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TOTO商品の「きれいと快適」を支える研究開発の裏側 〜汚れの現場を再現し、原因を徹底分析。「菌」の抑制に挑む研究者〜

(PR TIMES STORY) 2022年12月09日(金)11時15分配信 PR TIMES



梅雨時期食べそびれた食パンにいつの間にか生えた緑のフワフワ……。

うっかり掃除をさぼったトイレのピンクや黒のワジミ……。

栄養価が高いと話題のヨーグルトや納豆などの発酵食品……。

私たちの生活の身近な場所に菌やカビなどの微生物※1は存在します。

TOTOでは、こうした微生物を研究することで、汚れにくく、よりお手入れのしやすい商品開発につなげています。

今回は、微生物に魅せられTOTOの総合研究所で基礎研究に取り組む社員を紹介します。

※1 微生物は一般的に「小さい生物」という意味で、寄生虫、カビ、酵母、細菌、

    ウイルスなど多くの種類があります。(農林水産省HPより)



   TOTO株式会社 

   もの創り技術グループ 総合研究所 分析技術部 分析技術第一グループ 

   波多 謙司朗(はた けんしろう)



(聞き手:TOTO株式会社 広報部 東京広報グループ 阿部園子)



――TOTOに入社したきっかけを教えて下さい。


波多:私は大学で「カビ」の研究をしていました。パンに付いたり、トイレ掃除をサボったときにできる黒い輪だったり……などあの「カビ」です。


これ、きれいでしょう(手元のスマートフォンの待ち受けを見せる波多氏)。これは大学の研究室で撮った写真ですが、すごくきれいだったので待ち受けにしているんです。癒されるでしょう?カビは厄介者みたいに思われますけれど、こんなに美しく見えたり、役に立ったりすることもあるんですよ。


 

波多:カビは、ただ単に増えるだけでなく、その過程でさまざまな代謝物(化学物質)をつくることをご存知でしょうか?このカビの代謝物が脳梗塞や心筋梗塞の薬になったり、あるいは発がん性のある物質になる場合もあるのですが、1匹のカビからごくごく微量の代謝物しか生成されないのです。大学では、「薬」としての代謝物をできるだけ沢山得るために、カビを1万、10万、100万……と増やす手法を研究しました。これは、広くいうと微生物(代謝物含む)を「増やす」ための研究です。


そんな私がTOTOへ入社したのは、インターンシップ制度でココ(総合研究所)に来た際に、大学の研究が活かせるかも?と思ったからです。

TOTOは汚れや悪臭の原因となる微生物(代謝物含む)を「減らす」研究をしています。

「増やす」と「減らす」、真逆だと思うかもしれませんが、共通しているのはどちらも「微生物」をコントロールしている点です。言葉も通じず肉眼でも見えない微生物をコントロールするのは本当に難しいのですが、そのためには、増殖するそれぞれの過程で何が起こっているのかと、そのメカニズムを解明することが重要です。TOTOの総合研究所でも、微生物のメカニズムの研究していることを知り、大学で学んだことを活かせる!と思い入社を決意しました。


――生物に関心を持ったのはいつ頃からですか。


波多:生物好きは小学生ぐらいから始まって、中学生では川や海で魚を捕まえたり、ペットショップで水槽にかぶりついていたりしていました。その頃から始めた趣味が「アクアリウム」です。いまでも続けていますよ。中学生以来、エビの格好良さと美しさの虜になっています。

「シュリンプブリード」って聞いたことありますか? エビのブリーディング(人工繁殖)です。同じ特徴を持つエビを掛け合わせることで、その特徴を継承したさらに美しいエビが生まれたり、この特徴とあの特徴のエビだったらこうなるというような……。その時から生物の面白さ、遺伝への関心が沸いて、高校でも生物を選択して、大学も迷わず生物系の学部に進みました。

「生物」への関心は今もどんどん高まっていますよ!


