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国立大学法人千葉大学

インターネット・セルフヘルプ(自助)認知行動療法プログラム臨床試験の研究成果を発表

(PR TIMES) 2022年02月14日(月)18時45分配信 PR TIMES

- 不眠に悩む成人の睡眠の質や不眠症状に有効、新たな治療法の確立へ -

 千葉大学病院認知行動療法センター(センター長 清水栄司)清水栄司教授、佐藤大介特任助教、独立行政法人経済産業研究所 関沢洋一上席研究員らの研究グループは、不眠の問題を抱えた成人に対して、インターネット・セルフヘルプ認知行動療法プログラムが有効であることを臨床試験により明らかにしました。その成果は、国際医学雑誌 Journal of Medical Internet Research 誌に2月10日付(日本時間)でオンライン版が掲載されました。

不眠症とは

 「寝つくのに時間がかかる」「夜中に目が覚めて再び寝つくのに時間がかかる」「予定より朝早く目が覚める」を主症状とします。日本人の約5人に1人が睡眠の問題で悩み、約10人に1人(6〜10%)の成人が不眠症を抱えています。睡眠薬は日本の成人の20人に1人(5%)が服用し、必ずしも改善につながらない睡眠薬による治療が、副作用の問題、医療費を含む経済損失につながっています。利用しやすいインターネット上の生活指導としての不眠改善プログラムを提供することで、睡眠の質の向上や医療費の適正化が期待できます。


認知行動療法とは

 自分の「感情(気分)」や「考え方(認知)」や「行動」を見直して問題の解決を目指す、セラピストと対面で行う精神・心理療法です。不眠症の認知行動療法は、日本では薬物療法が十分に奏功しない場合の第二選択の位置づけですが、欧米では治療の第一選択の位置づけとされています。


今回の臨床試験の概要

 本学認知行動生理学教室が開発したセルフヘルプ認知行動療法のプログラムは、セラピストがいるクリニックなどに行かなくても自宅にいながら自分で認知行動療法を実践することが可能です。毎日20分程度、インターネットで睡眠日誌をつけ、思考や行動を見直す認知行動療法(ICBT)、あるいは毎日「3つの良いこと」を書くというエクササイズ(TGT)を4週間実践する臨床試験を行いました。その結果、何も行わない待機群に比べ、ICBT群、TGT群の方が睡眠の質や不眠症状に改善が認められました。


清水栄司 認知行動療法センター長のコメント


[画像1: https://prtimes.jp/i/15177/569/resize/d15177-569-a5469588bb1eda4646f2-2.jpg ]

 不眠症に悩む患者さんにとって、インターネット・セルフヘルプ認知行動療法のプログラムは、薬物療法以外の治療の選択肢になると期待しています。
 このプログラムの利点は、利用者が自分の好きな時間に、好きな場所で認知行動療法を実践でき、対面による認知行動療法に比べ、通院の負担が少なく、治療を継続することができます。


インターネット・セルフヘルプ認知行動療法のプログラムについて


背景・目的

 不眠症に対する薬物療法は日中の眠気や依存などの副作用の問題を伴い、長期的な治療維持効果も限られています。
 インターネット・セルフヘルプ認知行動療法は利用者が自分の好きな時間に、好きな場所で治療を受けられるため、面談による認知行動療法に比べ、通院の負担が少なく治療を継続することができるという利点があります。
 本試験で用いる不眠のインターネット認知行動療法(ICBT)は、患者と治療者が対面で行う通常の認知行動療法セッション(カウンセリング)を模して、オンライン上のコンピュータプログラムで利用者が認知行動療法に取り組むものです。
 この試験の目的は、不眠の問題を抱えた成人に対し、インターネット認知行動療法(ICBT)あるいは「3つの良いこと」を書くというエクササイズ(TGT)を4週間行うことが、不眠の問題に対して効果があるかどうかを調べることです。

