プレスリリース
「プラネタリウム100周年」公認の決定版書籍。プラネタリウムが、宇宙がもっと楽しくなる!
株式会社KADOKAWA(本社:東京都千代田区、取締役 代表執行役社長 CEO:夏野剛)は、2023年10月24日(火)に、井上毅 著『星空をつくる機械 プラネタリウム100年史』(KADOKAWA)を刊行いたしました。
2023年は、ドイツで近代的なプラネタリウムが誕生してから100年にあたる節目の年。日本プラネタリウム協議会(JPA)を中心に、日本各地でさまざまな記念事業がおこなわれています。
このたび刊行される『星空をつくる機械 プラネタリウム100年史』は、明石市立天文科学館の館長で、プラネタリウム100周年実行委員長である井上毅氏が、その歴史と裏側、そして天文の魅力をあますところなくつづった決定版です。
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本書「はじめに」より
プラネタリウムを見たことがあるだろうか?
「ある」と答えた方、きっかけはなんだろう? 「子供のころ家族と一緒に」「学校の遠足で」「デートで」「話題の作品があって」「星が見たくなって」「なんとなく」など、いろんな答えが返ってきそうだ。
プラネタリウムにはどんな思い出があるだろう。筆者が聞くと、「よく覚えていないけど」「星がきれいだった」「迫力にびっくりした」「解説が面白くて笑っていた」「隣のおじさんがいびきをかいていた」「なぜか涙で星がにじんだ」など話題が膨らんでいく。プラネタリウムと関係のないエピソードで盛り上がることも多い。プラネタリウムをきっかけとして思い出が次々に出てくる。独特の雰囲気を持っているためか、プラネタリウムは記憶の付箋のような存在になっている。
プラネタリウムの特有の雰囲気は、丸いドーム空間と、全天に広がる星空や映像によって作り出される。ところがその中心にどんな機械があったか覚えている人はあまり多くない。場所ですらあいまいなことさえある。なぜだろう。プラネタリウムの主役は星空であり、映像である。主役を引き立たせるために、設備は気配を消して、縁の下の力持ちの存在となっている。そのせいで、記憶に残っていないのだろう。とてももったいない。控え目だけど良い仕事をする「星空をつくる機械」は、魅力に満ちあふれている。
(中略)
本書ではまず近代プラネタリウム誕生の前史として、第1章と第2章で数千年前に及ぶ天文学の歴史を追ってみた。特にプラネタリウムの特徴といえる丸いドームのルーツである「天球儀」と、星の動きを再現する装置のルーツである「天体運行儀」について2章をかけて、詳しく眺めてみた。まとめているうちに筆が乗って、途中に余談のようなエピソードも紹介してみた。
第3章は、本書の一つの山場だ。近代プラネタリウムが誕生した時の様子を詳しく記述した。天球儀と天体運行儀が合流し、光学と電気の技術が加わって、感動的な発明がなされたようすを、ぜひ知ってほしいと思う。国内外の文献を可能な限り読み込み整理する作業は大変だったが、面白かった。本章ではプラネタリウムの仕組みについても紹介した。投影機の機構で疑問があるときは、館内のプラネタリウム投影機を間近に見て、繰り返しその仕組みを確認した。無言でプラネタリウムのそばで腕組みし、わかりやすい説明方法を考え続けた。館職員たちにはちょっと不気味に見えたかもしれない。
第4章では、プラネタリウムが世界に広がる様子、特に戦前・戦後に日本にツァイス・プラネタリウムが輸入され、定着していく様子を詳しく記述した。先行研究が非常に参考になった。第5章では、国産プラネタリウムの誕生についてまとめた。実に多くの人がプラネタリウム作りに魅せられた。第6章は後半の山場である。日本のプラネタリウムの発展を中心に現在に至る歴史を眺めた。メーカーの想い、各館のプラネタリウム担当者の情熱、新しい技術の開発経緯などを盛り込んだ。
(中略)
プラネタリウムを見たことがない方にもぜひ読んでほしい。とても不思議で面白い世界があると知ることは、大げさかもしれないが、人生にとって何らかのプラスになることだろう。可能なら、いろんなプラネタリウムを訪れて本書を読み返してほしい。日本には幸いなことに300のプラネタリウムがある。いろいろな気づきがあるだろう。そしてあなたのプラネタリウム体験を誰かに語ってほしい。その体験は、プラネタリウムの歴史における貴重なひとつのエピソードである。本書を読めばその意味が分かるだろう。
それでは、魅力あふれるプラネタリウムの歴史の旅に出かけよう。
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本文より
