プレスリリース

扶桑社海外文庫の『５分間ミステリー』（カナダの元大学教授ケン・ウェバー著）は、当時世界中で22ヵ国語に翻訳され、日本でも50万部を超える大ヒットとなった。
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その後『５分間ミステリー』では、犯行現場のイラストから事件の真相を推理する『絵解き5分間ミステリー』（往年のミステリー作家ローレンス・トリート著）を刊行。その流れをくむ新作が、『あなたが陪審員』、『裁くのはきみだ』のシリーズ２作品（著者は、ビジュアル・ミステリーの名手マーヴィン・ミラー）である。

舞台は法廷。読者は陪審員として、裁判の概要を読み、提示された証拠書類や現場のイラストから嘘や矛盾を見つけ、事件の評決をくだす、というミステリークイズだ。


クイズに挑戦！「危険なゴルフボール訴訟」


これから、証拠物件A、B、Cが提示されます。それらの証拠を入念に検討してください。評決をくだす手がかりがそこにあります。その手がかりが、被告が無罪か有罪かをはっきりと示しています。

陪審員の皆さん
ゴルフをしている最中にボールが頭にあたっても、文句は言えない。ゴルフコースに一歩足を踏み入れたら、危険な目にあうかもしれないことは承知しているからだ。しかし、自分の家のなかに立っているときにゴルフボールが頭にあたったら、話はまったく違う。

本日、審理するのはそのような訴訟だ。原告のジェイソン・コンプソンは住宅エリア“グリーン・エーカーズ・ホームズ”に建つ家の所有者である。彼は家のなかにいるときに、コースをはずれたボールがあたったとして、その住宅エリアを造成した会社を訴えている。被告の宅地開発業者〈グリーン・エーカーズ〉は、ミスター・コンプソンが怪我をしたというのはまったくのでっちあげで、会社に嫌がらせをしようとしているだけだと主張している。

ミスター・コンプソンはつぎのように供述している。

「私の名前はジェイソン・コンプソンです。二年まえ、〈グリーン・エーカーズ〉が宅地開発計画の第一期で建てた家を購入しました。私の家を含め、六十軒が、九ホールある居住者専用のゴルフコースを囲むように建っています。家の購入者はゴルフクラブへ入会するよう勧誘されました。そのクラブは宅地開発計画の一環として、会員限定のレクリエーションセンターになるはずでした」

一年目、ゴルフクラブへ入会する人は数えるほどしかいなかった。クラブは、会員が増えなければ経営が成り立たなくなると考え、方針を変えて、居住者以外の一般市民にも入会を認めると発表した。

その計画に見あうよう、クラブは九ホール増設することを決め、ミスター・コンプソンの所有地周辺の木を切り倒した。

ミスター・コンプソンは憤慨した。家を購入した当初は、テラスで坐って木々の並ぶ景色を楽しむことができた。ゴルフコースまでは距離があったので、ほとんど見えなかった。ところが新たにコースが設けられたことで木々がなくなり、テラスからおよそ五百メートル離れたところにある六番ホールのティーグラウンドが丸見えになった。

新たなコースを増設するにあたって〈グリーン・エーカーズ〉は、ゴルフボールは彼の家のほうには飛ばないようにすると確約した。しかし、景観については何も言わなかった。ミスター・コンプソンは、テラスから六番ホールのティーグラウンドが見えること以外にも、窓を開けているとゴルファーたちのひっきりなしにしゃべっている声が家のなかまで聞こえてくると苦情を言った。

ミスター・コンプソンは非常に腹を立て、〈グリーン・エーカーズ〉に六番のティーグラウンドを別の場所に移させようとした。彼が言うには、ゴルファーたちの「キャディー！」と叫ぶ声を聞くと精神的苦痛をおぼえるし、コースからそれたゴルフボールで身の危険に晒されているとのことだった。

ある日、ミスター・コンプソンの予想が現実になった。書斎で高価な鏡を壁にかけようとしていたとき、ゴルフボールが窓から飛び込んできて、頭にあたったのだ。鏡をつかんでいた手がゆるみ、鏡はマントルピースにあたって床に落ちた。


ミスター・コンプソンは怪我を負い、鏡は粉々に割れた。マントルピースにも大きな傷がついた。

彼は怪我による痛みと精神的苦痛を理由に〈グリーン・エーカーズ〉を訴え、新しい鏡の購入とマントルピースの修理にかかる費用を請求した。さらに、今回の事故は六番ホールのティーグラウンドが安全な位置にはないことの証しだと主張し、〈グリーン・エーカーズ〉に六番ティーを彼の家から離れたところに移すよう求めた。

