プレスリリース
倒産要因の多くが「コロナ」「売上高」「資金繰り」も、「先行き」など将来悲観が急増
2022年1月の倒産件数は482件となり、8カ月連続で前年同月を下回った。しかし、減少率は2021年7月をピークに毎月縮小傾向にあり、1月の減少率は過去8カ月で最も小さい4.7%となるなど、倒産の減少トレンドは“底打ち”の兆しも見え始めている。足元で変化しつつある倒産動向は、いまどうなっているのか。
企業の倒産要因となる「名詞」に着目し、帝国データバンクが保有する企業の倒産動向データベースをAIテキストマイングにより可視化した「ワードクラウド」という手法を用いて、倒産要因や動向の変化について分析した。
<何が起きているのか>
2022年1月の企業倒産要因は、「コロナ」を筆頭に「売上高」「資金繰り」が上位
前年と比較すると、特に資金繰りなどで急増、「先行き」など将来悲観も
足元に迫る「過剰債務問題」、感染動向次第であきらめの倒産増加へ転じるか
「コロナ」を筆頭に「事業」「売上高」「資金繰り」が中心
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2020年にはじまったコロナ禍は、リーマン・ショックや東日本大震災以上の経済的インパクトをもたらした。それにもかかわらず倒産が大幅に減少している背景には、多くの企業に資金が供給され、“キャッシュ不足”による決済難や、運転資金不足による事業行き詰まりなどを回避できたことが大きい。
一方で、企業の倒産要因をみると、2022年1月のキーワードとして多いのは「コロナ」「事業」「売上高」「資金繰り」などが目立つ。次いで「感染拡大」「債務超過」なども多い。売上高の急減などコロナ禍で事業に大きな影響を受け、金融機関などから各種の救済措置を受けたものの凌ぎ切れず、債務超過への転落により資金繰りに窮し、事業が行き詰まった「息切れ型」の倒産ケースが依然として多いことを示している。実際に、帝国データバンクが保有する企業財務データベースを基に、2021年4-12月期の有利子負債の重さを調べたところ、月商対比で約5.6倍に膨らんでいた。これは、コロナ前の水準に比べて1カ月ほど多い水準で、過去2年の間に借入金などの負債が大幅に増えていることを示している。
「資金繰り」面のキーワードが多いものの、先行きなど「あきらめ」ワードが急増
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2021年1月と比べるとどうか。21年1月はコロナ感染が急拡大し、政府から発出された緊急事態宣言の下で過ごす、初めての月となった。クリスマス商戦をはじめ、年末年始の各種セール、帰省需要などが消失し、特に小売業などB to C業種を中心に厳しい冬となった時期に当たる。当時と比べると、引き続きコロナ禍が深く影響した点については変化はみられない。ただし、キーワードの登場回数には変化が見られ、特に資金繰り面で悪化した企業が多くなっている。
2021年1月と22年1月のキーワード登場回数を比較すると、新型コロナの「感染拡大」は前年1月の1.8倍となる104回となったのをはじめ、「売上高」「資金繰り」「感染拡大」「赤字」などのキーワードがそれぞれ1.5倍と増加した。コロナ禍で急激に市場が縮小するなか、限られたパイを巡ったシェア争いが激化した同業他社などとの「競合」も、前年から1.3倍増加した。なかでも、前年から特に目立つのは「先行き」「見通し」など、事業の将来などを示すキーワードで、前年を大幅に上回っている点は特徴として挙げられる。コロナ禍の影響をゼロゼロ融資など各種支援で一旦は凌いだものの、長引くコロナ禍で需要の回復が見通せず、将来の見通しが立たないなどの理由から自ら事業を畳む「あきらめ型」の倒産が、水面下で増加している可能性を示している。
コロナ長期化で増える「あきらめ倒産」、先行き不安感が今後の倒産動向を占う
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足元では、事業利益で借入金などの利息を支払うことができない「経営破たん懸念企業」の割合が高まっている。帝国データバンクの試算では、昨年11月時点で約30万社の企業が慢性的な経営不振に陥っていると推定。コロナ制度融資による資金供給と合わせ、通常の返済能力を大きく超えた「過剰債務企業」は水面下で大幅に増えているものとみられる。
現在は、各種支援に加えて元本据え置き(リスケ)など手厚い金融支援が奏功し、倒産は抑制状態が続いている。しかし、倒産記事の傾向では従来の「息切れ型倒産」から、先行きを見越して自ら手を上げる「あきらめ倒産」へ軸足が変化しつつある傾向も分かった。オミクロン株の感染急拡大で経済正常化が再び遠のくなか、需要回復への期待感がしぼみ、追加の金融支援などを断って事業継続をあきらめる兆候にも捉えられる。経営者の先行き不安、あきらめといったキーワードが、今後の倒産動向に大きな影響を与える可能性を注視する必要がある。
プレスリリース提供:PR TIMES