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目次
第1章 天球儀の歴史──プラネタリウム前史(1)
プラネタリウムのルーツとしての天球儀
古代メソポタミアでつくられた星座
古代エジプトで生まれたカレンダー
古代ギリシャの天文学
天球儀の誕生
ヘレニズム期天文学の大発展
プトレマイオスの『アルマゲスト』
古代ローマ時代における天文学
イスラム圏経由で発展した天文学
ゴットルプ天球儀
天球の中から見上げる星座
アトウッド天球儀
第2章 天体運行儀の歴史──プラネタリウム前史(2)
プラネタリウムのルーツとしての天体運行儀
天才アルキメデスの装置
アンティキテラ島の機械
独自に発展した東洋の天文学
時計とプラネタリウムの深い関係
ドンディのアストラリウム
医学と占星術と天文時計
コペルニクスと科学革命
国家的事業となった航海天文学
天体運行儀「オーラリー」の普及
アイジンガーのプラネタリウム
第3章 近代プラネタリウムの誕生
電気の技術
ミラーの夢とツァイス社との出会い
星空を展示する難しさ
投影式というアイディア
暗闇の映像技術
バウワースフェルトが開く扉
イエナの驚異
ツァイスI型のメカニズム
世界の星空を投影できるツァイスII型
ツァイスII型世界に広がる
第4章 世界へ広がるプラネタリウム
日本へ伝えられた「星を作る機械」
東洋初のプラネタリウム──大阪市立電気科学館
「星の劇場」に熱狂した人々
手塚治虫の愛したプラネタリウム
帝都の新名所──東日天文館
焼け野原に灯ったプラネタリウム
プラネタリウム界のフォード──米国スピッツ社
ドイツの戦後と2つのツァイス社
宇宙はクジラより大きい──天文博物館五島プラネタリウム
世界で最も美しいプラネタリウム──明石市立天文科学館
市民が日常的に感じる星の魅力──名古屋市科学館
地方で活躍した小型プラネタリウム──岐阜と旭川
第5章 国産プラネタリウムの誕生と発展
夢を作る男と夢を売る会社の合流──コニカミノルタの黎明
技術者たちの奮闘──コニカミノルタの発展
「天文学の民衆化」をスローガンに──五藤光学研究所の黎明
ドーム空間の可能性──五藤光学研究所の発展
イッツ・マイ・ホビー──大平技研の黎明
リアルな星空の追求──大平技研の発展
一世を風靡した金子式プラネタリウム
個人でプラネタリウムを作った人々
知られざる興和式と西村式のプラネタリウム
眠っていたペンタックス製プラネタリウム
国産初のプラネタリウムは?
第6章 日本のプラネタリウムの歩み
戦後復興と憧れの装置
プラネタリウムの自動制御──オート番組の登場
世界初「スペースシアター型」の開発
バブル期の急増と新たな課題
革命的なデジタル式プラネタリウムの誕生
デジタル式の普及と全天周作品の充実
美しい恒星をいかに表現するか
天の声はどこから聞こえる?
幻想的な星座絵の投影
4機のツァイス、その後の物語
人と人をつなぐプラネタリウム
多様化するプラネタリウムの可能性
宇宙開発の夢とプラネタリウム
天文学とプラネタリウムの100年
著者プロフィール
井上 毅 (いのうえ たけし)
1969年、兵庫県姫路市生まれ。名古屋大学理学部卒業、名古屋大学大学院理学研究科修了。旭高原自然活用村協会を経て、97年より明石市立天文科学館学芸員、2017年より館長。天文普及に携わり、「世界天文年2009」日本委員会企画委員、金環日食限界線研究会代表、日本プラネタリウム協議会「プラネタリウム100周年記念事業」実行委員長、軌道星隊シゴセンジャーの悪役・ブラック星博士(のマネージャー)などを務める。天文普及への貢献により、小惑星10616は「Inouetakeshi」と命名された。山口大学時間学研究所客員教授。専門は、天文教育、時の文化史、プラネタリウムの歴史など。著書に『時の記念日のおはなし』(明石市立天文科学館)、共著に『時間の日本史』(小学館)などがある。
書籍概要
『星空をつくる機械 プラネタリウム100年史』
井上 毅 著
定価: 2,640円 (本体2,400円+税)
発売日:2023年10月24日
判型:四六判・単行本
ページ数:280
ISBN:978-4-04-400735-5
https://www.kadokawa.co.jp/product/322208000917/
輝く星空を機械によって再現する──。そんな人類の夢をかなえる近代プラネタリウム第1号が、1923年10月、ドイツで生まれた。「宇宙への扉」をすべての人に開いたプラネタリウムの世紀、その知られざる物語とは? プラネタリウムの仕組みと歴史を第一人者がときあかす決定版。
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