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株式会社QDレーザ

網膜投影で感動を瞳に。視覚障がい者による写真撮影を可能にしたカメラキット『DSC-HX99 RNV kit』の開発ストーリー

(PR TIMES STORY) 2023年10月19日(木)15時34分配信 PR TIMES

株式会社QDレーザは2006年に富士通研究所からスピンアウトして創業しました。「人の可能性を照らせ」という企業理念のもと、量子ドット(Quantum Dot)レーザをはじめとする半導体レーザの開発、販売を手掛ける企業です。創業から培ったレーザや光学の技術を応用して2015年から事業化を始めたのが網膜投影技術、VISIRIUM(ビジリウム)テクノロジー。超小型プロジェクタから網膜に映像を直接投影することで、様々なメリットを発揮することができます。

その取り組みの一つが視覚障がい者支援。ロービジョン(全盲ではない視覚障がい者)の方は普段”見えづらい”世界の中で暮らしていますが、網膜投影技術を使うことで”見える”ようになることがあります。QDレーザはこの点に着目して網膜投影機器RETISSA(レティッサ)シリーズを開発してきました。


このストーリーではRETISSAシリーズの一つ、『DSC-HX99 RNV kit』の開発経緯とその最新のプロジェクトを紹介いたします。



ロービジョン者の生活にプラスの価値を提供する、ソニーとのコラボレーション製品

 

網膜投影カメラキット『DSC-HX99 RNV kit』は、QDレーザの網膜投影型ビューファインダー『RETISSA NEOVIEWER(ネオビューワ)』とソニー株式会社(以下、ソニー)の高性能デジタルスチルカメラ サイバーショット『DSC-HX99』をセットにした製品です。



この製品の発端となったのは、ロービジョン者の「見えづらい」を「見える」に変える”With My Eyes”プロジェクトでした。QDレーザはロービジョン者支援に取り組む中で、当事者たちは必ずしも身の状況をマイナスだとは捉えておらず、ポジティブに生活を送っているという気づきを得ました。そこで、マイナスをゼロにするのではなく、プラスの価値を生活に提供するというコンセプトのもと、ロービジョン者がらので写真を撮影できる世界の実現を指してプロジェクトを立ち上げました。


 

プロトタイプの開発は厚生労働省の助成事業に採択。急ピッチで開発を進めた

 

「カメラと組み合わせ使う網膜投影型ファインダー」というコンセプトを定め、プロトタイプの開発に活用したのは厚生労働省の「障害者自立支援機器等開発促進事業」です。令和2年度の事業に採択され、急ピッチで開発を進めました。組み合わせるカメラに必要だったのは1)HDMIでのパススルー出力(カメラがとらえている映像をそのまま出力すること)が可能であること、2)高倍率のズーム機能があること、3)なるべく軽量、コンパクトであること、などです。これにあてはまったのがソニーのデジタルスチルカメラでした。スマートフォンと変わらない重量のコンパクトなボディに高倍率の光学ズームを備えるこのカメラは要求にぴったりとはまるもので、プロトタイプは優れた「眼」を手に入れたのです。



機器の評価においては、日本で唯一の視覚・聴覚障がい者向けの大学である筑波技術大学に通われている5名の学生さんにモニターとして協力いただいています。モニター評価では、テレビの視聴や読書、駅の案内板や遠くの景色などいろいろな場面での使い勝手を確認いただき、外の景色や少し離れた対象を見るのによいというご意見をいただけました。


こうして開発したプロトタイプ(当時はRETISSA SUPERCAPTUREと呼んでいました)を当事者の方に実際に使っていただき、With My Eyesのエピソード(ドキュメンタリームービー)として2020年12月に第1弾を、さらに2021年5月に第2弾をそれぞれ公開しました。ロービジョンの方がカメラを持って出かける、写真撮影を楽しむ、という製品のコンセプトを具現化したストーリーとなっています。

 

With My Eyes - ロービジョン者による写真撮影 -

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With My Eyes 2 - 見えなかった世界を、見に行こう。-

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さらに多くの方にこのプロトタイプを使っていただくために2021年12月から2022年2月にかけて実施したのがクラウドファンディングです。全国の盲学校に寄贈(無償貸与)するための費用を募るもので、211名もの方から支援をいただき、500万円の目標金額をクリアすることができました。生徒さんたちが実際にこのプロジェクトを通じて網膜投影型のカメラを受け取り、その結果写真部ができた盲学校もあります。


世界初、レーザ視覚支援機器を盲学校に届けたい!

https://readyfor.jp/projects/80268


ソニーの賛同をいただき、プロトタイプから製品化に向けて開発を加速

 

障害者自立支援機器等開発促進事業での開発は令和3年度も継続採択をいただき、プロトタイプの改善は続けていました。しかし、プロトタイプの開発だけでは事業にはなりません。ここでカギとなったのがソニーとの連携でした。ソニーは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」ことをPurpose(存在意義)とされています。With My Eyesプロジェクトに強く共感いただき、主要賛同企業としてサポートいただけることになったのです。ソニーの機材協力を受けて制作したエピソードの第3弾(2022年3月公開)は、パラスイマーの清水選手を主人公とし、石垣島への小旅行をテーマにしました。街での観光、初めて海を”見た”感動、一人でシーカヤックに挑戦する様子が記録されています。

 

