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石川メリヤス有限会社

効率重視の分業だけでは「全体感」が身につかない! 作りたい商品を自分で企画・生産・販売する手作り社員研修を3年間にわたって実践。その予想外の成果とは?

(PR TIMES STORY) 2023年09月08日(金)13時57分配信 PR TIMES

社員一人ひとりが会社全体を念頭に置きながら自分の仕事に取り組む。多くの経営者が理想とする会社像ではないでしょうか。また、全体感を把握することは社員にとってもやりがいにつながります。

その実現には何よりも「体験」が大切です。社員全員が商品企画から生産、販売までのすべてを経験した手作り研修のストーリーを紹介させてください。



 私たち石川メリヤスは愛知県西尾市の吉良町という小さな町にある従業員数30名弱のニット工場です。1957年に祖父が創業し、2016年に父から私、大宮裕美が引き継ぎました。

 小さな工場とはいえ、効率的な生産には分業が不可欠です。ニット製品の場合、糸の選定や原価計算も含めた「企画」、商品特性に合った編み機を操作する「編立」、ミシンを使った縫製や糸始末を行う「仕上げ」の3段階に大きく分かれます。石川メリヤスではそれぞれに専門部署があり、部署や個人による知識の差やバラツキが生じていました。前後の工程に関する理解が足りないと、本当に質の高い仕事はできません。

 部署には関係なく、繊維業界に携わる人間として当然の知識もあります。例えば、糸の太さを表す単位である「番手」。石川メリヤスでは、毛糸やアクリル糸を表す単位である「毛番手」と、綿糸やポリエステル・綿の混合糸を表す単位「綿番手」を主に扱います。それぞれ表記や呼び方が異なるのですが、棚卸しの際などに混同してしまう社員もいました。

自分が作りたい商品を一人で生産するためには糸の選定も必要です。こうした基礎的な知識の学び直しにもなります。結果的にどこに出しても恥ずかしくない繊維業界人になってほしいと私は考えました。

手袋などのニット小物は自動編み機を使えば数分間で編み上げることができ、1枚あたりの原材料費も高くありません。私たちのような工場は、時間さえ確保すれば、社員一人ひとりが会社全体の動きを疑似体験する研修が可能なのです。

<(1年目の様子)1回目の研修テーマは「自分専用手袋を作る」。普段は包装・検品の作業を担っている女性社員が編み機の扱い方を男性社員から教わっています。>


 1年目(2021年6月)の研修テーマは「自分専用手袋を作る」でした。2日間は座学で、社内にある編み機や糸の種類を理解して、自分が作りたい手袋の仕様書を作成。研修本番では〜5〜6人ずつで4班に分かれ、2日間にわたって教え合いながら自分が企画した手袋を作りました。

 研修の様子を見て、私が予想していた以上に社員たちが楽しんでいることがわかりました。他の人が作った商品にも興味津々だったり、手袋ではなくシュシュ(髪留め)を作った社員がいたり。1年目の研修では手袋専用の編み機(島精機製作所のSFGとSPG)に限定しましたが、その編み機は手袋だけでなく筒状のサポーターなどを作ることもできます。だから、手袋ではなくシュシュを作ることも可能で、それもまた「正解」なのです。

 社員の知識向上を目的に始めた研修ですが、このように斬新な発想の商品が生まれるという嬉しい副産物がありました。そのうち2点は実際に商品化。どちらも洗車好きのための掃除用手袋という尖った商品です。そのストーリーはこちらをご覧ください。


<(ホイール磨き手袋)1回目の研修から生まれた商品「ホイール磨き手袋」。独自の形状がメディアに取り上げられ、自動車用品専門店からの別注生産も受注しました。>


 翌2022年6月の研修テーマは「みんなのアイディアを形にする」です。1年目の研修が予想外の成功を収めたので、私も欲が出ました。石川メリヤス社員の能力と自主性の高さを改めて信じることができ、もっと自由にモノ作りができるようにしたいと思ったのです。

