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株式会社One Terrace

日本留学・就労の窓口である日本語教育機関のDX化を推進して、4万人の留学生をサポートする国際学生管理システムWSDBを開発した事業責任者が語る開発ストーリー

(PR TIMES STORY) 2024年04月11日(木)12時46分配信 PR TIMES


2018年4月から販売を開始し、6年で180校以上、日本語教育機関で学ぶ留学生8万人の内、約4万人が利用するようになった国際学生管理システムWSDB。

日本語教育機関認定法案が施行され、日本語能力の参照枠が示された今、販売当初から事業責任者として、営業、要件定義、広報、導入、サポートを行ってきた元日本語教員の井上智之が、あまり知られていない日本語業界の置かれている現状と、WSDBの開発当時から目指している到達目標を語ります。


スクールソリューション部 事業部長 略歴

株式会社OneTerrace

井上智之

・帝京大学文学部心理学科でプログラムの基礎を学ぶ。就職氷河期世代として大学を卒業し、株式会社イーブックイニシアティブジャパンの契約社員として就職。その後、正社員として製造業で製造員、生産管理、営業、飲食業で店長など複数の業種・職種を経験。また、現場で働く傍ら業務に必要なプログラム開発を行う。

・その後、日本語学校に転職し、事務、学内システム担当者、日本語教員など複数の業務を経験し「業界の収益構造の改善をしなければ、日本語教員は食える仕事にならない」と考え、2018年から株式会社OneTerraceにて「国際学生管理システムWSDB」の販売を開始、現在に至る。



○はじめに 外国籍人材と「日本語教育業界」の現状

日本の少子高齢化が進み労働人口が減少する中、これまでの高度人材としてだけでなく、社会基盤の担い手としても外国籍人材に対する期待が高まってきています。また、外国籍人材は「日本で暮らす隣人」から「ともに地域を作っていく住民」として、今後の日本社会にとって欠かせない存在になっていきます。

そのような中、2024年4月から、日本語教育機関認定法の施行や、登録日本語教員制度が始まり、日本語教育業界は大きな変革の節目に差し掛かっています。


1、「日本の窓口」日本語教育機関のDX化を推進する事業に共感

株式会社OneTerraceは、2016年のベトナム設立から外国籍人材を日本に受け入れることで、日本の企業が多様性を認識し、包括的な仕組みを作ることでよりよい日本社会を実現しようと、様々な取組を行ってきました。

その中で、WSDBというシステムは、多くの外国籍の方が日本社会の窓口としている「留学」をサポートするために生まれたシステムです。


現在、日本にいる外国籍留学生は高等学校、高等教育機関(大学、専門学校等)、日本語教育機関(日本語学校、専門学校日本語科等)など様々な機関で学習を行っています。


外国籍の方が留学ビザを申請しようとする場合、教育機関の種別ごとに在留資格申請方法が異なります。多くの留学生の入口となっている日本語教育機関に関しては、学校の適正校制度による提出書類の差があり、また、法務省の定めた在留資格認定証明書交付申請にない情報を、地方出入国管理局ごとに申請者リスト等の名目で別途求められています。

教育機関の種別により異なるビザ申請と地方出入管ごとのローカルルールに基づく提出書類は、日本語教育機関のシステム化を難しくする大きな要因となっており、学校及び日本留学を現地でサポートするエージェントの業務を煩雑にし、結果として日本語教育機関への留学生紹介費用として価格転嫁されてしまっています。


WSDBは、このような状況を改善し日本留学希望者が、統一されたフォーマットで出願・在留資格申請を行い、日本留学に関わる手続きを簡素化できるようになっています。そして、日本留学に関わる手続きを見える化・DX化し、日本に来る留学生を増やすということが、WSDBが目指している目標です。


私は、日本語教員時代、中国や韓国、台湾などが国を挙げて留学を進めている中、日本に来る留学生を増やしていくために、日本も国や日本語業界が一体となり何かを行っていく必要があると考えていました。しかし、いち日本語教員としてできることは多くありません。

そのような中で、株式会社OneTerraceがWSDBの開発を行っていることを知り、その目標に共感し、2018年4月からは教員としてではなく、自分の得意とするIT分野で留学生をサポートしており、現在は4万人もの留学生がシステムを利用するまでになっています。


2、アジャイル開発と相性の良い日本語教育業界

しかし、WSDBは開発当初から順調にスタートしたわけではありません。

統一されたフォーマットで出願・在留資格申請をおこなえるようにするには、各日本語教育機関様にご協力をいただく必要があります。

利用ユーザを増やす最も安易な方法は、サービスを無料展開することです。しかし、無料システムの展開をおこなえば、システムの維持ができなくなるだけでなく、日本語で個人情報の取り扱いに関する同意書が書かれていた場合、文面を理解できない留学生に、一方的に個人情報の利用に同意させ、個人情報を売り買いするような悪習慣を業界に根付かせてしまう可能性がありました。

そこで、在留資格の管理に特化するのではなく、まずは業務効率化を図れる学生管理を含む、日本語教育機関の課題をトータルで解決できる一括管理システムとしてWSDBをスタートさせました。


私は、様々な業種でITツールを利用し、不足部分を自分で開発したプログラムで補ってきたことから、日本語学校に勤務している際も、多くの業務補助システムを作ってきました。しかし、基幹システムを作成したことはなく、2017年頃は業界でスタンダートと呼べるようなシステムもなかっため、多様な学校にとって最適なシステムをイメージすることは難しい状況でした。

そこで、OneTerraceは東和ソリューションエンジニアリング株式会社と協力し、専用の開発チームでシステムを常に改善していくことで、販売しながら常にシステムの最適化を行ってきました。

