プレスリリース
ベネッセ、全国1,062園に「これからの保育を考えるための基礎調査」を実施「子ども主体が重要」と考える園が99.7% 一方、実現できている園は約2割
調査結果をもとに、これからの保育を考える「保育サミット」7/19(水)オンライン開催
株式会社ベネッセコーポレーション(本社:岡山県岡山市、代表取締役社長:小林 仁)は、玉川大学教育学部教授の大豆生田啓友先生・岩田恵子先生と共に、幼児教育における「子ども主体」の現状を把握する実態調査を、全国の幼稚園・保育園・こども園、合計1,062園を対象に実施した結果を発表いたします。
また、調査結果を踏まえ、2023年7月19日(水)に、園種を超えてこれからの保育を語る「保育サミット」と、当日参加メディアの方限定での質疑時間(対応者:大豆生田啓友先生、ベネッセ調査担当)をオンラインで開催(p6〜7参照)いたします。
【調査実施の背景】
2023年4月「こども家庭庁」の創設と共に、こども基本法が施行され、「こどもまんなか社会」として子どもの人権を尊重し、「権利主体」としての子どもの声を聴くことの必要性・重要性が定義されました。幼児教育においては、それに先駆けて、2017年3月に「保育所保育指針」をはじめ、3法令が同時改訂され、「子ども主体」の保育の重要性が謳われてきました。この改訂から5年経ち、各園で取り組みが進んでいますが、その状況は園によって様々です。
このような中、ベネッセコーポレーションでは、2020年4月に、「子ども主体の保育」の実現を支援する園向けサービス「保育ドキュメンテーション」を、株式会社コドモンと共同開発のもと、リリースしました。現在、保育園・幼稚園・こども園などを中心に、5000以上の施設でご利用いただいています。このサービスの提供を通して、多くの園の先生方から、自園での「子ども主体」保育の実現に関する様々な悩みを伺ってまいりました。こうした状況を踏まえ、「保育ドキュメンテーション」監修の大豆生田先生・岩田先生と、園種を超えて現在の幼児教育全体を俯瞰し、「子ども主体の保育」の取り組み実態を把握するとともに、これからの日本の幼児教育・保育の質向上への足掛かりを探るため、本調査の実施に至りました。子育てや保育にかかわる多くの方々に、「子ども主体」のあり方を考えるための情報としてご活用いただきたく、分析結果をご報告します。
■「これからの保育を考えるための基礎調査」結果サマリー
1.「保育が“子ども主体”であることが重要」と考える園が99.7%
2.「子ども主体」を実現している園は全体の約2割
3.「子ども主体」の実現には、記録・計画・対話が重要
―記録については「ドキュメンテーション」の活用が増えている
4.「子ども主体」ではない園は、採用や離職の課題を抱えやすい
5.保護者の意識も「子ども一人ひとりの個性や自主性の尊重」に向いている
■考察 「子ども主体」を実現するために 玉川大学教育学部 教授 大豆生田啓友先生・岩田恵子先生
1.「主体性」と「自主性」の違い
活動に子どもたちが自分から進んで参加するかどうか、という「自主性」と、子ども自身が「そうありたい」「そうしたい」と思ったようにいられるか、という「主体性」の違いが混同されやすいことが見えてきました。子どもそのままの「ありよう」を受け止めたうえで、保育者が子どもと思いを共にしようとする「主体性の尊重」ができているかどうかは、一つの大きな論点になりそうです。
2.「子ども主体」と「協同性」の両立
子ども一人ひとりの興味関心を大切にしたい一方で、子どもたちの「協同性」を育むための「一斉活動」をやめられない。そんなジレンマを持つ園が多くあることも見えてきました。「協同性」について、「みんなが同じであること」「同じことをすること」を求めるのではなく、それぞれの違いをも大切にしながら「子どもも保育者も共に取り組み、成し遂げていくプロセス」だと考えることが、このジレンマの解消につながりそうです。
■調査結果詳細
1.「保育が“子ども主体”であることが重要」と考える園が99.7%
「子ども主体の保育」を「自分の言葉で説明できる」という園は7割程度にとどまりましたが、保育が“子ども主体であること”について、99.7%が「重要である」と考えていることがわかりました。なお、この結果は保育園・幼稚園・こども園の種別を問わず、ほぼ同様の結果となり、園種を超えて「子ども主体」の重要性が認識されていることが明らかになりました。