証拠物件Aはミスター・コンプソンの書斎と割れた鏡を示している。割れた窓を見れば、ゴルフボールが鏡がかけられようとしていた位置を直撃したことがわかる。

証拠物件Bは事故の二日後に撮られたミスター・コンプソンの写真だ。彼の弁護士は、大きな絆創膏と、ミスター・コンプソンの目のまわりの痣に注目してほしいと述べている。怪我が治るまでに二週間以上かかるとのことだ。

〈グリーン・エーカーズ〉の経営陣は、ミスター・コンプソンとは異なる見解を示している。今回の事故は起こりえたはずがないというのだ。さらに、ミスター・コンプソンから繰り返し脅されていたと述べている。

〈グリーン・エーカーズ〉の副社長はつぎのように証言している。

「コンプソンであることを確認するのに、証拠物件Bはもちろん、どんな写真も必要ありません。彼はどこにいても声でわかります。ゴルフコースを増設してから毎日、少なくとも日に一回はわれわれのオフィスに電話をかけてきて、音がうるさいと文句を言ってきます。それに、ときおりゴルファーがそれたボールを探しに家の裏庭にはいってくる、うちの敷地に不法侵入している、とも」

〈グリーン・エーカーズ〉はコンプソンの自宅の近くに警備員を配置したが、騒音やゴルファーの侵入といったコンプソンの言い分が事実であるとは認められなかった。

〈グリーン・エーカーズ〉はミスター・コンプソンがクラブを困らせようと文句を言っていると主張している。同社は六番ホールのティーグラウンドとコンプソンの家との位置関係を示すものとして、証拠物件Cを提出した。六番ティーの位置からすると、ゴルファーの打ったボールがミスター・コンプソンの家の窓を突きやぶるとはおよそ考えにくい。

また〈グリーン・エーカーズ〉は、コンプソンがわざと事故を装い、自分で鏡とマントルピースを破損させたと主張し、事故の目撃者もいないと述べている。

〈グリーン・エーカーズ〉は裁判所にコンプソンの訴えを棄却するよう求め、彼にクラブやゴルファーたちを煩わせるのをやめさせてほしいと訴えている。
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陪審員の皆さん
危険なゴルフボール訴訟の概要は以上です。ジェイソン・コンプソンの主張の理非を裁定してください。証拠物件A、B、Cで示されている証拠を入念に検討すること。

ゴルファーが六番ティーからボールを誤って、ジェイソン・コンプソンの家の窓から室内に打ち込んだ可能性はあるでしょうか？ それとも、彼が事故を装って、ゴルフコースが増設されたことへの恨みを晴らそうとしているのでしょうか？（『あなたが陪審員』より出題）


評決（答え）


事故は自作自演である。

事故はジェイソン・コンプソンがでっちあげたものだ。証拠物件Bには、額に大きな絆創膏を貼っているコンプソンが写っている。もし鏡をかけようとしていたときに事故が起きたならば、窓に背を向けていることになる。事故が事実ならば、背中を負傷していたはずだ。


『あなたが陪審員』、『裁くのはきみだ』ではそれぞれ全20問ずつを収録。市民同士のいざこざを扱う民事裁判から、強盗や傷害といった刑事事件まで、さまざまな法廷クイズにぜひチャレンジしてほしい。裁判員裁判で市民の司法への参加が進められるいま、児童・生徒が楽しみながら裁判を体験し、学ぶ機会としても最適だ。


書誌情報

『あなたが陪審員』
マーヴィン・ミラー(著/文)　高橋知子(翻訳)
発売：2022年3月2日
定価：935円（850円+税）
判型：文庫判　208ページ
ISBN：978-4-594-08998-6

■購入リンク
Amazon
https://www.amazon.co.jp/dp/4594089984
楽天ブックス
https://books.rakuten.co.jp/rb/17037429/

『裁くのはきみだ』
マーヴィン・ミラー(著/文)　高橋知子(翻訳)
発売：2022年9月2日
定価：935円（850円+税）
判型：文庫判　208ページ
ISBN：978-4-594-09225-2

■購入リンク
Amazon
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楽天ブックス
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本書に関するお問い合わせ

株式会社　扶桑社　宣伝PR宛
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