そこで、研修で使う機械の限定を取り払いました。具体的には、島精機製作所のホールガーメント(SWG)の使用許可です。デジタル制御で編み機の針を動かし、完全無縫製で様々なニット製品を立体的に編み上げる機械です。作りたい製品に使う糸を新たに仕入れすることも許可しました。

 今回は高度な機械も使った本格的な生産になるため、1年目のように1人の社員ですべてを作ることはできません。チーム分けをして、それぞれに機械の技術者を配置する必要があります。

社員研修の2か月ほど前に、作りたい製品を自由に提案できる箱を設置。全18案を各部署のリーダーを集めて実際に作れるかどうかなどを検討しました。

 リーダー会議で9つの案に絞り、その仕様書を社員全員に開示。自分が携わりたい商品を投票してもらい、4つのチームに分かれました。ブラシネット、ニットバッグ、赤ちゃん用レッグウォーマー、食器洗い用手袋、鍋敷きミトンなどを生産しましたが、共通の感想は「使い勝手を含めるとイメージ通りには作れなかった」。1年目は比較的単純な手袋という製品だったので自由な発想が生まれましたが、「何でも作っていい」にするとむしろ難しかったようです。商品開発の苦労を社員全員で味わうことができました。


<(2年目の様子)2回目の研修テーマは「みんなのアイディアを形にする」。チームごとに商品を企画、生産し、社員食堂での発表会を行いました。>


 そして、3年目。2023年6月です。2年目で作った製品のうち3点を、実際に商品化して自社のECサイトで販売するのです。色展開、値段の設定、商品撮影なども自分たちで行いました。

 作った商品は「大足さんのための5本指ソックス」、「肌にやさしいオーガニックコットンレッグウォーマー」、「スマホショルダー」です。チーム間の競争意識も働き、完成度の高い商品を世に出すことができました。

 3年にわたって実施した社員研修。入社してから日の浅い社員にとっては、「先輩社員に質問し放題」という贅沢な時間にもなりました。能力の高い社員ほど普段は工場内を忙しく動き回っているため、つかまえて質問しにくい面もあるようです。しかし、研修の期間は他のすべての仕事をストップするので、先輩社員たちも「何でも教えてあげるよ」というリラックスムード。とことんつきあってくれるので、納得がいくまで商品作りに励むことができました。


<(3年目の様子)3回目(3年目)の研修テーマは「作った商品を実際に売ってみる」。モデルもカメラマンも社員が務め、ECサイトに掲載する商品撮影にも挑戦しました。>


 ただし、こうして作った商品が実際に売れるかは別問題です。自社のECサイトのみで販売していることもあり、今のところ3つの商品はほとんど売れていません。私はこの現実と向き合うことも貴重な研修だと感じています。

 なぜならば、独自のルートと販売力を持った取引先のありがたさを社員全員で痛感できたからです。私たちは「使う人のためのモノ作り」をしている生産のプロとしての自信は持っています。でも、販売のプロではありません。良い商品を作ったとしても、一定の商流にのらなければ消費者の手に届けることはできないのだと改めて知りました。

 かつて町にあった洋品店が減少している現在、従来の卸会社なども減っています。一方で、ネット通販などが伸びているのは周知の通りです。私たち工場は生産技術を磨きつつも、協業できる取引先を探し続けなければならないのです。

 社員が全体感を身に着けつつ、業界の基礎知識を学び直せて、商品開発と販売の大変さと重要性も知ることもできる――。完全に手作りの社員研修でしたが、模索しながら実践した価値は大いにあったと感じています。


<3年目の社員研修から生まれた3つの商品。その中では少しだけ売れているのが「スマホショルダー」。スマートフォンやキーケースを軽快に持ち歩けるニットバッグです。>



【石川メリヤス有限会社】

所在地:愛知県西尾市吉良町大字富好新田紺屋堀27-2

代表者:代表取締役 大宮裕美

設立:1962年4月

資本金:900万円

従業員数:29名(パート社員含む)

URL:https://ishimeri.com/

問い合わせメールアドレス:info@ishimeri.com


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