また、今後「もっと子ども主体を実現したい」と思っている園は約9割で、幼稚園は他と比べるとやや低い傾向にあります。
■図1 「子ども主体」についての理解度・重要度・今後の意向
[画像1: https://prtimes.jp/i/120/1160/resize/d120-1160-de432c72f4df46bde243-8.png ]
2.「子ども主体」を実現している園は全体の約2割
「子ども主体」の実現度を測るにあたり、「変化への柔軟性」と「保育内容が大人主導か子どもの姿ベースか」の2点が重要な評価指標となり、4つのグループに分類できることがわかりました。
特に、「子ども主体」を尊重している層は、全体の約2割で、子どもへの関わりが応答的で、一人ひとりの子どもの姿から保育の計画を柔軟に見直す形で実現できていることが明らかになりました。一方、「子ども主体」へ試行錯誤中のグループは約3割で、実現できている層との主な違いは、園内の一体感や保育者同士の子どもの姿の語り合いの有無、記録の充実度などのようです。
また、「一人ひとり」ではなく「集団としての活動」を重視する層は約5割と半数を占めており、先生の統制的なかかわりや一斉活動が多く、「予め決めた計画通りに活動する」傾向が強いことがわかりました。
■図2 園の保育の実態の分類
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3.「子ども主体」の実現には、記録・計画・対話が重要
「子ども主体」を実現しているグループとほかのグループとの比較から、「子ども主体」を実現する園には、以下の特徴があることがわかりました。
1. 子どもの姿に合わせて柔軟に計画を変更している
2. 保育のエピソードを様々な形で記録し、多様な活用をしている
3. 先生同士が子どもの姿を語り合い、安心できる雰囲気の中で保育をしている
なかでも、「記録」については、活動の様子を写真とコメントで記録する「ドキュメンテーション」を既に活用している園は約半数、これから活用しようと考えている園も含めると全体の78.9%となることがわかりました。特に「子ども主体」を実現しているグループでは、76.4%がすでにドキュメンテーションを活用しており、今後活用しようと考えている園を含めると91.1%と、「子ども主体」の実現のためのドキュメンテーションの有効性を示す結果となりました。
■図3:保育ドキュメンテーションの実施状況
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一方で、この「ドキュメンテーション」の活用については、「保護者への活動報告」としての活用にとどまり、本来の子どもの思いを「記録」し、保育を考えていく方向での活用を十分にできていない園が多いこともわかりました。保護者向けの掲示物だけではなく、クラス日誌や連絡帳などの他の書類としても活用するには、ICTの活用などを通して「業務の追加」ではなく「業務の置き換え」を行うことが重要であると考えられます。
■図4:ドキュメンテーションの活用状況
[画像4: https://prtimes.jp/i/120/1160/resize/d120-1160-96db7903009e7d422848-11.png ]
4.「子ども主体」ではない園は、採用や離職の課題を抱えやすい
「子ども主体」でない園は職員の採用や離職という問題も抱えやすく、職員体制が整わない傾向がみられ、安全リスクへの課題があることが示唆されました。
■図5:採用・離職・安全管理に関する課題感を持っている園の割合
[画像5: https://prtimes.jp/i/120/1160/resize/d120-1160-fdf2e1255680f45fffd7-12.png ]
5.保護者の意識も「子ども一人ひとりの個性や自主性の尊重」に向いている
保護者が園選びの基準として重視するのは「地の利」「子どもが楽しそうに過ごしていること」に次いで、「一人ひとりの個性や自主性の尊重」であることが明らかになりました。
■図6:保護者が園選びの際に重視すること
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【今回の調査を受けて思うこと】(玉川大学教育学部教授 大豆生田啓友先生)
