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【リコー社内起業家インタビュー】 SF映画がヒント、ホログラム立体映像装置で「面白いこと」に挑戦

(PR TIMES STORY) 2023年07月12日(水)12時21分配信 PR TIMES

米国のSF映画『ブレードランナー2049』(2017年製作)に描かれた現実と仮想現実が一つになった世界を実現したい――。そんな思いからホログラムを使った立体映像装置の開発を手がける株式会社ブライトヴォックス(brightvox、東京・渋谷)は、リコーのアクセエラレータープログラム「TRIBUS(トライバス)」発のスタートアップだ。同社代表取締役CEOの灰谷公良氏にどんな立体映像装置を開発し、どんな新たな価値を生み出そうと考えているのか、TRIBUSをどのように活用したのか、そしてどんな夢を描いているのかなどについて伺った。


株式会社ブライトヴォックス 代表取締役CEO 灰谷公良氏


「Sci-Fiプロトタイピング」という手法で取り組む


――ブライトヴォックスが開発した立体映像装置とはどんなものか教えてください。


立体映像装置はホログラムを使った円柱状のディスプレーです。3Dコンテンツを3Dのまま投影することができます。

現実空間にホログラムのような映像を映し出す技術はいろんな方法が開発されています。私たちシステムの訴求点は、「全方位から視認できる」ことです。ものがそこに実在しているのと同じように、画素を立体的に配置することが可能なのです。

2023年1月に遊園地でマスコットキャラクターを映し出す実証実験を行いました。多くの人に見ていただき、なかには「何これ?」と興味深く見つめ、笑顔が見られたのはうれしかったですね。

4月下旬には、東京・南青山のアート展示で、私たちの技術を組み込んだデジタルアートが出品されました。

競技場やサッカースタジアムでは、4月末から5月に味の素スタジアムや国立競技場で、サッカー選手のホログラム立体映像やロゴを映し出すサイネージとして利用していただきました。



――立体映像装置を開発しようと思ったきっかけは?


リコーの新規事業開発部で新しい事業開発テーマを探っていました。私はもともとSF(サイエンス・フィクション)が好きで、SFに描かれた物語を企業の新規事業創出などに利用する「Sci-Fi(サイファイ)プロトタイピング」という手法を使おうと考えました。

映画『ブレードランナー2049』や『her/世界でひとつの彼女』には、仮想空間のホログラムや音声AIが現実に存在し、人のパートナーとして共生しています。このような世界観を実現するための技術についていろいろ調べてみました。確立した技術はありませんでしたが、もしこのような映画の世界が実現できたら面白いんじゃないか。そう思ったところが原点です。2019年のことです。


意気投合した人たちと一緒に仕事をするにはTRIBUSしか選択肢はなかった


――最初に何から着手しましたか。


当時はコロナ禍でもあり、メタバース(仮想空間)、XR(クロスリアリティ)といったキーワードが急速に広がり、ヴァーチャル側が盛り上がっている時でした。それに対して、展示会やイベントといったリアルの世界は元気がない。ヴァーチャルの魅力的な世界をリアルに持ってきたらリアルな場がすごく面白くなるんじゃないかと思いました。

そうは言っても荒唐無稽な話ですから、実現するためには何より技術が必要です。私は技術者ではありませんが、「こんなことやれたらいいね」といろんな人に話しかけ、賛同してくれるメンバーを少しずつ集めました。新規事業開発部の周辺に声をかけたり、「TRIBUSコミュニティ」というリコー社員が登録する場でメンバーを募集したりしました。



――そして2020年度の「TRIBUS2020」に応募されるわけですね。応募した理由は?


