プレスリリース
「カスタマーハラスメント」に関する企業の意識調査
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カスタマーハラスメントのイメージ
「顧客や取引先などからのクレーム・言動のうち社会通念上不相当なものであり、その手段・態様により、労働者の就業環境が害されるもの」と定義されるカスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」)。
カスハラは、企業対個人に限らず、企業対企業でも起こり得る。著しい迷惑行為により、従業員の精神的苦痛や退職リスク、業務効率低下などの悪影響が生じる恐れがあるため、厚生労働省では有識者検討会を通じて、企業に従業員保護を義務付ける法整備を進める方針を示した。
なお、東京都ではカスハラ防止条例を今秋、都議会に提出し、制定されれば全国初となる見通しだ。
そこで、帝国データバンクは、カスハラに関する企業の意識について、全国の企業に調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2024年6月調査とともに行った。
<調査結果(要旨)>
- 直近1年でカスハラ被害が「ある」企業は15.7%、「ない」(65.4%)は「ある」の4倍以上。業界別では、主に個人を顧客とする小売業で「ある」が業界全体の約2倍- カスハラへの対応策や取り組みの有無はほぼ二分される。具体的な取り組み内容では、「顧客対応の記録」が20.1%でトップ
※ 調査期間は2024年6月17日〜30日、調査対象は全国2万7,159社で、有効回答企業数は1万1,068社(回答率40.8%)
※調査機関:株式会社帝国データバンク
※ 本調査における詳細データは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している
直近1年でカスハラ被害が「ある」企業は15.7%、B to C業界で目立つ
直近1年以内に自社もしくは自社の従業員がカスハラや不当な要求などを受けたことがあるか尋ねたところ、「ある」とした企業は15.7%となった。規模別でみると「大企業」が21.0%、「中小企業」が14.8%、「小規模企業」が14.4%であった。
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直近1年以内のカスハラなどの被害有無
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業界別
また、直近1年以内にカスハラなどを受けたことが「ある」企業を業界別でみると、『小売』(34.1%)がトップとなり、『金融』(30.1%)、『不動産』(23.8%)、『サービス』(20.2%)と主に個人を取り引きの対象とする業界が比較的高い割合で並んだ。また、主に企業間での取り引きが多い
他方、カスハラなどを受けたことが「ない」企業は65.4%となり、「ある」よりも4倍以上高かった。規模別では、「大企業」が49.7%、「中小企業」が68.3%、「小規模企業」が71.6%で、規模が大きい企業ほどカスハラを受けている結果となった
企業からは、「自分のわがままを押し通そうとし、思い通りの結果にならないと罵倒する年配の方が多い」(金融、鹿児島県)や「近年はネットに書くと脅されるほか、一方的に事実無根の悪評を書き込まれ、対応に苦慮している」(専門商品小売、大阪府)などの声があがった。
「ない」「分からない」と回答した企業からは「どこまでの発言・行為がカスハラに該当するのか不明なため、判断しづらい」(情報サービス、東京都)のように、判断の難しさを訴える声が多数みられたほか、企業からは、「BtoBの事業会社であり、表立ったカスハラ経験がなく、遭遇する機会もない」(建材・家具、窯業・土石製品製造、愛知県)のように、そもそもカスハラなどを受ける状況がないといった声も聞かれた。
カスハラへの対応策や取り組み有無はほぼ半々、「顧客対応の記録」が最も高く20.1%
カスハラや不当な要求などへの対応策や取り組みについて尋ねたところ、電話に録音機能をつけるなど「顧客対応の記録」が20.1%で唯一2割を上回り、トップとなった(複数回答、以下同)。
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カスハラや不当な要求への対応策や取り組み(複数回答)
次いで、「カスハラを容認しない企業方針の策定」(12.3%)や「カスハラ発生時のサポート体制の構築」(9.6%)、「被害者への相談・通報窓口の設置」「警察や警備会社、行政との連携」(ともに8.2%)が続いた。総じて何らかの『取り組みあり』とする企業は50.1%、「特に取り組んでいない」が47.4%とほぼ二分する結果となった。
また、業界別では直近1年以内にカスハラ被害が多い業界では取り組みも多く、被害が少ない業界では取り組みも少ない傾向であった。
そのほか、具体的な対策としては、「顧問弁護士と迅速な連絡・相談する体制を整えている」(旅館・ホテル、神奈川県)や「カスハラをしてきた企業との取り引きを停止している」(建設、香川県)のように、毅然とした態度でカスハラに対応する声が多く寄せられていた。
円滑な商取引を維持するためにカスハラなどへの対策が求められる
本調査の結果、直近1年以内にカスハラもしくは不当な要求などを受けたことがある企業は15.7%だった。業界別でみると、個人を主に取り引きの対象とする『小売』や『金融』などが比較的高く、主に企業間での取り引きが多い『製造』や『運輸・倉庫』では低く、取引形態の違いでカスハラなどの有無が如実に表れた。全体でみると、カスハラなどを受けたことが「ない」企業は6割を超え、「ある」企業を大幅に上回った。
カスハラへの対応策については、取り組んでいる企業と取り組んでいない企業でほぼ二分される。具体的な取り組みでは20%の企業が「顧客対応の記録」をあげていた。
カスハラなどへの取り組みを推進するには、どこからがカスハラに当たるのか分からないといった声も複数聞かれた。このため、セクハラやパワハラのように社会的にカスハラに当たるか否かのライン設定を明確化し、許さない雰囲気を醸成することが重要といえる。
さらに、近年は不当なクレームや嫌がらせ、ネットへの一方的な悪評の書き込みなどにも対応せざるを得ない事象も発生している。そのため、被害を受けた企業だけでなく、まだ受けていない企業においても、従業員の働きやすい環境や円滑な商取引を維持するためのカスハラなどへの対策を整える必要があるだろう。
プレスリリース提供:PR TIMES