――微生物の分析がどのようにTOTOに関連しているのか改めて聞かせて下さい。


波多:TOTOはトイレや浴室、洗面、キッチンなど水まわりの商品を製造、販売しています。 水まわり空間は、お手入れをサボるとピンクや黒色のヌルヌルした汚れが発生してしまいますよね。それらの多くは微生物由来であり、たくさんの微生物、特に菌やカビとそれらの代謝物のネバネバしたものがくっつき合ってできています。まさにピンクや黒色のヌルヌルがその代表です。私は、この汚れの原因となる微生物の繁殖を抑制すること、将来的には微生物由来の汚れが発生しない水まわり商品を作り、きれいがずっと続く生活を実現すること、それが自分のミッションだと思っています。


とは言え、微生物由来の汚れが発生しない水まわり商品を作るのはそう簡単ではありません。実は水まわりに存在する微生物の種類は、トイレや浴室、洗面、キッチン、それぞれの空間で異なっています。これはそれぞれの微生物が好む、栄養や温度といった繁殖条件が異なっているからです。汚れを作る微生物がなぜその場所に好んで存在し、繁殖しやすいのか、そのメカニズムをひたすらに突き詰め、繁殖抑制に効果的な手段を見つけることで、微生物由来の汚れが発生しない水まわり商品を作ることが出来ると考えています。メカニズムを突き詰める際、最も大切にしているのは現場の把握と再現です。


私たちは汚れが発生している、公共施設や住宅などさまざまな水まわりの現場に定期的に通い、「野生株(やせいかぶ)」と呼んでいる微生物を収集・調査しています

公的機関からも微生物は入手できるのですが、これまでの長年の研究で、実際の住環境から採取した野生株の方が、洗剤や抗菌剤への抵抗性を持ち、強く増えやすいことがわかったからです。収集した微生物は、汚れのメカニズム解明や、新たな商品開発を行う際に、現場の環境に近い条件で評価を行うために使用しています。お客様に現場で効果を実感いただけないと全く意味がないですからね



実際の現場から採取した菌やカビを使用し、現場の汚れを再現し、最適な抑制手順を検討しているのが、この総合研究所のこだわりポイントです。



――総合研究所のこだわりポイントでもある、現場の汚れを再現して行う微生物の分析方法、取り扱いについて教えて下さい。


波多:まずシャーレに「バイチ」を作ります。そこに分析したい現場から持ってきた、微生物を含んでいると思われる汚れを植えます。専門用語では植菌(しょっきん)と言います。


 ――「バイチ」とは何でしょうか?

波多:「バイチ」は「培地」と書きます。あまり聞きなれない言葉ですよね。微生物を生育するための、栄養分等が含まれる物質のことを言います。この培地はゼリー状にして使用することが多く、実際の培地がこれです。微生物が生育している現場に近い栄養状態にするため、トイレや浴室、洗面、キッチンといった微生物を採取した空間に合わせ、栄養分を調整することもあります。


培地に汚れを植えると、少しの汚れの中からも、複数の菌やカビが培養されます。この菌やカビたちは、新しいシャーレで菌の種類ごとに培養し、同定(どうてい)と呼ばれる菌やカビの種類を特定する作業を行った後、厳重に保管しています。

 現場の汚れを直接植えたもの(植菌)。     菌の種類ごとに培養したもの。

 さまざまな微生物が混合している状態。     左のシャーレからそれぞれ分離した 

                        状態。

 

――培養した菌を厳重に保管されているとのことですが、先ほどの実際の住環境から採取した「野生株」やさまざまな菌やカビはどのように保管しているのですか。


波多:現場で採取した菌やカビは採取場所を明確にして、マイナス80度を保てる特殊な冷蔵庫の中で保管しています。マイナス80度では菌やカビが冬眠しているような状態、つまり不活化状態になっています。約600種類の菌やカビがこの冷凍庫の中で眠っています。日本の水まわり空間に存在する菌の多くはこの中にあると思います。私を含む、社員の自宅から採取した菌もたくさん保管していますよ(笑)。

      菌やカビを保管しているマイナス80度の冷凍庫

私たちは商品が発売される前だけではなく、発売して世の中で使用されてからも、これらの眠っている菌やカビを活性化させて、商品の機能の有効性や防カビ性などを常時分析しています。新たな商品の登場や、私たちの生活スタイルの変化によっても、汚れの原因となる菌の種類は徐々に変わってきているため、これからも商品を安心してお客様にご使用いただくために、検証や観察、調査を継続していきます。



