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業界の常識を覆すものづくり。半導体メーカーロームの新生産ライン「フレキシブルライン」

(PR TIMES STORY) 2023年10月13日(金)16時07分配信 PR TIMES

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ロームは1954年に京都で創業した半導体メーカーです。抵抗器からはじまり、トランジスタやダイオード、ICと開発を進め、最近では、脱炭素化を加速させる半導体技術として期待されているSiCパワー半導体などにも注力しています。1971年には日系企業として初めて米国シリコンバレーに進出。今では全世界に営業、開発、生産拠点を持ち、日本発のグローバル企業として歩みを続けています。

お客さまをはじめとする世界中のステークホルダーの皆さまから選ばれる企業になるためには、品質第一の考えを大切にしたものづくりが最も重要だとロームは考えています。今回は、業界で初めて多品種少量生産と徹底した品質設計を実現した次世代生産ライン「フレキシブルライン」を紹介します。

高品質な製品を安定供給するために、生産システムを自社開発

品質第一を企業目的に掲げるロームは、1954年の創業以来、高品質な製品を安定供給するため、生産システムを自社で開発してきました。これらの生産システムは、エレクトロニクス産業の発展にあわせて常に進化し続けています。

たとえば、半導体チップを切り出してパッケージに封入する後工程生産では、1980年代に第1世代となるオリジナルラインを開発。1990年代には一貫生産型のフープラインを、市場が世界に広がった2000年代にはワイドラインを開発し、大量生産と品質向上と低コストの実現を図ってきました。

最近では大量生産に加え、自動車や産業機器、そして新製品開発を進めているお客さまから少量生産のご要望をいただくケースも増えています。そこでロームは2021年に、多品種少量生産に最適かつ、人の介在を減らし品質の変動要因を極小化することで徹底した高品質設計を実現した「フレキシブルライン」を配備しました。

業界の常識を覆す新生産ライン「フレキシブルライン」とは?

フレキシブルラインは、「多品種少量生産」と「徹底した高品質設計」をコンセプトに開発した次世代生産ラインです。

現在稼働しているローム・アポロ株式会社(福岡県)の広川工場では、コの字型に3連の装置が並び、その間をAGV(無人搬送車)が走行。技術者が隣接したコントロールルームのモニターを通じて、すべてのラインの稼働状況を把握できるようになっています。

多品種少量生産

なぜ多品種少量生産をコンセプトのひとつとしたのか。長年にわたって生産システム構築に関わってきたものづくり革新部部長の三輪は、その理由をこう語ります。


「ロームのお客さまの中には、自動車や産業機器分野のように、少量だけど長期間安定した部品供給を望まれる方も数多くいらっしゃいます。そのため大量受注品はワイドラインで、少量受注品はフレキシブルラインでというように、大量生産一軸ではないものづくり体制を構築することで、安定した供給体制を提供できると考えています。

ただ、大量生産・在庫設計が当たり前の半導体業界の中で、初めて多品種少量生産に取り組む。これはチャレンジでした。」

<ローム株式会社 ものづくり革新部 部長 三輪 忠稔>


一般的に大量生産型の生産ラインでは、異なる製品をつくる際に各工程で金型などの治具(じぐ)や工具を人手で交換したり、装置の微調整や最適化を行ったりと切り替え作業が必要になります。このラインで多品種少量生産を行うと何度も切り替え作業をすることになり、ラインの稼働率や製品の品質に影響を及ぼすという課題がありました。そこでロームのフレキシブルラインでは、これまで人手で行っていた切り替え作業を自動化。少量生産でも品質を担保しつつ、ひとつのラインで複数の製品をつくることができるようになりました。

徹底した高品質設計

徹底した品質設計がコンセプトとなった背景には、自動車分野などを中心に年々お客さま側からの品質要求が厳しくなる中、不良品の出ないゼロディフェクトな生産システムの開発を目指していたことがあります。

大量生産型のワイドラインでは、最終工程での製品選別に加え、工程ごとに検査を導入することで、品質を高めています。これに対し、フレキシブルラインは大胆な方針で高品質設計をおこなったと、ものづくり革新部統括課長の有賀は言います。


