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株式会社帝国データバンク

後継者「不在率」、過去最低の52.1% 事業承継「脱ファミリー化」進む 跡継ぎ候補にベテラン志向 「豊富な経験」後継者に求める傾向強まる

(PR TIMES) 2024年11月22日(金)12時15分配信 PR TIMES

全国「後継者不在率」動向調査(2024年)


[画像1: https://prtimes.jp/i/43465/971/resize/d43465-971-901011-pixta_91627580-0.jpg ]


地域の経済や雇用を支える中小企業。しかし、近年は後継者が見つからないことで、事業が黒字でも廃業を選択する企業は多い。日本政策金融公庫が2023年に実施した調査では、60歳以上の代表者のうち60%超が将来的な廃業を予定していた。

足元では後継者問題が改善に向かっている。ただ、事業承継中に発生した想定外の事態などで事業承継が円滑に進まない事例もみられ、後継者「決定後」のサポートも欠かせない。

帝国データバンクでは、信用調査報告書ファイル「CCR」(200万社収録)など自社データベースを基に、2022年10月-24年10月の期間を対象に、事業承継の実態について分析可能な約27万社(全国・全業種)における後継者の決定状況と事業承継について分析を行った。同様の調査は2023年11月に続き11回目。

<調査結果(要旨)>
- 2024年の後継者不在率は52.1% 調査開始以降で最低値も、改善ペースは鈍化傾向- 「50代・60代」で後継者不在率が悪化 「80代以上」は全年代で最低- 「三重県」34.1%、4年連続で全国最低水準 「秋田県」72.3%で全国最高水準- 事業承継で「脱ファミリー化」が加速、後継候補に「ベテラン」求める志向が強まる
後継者不在率の推移
2024年の後継者不在率は52.1% 調査開始以降で最低値も、改善ペースは鈍化傾向
全国の全業種約27万社を対象とした2024年の後継者動向を調査した結果、後継者が「いない」、または「未定」とした企業は14.2万社に上った。この結果、全国の後継者不在率は52.1%となり、23年から1.8ポイント(pt)低下した。7年連続で前年の水準を下回ったほか、コロナ前の19年に比べると13.1ptも低下するなど改善傾向が続いた。
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事業承継に関する官民の相談窓口が全国に普及し、プル・プッシュ型の各種支援メニューも拡充されたことで、従前は支援対象として手が届かなかった小規模事業者にも門戸が広がった。自治体や地域金融機関などの支援機関が事業承継を呼びかけるアナウンス効果も加わり、事業承継の重要性が広く認知・浸透したことが、後継者不在率の改善に大きな影響力を発揮したとみられる。他方で、前年からの改善幅はコロナ禍以降では2020年に次いで2番目に小さく、後継者不在率の改善ペースは鈍化傾向がみられる。
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/43465/971/43465-971-716ac7f40f22843492ecfe42668d6a7f-579x522.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


近時は経営環境の急激な変化により事業承継を中断したケースや、現代表者による後継者選びの見直し、あるいは後継者候補だった人物の辞退や退社といったケースなどもみられる。2023年調査と24年調査の後継者策定状況が比較可能な企業で、後継者が「不在」だった約9万社の動向をみると、23年以降に代表者交代を行ったことで後継者を決めていない「承継直後」が3.1%、23年時点では後継者候補がいたにも関わらず24年に後継者不在となった「計画中止・取りやめ」が全体の2.7%となった。年代別にみると、「計画中止・取りやめ」の割合は「40代」「50代」で2%台と低位な一方、「70代」では後継者不在のうち4.3%が、「80代以上」では全国平均の約2.6倍にあたる7.0%に拡大した。事業承継が中断・頓挫した要因は多岐にわたるものの、高齢での事業承継では中断・白紙といったリスクがより高い傾向にある。

年代別:「50代・60代」で後継者不在率が悪化 「80代以上」は全年代で最低
2024年の後継者不在率は、代表者年代によって動向が分かれた。全年代で最も減少幅が大きかった「70代」(28.5%、1.3pt減)など高齢層で減少が続いたほか、「30代」(81.8%、1.1pt減)など若年代表者でも後継者不在率が大幅に低下した。一方で、「50代」は3年ぶりに、「60代」では連続した比較が可能な2016年以降で初めて悪化に転じた。
[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/43465/971/43465-971-52e61aee4476ae5b7f9be35778918ba4-807x536.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