――菌やカビなどの微生物が汚れに変化してくメカニズムをどのように分析しているのですか。


波多:微生物汚れは、初めは人の目に見えない状態で存在しており、放置しておくと、徐々に目に見えるピンクや黒の汚れに変化します。私たちはこの変化のメカニズムの解明を行っています。そのために活躍しているのが、「分析装置」です。

波多:この顕微鏡は菌のかたまり(バイオフィルム)をXYZ軸で立体的に撮影することが可能です。タイムラプス機能もあるので、菌が増えていく過程を10分後、30分後、1時間後と一定時間ごとに撮影し、重ね合わせて動画にすることで、菌増殖の継時変化を3D観察することができます。

下記のタイプラプスでの変化を見て下さい。この観察技術を用いて、TOTOのトイレ床材「ハイドロセラ・トイレフロアJ」の菌の増殖が抑制されているかを確認しています。 「ハイドロセラ・トイレフロアJ」はTOTO独自の光触媒技術「ハイドロテクト」により抗菌・抗ウイルス・防汚、防臭性能を備えたセラミックパネルです。同じ条件、環境での観察でハイドロセラ(左)は菌の発生が抑制されていますが、通常タイル(右)は一定時間ごとに菌の量が増えていくことを確認することが出来ます。このように、この顕微鏡を使用すると、商品がきちんと機能しているのか確認できます。実際に撮影した動画は、汚れの発生メカニズム解明だけでなく、お客様に商品の効果を視覚的にお伝えするための訴求ツールとしても活用しています。

      3D観察が可能な顕微鏡でTOTO独自の光触媒技術「ハイドロ

      テクト」の抗菌・抗ウイルス・防汚、防臭性能を観察。 

      「ハイドロセラ・トイレフロアJ」と通常タイルのタイムラプス

      での菌の変化。

      詳細:https://jp.toto.com/products/tile/hydro/effect/

         「ハイドロテクト技術紹介 動画」をご覧ください。



―最後に、微生物の解明を通じて、研究者としてこれからどうなりたい、どのようなことを実現したい、と思っていますか。


波多:微生物と水まわり空間は切っても切れない関係にあります。人体や、空気中のさまざまな場所に微生物は存在していますし、水まわり空間には、微生物の栄養となる皮脂や水が定期的に供給されています。

一方、新型コロナウイルス感染症拡大の影響もあり、お客様の衛生性に対する意識はますます高まっていくと思われます。

お客様の期待に応えるべく、微生物とこれまで以上に向き合い、家族や友人にも自信を持って「きれいが続く快適な水まわり商品だよ」と紹介できる商品を生み出していきたいです。

水まわり空間の“きれい”をもっと当たり前に。世界中の人々に豊かで快適な生活文化をお届けできるようこれからも私の「微生物のメカニズム解明」は続いていきますよ!




――インタビューを終えて

波多さんのお話の後、聞き手は今まで以上に水まわり空間の掃除をせっせとしています。 それは、波多さんから「菌は目には見えなくてもさまざまな場所に存在するんですよ……」というお話を聞いたからです。 ご本人は入浴後、微生物の栄養となる皮脂や水分をしっかり取り去っているとのこと。

お掃除が不要な水まわりが実現出来る未来も、……そう遠くないかもしれませんね。


■TOTOの総合研究所■

TOTOは1917年の創立以来、衛生陶器を中心に素材や製品の基礎となる研究を担当事業部(事業ごとに編成された部署)で行ってきました。1970年代から研究所を創立し基礎研究や素材研究だけではなく、商品開発に直結するシーズ(商品やサービス開発の素となる技術やノウハウ、特別な素材や材料)技術の研究を行うようになりました。2002年に「総合研究所」に改組し、現在は、これらに加えてユニバーサルデザインを配慮した商品研究、人間工学や感性工学の分野、ライフスタイルや生活様式の研究を行っています。 このたび、NITE(独立行政法人 製品評価技術基盤機構)からJNLA※2試験所認定を受けて、光触媒の抗ウイルス性試験の第三者試験機関として国内第一号の認定試験所として登録されました。

※2 JNLA:JNLA登録制度は、国際標準化機構及び国際電気標準会議が定めた試験所に

   関する基準。(ISO/IEC 17025)の要求事項に適合しているかどうか審査を行い、

   試験事業者を登録する制度。

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