プレスリリース
抗癌剤治療における脱毛の予防研究について発表
毛髪・美容・健康のウェルネス事業をグローバル展開する株式会社アデランス(本社:東京都新宿区、代表取締役 津村 佳宏)は、Web配信で開催された癌・炎症と抗酸化研究会(CIA研究会/期間:2021年11月27日(土))において、アデランスがスポンサーシップをとるスポンサードセミナーを共催しました。
アデランス共催のセミナーでは、昭和大学医学部外科学講座 乳腺外科学部門 助教 垂野 香苗先生と、アデランスとの共同研究を進める大分大学医学部 消化器・小児外科学講座 高度救命救急センター 助教 河野 洋平先生が講演し、同じく大分大学医学部 消化器・小児外科学講座 教授 猪股 雅史先生が司会を務めました。
癌・炎症と抗酸化研究会(CIA研究会)は大分大学が中心となり、内視鏡治療の世界的な権威である大分大学 北野 正剛学長が代表を務め、この分野でトップクラスの研究実績を有する大学や病院・企業が参加する医学研究会です。
癌や炎症にかかわるさまざまなテーマについて生体の根源的な現象である「抗酸化」の観点から、病態解明および新たな治療法開発を目指して研究を推進しています。
第11回となる今回は昨今の感染拡大防止を考慮しWeb配信として開催され、アデランスが本研究会に共催するのは6回目となります。
アデランスはトータルヘアソリューションにおけるリーディング企業の使命として、経営理念の一つである「最高の商品」の開発および毛髪関連業界の発展を目指し、機能性人工毛髪や医療用ウィッグの研究開発、育毛・ヘアスカルプケア関連研究、抗がん剤脱毛抑制研究など、産学連携にて毛髪関連の研究を積極的に取り組んでおります。
その産学共同研究の成果を国内外の学会を通じて発信し、また、世界の研究者に研究成果を発表いただくことは、毛髪業界の更なる進展となり、ひいては多くの方の髪の悩みの解消に寄与し、当社のCSR(企業の社会的責任)であると考えております。
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■アデランススポンサードセミナー 講演概要
司会
大分大学医学部 消化器・小児外科学講座
教授 猪股 雅史 先生
演題1
演者
昭和大学医学部外科学講座 乳腺外科学部門
助教 垂野 香苗 先生
演題
乳癌周術期化学療法における化学療法誘発性脱毛(CIA:Chemotherapy induced alopecia)
予防への取り組み
講演内容
化学療法誘発性脱毛(CIA)は、患者にとって心理的苦痛が大きく、生命や日常活動には直接は影響しないが、医療従事者が考える以上に患者には重大な副作用である。中でも乳癌周術期標準化学療法では100%の脱毛をもたらし、乳癌患者の心理的負担により治療選択にも影響する因子である。また、化学療法施行中のみではなく、その後も再発毛し、治療前の状態に戻るまでは、時間を要し、英国での報告でタキサン系薬剤を使用した患者の10.1-23.3%患者で化学療法誘発性永久脱毛 (pCIA : permanent CIA)となるという報告もあり、治療中のみならず、その後の長期のQOLにも大きく影響する副作用である。
頭皮表面を冷却し化学療法時の頭皮血流を低下させることで、化学療法に伴う脱毛を抑制することを目的とした装置(Paxman scalp cooling system)による脱毛抑制効果が報告され、日本国内で2019年3月に医療機器として承認された。当院にて頭皮冷却装置を乳癌周術期化学療法時に使用した症例の報告をする。頭皮冷却装置とαリポ酸誘導体含有ローションの併用による相乗効果も期待され、当院における両者使用症例の報告とともに、今後の展望に関して紹介した。
演題2
演者
大分大学医学部 消化器・小児外科学講座
高度救命救急センター
助教 河野 洋平 先生
演題
がん患者ルックス支援の取り組み -抗癌剤脱毛予防開発プロジェクト-
講演内容
【はじめに】
がんに対する手術、化学療法、放射線治療などの治療によって生じる脱毛、皮膚炎、創傷など外見変化はがん患者にとって精神面やQOLへの影響が大きい。近年、外見の症状に対するケア(ルックスケア)が重視されるようになり、現状と課題が明らかになりつつある。なかでも抗癌剤脱毛は、乳癌をはじめとした様々な領域の悪性疾患に対する化学療法において高頻度に発症する副作用であるが、いまだ十分な対策はない。我々は産学連携研究開発プロジェクトとして、これまで抗癌剤脱毛対策に取り組んでおり、プロジェクト内容を紹介する。
【プロジェクト研究内容】
1.抗癌剤脱毛のメカニズムを解明する基礎研究
抗癌剤シクロフォスファミドを用いた抗がん剤誘発脱毛動物モデルの毛包周囲環境変化を病理組織学的に検討し、毛包周囲の血管透過性亢進が抗癌剤脱毛病態の一要素であることを明らかにした。
2.抗酸化物質αリポ酸誘導体を用いた脱毛予防法の研究開発
抗癌剤シタラビンを用いた脱毛モデルに対して、空気中でも安定した強力な抗酸化力を有し、外用剤として適したαリポ酸誘導体の皮膚投与を行った。1%αリポ酸誘導体投与により脱毛が抑制され、病理組織学的検討において炎症細胞浸潤および毛根・毛幹の破壊が軽減された。
3.抗癌剤脱毛に対するαリポ酸誘導体の効果を検討する臨床研究
術後補助化学療法施行乳癌患者100名を対象とした多施設共同研究にて頭皮へαリポ酸誘導体含有ローション塗布を行い、効果を検討した。脱毛予防効果まで示すことはできなかったものの、脱毛期間が短縮する効果を示した。
4.毛髪関連のリーディングカンパニーとの産学連携共同プロジェクトを経て、抗がん剤脱毛研究に基づくαリポ酸誘導体含有スカルプローションの製品化に至った。
【抗がん剤脱毛予防の取り組みにおける今後の展望】
本プロジェクトではαリポ酸誘導体の消化器癌患者への応用や、頭皮冷却との併用など、さらなる研究が進んでいる。がん患者の外見問題に対する姿勢は近年、大きく変化しており、ますます患者のQOL向上を目指した研究開発の活性化が望まれる。
■学会概要
学会名称:第11回癌・炎症と抗酸化研究会(CIA研究会)
当番世話人:大分大学医学部 細胞生物学講座 教授
花田 俊勝 先生
会期:2021年11月27日(土)
会場:Web開催
プレスリリース提供:PR TIMES