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国立大学法人千葉大学

目のつらいかゆみに関わるタンパク質を同定

(PR TIMES) 2022年10月26日(水)19時40分配信 PR TIMES

-目のアレルギーの新たな治療薬開発に期待-

【本研究成果のポイント】
1 目のつらいかゆみはアレルギー性結膜炎に必ず発生する症状です。しかし、目のかゆみの仕組みについては不明な点が多く、薬が効きにくいことが臨床上の大きな問題です。
2 本研究では、炎症を引き起こすIL-33というタンパク質が免疫細胞を刺激し、かゆみ誘導物質(CGRP)
の分泌を促すことによって、目のかゆみが引き起こされることを明らかにしました。
3 将来的にはIL-33やかゆみ誘導物質(CGRP)をターゲットにした治療に応用されることが期待されます。
千葉大学大学院医学研究院 免疫発生学の研究グループ(中山俊憲学長、平原潔教授ら)は、順天堂大学医学部附属浦安病院眼科 海老原伸行教授らとともに、重症慢性アレルギー性結膜炎の目のかゆみのメカニズムを明らかにしました。この研究成果は、国際医学雑誌「Immunity」誌オンライン(米国東部時間10月21日午前11時付)に掲載されました。

本研究成果の概要


[画像1: https://prtimes.jp/i/15177/647/resize/d15177-647-9afa56c675cf0623fbd6-3.png ]



研究の背景

アレルギー性結膜炎は、日本では全人口の約半数の国民が悩まされる疾患であり、主な症状はかゆみ、充血や流涙です。かゆみは長引くと、睡眠不足やうつを引き起こし、生活の質を著しく低下させるため、かゆみをコントロールすることは治療の重要なポイントとなります。
また、病原性記憶T細胞という細胞が関与していると重症になりやすく慢性の経過をたどります。
しかし、アレルギー性結膜炎における目のつらいかゆみと病原性記憶T細胞との関係は不明です。本研究では結膜における病原性記憶T細胞のはたらきを詳しく調べることにより、つらいかゆみが誘導される仕組みを明らかにしました。

研究内容

1. 慢性アレルギー性結膜炎モデルの作成
マウスにアレルギー性結膜炎を引き起こす主なアレルゲンであるダニ抗原を複数回点眼投与することで強いかゆみを伴うアレルギー性結膜炎を誘導しました。この結膜には神経線維が伸びてくることが観察されました(図1)。
[画像2: https://prtimes.jp/i/15177/647/resize/d15177-647-f85a7592ff573c962a70-1.png ]

2. 病原性記憶T細胞が産生するCGRPによるかゆみの誘発
アレルギー性結膜炎を誘導したマウスの結膜中の病原性記憶T細胞を詳しく調べたところ、CGRPというタンパク質を多く作っていました。CGRPのはたらきを抑える薬を投与すると、掻き行動が抑制され目のかゆみは著明に減りました。さらに、病原性記憶T細胞が分泌するCGRPだけをなくすと目のかゆみが減りました(図2)。これらのことから、アレルギー性結膜炎において、病原性記憶T細胞が産生するCGRPがかゆみを引き起こすことがわかりました。
[画像3: https://prtimes.jp/i/15177/647/resize/d15177-647-872d6c89f685ff5219c9-2.png ]

3. 重症アレルギー性結膜炎患者の検体解析
アレルギー性結膜炎患者の結膜においてCGRPを産生する病原性記憶T細胞が多く存在することを明らかにしました(図3)。
[画像4: https://prtimes.jp/i/15177/647/resize/d15177-647-31eb195fad21ba16e181-0.png ]



今後の展望

アレルギー性結膜炎の治療は抗ヒスタミン点眼、ステロイド点眼や免疫抑制薬点眼がありますが、いずれでもコントロールできない難治性のかゆみがあります。
今回の研究で、IL-33の刺激を受けた病原性記憶T細胞が産生するCGRPが目のかゆみを引き起こす重要な物質であることが明らかになりました。
今後はIL-33やCGRPをターゲットにすることにより、難治性のかゆみの治療薬として応用される可能性があります。CGRPの阻害薬(ガルカネズマブ、フレマネズマブ、エレヌマブ)はすでに偏頭痛の治療に使われており、慢性の目のかゆみに効く安全な薬剤が早期に開発されることが期待されます。

発表論文の詳細

IL-33-activated calcitonin gene-related peptide-producing memory Th2 cells cooperate with somatosensory neurons to induce conjunctival itch, Immunity (2022);
DOI:https://doi.org/10.1016/j.immuni.2022.09.016

研究プロジェクトについて

本研究は、以下の支援で行われました。
・革新的先端研究開発支援事業ユニットタイプ(AMED-CREST) における研究課題「気道組織における病的リモデリング(線維化)機構の解明と病態制御治療戦略の基盤構築」(研究開発代表者:中山俊憲) (No. JP20gm1210003)
・国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)免疫アレルギー疾患実用化研究事業における研究課題「生体内における病原性Th2細胞誘導機構解明による難治性アレルギー性疾患の治療法開発」(研究開発代表者:平原潔) (No. JP22ek0410092)
・日本学術振興会基盤研究(S)における研究課題「病原性免疫記憶の成立機構の解明 -難治性炎症疾患の病態の理解へ-」(研究開発代表者:中山俊憲) (No. JP19H05650)
・日本学術振興会学術変革研究Bにおける研究課題「炎症性組織レジリエンスと組織障害エントロピーの統合的理解と炎症収束学の創成」(研究開発代表者:平原潔) (No. JP21H05121)
・国立研究開発法人科学技術振興機構 (JST) FOREST Projectの創発的研究支援事業における研究  課題「肺における組織炎症記憶の4次元制御機構の統合的解明」(研究開発代表者:平原潔) (No. JPMJFR200R)
・公益財団法人 持田記念医学薬学振興財団
・公益財団法人 MSD生命科学財団
・公益財団法人 内藤記念科学振興財団



プレスリリース提供:PR TIMES

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