プレスリリース
太陽光関連動向調査(2021年)
帝国データバンクの企業概要ファイル「COSMOS2」(147万社)に収録されている太陽光関連業者について、経営実態と倒産動向を分析した。
2012年に施行された固定価格買取制度(FIT)の価格が年々引き下げられ、2020年春にはコロナ禍による経済活動の急縮小もあった。そうした中で、太陽光関連のプレーヤー数は減少し業績も落ち込み、しかし足元では若干の回復傾向となっている。
<調査結果(要旨)>
太陽光関連業者のDIは2020年4月の28.6から徐々に回復、2021年12月には42.7まで上昇している
2021年の国内出荷量は5322メガワットと2014年のピークから46.1%減少している。買取価格は家庭用が半減、産業用は1/3に
2021年のプレーヤー数は5423社と2018年比で29.2%減少。市場規模は54.4%減の22.5兆円、黒字額は58.1%減の5657億円。ただし赤字額も縮小している
2021年の倒産件数は前年比横ばいの84件。大型倒産が多く発生したことにより、負債額は同3.4倍増の816億2800万円
半期ベースでみると、2021年下期は前期比21.1%増の46件と急増しており、倒産増加の兆しも
■経営実態調査の対象社数は、帝国データバンクのデータベースを活用したパッケージデータ(ATTACKデータ)の「太陽光発電関連」(販売・施行)に準拠している。
太陽光関連業者の景況感
〜DIは2020年4月の28.6から2021年12月の42.7へ回復
[画像1: https://prtimes.jp/i/43465/426/resize/d43465-426-ac758205ba0705192fdb-0.png ]
グラフは景気DI(全業種)と太陽光関連のDIの推移を示したもの。
新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年2月以降、景況感の急激な悪化に伴って太陽光関連のDIは急落し、同年4月に28.6をつけた。 現在はそこから徐々に回復する過程にあり、2021年12月には42.7まで上昇している。
太陽光関連業者の景況感
〜国内出荷量は2014年のピークから46.1%減少。買取価格は家庭用が半減、産業用は1/3に
[画像2: https://prtimes.jp/i/43465/426/resize/d43465-426-83e137237bcd470a5de5-1.png ]
太陽光発電協会によれば、2021年の国内出荷量は5322メガワットと2014年比で46.1%減少した。固定価格買取制度(FIT)に基づく買取価格は家庭用が19円と2012年比でほぼ半減、産業用(10キロワット以上50キロワット未満)に至っては12円と3分の1以下になっている。
買取価格が低下する一方、太陽光パネルなどの価格下落でコスト低減も進んでいるため、太陽光発電の投資利回りは再生可能エネルギーの採算性の目安とされる10%を確保出来ている。しかし利率が変わらずとも利幅は確実に減
少しており、市場環境は厳しいものとなっている。
太陽光関連業者の経営実態
〜プレーヤー数は2018年比で29.2%減。市場規模は22.5兆円で同54.4%の減少
[画像3: https://prtimes.jp/i/43465/426/resize/d43465-426-63caa81af5fe4e20e495-2.png ]
2021年のプレーヤー数は5423社と、2018年との比較で29.2%減少した。ただし前年比では3.7%の増加となっている。 2021年の市場規模(年毎のプレーヤー数の売上高合計)は22.5兆円と、2018年比で54.4%の減少となった。こちらも前年比では3.7%の増加となっている。
太陽光関連業者の経営実態
〜黒字額も58.1%の減少
[画像4: https://prtimes.jp/i/43465/426/resize/d43465-426-8404b66ae7365c31ff4e-3.png ]
プレーヤー数が2018年比で3割減少となるなか、2021年の黒字額も5657億円と2018年比で58.1%の大幅な減少となった。 もっとも、赤字額も2019年の2901億円から2021年の849億円へ減少している。なお、プレーヤー数には毎年変動があるものの、全体の中に占める黒字企業の割合はおよそ65%前後、赤字企業数は10-15%前後、不明が20%強である。
太陽光関連業者の倒産動向
〜倒産件数は前年比横ばいの84件、高水準の倒産続く。負債総額は3.4倍に
[画像5: https://prtimes.jp/i/43465/426/resize/d43465-426-8876e33ab7186caf704c-4.png ]
2021年の倒産件数は前年比横ばいの84件となった。倒産件数は2015年から増え始め、2017年以降は70〜90件台の高水準の倒産が続いている。負債総額は前年比240.7%増の816億2800万円と急増した。これは、大型倒産が多く発生したためだ。
太陽光関連業者の倒産動向
〜2021年は大型倒産が多く発生
[画像6: https://prtimes.jp/i/43465/426/resize/d43465-426-c2ee45ceb0332bf05c7f-5.png ]
負債規模別の推移を示した。2014年以降、負債総額が10億円に満たない中小企業の倒産が中心だったが、2021年は負債10億円以上50億円未満、また50億円以上の倒産が増えている。
太陽光関連業者の倒産動向
〜2006年以降の負債総額上位20社中、8件が2021年中に発生
[画像7: https://prtimes.jp/i/43465/426/resize/d43465-426-606770b96228800f1cbf-6.png ]
2006年以降に発生した太陽光関連を主業とする企業の主な倒産を表に示した。
負債総額上位20件中、(株)JCサービス(2021年3月民事再生法、負債約153億4200万円)、(株)テクノシステム(2021年5月任意整理、負債約150億円)、(株)グリーンインフラレンディング(2021年4月破産、負債約128億円)、アンフィニ(株)(2021年9月民事再生、負債約87億円)など8件が2021年中に発生している。
太陽光関連業者の倒産動向
〜半期ベースでは前期比21.1%増の46件、今後増加の兆しも
[画像8: https://prtimes.jp/i/43465/426/resize/d43465-426-3eac9d71479580e39562-7.png ]
2021年通年の倒産件数は84件と前年比横ばいだったが、これを半期ベースでみると2021年下半期は前期比21.1%増の46件と、2018年下期以来の高水準だった。今後、倒産件数が増加する可能性もある。
2012年7月施行の固定価格買取制度(FIT)の最大の意義は、発電した電気をすべて買い取ってもらえる全量買取制度が産業用に適用され、しかも買取価格が40円に一気に引き上げられたことにより(それまでは余剰電力買取制度であり、例えば2009年度の買取価格は家庭用の48円に対して24円に過ぎず、採算を確保することは難しかった)、メガソーラーの建設に道を開いたことである。
FITの制度改正で、2020年度より小規模(10キロワット以上50キロワット未満)の産業用は全量買取制度から余剰電力買取制度へ移行した。大規模(250キロワット以上)の産業用には入札制度が導入されている。これらの制度変更と、プレーヤー数の減少、市場規模の縮小、倒産件数の高止まりとの間には、やはり強い相関関係があると言わざるを得ない。 一方で、2020年10月のグリーン成長戦略で国家としてのエネルギー政策の大転換が行われ、2021年7月のエネルギー基本計画では2030年の再生可能エネルギーの構成比率が従来の22〜24%から36〜38%へ引き上げられた。カーボンニュートラルを実現する2050年には、太陽光と風力の構成比が65〜72%に達することになっている。太陽光発電は間違いなく、国家戦略の中で未来の主力電源に位置付けられている。
2021年、プレーヤー数と市場規模がともに僅かながら増加に転じたのは明るい兆しであるかもしれない。
プレスリリース提供:PR TIMES