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2023年4月「こども家庭庁」の創設と共に、こども基本法が施行され、「こどもまんなか社会」として子どもの人権を尊重し、「権利主体」としての子どもの声を聴くことの必要性・重要性が定義されました。
今回の調査では、園種の違いに関係なく、保育・幼児教育として一貫して「子ども主体」への流れが起きていることが、初めて実態として示されたのではないかと思います。この結果から示された「子ども主体」の実態と、現場の抱える課題については、幼稚園・保育園・こども園、そして自治体の方々など、すべての幼児教育・保育にかかわる人が考え、取り組むべきことなのではないでしょうか。まずは多くのかたに、この調査結果を知り、そこから自園の保育・幼児教育のありかたを改めて考えていただきたいと思います。
【調査概要】
<園調査>※結果1〜4
調査期間:2023年1月〜2月、調査対象:日本全国の保育園・幼稚園・こども園、調査方法:インターネット調査、有効回答数:1062園(認可保育園:466園 認可外保育園:152園 幼稚園:178園 認定こども園:266園)
<保護者調査> ※結果5
調査期間:2023年1月、調査対象:0歳児以上の未就園児を持つ保護者、調査方法:インターネット調査、有効回答数:1030名
※調査結果・考察の詳細については、ベネッセコーポレーションの保育ポータルサイトで公開しています。
https://hoiku.benesse.ne.jp/info/20230428/index.html
<ご参考>
【保育サミット開催のお知らせ】
園種を超えて「子ども主体」を語る 〜未来を生きる子どもに、わたしたちができること〜
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本調査結果を踏まえて、2023年7月19日(水)に、「保育サミット〜園種を超えて語り合う〜『未来を生きる子どもに、わたしたちができること』」を開催いたします。玉川大学教育学部大豆生田先生・岩田先生と共に、保育・幼児教育の現場で経験を積んでこられた有識者5名と、幼稚園・保育園・こども園のそれぞれの立場から、これからの「子ども主体」教育について考えてまいります。
セミナー終了後に、当日参加メディアの方限定での質疑時間(対応者:大豆生田啓友先生、岩田恵子先生、ベネッセ調査担当)を設けます。ご多忙中とは存じますが、ぜひこの機会に、ご参加賜わりますよう宜しくお願い申し上げます。
■セミナー概要
日時:2023年7月19日(水)15:00〜16:30(メディア向け質問会 16:30〜16:45)
開催方法:オンライン(zoom)
登壇者:玉川大学教育学部 教授 大豆生田啓友先生・岩田恵子先生
パネリスト(氏名50音順):社会福祉法人檸檬会 副理事長 青木一永先生
舞鶴市乳幼児教育センター 所長 飯田美和先生
広島県・順正寺こども園 園長 伊藤唯道先生
福井県・めぐみこども園 園長 中戸華恵先生
神奈川県・ゆうゆうのもり幼保園・港北幼稚園 園長 渡邉英則先生
■セミナー内容
15:00〜16:30
第一部:園調査から見えた「子ども主体」の理想と現実
- 調査結果のご報告(ベネッセ・村上)
- 結果考察「子ども主体の実現のために必要なこと」(岩田先生・大豆生田先生)
第二部:パネルディスカッション
「垣根を超えて考える これからの保育・幼児教育における“子ども主体”」
- ファシリテーター:大豆生田先生
16:30〜16:45
メディア・報道関係者質問会
■セミナー申し込み方法
ご参加希望の方は、以下URLよりお申し込みください。ご視聴用URLをお送りいたします。
申込期限:2023年7月18日(火)17:00
1.一般の方向け 申込URL https://info-hoiku.benesse.ne.jp/seminar/hoikusummit2023/
2.報道関係の方向け 申込URL https://info-hoiku.benesse.ne.jp/seminar/hoikusummit2023/media/
※セミナー実施についての記事を発信いただける場合、2.報道関係の方向け申込URLの記載はお控えください。
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