With My Eyes 3 - 見えたのは、わたしの世界 -

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このエピソードの公開と同時にアナウンスしたのが第37回CSUN Assistive Technology Conference(CSUN支援技術会議)での共同出展でした。このイベントは、カリフォルニア州立大学ノースリッジ校 (California State University, Northridge, CSUN)が毎年3月に開催する、支援技術に関する世界最大規模の学会・展示会です。QDレーザは2015年から参加を続けており、ソニーもアクセシビリティへの対応を強化する中、このイベントには以前より注目、参加されていました。2022年には両社のブースで展示し、ソニーのブースではデジタル一眼カメラαシリーズと組み合わせたプロトタイプ、QDレーザのブースではコンパクトデジタルスチルカメラ『DSC-HX99』と組み合わせたプロトタイプを用いてデモを行いました。この時の展示会の様子はnoteにまとめてあります。


https://note.com/qdlaser_blog/n/n6ac594beba1d

https://note.com/qdlaser_blog/n/n87e87dd27675

https://note.com/qdlaser_blog/n/nc0ed66f5dc9a


With My Eyes発の製品『DSC-HX99 RNV kit』の誕生

 

CSUNでの反響を受けて、いよいよ製品化へと進むことになります。QDレーザのメンバーはもちろんのこと、ソニーからも多くのアドバイスをいただきました。網膜投影型ビューファインダーは改めて『RETISSA NEOVIEWER(レティッサネオビューワ、RNV)』と命名され、デジタルスチルカメラとセットになった『DSC-HX99 RNV kit』として、ソニーから発売することになりました。そして、2023年2月21日に発売を発表し、その直後にパシフィコ横浜で開催されたカメラと写真映像のワールドプレミアショー「CP+ 2023」にて初公開となりました。With My Eyesの結実としてのこの製品は多くの注目をいただき、デモンストレーションは大変な盛況となりました。ロービジョンの方にもご来場、ご体験いただき、普段は「霧の中にいるように見える」といわれる方から「霧が晴れたようだ」といううれしいお声もいただくことができました。その後3月からは実際に全国5店舗(銀座、札幌、名古屋、大阪、福岡天神)のソニーストアにて販売が開始されています。製品の特性上、店舗で実際に体験していただいてからの販売としていますが、ご来店が困難な方にむけてレンタルのサービスも開始したところです。

 

網膜投影カメラキット『DSC-HX99 RNV kit』のレンタルを開始します。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000023.000060779.html


トヨタ・モビリティ基金の支援を受けた新たなプロジェクト

 

カメラキットの発売後も、With My Eyesの取り組みは継続しています。その一つがロービジョンの方によるレース撮影です。網膜投影技術を高機能、高画質なデジタル一眼カメラと組み合わせることで、より高度な撮影を実現しようというプロジェクトでした。この試みはトヨタ・モビリティ基金が主催するアイデアコンテスト「Make a Move Project」のテーマの1つMobility for All 2023に応募し、採択されたことで実現したものです。

 

トヨタ・モビリティ基金の「Make a Move PROJECT」に採択 モビリティリゾートもてぎでのイベントに向け参加協力者を募集

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000021.000060779.html

 

多数ご応募いただいた中から5組の当事者の方にご協力いただき、9月の2日、3日にモビリティリゾートもてぎで開催された「スーパー耐久」というレースイベントで撮影会を行う実証実験となりました。6月ごろから本格的に活動を始め、9月の頭に予定されているレースに向けて参加者の募集とプロトタイプの開発を進める必要があったため、決して余裕のあるスケジュールではありませんでした。開発に大きなトラブルが生じて実証実験が出来なくなるリスクを避けるため、「RNVを流用し、変更する部位を最小限にして早く作るモデル(縦型)」と「ある程度時間をかけてしっかりと開発するモデル(横型)」の2つを並行して作ることとしました。トラブルはいくつかありましたがエンジニア陣が力を尽くしてくれ、結果としてどちらの機種も本番に間に合い、台数に余裕をもって実証実験ができました。2つのプロトタイプは形が大きく異なりますので、その使い勝手を比較していただく検証ができたのも成果の一つです。



当日のサーキットは予想通りの猛暑となりましたが、参加者の皆さんは汗だくになりながらも観戦や撮影を楽しんでくださいました。この実証実験の様子はnoteにまとめてあります。


Make a Move PROJECT「できないを、できるに変える」世界を実感!

https://note.com/qdlaser_blog/n/n0e2f8f9f65a1


そして、初公開となるWith My Eyesの新たなエピソードがこちらです。


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”見えづらいから人よりも楽しめないっていうネガティブな思考ではなくて、テクノロジーを使うことによって障がいがあっても楽しめるということを知っていただきたいと思います”(With My Eyes 4より)


網膜投影技術とデジタル一眼カメラを組み合わせることで、視覚障がい者にレース観戦や本格的な撮影を楽しんでいただくという、もてぎでの実証実験の目的は達成できたのではないかと考えています。今回開発したプロトタイプは技術検証、製品性検討のためで、製品化は現在のところ未定ですが、デジタル一眼と組み合わせたい、自分のカメラで使ってみたいという声はたくさん頂いています。より多くの方に網膜投影技術を使った新しい楽しみを届けられるよう、With My Eyesの取り組みをこれからも継続していきたいと思います。


■製品サイト

https://www.sony.jp/cyber-shot/rnv/DSC-HX99-RNV-kit/

■網膜投影製品RETISSAシリーズ

https://retissa.biz/

■株式会社QDレーザ

https://www.qdlaser.com/


*『RETISSA NEOVIEWER』は医療機器ではなく、特定の疾患の治療や補助、視力補正を意図するもの ではありません。見え方には個人差があるため、実機体験を推奨します。障がいのある部位・程度によっては 映像の認識が難しい場合があります(網膜の機能が低下している場合など)。


*「ソニー」および「Sony」、並びに「サイバーショット」は、ソニーグループ株式会社またはその関連会社の登 録商標または商標です。

*『RETISSA』および『NEOVIEWER』は株式会社 QD レーザの登録商標です。

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