プレスリリース
[画像1: https://prtimes.jp/i/12662/263/resize/d12662-263-05ee1422f832fdd5c963-0.jpg ]
テクノロジを活用した農作業の効率化を目指すスタートアップの株式会社レグミン(以下レグミン)https://legmin.co.jp/ が、自律走行型ロボットによる農薬散布サービスを開始したことを発表しました。( https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000010.000040776.html ) このロボットは、埼玉県深谷市で栽培されている「深谷ねぎ」への農薬散布を目的としており、自律動作マシン向けのプラットフォームであるNVIDIA Jetson AGX Xavier https://www.nvidia.com/ja-jp/autonomous-machines/jetson-agx-xavier/ を搭載することで高精度の自律走行を実現しています。
農家への負担が特に大きい、農薬散布作業
レグミンは、日本の食文化を守りたいという思いを持つ、成勢卓裕氏と野毛慶弘氏によって2018年に創業されました。起業当初、静岡県で行った小松菜の栽培事業の知見を元に、埼玉県深谷市が実施する「DEEP VALLEY Agritech Award 2020 https://deep-valley.jp/」でロボットによる農薬散布サービスを提案し、最優秀賞を得たことをきっかけに、同市での活動をスタートしました。
レグミンが農薬散布ロボットの開発を目指したのは、農作業の中でも特に農薬散布における負担が大きいためです。農薬は病害虫が発生したときに撒く殺虫剤だけでなく、防かび・除菌剤なども予備的に散布する場合もあり、年間を通じて20〜25種類にのぼります。小規模な耕作地が多い日本では大型の機械の導入が難しく、近隣への騒音の懸念もあるため、人による散布作業が中心であり、人件費が重くのしかかります。また、ホースの取り回しや暑い防護服の着用、農薬の吸入への懸念など、農家の身体的、心理的負担も大きく、ロボットによる自動化の余地があると成勢氏は考えました。
しかし、 倉庫や農業ハウスのような一定の条件下で動かすのとは異なり、露地栽培では地面が土のため、でこぼこしていたり滑る場所もあり、自律走行をコントロールするのが難しく、実際に外で作業を行う農業用ロボットはこれまで実用化が困難とされてきました。自律走行を実現するための位置情報を取得するのはGPSが便利ですが、精度が高くても衛星の位置や電波の干渉で誤差が出てしまうため、GPSだけでなく画像認識による補正が不可欠と成勢氏は感じるようになりました。「当初は 他メーカーのCPUボードで動かそうとしましたが、LiDARで取得する点群データが多いため処理性能が足りず、うまくいきませんでした」。
Xavierだからこそ実現できたアイディア、特許取得にも貢献
そのような時期にNVIDIAが主催するAIカンファレンス、GTC Japan に参加した成勢氏は、Jetson AGX Xavier を搭載したロボットがオフィスの中を自律走行するデモを見て、「Xavierならば実際の農作業に貢献するロボットを実現できる」と直感し、その場でXavierを購入しました。
「Xavierはシングルボードのコンピューティング プラットフォームであり、OpenCVの計算処理をエッジ側で行えるほか、ディープラーニングに必要なCUDAの処理にも対応しています。その使い勝手の良さから、これしか選択肢はありませんでした。」と成勢氏は述べています。また、情報収集のためにNVIDIAのスタートアップ支援プログラムであるNVIDIA Inception Program https://www.nvidia.com/ja-jp/startups/ にも参加することで、機械学習や画像認識に対する知見をより深めていきました。
レグミンの農薬散布ロボットには、カメラや地磁気センサー、GPS、温度センサーなど多数のセンサー類を搭載していますが、Xavierはそのすべてのセンサーから得られた情報を処理する頭脳として機能しています。Xavierに搭載されたUbuntuを使い、GPSに加えてレーザーセンサーにより耕作地の地形を認識し、C++ やPythonで記述したプログラムによりロボットは動作しています。また、3次元の点群データをXavierで処理し、座標を得ることで畝(うね)※の形状を認識し、くぼみなどに車輪を合わせることができます。この手法により誤差1〜2cmの高精度の自律走行を実現しており、特許を取得しています。
[画像2: https://prtimes.jp/i/12662/263/resize/d12662-263-d7e39ed002592034b109-1.jpg ]
レグミンの農薬散布ロボットを使うことで、人が動力噴霧機を用いて作業した場合は1ヘクタールあたり400分かかるところ、250分まで短縮することができました。さらに今年は複数台のロボットの同時運用を行うことで、農薬散布サービスの実働時間を約150分を目標とし、60%以上の時間短縮を掲げています。また、作業コストについても人が動力噴霧機を用いて作業した場合と比較し、1ヘクタールあたり45%のコスト削減を目指します。
追加の機能も今後搭載を検討
レグミンは、病害や虫害の早期検知の研究も進めているほか、埼玉工業大学をはじめとする、NVIDIA DGXシステム https://www.nvidia.com/ja-jp/data-center/dgx-systems/を所有する大学と連携し、機械学習を活用した共同研究にも取り組んでいます。
最大で 32 TOPS の演算能力を持つ Jetson AGX Xavier モジュールはこのような研究成果を今後新たな機能としてロボットに搭載するための十分な余力を備えており、成勢氏がXavierを採用した理由のひとつでもあります。
サービスの対象や導入エリアを拡大予定、グローバル展開も視野に
農薬散布ロボットは畝の幅に合わせて動作できるようになっているため、他の農作物への応用も可能です。レグミンはすでに、新たな農薬散布サービスの受託対象として深谷市の特産物であるブロッコリーやキャベツを予定しています。また、サービス展開地域を国内の他県だけでなく、今後はグローバル展開も視野に入れています。特に東南アジアは日本同様に小さい耕作地で作物を育てているケースが多く、成勢氏は日本におけるサービスの適用が可能と見込んでいます。
成勢氏は以下のように述べています。「農業における人の作業負担の割合は大きく、AIをはじめとするテクノロジの導入は必須でしょう。人間が担う作業と機械によって自動化する作業は分けて考えることが重要です。天候に合わせた肥料の設計や育てる品種の決定といった分野は、人間の知識と経験が求められます。また、研究開発や販路開拓、マーケティングといった分野も人間が行う方が品質が上がります。すべてを機械に置き換えるのではなく、ユーザーのニーズを把握したうえで作業を細分化し、役割分担をすることで、効率化と品質の向上が実現できると考えています。」
※畝(うね):作物を植えつけたり種をまいたりするため、畑の土を細長く直線状に土を盛り上げた所のこと
プレスリリース提供:PR TIMES