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公益財団法人日本ユニセフ協会

栄養危機:消耗症の子ども1,000万人が治療受けられず【プレスリリース】

(PR TIMES) 2022年05月17日(火)11時45分配信 PR TIMES

ユニセフ新報告書発表


[画像1: https://prtimes.jp/i/5176/1956/resize/d5176-1956-c06032ccd1606197616d-0.jpg ]

【2022年5月17日 ニューヨーク発】

ウクライナ紛争の激化により、世界は、より深刻な食料危機に陥る恐れがありますが、それ以前から、重度の消耗症の子どもの数は増加しており、今ではさらに悪化しているとして、ユニセフ(国連児童基金)は、新しい報告書の中で警鐘を鳴らしています。

本日発表された「重度の消耗症〜見過ごされる子どもの生存危機〜(原題:Severe wasting: An overlooked child survival emergency)」によると、子どもの消耗症がより深刻化し、その治療にかかる費用も高騰しているにもかかわらず、そうした子どもたちの命を守るための資金調達は、世界的に困難になっています。

[画像2: https://prtimes.jp/i/5176/1956/resize/d5176-1956-51c71502f55b1c39d6d7-1.jpg ]

ユニセフ事務局長のキャサリン・ラッセルは、「ウクライナ紛争が世界の食料安全保障を圧迫する以前から、その他の紛争、気候変動、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、各家庭は、子どもに十分な食事を与えることができずにいました。世界では、予防可能な原因により子どもが命を落とし、消耗症に苦しむ子どもが増加するような一触即発の状況に急速に近づいています」と述べました。

現在、消耗症の子どものうち少なくとも1,000万人(全体の3人に2人)が、最も有効な治療法である「すぐに食べられる栄養治療食(RUTF)」を入手することができません。ユニセフは、ウクライナ紛争の激化などによる世界の食料安全保障への影響、パンデミックからの回復に苦しむ経済、気候変動により一部の国で干ばつが続いていることなどが重なり、消耗症が、世界で大きく増加する条件が整っているとして、警鐘を鳴らしています。一方、RUTFの価格は、原材料費の高騰により、今後6カ月間で最大16%上昇すると予測されています。このため、現在の支出水準では、命を守るための治療を受けられない子どもが、最大60万人増える可能性があります。また、輸送料や配送料も高止まりすることが予想されます。

[画像3: https://prtimes.jp/i/5176/1956/resize/d5176-1956-b7f070815a331021f03f-2.jpg ]

「毎年、何百万人もの子どもにとって、治療食を受け取れるかどうかは、生と死を分けるものです。16%の値上げは、世界の食料市場の状況からすれば対処可能に聞こえるかもしれませんが、サプライチェーンの末端には栄養不良の子どもたちがおり、彼らにとっては、このような状況は到底対処できるものではありません」(ラッセル)

重度の消耗症(身長に対して体重が少なすぎるために免疫力が低下している状態)は、栄養不良の中でも最も直接的で、目に見えやすく、命を脅かす形態です。世界では、少なくとも1,360万人の5歳未満児が重度の消耗症に苦しんでおり、この年齢層の死亡の5件に1件は重度の消耗症に起因しています。

南アジアは依然として、重度の消耗症のケースが最多で、およそ22人に1人の子どもが苦しんでいますが、これはサハラ以南のアフリカの3倍にあたります。またアフガニスタンでは、今年、110万人(2018年の約2倍)の子どもが重度の消耗症になると予想されています。アフリカの角(アフリカ大陸東部地域)では干ばつにより、重度の消耗症になる子どもの数が170万人から200万人に急増する可能性があり、サヘル地域では2018年と比較して26%の増加が予測されています。

[画像4: https://prtimes.jp/i/5176/1956/resize/d5176-1956-1cdfb0d58fda7e792d14-3.jpg ]

また、本報告書は、ウガンダなど比較的安定している国々でも、貧困や、家庭の食料不安が深刻化し、子どもや妊婦の食事の質や回数が不十分になったことで、2016年から子どもの消耗症が40%以上増加していることを指摘しています。厳しい干ばつが周期的に起き、安全な水を入手できず、衛生サービスへアクセスできないなど、気候に関連した影響が大きく、消耗症の子どもが増えているのです。

さらに報告書は、消耗症に対する支援は依然として極めて少なく、今後数年間で急激に減少すると見込まれており、2028年までに、パンデミック前の水準に回復する見込みはほぼないと警鐘を鳴らしています。新しい分析によると、世界で消耗症対策に使われた支援の額は、保健分野のODA(政府開発援助)全体のわずか2.8%であり、ODA支出全体では0.2%となっています。

重度の消耗症から命を守る治療を、すべての子どもに届けるために、ユニセフは以下のことを呼びかけています。

各国政府は、負担が大きい23カ国において、治療を必要とするすべての子どもたちに支援が届くよう、消耗症対策としての支援を、2019年のODA水準より少なくとも59%増額すること。
各国は、人道的危機下にいる子どもだけでなく、すべての子どもが治療プログラムを受けられるよう、子どもの消耗症の治療を、保健や長期開発の資金スキームに含めること。
世界的な食料危機に対処するための予算配分に、治療食による支援に充てる特別配分が含まれるようにし、重度の消耗症に苦しむ子どもの緊急のニーズに対応できるようにすること。
ドナーと市民社会組織は、支援を多様化させ、豊富にし、健全なものとなるように、消耗症に対する資金提供を優先すること。


※ 注記:RUTFについて
すぐに食べられる栄養治療食(RUTF)は、ピーナッツ、砂糖、油、粉ミルクの混合物を使用した脂質ベースの、エネルギー密度の高い微量栄養素ペーストで、個包装の小袋に詰められています。ユニセフは、RUTF調達を世界的に主導しており、世界各地にある20以上のメーカーから、世界の供給量の約75〜80%を購入し、配布しています。

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■ ユニセフについて
ユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。 http://www.unicef.or.jp/
※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます
※ ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています

■ 日本ユニセフ協会について
公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 http://www.unicef.or.jp/



プレスリリース提供:PR TIMES

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