設備保守や運用管理に関するデータを統合して繋ぐことにより、設備管理(アセットマネジメント)の新たな地平の開拓を目指しています。
本ストーリーではプラント・工場が抱える設備管理に関する課題を背景に、EMLinkがどのようにして生まれ、どのように社会・産業インフラの黒子としての役割を果たしていくのかについてご紹介します。
プラント・工場の設備保全を競争力の源泉に
プラントや工場は実に多様な設備から構成されています。塔・槽・熱交換器といった静止機器、ポンプ・圧縮機・撹拌機といった回転機、成型機や搬送機、配管、タンク、センサー・バルブなどの計装機器、遮断器・変圧器といった電気機器など、様々な設備が複雑に絡み合っています。
プラント・工場は「一品一様」の特徴を持ち合わせています。大半の施設はそもそも設計仕様が異なっていますし、環境や運転条件、経年変化によって独自の個性を持つ存在となり、時間と共に実施される補修や改良、部品の交換により、その個性は更に強まります。プラントや工場は、まさに生命体のように変化し続ける存在です。
プラント・工場を安全かつ継続的に操業するためには、人間の手による緻密な設備保全(メンテナンス)が欠かせません。老朽化などによる設備の故障は生産ラインの停止や、爆発・火災・事故といった甚大な災害に繋がる可能性があり、その防止こそが保全業務の重要な役割となっています。
設備保全では観察力や分析力が非常に重要です。設備固有の点検項目や注意事項に基づいて膨大な量のデータを収集・分析・管理することは、まさに専門的な技術と経験が不可欠の業務となっています。更に設備保全は安全、品質、法令、スケジュール、コストといった様々な要素を考慮に入れながら実行する必要があります。融通の利かない自然現象に立ち向かいながら判断ミスや対応の抜け漏れが無いよう最大の注意を払いながら作業を進める、高い技術力と職業倫理が問われる業界でもあるのです。
このようにプラント・工場の設備保全は、単純に機械を修理する以上の意味を持っています。産業を支え、社会の安全を守り、環境を考慮した持続可能な運営を可能にする極めて高尚で重要な役割だとEMLは考え、その様な社会・産業の縁の下の力持ちである保全に携わる方々をサポートするために、EMLinkは開発されました。
プラント業界の元エンジニアが創業。生産設備に関わる情報の一元可視化を目指す
創業者の相原はプラントの現場エンジニア出身です。現場と事務所を絶えず往復しながら、設計・調達・工事・試運転業務に従事していました。「部品が足りない」「図面が見つからない」「スケジュールに間に合わない」といった現場の混乱の中で、数多くのタスクを抜け漏れなく同時に進めること、予期せぬ事象に最適解で解決することの難しさを経験したのです。設備に関わる情報を一元的に管理でき、迅速にアクセス可能なシステムがあれば、複雑な状況を的確に分析し膨大な作業を効率的に抜け漏れなく管理出来るはずと考えていました。
その様なことを他のプラント出身者とも会話する中で、もう一点、資産の最適化に関するニーズにも気が付きました。現場からの報告などを中心に、工場長や経営者はプラント・工場の運営に関する様々な意思決定を行いますが、プラント・工場は複雑な設備の集合体であり、運用を重ねるごとに修理や改造が必要になるため、コストの透明性や的確性がどうしても失われがちです。どの設備にどれくらいコストが掛かっていて、これからどうなりそうなのか。設備保全に関する情報を体系的に整理して一元可視化し、プラント・工場の全貌と将来見通しを分析出来るようなツールがあれば、操業に携わる多くの人の役に立てるかもしれないという考えに至りました。
同じビジョンを持っていたプラント業界出身者と共同でEMLを創業し、設備管理システム(アセットマネジメントシステム)「EMLink」の開発に着手しました。以降、より現場の保全業務に役立つこと、プラント・工場操業の最適化をより強力にサポートすることを目指し、EMLinkの改良を進めています。
“Link(繋がり)”というコンセプトを核に
EMLinkは、"繋ぐ”というコンセプトを核としています。ただ単にデータを蓄積・管理したり点検業務のペーパーレス化を図ったりするのではなく、様々なデータの連関により情報の真の価値を引き出し、アセットマネジメントの質を大きく変革することを目的としており、これまで様々に販売されてきたクラウドサービス/アプリとは一線を画すソリューションであると自負しております。
一部開発中(2023年11月時点)の機能もありますが、具体的には例えば以下のような四つの繋がりを強く意識して設計されています。
1. 因果関係
