プレスリリース
「Mixpanel」は、セルフサービス型のプロダクト分析ツールです。ユーザー行動分析によって、プロダクトを熱心に利用してくれているパワーユーザーを見つけ、プロダクトのロードマップ策定や、実装すべき機能の優先順位付けなどに役立てることができます。
Mixpanelテックリードとして、多くの企業を成功へ導いてきたアーロン・クリビツキー氏に、企業におけるパワーユーザー分析の裏側を聞きました。
はじめに
競合他社に勝つためには、プロダクトを継続的に改良し、新しいオプションを追加して、プロダクトマーケットフィットを達成する必要があります。新しいソリューションを顧客に提供することで企業は価値を高め、既存ユーザーを維持しながら、新たに他のSaaSプラットフォームにいる顧客の関心をひくこともできます。
プロダクトロードマップを作成すれば、新プロダクトやアップデートで実現したいことの優先順位付けや見極めがしやすくなり、それを達成するためのタイムラインが浮かび上がります。ロードマップを作成する際、パワーユーザーを分析すると、大きな成長に繋げることができるのです。
パワーユーザーとは、プラットフォームにおいて、他のユーザーよりもより頻繁にプロダクトを利用している、より深い関わりを持っているユーザーのことを意味します。パワーユーザーは企業にとってもっとも価値のあるユーザーグループであることがほとんどです。
パワーユーザーとは
一般的に、プロダクトのパワーユーザーとは、そのプロダクトにもっとも多く関わっているユーザーのことを指します。そして各企業は、パワーユーザーを定義するための独自の指標を設定しています。パワーユーザーの定義は、例えばプロジェクト管理ソフトウェアの会社では「毎日アプリにアクセスし、1日に何度も他のユーザーと交流しているユーザー」、メールマーケティングプラットフォームの場合には、「週に1、2回メッセージを送信するユーザー」といったものになるでしょう。
ただし注意していただきたいのは、パワーユーザーとは、単にログイン回数が多いユーザーというわけではないということです。パワーユーザーとは、エンゲージメント(プロダクトとユーザーとの結びつきの強さ)が高く、プロダクトのUSP(ユニーク・セリング・プロポジション=独自のセールスポイント)に魅了され、プロダクトを真のソリューションとして日常的に使用しているユーザーなのです。
パワーユーザーを意識してプラットフォームを設計・改善することは、優良顧客を維持するだけでなく、新規ユーザーを獲得する上でも有効です。パワーユーザーは、プロダクトを隅々まで知り尽くしています。パワーユーザーが重要視する機能が分かれば、優先事項や改善事項を定めやすくなります。
パワーユーザーの特定
パワーユーザーは、エンゲージメント指標などのツールによって特定することができます。プラットフォームに頻繁にログインしているだけでなく、標準的なユーザーよりエンゲージメントが高くなります。行動分析をすれば、利用頻度だけでなく、より詳細な情報を得ることができるでしょう。
さて、パワーユーザーはどのように特定したらよいでしょうか。デイリーアクティブユーザー数(DAU)やマンスリーアクティブユーザー数(MAU)を現在すでに測定していたとしても、これは、パワーユーザーを生み出す要因分析の一部分に過ぎません。行動セグメントをモニターすれば、誰がプロダクトを使用しているかだけでなく、どのように使用しているかを特定できます。コンバージョン率、プラットフォームがもっともよくダウンロードされている地域、サインアップ後のユーザー行動などのデータをトラッキング(追跡)することができるはずです。これらのデータを分析すれば、ユーザーリテンション(既存ユーザーの維持)につながる機能が見つけやすくなるのです。
パワーユーザーカーブの分析
パワーユーザーカーブとは、もっとも頻繁に利用する顧客の特定に役立つ指標で、一定期間におけるユーザーのプロダクトへの接触頻度をグラフ化したものです。企業によって、7日間(L7)のユーザーとエンゲージメントを測定する場合もあれば、30日間(L30)に設定する場合もあります。
B2B企業(週休2日制の企業の場合)は、ユーザーがプラットフォームを利用するのが月曜日から金曜日の営業時間内のみである可能性が高いため、L7曲線を使用することが多くなります。一方、フードデリバリーなどの消費者向けアプリを運営する企業は、L30パワーカーブを使用すると、より良いデータを得ることができるでしょう。
パワーユーザーカーブが月の初めから終わりまで、または週ごとに急激に下がっている場合、単発ユーザーの割合が高いことを示します。一方、上記のグラフのように、グラフの右端でカーブが上がっている場合は、パワーユーザーの割合が高いことを示します。
パワーユーザーの具体例
パワーユーザーの例をいくつか挙げてみましょう。
- テレビゲーム企業の場合:
パワーユーザーとは毎日ログインしてゲームをプレイするだけでなく、何時間もプレイし、プラットフォーム内でパワーアップアイテムや、その他のアプリ内アイテムを購入して、課金するようなユーザーとなります。
- ライドシェア会社の場合:
パワーユーザーは、エコノミー、デラックス、相乗りなど、さまざまな乗車オプションを頻繁に利用している可能性があります。
- 動画プラットフォーム企業の場合:
ユーザーの動画視聴回数や視聴時間、コメントやシェアの頻度などを組み合わせて、パワーユーザーかどうかを判断することができます。
パワーユーザーの分析をロードマップに活かす
パワーユーザーのデータは、ロードマップの作成にどのように活用できるでしょうか。
パワーユーザーの分析により、プラットフォームに必要な改善点を検討しやすくなります。また、ビジョンを洗練させ、短期および長期の開発優先順位の決定にも役立ちます。パワーユーザーは、プロダクトのすべての機能を熟知しており、考えもしなかったような方法でプロダクトを利用していることもあります。
パワーユーザーのニーズや意見を参考にすることで、ロードマップの出発点が浮かびあがってきます。既存のプラットフォームを補完する新プロダクトを開発する場合にも、人気のあるプロダクトを再設計しようとする場合にも、パワーユーザーは正しい道を示してくれることでしょう。
顧客グループの選択
パワーユーザーを特定したら、次はその顧客グループの傾向やパターンを探ります。既存のプロダクトをもっとも頻繁に使用しているユーザーは、前回のロードマップ作成プロセスで目標とした顧客グループとは異なっていることに気がつくかもしれません。
パワーユーザーを分析すれば、新しい顧客プロファイルを作成するための洞察を得たり、次のプロダクトを別の顧客グループにアピールするような調整方法を見いだしたりすることができるのです。
例えば、あるゲーム開発企業が、18歳〜24歳の男性を現在ターゲットにし、そのターゲットにとってもっとも人気のあるゲームを開発しているとします。しかし、そのパワーユーザーは34歳〜45歳の女性であることに気づきました。ゲーム開発者は、この女性たちにインタビューを行い、プロダクトの何を魅力に感じているか、なぜこのゲームをプレイしているのか、どのような機能が楽しいと感じるか、今後どのような機能が欲しいかという点を確認すると良いでしょう。このフィードバックは、開発者にゲームの改善点だけでなく、このターゲット層や18歳〜24歳の男性向けに作るべき別のゲームのアイデアも与えてくれます。
パワーユーザーからのフィードバックを取り入れる際に気をつけていること
パワーユーザーから得られる洞察は、プロダクトロードマップ作成プロセスにおいて有用ですが、そのプロセスを完全に飛び越えてしまうようなことがあってはなりません。新たなプロダクトであっても、企業のビジョンに合致し、ブランドと調和している必要があります。もし、パワーユーザーが現在の製品の範囲とはまったく異なる、理想的なプロダクトについて述べているのであれば、ブランドに適合するプロダクトにするために、その洞察は取り除きます。
パワーユーザーからフィードバックを得る場合、間違った人の意見に耳を傾けてしまうリスクもあります。少数ながらも非常に熱の入ったパワーユーザーからフィードバックが寄せられ、大多数のユーザーにとっては問題でない機能に対して苦情を言われることがあります。
このようなパワーユーザーを重視しすぎると、プラットフォームを変えすぎて、現在の顧客の大半をむげにしてしまう危険性があります。
幅広いユーザーの声をあわせて参考にすることで、少数派ながら声の大きい顧客に対抗することができ、提供する価値を最大化することができます。ソーシャルメディア上の発言や満足度調査などの二次データを使って、パワーユーザーからの提案や苦情がどの程度の頻度で対処されているかを確認するのです。もし、その問題がすべてのユーザーに共通するものでないようなら、幅広いユーザーにアピールする他のソリューションに焦点を当てます。
パワーユーザーが、さらに多くのパワーユーザーを生み出すことにつながる
パワーユーザーからのフィードバックは、エンドユーザーにより価値を届けるための戦略の方向性を指し示すプロダクトロードマップ作成だけでなく、既存プロダクトの改良にも役立ちます。プロダクト改良に役立てることで、顧客の共通の悩みを解決するための強力なポートフォリオができあがります。
さらに、ユーザーに新プロダクトの開発に参加してもらうことで、エンドユーザーを大切にする企業であることを証明できることも重要です。パワーユーザーは、企業が自分たちの声に耳を傾けていることが分かり、プロダクトを他の人に薦める可能性が高くなります。そして、このような新しいパワーユーザーが、さらに新しいプロダクトや改良のための情報を提供してくれるようになるのです。
おわりに
プロダクトのロードマップ作成や戦略的プランニングにパワーユーザーを巻き込むことは、ロジカルなファーストステップではないように思えるかもしれません。しかし、このようなユーザーを巻き込まなければ、的外れなプロダクトを作り、顧客を失う危険性もあります。もっとも重要な顧客からのニーズを聞き出し、チームと協力してソリューションを開発すれば、顧客中心主義の企業であることを証明していくことができるでしょう。
Mixpanelでは、パワーユーザーを見つけるためのツールを提供していますので、是非ご活用ください。