メンバーを集めるといっても、ものすごく大変です。意気投合した人はまったく違う組織にいるので、その人を引っ張ってくるのは大企業のヒエラルキーの中ではとても難しい。ところがTRIBUSは、社内から横断的にイノベーターを募り、リコーのリソースを活用してイノベーションにつなげることができますから、どの事業部にいる人でも声をかけられ、TRIBUSに採択されれば一緒に仕事ができます。意気投合した人たちと一緒に仕事をするには、それ以外に選択肢がありませんでした。


――TRIBUSの一次審査や面接で印象に残っている質問はありますか。


審査員を務めるVC(ベンチャーキャピタル)の方から必ず質問されるのは、「これは誰のための何の課題を解決するものか」ということです。それに答えられない限り、事業化はできません。いろんな絵を描いていたので、ひとつひとつ説明しましたが、「何が本命か」などと聞かれました。

リコーの技術担当の役員からは「これまでの3D技術の変遷でどこに位置付けられ、どれだけのバリュー(価値)があるのか」と問われました。

社会に必要とされる「課題解決型」のテーマではなく、「ビジョン型」なので、これらの質問に正しく答え、事業テーマとして構想をまとめるのには苦労をしました。

実は19年度のTRIBUSには採択されず、20年度が2度目の挑戦でした。用途をプロモーションサイネージに絞り込み、対象となる顧客、市場価格をリサーチして事業プランを練って提案しました。


――再びチャレンジしたモチベーションは何でしたか。


私もチームも、みなこのテーマをやり続けたいという思いが強かったです。私は、新規事業開発部で提案したり、事業部に持っていったり、いろいろチャレンジしていましたから、TRIBUSの2度目がだめでも別のところで挑戦したと思います。通らないのは自分の提案が未熟だからで、多くの方に壁打ちしてもらいながら、何が原因かを考えて対策することを地道にやっていました。同時に技術的な魅力・完成度は技術チームが新しい道をどんどんと切り開いていきました。

新規事業に取り組む時、途中で事業継続が難しいとなったら「別の方向へ進もう」とか、「他者のアドバイスを受けて軌道修正しよう」となります。しかし、私は「自分がやりたい領域」をはっきり定めて道筋をつくっていましたので、事業領域はそこから変えていません。その思いがモチベーションを維持する源泉になっているのだと思います。


「夢に共感してくれる人を探す」


――先ほど用途をサイネージに絞り込んだというお話がありました。なぜプロモーションサイネージの市場を狙うことにしたのですか。


まず、お客様にこの取り組みに共感してくれる人が多かったことや、装置の面白さをダイレクトに価値に転換できることから、この市場を選びました。また、技術的な要素が確立していながら事業スタートが必要なので、まずは1品1品のバリューを高く保つことが出来る最適な市場だと捉えました。

例えば東京ビックサイトのような大型展示場ですと、1日に3万人もの人々が行き交いますので、装置1台に対して数多くの人に訴求できます。家庭やオフィスにおいてある装置だとそうはいきません。


――TRIBUSの期間中、どんなことに取り組みましたか。


立体映像装置を誰に使っていただき、誰からお金をいただくかというビジネスのサイクルを回すこと、それに技術を高めていくことに取り組みました。技術をアップデートしていけば、どのお客様に興味を持っていただけるか仮説を立て、そのお客様に実際にアプローチしてプロトタイプを見ていただき、お金を支払っていただけるかどうか調査・検証する作業を繰り返しました。

具体的には想定したお客様がいらっしゃる会社にアクセスをし、私どもの実験室で実際にプロトタイプを見ていただき、ご意見をいただきました。そこで業界構造、サプライチェーンの仕組み、影響力を持っている事業者はどこか、食い込むためのチャネルづくりはどうしたらいいか、などを知ることができました。


――技術的にはどんな課題があったのですか。


もともと世の中にないものですから、技術的な課題だらけでした。お客様に見ていただいた時も「明るさが足りない」「解像度が足りない」「映像がボヤボヤしている」といったコメントをたくさんいただきました。それぞれの課題を解決するため、一つずつ技術の要素に落とし込んで改良を猛スピードで実施していく。私達のような会社にとって、技術開発チームはまさに企業価値そのもので、素晴らしく頼もしい存在です。