都道府県別:「三重県」が4年連続で全国最低水準 「秋田県」が72.3%で全国最高水準
都道府県で最も不在率が低いのは「三重県」で34.1%だった。2021年以降、4年連続で全国最低水準となった。「地域金融機関などが密着して支援を行っていることに加え、経営や商圏が比較的安定している企業も多い」などの理由から、同族内で経営を引き継ぎやすい環境が整っていることなどが背景にある。同県では18年にピークとなる69.3%を記録して以降、不在率の急激な低下がみられたものの、22年を境に上昇傾向にある。この他、不在率が全国平均(52.1%)を下回る都道府県は23に上った。
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後継者不在率が全国で最も高いのは「秋田県」で、全国平均を大幅に上回る72.3%だった。同県が全国で最高となるのは2011年の調査開始以降で初めて。不在率が70%を超えたのは秋田県と、2023年に全国で最も高かった「鳥取県」(70.6%)の2県のみだった。後継者不在率の高い地域では、総じて同族承継などファミリー経営の企業が多く、親族以外の第三者に経営権を移譲することへの抵抗感が依然として根強いケースも少なくない。また、後継者候補となる若年層が都市部へ流出するなど経営人材の不足が深刻化しており、地域経済の活性化に課題を抱える地域などで影響が大きかったとみられる。2011-20年の調査まで一貫して全国で不在率トップだった「沖縄県」(65.3%)は低下が続き、全国5番目の水準となった。

後継者不在率が60%を下回る都道府県は37となり、前年(35)を上回って過去最多を更新し、全国的に後継者問題は改善傾向にある。ただ、前年から不在率が低下した都道府県は36と前年と同水準で、改善度合いは地域によって濃淡もみられる。最も不在率の低下幅が大きかったのは「滋賀県」(2023年:52.9%→2024年:45.9%、7.0pt減)、最も上昇幅が大きかったのは「三重県」(同30.2%→34.1%、3.9pt増)だった。


業種別:全産業で不在率60%を下回る 調査開始以降で初
業種別では、2011年以降の調査期間で初めて、7業種すべてで不在率60%を下回った。24年の不在率が最も高かったのは「建設業」(59.3%)だが、過去最も高かった18年(71.4%)に比べて12.1pt、前年比でも1.2pt低下するなど改善傾向が続いた。
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最も低いのは「製造業」(43.8%)で、現状のペースで改善が進んだ場合、2020年代に不在率40%を下回る可能性がある。製造業では自動車産業をはじめ、サプライチェーン(供給網)を構成する企業の事業承継問題が全体の供給網に影響を及ぼしかねないとの認識が広がっており、重点的な支援が行われてきたことも、後継者不在の改善に大きな役割を果たしたとみられる。

業種をより細かくみると(中分類)、最も不在率が高かったのは自動車ディーラーなど「自動車・自転車小売」の64.9%となり、住宅建築などの「職別工事業」(63.0%)、病院・診療所(クリニック)など「医療業」(61.8%)が続いた。不在率が60%台となったのは上位5業種のみ。最も不在率が低いのは「金融・保険業」(34.1%)だった。



2024年の事業承継動向
就任経緯別:「脱ファミリー化」が加速、後継候補に「ベテラン」求める志向が強まる
2020年以降の過去5年間で代表者交代が行われた企業のうち、前代表者との関係性(就任経緯別)をみると、24年(速報値)の事業承継は血縁関係によらない役員・社員を登用した「内部昇格」によるものが36.4%に達した。これまで事業承継の形式として最も多かった「同族承継」(32.2%)を速報値段階で上回った。2023年(実績値)は「同族承継」(36.0%)が最も多かったものの、「内部昇格」が占める割合との差は1.6ptまで縮小した。
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2024年は買収や出向を中心にした「M&Aほか」(20.5%)、社外の第三者を代表として迎える「外部招聘」(7.5%)など、社外の第三者を経営トップとして迎え入れる事業承継の割合も増加傾向が続いた。日本企業における事業承継は、これまで最も多かった身内の登用など親族間承継から社内外の第三者へと経営権を移譲する「脱ファミリー化」の動きが加速している。

2022-24年の3年間で代表者交代が行われた企業のうち、後継者として就任した後任代表者の業界や経営経験の有無を分析した。その結果、24年は業界経験が「10年以上」ある後任代表者が8割超を占め、業界に精通した人材が多く代表者として就任した。このうち、「経営経験の有無」について分析したところ、最も割合が高かったのは「3年未満」(59.0%)で、多くがベテラン社員や役員として業界経験が長いものの、経営経験が少ない人材だった。一方、業界に明るく経営経験も豊富な人材が後任代表者として就任する割合も増えており、24年は業界・経営経験がともに10年以上の割合が14.2%を占め、22年(13.6%)から拡大傾向が続いた。

近時の事業承継では「社長経験者」など、外部のベテラン人材を後継候補として求める傾向もみられる。
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後継者候補属性:「親族」「非同族」の割合が拡大 「ファミリー」承継は低下傾向続く
後継者候補が分析可能な全国約12.7万社の後継者属性をみると、最も多いのは「非同族」の39.3%で、前年を1.8pt上回った。2023年調査に続き、後継者候補は「非同族」が3年連続でトップとなった。同族承継では「子ども」(31.4%)、「配偶者」(4.9%)はともに前年から低下した一方で、「親族」(24.4%)は前年から上昇するなど、承継先の傾向が分かれた。
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現代表者の就任経緯別にみると、「外部招聘」によって現代表者が就任した企業では、後継者候補を「非同族」とする割合が9割に達した。「内部昇格」でも、非同族を後継者候補に据える傾向に変化はなかった。