「なぜその作業を、その時期にそのコストで実施したのか」「その作業が行われることで、将来どの様な追加作業が発生し得るか」を判断根拠も併せて管理することが可能です。作業が行われた背景や文脈を可視化し、作業の背後にある理由や目的を理解することで、より精度の高い意思決定をご支援します。
2. 優先度
「膨大な作業計画の中で、真にやらなくてはならないことは何か」を整理することが可能です。理想論としては考え得る全ての作業を効率的かつ低コストで実施出来れば良いのですが、現実的には様々なリソース制限があるため、リスク評価や予算といった枠組みの中で真にやるべきことをきちんと見極めて、リソースを正確に配分することが重要であると考えています。
3. 設備のライフサイクル
「各々の設備を維持するのにどれだけの作業やコストがかかっており、今後の見通しはどの様か」といった、設備のライフサイクルを時系列で追跡することが可能です。設備が辿ってきた歴史とリスク評価の考え方を合わせることで、抜け漏れなく最適化された未来の計画立案をご支援します。
4. 設備・事象の相関
「類似の設備、親子関係にある設備、上下流の関係にある設備の間で、どのような事象の相関が存在し得るか」を解析するデータを整備して、類似パターンや異常を発見しやすくします。この相互比較は保全戦略を練る上で貴重な洞察を提供し、将来的にはAI/MLによる高度な示唆の提供を実現できます。さまざまなデータポイント間の相関を探ることで予想外の関連性や因果関係が明らかになり、隠れたリスクや機会を発見します。
将来的には生産データとの連携により、生産効率と設備健全性のバランスをとるための洞察を得られる様にしたり、財務・会計データとの連携によりコスト削減や投資最適化の余地を検討出来る様にしたりすることも見据えています。
アセットマネジメントは個別のデータを単独で見るのではなく、それらを繋げて全体像を理解し、将来に向けた付加価値を生成することに意味があると考えています。EMLinkはプラント・工場が直面する様々な課題に対して、地に足の着いた、実行可能で持続的な解決策を提供することを目指しています。
EMLの目指す使命と今後の展望
EMLはプラント・工場業界に対し、最新のデジタル技術を取り込んだアセットマネジメントシステムを提供することによって、社会・産業インフラの安全かつ継続的な操業を支えることを使命としています。日進月歩で進化するデジタル技術を上手く取り込みながら、また同じ様な課題感を抱えている事業者様と産業横断での連携を図りながら、プラント・工場設備の持続可能な運用モデルを構築出来ればと考えております。一方、社会・産業全体でDXのすそ野を広げていくためには技術の幅広い民主化が不可欠であると考えており、企業規模を問わず社会・産業インフラの保全に携わる事業者の皆さまが最適なアセットマネジメントの効果を享受いただける様、(全ての企業が利用可能な)普及可能な価格帯でのソリューション提供にも尽力の最中です。将来的には日本発の「老朽化/既存プラントに関する運用最適化ソリューションプロバイダー」として、グローバルで貢献を目指します。
■:EMLink製品紹介
設備保全統合管理クラウド「EMLink」は、プラント・工場向けの設備管理サービスで、コスト削減、リソース効率化、管理体制強化等を目的として化学・素材系の製造業様やタンクターミナルなどを中心に、日本全国で導入が進んでおります。
”プラント・工場”に特化したデジタル設備台帳をベースに、保全履歴や、保全計画の統合管理が可能で、不具合の起票や、その対応指示、メンテナンス計画の作成と進捗管理、報告書の作成など、保全に関する業務全般のDX化を実現できます。
現場データと経営データを繋ぐ“製造現場のプラットフォーム型EAM”としての位置づけながら、一工場あたり9.8万円/月と中堅・小規模企業様でも導入可能なソリューションです。プラント・生産設備DXの裾野広げ、社会全体でのメンテナンスコスト効率化を目指します。
■:株式会社設備保全総合研究所について
当社は、総合インフラメンテナンス企業である株式会社マイスターエンジニアリングからスピンオフした企業で、プラント・工場向けのDXソリューションを提供しています。設備管理クラウド「EMLink」の提供や各種産学連携事業*を通じてプラント・工場現場における産業DX推進を目指しています。
株式会社設備保全総合研究所: URL https://em-labo.co.jp/
代表取締役CEO 相原章吾
累計調達額:1.6億円
*横浜国立大学と共同運営「2023年度中堅・小規模プラントの現場DX推進に関する研究会」 URL:https://www.ynu.ac.jp/hus/koho/29577/detail.html