「出向起業」を選択。「若者に負けないぞ!」という気概持つ


――起業したスタートアップに会社から出向する形式で経営に携わる「出向起業」というスタイルを選択されたそうですね。


もともとTRIBUSの活動期間は2年と定められていて、2年後の自分たちの道を探さなければなりません。独立した事業体としてやってくのか、リコーのどこかの事業部に吸収されるのか。メンバーで何度も話し合いをしました。

ある時、TRIBUSに採択された別のチームの方から「出向起業」というものの存在を教えてもらい、すごくやりがいのありそうな枠組みであることがわかりました。TRIBUSの事務局に相談すると、「面白そうだね。やろう」ということになりました。事務局には「どんどんやろう」といって背中を押してくれる人が多いんです(笑)。

「出向起業」は経済産業省が進めている支援事業で、大企業から人材を引っ張り出して起業を後押しする取り組みです。ブライトヴォックスの役員全員がリコーの社員のまま出向する形で起業しています。私のほかに、笠原亮介取締役CTO、北川岳寿取締役CPO、高橋一勝CMOの合計4人で起業しました。全員が40代です。「若者に負けないぞ!」という気概を持ってやっています。



――いろんな部署の人材を巻き込んでチームを作ったということでしたが、「巻き込まれる人材」になるためのポイントは何かありますか。またチームビルディングで大切にしていることを教えてください。


今一緒に仕事をしている人は「すごく光るもの」を持っています。持っている尖った才能がうまく重なり合うかどうか。お見合いみたいなものかもしれません(笑)。それと、人として意気投合して一緒に喜びを共有できるか?ということもチームとして活動していくにはとても重要です。

チームビルディングで大切にしているのは、お互いの信頼です。いまのフェーズは、全員がプレイヤーとして信頼しあって動いているので、いわゆる上司・部下のようなマネジメントはなく、信頼関係で同じ方向に全力で走ることができています。

また、「今やらなければいけない課題」と、「将来どうなっていたいかということ」を分けて議論するようにしています。目の前の案件を考えていると刹那的な話になりがちですが、「将来こうしたいよね」という話を別の時間に議論すれば気持ちを合わせやすくなるからです。


面白いことをたくさんやりたい


――2023年3月に米テキサス州で開催されたイベント「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)2023」に立体映像装置 brightvox 3D を出展されたそうですね。


誰が興味を持ってくれるかを探ること、マーケティングが目的でした。ハイスペックPCに大規模言語モデルを搭載して言葉を生成させ、キャラクターが英語を流暢にしゃべるようにもしました。英語で「このディスプレーは何?」と聞くと、「ブライトヴォックスという会社が開発したホログラフィックディスプレーだよ」と答える。解像度や、スペックなどから、近所のおすすめ店、好きなお書籍まで、なんでも会話ができます。こうした展示をみて外国人は「クレイジーだ!」と喜んでくれましたね。日本人より外国人のほうが、数倍反応がいいような気がしました。




――対話できるのは面白いですね。そうした対話型ではどんな世界観を実現できますか。


展示会の展示員の代わりとか、ゲーム会社の受付に置いてその会社一押しのキャラクターが受付係をするとか。立体ディスプレーなので私がしゃべる方を向いて対話ができます。いかにサイネージから広げて活用していくかが大事だと思っています。


――あらためて教えてください。どんな夢を描いていますか。


私たちが仮想空間にいる人たちと共生する未来です。それが生活の一部になってほしい。

サイネージとして事業を立ち上げていき、事業を少しずつ広げていきます。

現在は事業がスタートしたばかりです。立体映像装置はレンタル事業をスタートしています。グローバル展開や、用途展開、その先は走りながら何をするか考えていきます。

とにかく、自分やチームが楽しんで、そしてこの世界観を語り、共感いただける方の輪を広げていきたいですね。



※「brightvox」が7月10日(月)7月14日(金)に開催される「未来テンジ2023」で登壇します。

イベントの詳細やお申し込み

https://nexmedia24.jp/miraitenji2023/

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