後継者候補で「非同族」以外の割合が大きいのは、現代表者が「創業者」と「同族承継」企業のみだった。ただ、こうした企業でも後継候補を身内以外の第三者となる「非同族」に求める傾向が強まっており、「同族承継」における後継候補「非同族」の割合は前年比1.2pt、「創業者」は2.9pt、それぞれ上昇した。ファミリー企業でも、親族外事業承継=脱ファミリーへ舵を切る動きが強まっている。
今後の展望・見通し
「事業承継問題」警鐘に大きな成果 今後は「策定」から先のステージで重点的な支援が求められる
コロナ以前から官民一体となって推し進めてきた事業承継への啓蒙活動や支援が中小企業にも浸透・波及し、後継者問題に対する代表者側の意識改革が進むなど、後継者問題への取り組みは一定の成果を上げている。他方で、後継者不在率の低下幅は前年に比べて縮小するなど、改善ペースには鈍化の兆しがみられる。代表者の交代のほか、当代での店じまいを決断した高齢代表者など事業承継を望まない層も多く、後継者不在率は50%前後で当面推移する可能性がある。

企業の約半数が後継者候補を「決めた」なかで、今後は経営引き継ぎなど具体的な承継ステージにおける支援の在り方が重要性を帯びてくる。帝国データバンクが集計した「後継者難倒産」は2024年1-10月で455件発生し、過去最多だった23年同期と同水準で推移している。近時は「後継者育成」に頓挫し、承継完了が間に合わずに事業継続を断念するケースも目立つ。

現代表者が後継者候補を一旦は選定したものの、その後白紙化するケースが2024年調査にも一定割合で発生した。現代表者が能力面や素質面などから後継者への経営引き継ぎに消極的、または後継者候補と目した人材から事業承継を断られるなど、事業承継に携わる当事者の間で「認識の差=ミスマッチ」に端を発した、いわゆる「あきらめ」防止が課題となる。

後継者不在の中小企業を狙った悪質な「M&A仲介」による事件、今後の影響に注視
事業承継の手法として近年注目された「事業承継型M&A」の動向も焦点となる。後継者がいない中小企業の代表者が仲介業者を通じて売却したものの、買収元企業により給与遅配や税金未納など健全な企業経営が行われない、個人保証が解除されないといったトラブルが相次ぎ表面化している。事業の「第三者承継」へのシフトが鮮明となるなかで、有力な選択肢だったM&Aによる事業承継に影響を及ぼしかねず、後継者不在率の動向とともに事態の注視が必要となる。


参考データ:各種統計データ集
後継者難倒産の現状と今後の見通し
2024年1-10月に発生した、後継者がいないことで事業継続が困難になった「後継者難倒産」(負債1000万円以上、法的整理)は455件となった。過去最多だった2023年・564件とほぼ同水準(前年同期比1.7%減)で推移したものの、月次ベースでは2024年10月に過去最多の63件を記録するなど増勢ペースは加速している。通年では、2年連続で500件を上回る高水準での推移が見込まれる。
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後継者の選定・育成ができないまま代表者が活動できなくなるといった「不測の事態」に対応しきれず、事業継続を断念したケースが近時は目立っている。2024年の後継者難倒産のうち、代表者の病気または死亡により、事業が立ち行かなくなり倒産に至ったケースは189件に上り、全体の4割を超える水準で推移している。

足元では、当代限りで廃業するといった決断を下す事業者も多い。日本政策金融公庫の調査[1]では、後継者が決まっておらず、「自分の代で事業をやめるつもりでいる」とした企業が、2023年調査時点で57.4%に達した。2015年(50.0%)から大幅に上昇しており、同公庫は「中小企業が次々に廃業していくという問題は、より深刻化しているということができるだろう」と分析している。

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」が目前に迫るなか、代表者が70代の後継者不在率は依然として約3割に近い水準で推移している。ゼロベースからの事業承継には、一般に最長10年程度の準備期間が必要とされるなかで、仮に70代から事業承継に着手したとしても、代表者の病気・死亡により後継者育成に支障をきたすリスクは非常に高い。代表者が高齢で後継者がいない、円滑な事業承継が進まない企業を中心に、後継者難倒産が今後も発生する可能性が高い。

[1] 日本政策金融公庫「中小企業における事業承継問題の実態と変化」(日本政策金融公庫 調査月報 2023 No.179)



プレスリリース提供:PR TIMES

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