プレスリリース
地球温暖化に対する適応策の検討を進めるために
千葉大学大学院社会科学研究院 倉阪秀史教授らは、全国の主要観測所における過去40年間の気候変動の状態をグラフで参照できる「気候変動気象データ提供システム」を公開しました( https://opossum.jpn.org/news/2022/02/07/849/ )。地方自治体ごとに参照すべき観測所が調べられる仕様になっており、各自治体における地域気候変動適応計画のために利用できる資料となっています。どなたでも無料でダウンロードしてお使いいただけます。
気候変動気象データ提供システムの内容
このシステムは、気象庁が公開している過去40年間(1981年〜2020年)の気象データを、全国760の主要観測所について入手し、そのデータから、平均気温、年間降水量、一時間降水量の年間最大値の3つの項目について、その土地の傾向(回帰直線の傾き)を算出するとともに、グラフ化するプログラムです。
調べたい市町村のコードを入力すると、参照すべき観測所の候補が複数示されます。その観測所のコード番号を入力することで、上記のデータを入手することができます。
このシステムによって、基礎自治体における地域気候変動適応計画で参照できるグラフが簡単に入手できます。
どなたでも簡単に使えるようにExcelファイルで作成しており、無料でダウンロードしていただけます。
https://opossum.jpn.org/news/2022/02/07/849/
[画像1: https://prtimes.jp/i/15177/566/resize/d15177-566-3e360cab6222cb90750b-1.png ]
研究の背景 〜地球温暖化に適応するために〜
2021年の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で採択された「グラスゴー気候合意」において、2100年の世界平均気温の上昇を産業革命前に比べて1.5℃以上に上げないことが世界共通の目標となりましたが、地球の平均気温はすでに1℃程度上がっており、今後も気温上昇が見込まれることとなります。このため、温室効果ガスの排出削減対策のみならず、気温の上昇に適応することも重要な課題となります。
日本では、2018年に施行された気候変動適応法において、地方自治体は地域気候変動適応計画を策定するように努めることとされています。しかし、2022年2月現在で、地域気候変動適応計画は、45都道府県、18政令指定都市、49市区町村で策定されているにとどまっており、とくに、政令指定都市以外の市町村での策定が遅れています。
倉阪教授を研究代表者とする環境研究総合推進費のプロジェクト「基礎自治体レベルでの低炭素化政策検討支援ツールの開発と社会実装に関する研究」では、地域の脱炭素のしやすさを基礎自治体別に簡単に把握できる「カーボンニュートラルシミュレーター」を2021年9月に公開しました(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000531.000015177.html)。この研究では、地域の気候変動適応策の策定に資する情報提供も行うこととしており、今回、「気候変動気象データ提供システム」を作成しました。
本システムからわかること 〜40年間で709観測所の平均気温は1.26℃上昇〜
データ欠損がある観測所を除く709観測所について、1981年から2020年までの40年間の年平均気温と年間降水量の傾向を把握すると、気温が低下傾向にある観測所はわずかに4地点、年間降水量が低下傾向にある観測所は83地点でした。
また、1時間降水量の最大値が減少傾向にある観測所は59地点です。709観測所の傾向を平均すると、40年間で、平均気温は1.26℃上昇、年降水量は184.2mm増加、1時間降水量の最大値は9.9mm増加する傾向となりました。ただし、個別の傾向は、年によってかなりのばらつきが見られることは留意すべきです。
開発者のコメント(千葉大学大学院社会科学研究院 倉阪秀史教授)
[画像2: https://prtimes.jp/i/15177/566/resize/d15177-566-e506c7368e85b7bee0a1-2.png ]
持続可能な開発目標(SDGs)の目標13「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」の達成のためには、気候関連災害に対する強靭性と適応能力を強化することが求められます。また、目標11「包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する」では、気候変動の緩和と適応を含め、あらゆるレベルでの総合的な災害リスク管理の策定と実施を行うことが求められています。日本の脱炭素の実現に向けて、再生可能エネルギーを普及させ、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」という目標7を達成することも重要です。
これらの達成に向けて、各自治体がこのシステムを用いて近くの観測所の過去のデータを参照することによって、気候変動について身近に感じていただき、脱炭素の検討と並行して気候変動への適応策の検討も進められることを期待します。
参考)どうすれば2050年に脱炭素が実現できる?全国の市町村ごとのカーボンニュートラルシミュレーターを公開
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000531.000015177.html
「気候変動気象データ提供システム」の開発主体について
この気候変動気象データ提供システムは、環境研究総合推進費「2-1910基礎自治体レベルでの低炭素化政策検討支援ツールの開発と社会実装に関する研究」(研究代表者:倉阪秀史 通称:OPoSuM-DS※)の成果物の一部です。
※Open Project on Supporting-tools for Municipalities for De-carbonized Societies の略
本件に関するお問い合わせ
千葉大学大学院社会科学研究院教授 倉阪 秀史(クラサカ ヒデフミ)
Tel & Fax 043-290-3585 (倉阪研究室)
E-mail:recpa@chiba-u.jp
プレスリリース提供:PR TIMES