「われわれが打ち出した方針は、工程それぞれの場所で品質を高めること

そのポイントは、5M1E(人:Man、方法:Method、測定:Measurement、材料:Material、機械:Machine、環境:Environment)のバラつきの極小化にあります。」

<ローム株式会社 ものづくり革新部 統括課長 有賀 健二>


たとえば、機械によるバラツキ。従来は一つの加工に対し複数の治具・工具を使用していましたが、それにより微小な品質のバラツキが生じていました。フレキシブルラインは1治具・1工具・1加工のシンプルなシステムにより、機械によるバラツキを低減しています。

また人もバラツキの要因のひとつと考え、人手で行ってきたラインの切り替え・点検・供給などの作業をすべて自動化。極限まで人の介在を減らすことで、品質の安定化を図っています。

さらに熟練作業員の経験や勘に頼るのではなく、機械や材料、加工状態を見える化し、バラツキによるトラブルを未然に防いでいます。万が一トラブルが起こった場合も、原因をリアルタイムで、しかも製品1個単位まですべて遡れる、徹底したトレーサビリティを実現しています。

フレキシブルラインはこうしたさまざまなバラツキを極小化したことで、一般的な生産ラインが5億個中約3万個の不良品割合(工程能力CPK=1.33)であるのに対し、5億個中1個の不良品割合(工程能力CPK=2.0以上)を達成。高品質設計を実現しました。

BCP対策・環境対策にも有効な生産ライン

フレキシブルラインは自動化率が非常に高いため、まったく同じ生産ライン設備を複数の拠点に敷設しておくことで、いつでも同じ品質のものを生産できます。不透明な時代と言われる昨今の世界情勢の中で、安定してお客さまに製品をご提供するために、今後なくてはならない存在になっていくでしょう。

さらに見える化のために収集したデータを活用し、常にエネルギー使用量を把握することもできます。地球環境保全が大きな課題となっている中、電力由来のCO2排出量の抑制、省エネルギー化を推し進めるものづくりに貢献すると考えています。

開発の鍵は「技術継承」と「垂直統合型生産体制」

2018年にプロジェクトが本格的にスタートしてから、量産検証にこぎつけるまで約1年半余り。さまざまな困難を乗り越えてフレキシブルライン開発を実現できたのには、大きく2つの理由があります。


一つ目は、60年以上にわたって積み上げてきた生産技術が継承されていることです。本社開発センターでは、国内外で使用されるさまざまな製造装置の設計・試作評価・量産評価などが日々行われています。若手技術者にとっては「ものづくり」を学ぶ場にもなっており、世代を超えて受け継がれたノウハウや知見が、新生産ライン開発に活かされています。


二つ目は、部門を横断したすり合わせ・意見交換が密にできる環境です。これはロームが採用している、開発・設計、ウエハ製造を含めた生産、販売・サービスまでをグループ内で行う「垂直統合型生産体制」により、生み出されています。

技術開発、生産技術、製造技術など多様な観点からブラッシュアップを続けてきたこと、社内で長期間に渡る協力体制を構築できたことが、半導体業界の常識を覆す新ラインの開発につながりました。

お客さまに信頼される新しいものづくりプラットフォームへ

現在ローム・アポロの広川工場で稼働しているフレキシブルラインは、2021年4月に拡販用サンプルの生産を開始し、翌2022年から2種類のディスクリート製品を市販量産品として生産しています。近い将来10機種程度に生産を拡大し、1か月に450万個生産できるポテンシャルを存分に発揮する予定です。そして対応機種を拡大しながら、フレキシブルラインの技術を国内工場に展開することも視野に入れています。

また、量産を行いながらさまざまな技術検証を積み重ねており、ここで得られた要素技術を、今後開発する大量生産型の無人化ワイドラインなどの次世代型生産ラインに活かしていきたいと考えています。

世界中のお客さまに信頼される新しいものづくりのプラットフォームへの開発と進化は、まだまだ続きます。


ロームの公式Webサイトでは、常に高い品質をお客さまにご提供するロームの「ものづくり」とそこに情熱を注ぐ人の物語を、動画でお届けしています。

Stories of Manufacturing

「業界初の取り組み、それ自体がチャレンジだった:フレキシブルライン開発」

https://www.rohm.co.jp/company/about/stories-of-manufacturing/flexible-lines

動画はこちら

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