営業、開発、サポートが一体となり、お客様のフィードバックを受け問題点を洗い出し、新機能のリリースや、システムの改善に繋げています。

2018年の販売当初のシステムと現在のシステムを比べると全体の20%程度しか残っておらず、ほぼ異なるシステムと言ってもいいほど変更を繰り返してきました。


このように、現場の実態に合わせてシステムの仕様を柔軟に変更し、リリースまでの時間を短縮し、リリース後に行った問題を素早く修正していくスタイルは、出入国在留管理庁の方針や、日本と留学生の母国ごとの関係性に強く影響される日本語教育業界において、非常に相性がよかったと感じています。

例えば、在留資格認定証明書交付申請を含む各種書類は、弊社がシステム販売を開始した2018年度から2023年度の間に4回変更が行われており、日本語教育機関はその都度見直しや、システム変更を余儀なくされるため、個別のシステム開発を行っていた場合、かなりの負担となっています。

多くの日本のIT企業が従来から行っているウォータフォール型の開発では、要件定義を行い仕様を決めている間に、COE交付申請の様式が2、3回変更されてしまっているという笑い話になりかねません。


アジャイル開発を行ってきたことで、単に「良い基幹システムになった」という以上に、変更に強いシステムとそれを支えるチームができており、多くのお客様とWSDBチームの力が合わさることで、今後、日本語教育業界に起こる変革に対応していくことができると感じています。


3、認定日本語教育機関に合わせたシステム開発

日本語教育業界は2024年度から認定日本語教育機関として、申請と審査が行われることになり、大きな変更が求められています。

特に、学生管理システムに影響がある日本語能力の評価に焦点を当てると「日本語能力の参照枠」「授業科目」という考え方が加わっています。

「日本語能力の参照枠」は、EUの言語教育から始まった言語の種類に限らず外国語の運用能力を同一の基準で判断できるCEF-R(ヨーロッパ言語共通参照枠)を元に作成されたものとなっており、私が日本語学校に勤務していた当時から日本語教育とどのように照らし合わせていくかといういう議論がなされていました。しかし、「日本語能力の参照枠」やCEF-Rは参照枠であり、評価方法ではないため、より具体性を求められるシステム化において、評価手法をどのように作っていくかといった具体的な議論は行われていません。


私は、日本語教員時代から、学習者自らが日本語能力の熟達度を把握でき、自立学習を促進し、言語学習評価の通用性を高めることに適したCEF-Rの考え方が、日本語教育に導入されるべきだと思っていました。

そのため、学生管理システムに従事することを決めてから、CEF-Rの判断基準を評価まで落とし込むロジックの作成を考えてきました。

それは、仮にCEF-Rで日本語能力を判断した場合、今までの試験ベースの評価より、具体的な言語運用能力を個別に評価していくCEF-Rの方が、評価に対する手間がかかることが、容易に想像できたからです。


「日本語能力の参照枠」は良い効果をもたらすものと考えていますが、このような「@誰も取り組んだことがなく」「A利用者にも具体的な運用イメージがない」「B今後も変更される可能性が高い」新制度は、慢性的な業務負荷という副作用を産む恐れがあります。変化に強いアジャイル開発を得意としており、学校システム日本語教育業界の業務効率化を促進させているWSDBチームであれば、日本語教育機関と一緒になり、学校にも留学生にとっても最適な機能にたどり着く事が可能です。


少し具体的な話に触れると、大学ではディプロマポリシーという概念が一般的です。WSDBの大学用を作成するにあたり取り入れたその考え方を、日本語教育機関では「カリキュラム」「シラバス」「日本語能力の参照枠」を組み合わせることで、授業の評価と日本語能力の具体的記述文と紐づけた日本語能力評価を質の高い日本語教育を担保しながらも、業務的な負荷を減らせる仕組み作りを行っていきます。


WSDBは、日本語教育機関に育てていただいたシステムです。日本語教育機関認定法案という新しい制度が始まりその運用に最前線で関わり、共に考えて行けることは喜びであり、楽しみでもあります。


〇結びに 開かれた日本語教育を作っていくために

日本語教員が、国家資格の「登録日本語教員」になり、一次的に社会的な注目が高まっていますが、そもそも母語話者に対する国語と日本語教育の違いについても、業界外の日本人にとってはイメージしにくいものです。


しかし、これからの日本社会では外国籍人材がより身近な存在になり、日本語教育についても、専門科のみならず多くの日本人がわかりやすいものに変わっていくことが求められています。その一環である「日本語能力の参照枠」に基づく日本語能力の判定は、日本語能力評価の通用性を高める目的を有していますが、有識者による文部科学省文化審議会国語文科の資料における期待される効果としては「試験間」の通用性と記述されています。


日本語教育機関は、今までの学内だけでわかる日本語能力評価から、外部にも理解できる通用性の高い評価に変えていき、日本語を学んだ学生が、日本社会でより活躍していきやすい環境を整えることができる非常に重要な拠点です。またそれは、日本語教育機関が活躍できる裾野を広げていくことにもなります。


WSDBは単に便利なシステムではなく、複雑な在留資格申請を統一化し、日本留学希望者の申請業務を簡素化することを目標としていますが、今後は「入口」だけでなく「出口」に関して、「日本語能力の参照枠」に基づく判断を可能とすることで、日本語教育機関が判断した日本語能力が、通用性の高い評価として社会的に認知されること目指し、日本語教育機関と日本社会に寄与してまいります。元日本語教師として、留学生の1回の試験では測ることができない本当の日本語能力と、言語を越えた魅力を最も理解しているのは教員だと確信しているからです。


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