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国立大学法人千葉大学

コロナの影響による「がん診断の検査数」の一時的な減少を初めて確認

(PR TIMES) 2023年01月25日(水)16時45分配信 PR TIMES

レセプト情報・特定健診など国のデータベースを解析 一部のがん未発見や予後の悪化が懸念されます

千葉大学医学部附属病院(病院長:横手幸太郎)は、千葉大学大学院医学研究院、公益財団法人ちば県民保健予防財団との共同研究により、厚生労働省が蓄積管理しているレセプト情報などを利用して、がん診断のために行う検査の数がCOVID-19パンデミックの前後でどう変化したのか、調べたところ、パンデミック直後に一時的に減少していたことを初めて確認しました。その後、速やかに回復したものの、減少分を補うほどの増加は認められず、一部のがんの未発見やその後の予後の悪化が懸念されます。本研究の成果は、2023年1月11日に、学術誌Journal of Cancer Research and Clinical Oncologyに掲載されました。
■ 研究の方法
厚生労働省からNDB(National Database)(注1)のうち、2015年1月から2021年1月のサンプリングデータセット(注2)の提供を受け、各検査の診療報酬明細書件数をカウントし(1月、4月、7月、10月) 、パンデミックがなかったと仮定した場合の検査数の予測値と実際の検査数の変化量を推定しました。

<対象の検査> 胃内視鏡検査、胃生検、大腸内視鏡検査、大腸生検、肺X腺検査、肺CT検査、肺内視鏡検査、肺生検、マンモグラフィー、乳生検、乳センチネルリンパ節生検、子宮頸部細胞診、子宮頸部コルポスコピー、子宮頸部生検

■ 研究の結果
多くの検査は、パンデミック直後の2020年4月と7月に減少し、その後速やかに回復しましたが、検査によっては、やや長期に影響を受けたものもあります(「解析方法」参照)。

例:胃の内視鏡検査数の推移
[画像1: https://prtimes.jp/i/15177/685/resize/d15177-685-5e231dc04f8cf2fd49d9-0.png ]


■研究者コメント (公益財団法人ちば県民保健予防財団 主席研究員 藤田美鈴)
これまで「がん検診数」(保険適応外)や「がん診断数」の減少は確認されていましたが、「がん診断の検査数」(保険適応)の減少を確認したのは今回が初めてです。がん検診の一時的な中断や不要不急の検査や受診の自粛は各国でも起きており、本研究が世界的な影響を知る上で有益であると考えます。

■ 解析方法
時系列分析(注3)という手法を用いて、パンデミック前の検査数の推移から、パンデミック後の検査数の予測(パンデミックがなかったと仮定した場合の検査数の予測値)と実際に観察された検査数の変化量を推定しました。以下、一部抜粋です。
[画像2: https://prtimes.jp/i/15177/685/resize/d15177-685-19992947693362578bfb-1.png ]

図1.がん診断検査数の推移(抜粋) ※年に4時点(1月、4月、7月、10月)を観察
•黒線:観察された検査数
•赤線:パンデミック前の推移から予測されたパンデミック中の件数(パンデミックがなかったと仮定した場合の    検査数の予測値)。点線は95%信頼区間(黒線が赤点線外の場合、統計学的に有意に変化していると判断する)
•赤枠:パンデミックがなかったと仮定した場合と比較した減少量。減少数は、赤線の件数を推定したモデルとは異なるモデルで推定したため、赤線と黒線の差分と減少件数は完全には一致しない。減少数は、自己回帰、移動平均、トレンド、季節変動を調整したうえでの変化量を表す。

■ 用語の説明
(注1)NDB(National Database):高齢者の医療の確保に関する法律」に基づき、厚生労働省が蓄積管理している「レセプト情報・特定健診等情報データベース」。我が国の診療報酬明細書情報と特定健診・特定保健指導情報が蓄積されています。
(注2)サンプリングデータセット:NDB情報は、研究等が利活用するために、一定の条件の下、第三者に提供されています。提供形式は3種類あり、そのうちの一つがサンプリングデータセットです。サンプリングデータセットは、年に4回(1月、4月、7月、10月)、NDB情報から診療報酬明細書情報を一定の確率で抽出したものです。
(注3)時系列分析:Interrupted time-series analysis using seasonal autoregressive integrated moving
average (SARIMA) modelsを用いて解析を行いました。この方法を用いることで、自己回帰、移行平均、トレンド、季節変動を調整したうえでの変化量を推定することができます。

■研究者
・公益財団法人ちば県民保健予防財団
藤田美鈴(主席研究員)、羽田明(調査研究センター長)、鈴木公典(総合健診センター長)、河西十九三(総合健診センター顧問)、橋本秀行(診療部長)、山口和也(消化器担当部長)、 藤澤武彦(理事長)
・千葉大学大学院医学研究院
尾内善広(公衆衛生学 教授)
・千葉大学医学部附属病院
佐藤大介(次世代医療構想センター 特任准教授)
・慶応義塾大学病院
長島健悟(臨床研究推進センター 生物統計部門 特任准教授)

■ 論文情報
タイトル:Changes in the number of cancer diagnosis practices due to the COVID-19 pandemic:
interrupted time-series analysis using the National Database of Japan
雑誌名 :Journal of Cancer Research and Clinical Oncology
DOI : 10.1007/s00432-022-04557-2



プレスリリース提供:PR TIMES

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