試験方法

 不眠の問題を抱えた成人を3群(インターネット認知行動療法(ICBT)群、「3つの良いこと」エクササイズ(TGT)群、待機(WLC)群)に無作為に割り付け、4週間の介入を経た4週、8週時点の睡眠の質や睡眠症状を、ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index;PSQI)を用いて分析しました。
 ICBT群は、睡眠習慣分析(睡眠日誌を記録し睡眠習慣の特徴を分析する)、行動療法(不眠を維持する行動習慣を見直し改善する)、認知療法(極端な認知の歪みを修正する)、睡眠制限法(睡眠の効率を算出し睡眠時間を調整する)の4つのテーマから成る認知行動療法に4週間取り組み、TGT群は、毎晩寝る前に、今日起きた良いことを3つ挙げるとともに、それがなぜ起きたかを書くエクササイズに4週間取り組み、WLC群は何もせず待機します。
 本研究は、当院臨床研究倫理審査委員会の承認(G30022)を得て実施しました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/15177/569/resize/d15177-569-0607a5b9eeed859e8a30-1.png ]

図1. ICBT群、TGT群、WLC群の睡眠の質や睡眠症状(PSQI)の経過
  介入期間は0週から4週、経過観察期間は5週から8週。

研究成果

 21,394名に研究参加を依頼し、そのうち適格性を満たした312名を無作為に割り付け(インターネット認知行動療法(ICBT)群106名、「3つの良いこと」エクササイズ(TGT)群103名、待機(WLC)群103名)、4週間の介入を経た270名(ICBT群79名、TGT群88名、WLC群103名)を分析した結果、図1に示されたとおり、4週時において、ICBT群、TGT群ともにWLC群より、睡眠の質や不眠症状(PSQI)が有意に改善しました。さらに、8週時において、ICBT群は睡眠の質や不眠症状(PSQI)の有意な改善が維持されました。両群において、重篤な有害事象は報告されませんでした。
 これらの結果から、不眠の問題を抱えた成人に、ガイドなしのインターネット・セルフヘルプ認知行動療法、および「3つの良いこと」エクササイズを4週間実施することで、睡眠の質や不眠症状に有意な改善を期待できることが明らかになりました。

研究経費

 本研究は、以下の日本学術振興会・科学研究費補助金、および独立行政法人経済産業研究所研究プロジェクト研究費の支援を受けて行われました。
 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(B)「うつ不安の患者登録サイトでの費用対効果見える化とStepped Careの誘導(17H04091)」2017年4月–2021年3月(研究代表者:清水栄司)
 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究(C)「不眠症に対する認知行動療法を用いた早期リハビリテーションプログラムの予防効果(18K10716)」2018年04月–2022年03月(研究代表者:佐藤大介)
 独立行政法人経済産業研究所 マクロ経済と少子高齢化プログラム(第四期:2016年〜2019年度)「エビデンスに基づく医療に立脚した医療費適正化策や健康経営のあり方の探求」プロジェクト

発表論文の詳細

Sato D, Sekizawa Y, Sutoh C, Hirano Y, Okawa S, Hirose M, Takemura R, Shimizu E, Effectiveness of Unguided Internet-based Cognitive Behavioral Therapy and the Three Good Things Exercise for Insomnia: A Three-arm Randomized Controlled Trial, J Med Internet Res 2022;24(2):e28747. doi:10.2196/28747.


関連論文

Sato D, Yoshinaga N, Nagai E, Nagai K, Shimizu E, Effectiveness of Internet-Delivered Computerized Cognitive Behavioral Therapy for Patients With Insomnia Who Remain Symptomatic Following Pharmacotherapy: Randomized Controlled Exploratory Trial, J Med Internet Res. 2019;21(4):e12686. doi: 10.2196/12686.


[画像3: https://prtimes.jp/i/15177/569/resize/d15177-569-872f7403b0893882e7ca-3.png ]

[画像4: https://prtimes.jp/i/15177/569/resize/d15177-569-82b9802a668b5b5cbd9b-4.png ]

[画像5: https://prtimes.jp/i/15177/569/resize/d15177-569-a368ba561281f5a8b93d-5.png ]



プレスリリース提供:PR TIMES

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