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三菱電機株式会社

世界最高クラスの出力を持つ小型サブナノ秒パルス深紫外レーザー装置を開発

(PR TIMES) 2024年11月26日(火)14時45分配信 PR TIMES

高出力レーザーの小型集積化技術により、創薬やがん治療など幅広い分野での技術革新に貢献


[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/120285/199/120285-199-d26aa439c8acc1fbb1fc014bc208632d-1500x1127.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
サブナノ秒パルス深紫外レーザー装置外観

 三菱電機株式会社は、国立研究開発法人理化学研究所(以下、理化学研究所)、自然科学研究機構分子科学研究所(以下、分子科学研究所)と共同で、強力な短パルス(※1)で世界最高クラス(※2)の出力である235ミリジュールを実現した、サブナノ秒パルス深紫外レーザー装置の開発に成功しました。
 本装置は小型で可搬性を有しているため、現在は分子科学研究所内の理化学研究所スペースに移設しており、加速器の研究開発に活用されます。

 新材料や新薬の開発、粒子線がん治療などに使用される加速器は、電子や原子などに強い電界を加えることにより粒子の動きを加速させる装置で、粒子が人体や物体の深部まで到達するという特性を活用しています。しかし、加速器は大型の装置が必要となることから、この小型化を実現するためのレーザー加速技術の研究が世界各国で行われています。一方で、レーザー加速には高出力のレーザー装置が必要となるため、レーザー加速が実現した場合でもレーザー装置自体が大きくなり、結果的に加速器全体としては大型化してしまうという課題がありました。
 また、レーザー加工やセンシングなどの分野で幅広く活用されているレーザー装置は、装置の大きさやコストが導入にあたっての課題となっています。さらに、核融合の分野でもレーザー技術に注目が集まっていますが、レーザー核融合プラントの建設コストの大半がレーザーになるとの試算もあり、小型化・低コスト化が求められています。
 このように、高出力レーザーの小型化・低コスト化は、加速器の小型化やレーザー加工の高度化、核融合応用において重要な技術課題です。

 当社は今回、短パルスのマイクロチップレーザーを採用し、ビーム径を最適化することで、サブナノ秒パルス深紫外レーザー装置において世界最高クラスの出力である235ミリジュールを実現しました。また、理化学研究所および分子科学研究所との連携により開発した分布面冷却(Distributed Face Cooling)の技術を使用した高排熱チップを採用することで、従来、低温冷却が必要だった高出力レーザーの常温での動作を可能とし、装置のサイズを小型化しました。今後もレーザー加速技術の開発とレーザー装置の小型化をさらに推進し、幅広い分野での技術革新に貢献していきます。

■開発の特長
1.短パルスの深紫外レーザーで世界最高クラスの出力を実現
・高出力化のための要素技術として、短パルス(約17億分の1秒)のマイクロチップレーザーを採用
・このレーザー光を2ジュールまで増幅した後、深紫外である266nmへの波長変換を実施。深紫外レーザー放射に耐えうる高耐性の光学素子を使用し、ビーム径を最適化することで、サブナノ秒パルスにおいて世界最高クラスの出力である235ミリジュールの深紫外出力を実現
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/120285/199/120285-199-d4c838598c6c559625f0e358d4fa9f85-443x254.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
マイクロチップレーザー外観


2.高出力レーザーの常温動作を可能とし、レーザー装置の小型化を実現
・レーザー装置の高出力化を妨げるレーザー媒質(※3)の発熱への対策として、レーザー媒質と、冷却の役割を担う透明ヒートシンクであるサファイアを交互に接合するDistributed Face Coolingの技術を理化学研究所および分子科学研究所との連携により開発
・常温接合と呼ばれる特殊な接合技術をレーザー媒質とサファイアの接合に適用することで、高出力レーザーに耐性のある接合を実現
・当技術を採用した高排熱チップによりレーザー光を増幅することで、従来、低温冷却が必要だったジュール級の高出力レーザーの常温での動作が可能。低温冷却装置が不要となり、レーザー装置を約1.0m×1.2mまで小型化。また、出力が同等の装置と比較して2倍の速さでのパルス出力も実現し、レーザー加速技術の高度化に貢献
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/120285/199/120285-199-38b40030a81b8cc39e74cea4ca9be600-325x285.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
Distributed Face Cooling技術


■今後の予定・将来展望
 レーザー加速技術の開発とレーザー装置の小型化をさらに推進することで、加速器を用いた新材料や新薬の開発、粒子線がん治療などの先進技術開発をより身近なものにしていきます。また、高出力レーザーの小型化・高集積化技術をさらに深化させていくことにより、ウェルビーイングやカーボンニュートラル、安心・安全、サーキュラーエコノミーなどの社会課題の解決に貢献していきます。

■参考情報
 本研究は、防衛装備庁が実施する安全保障技術研究推進制度JPJ004596の支援を受けたものです。

■三菱電機グループについて
 私たち三菱電機グループは、たゆまぬ技術革新と限りない創造力により、活力とゆとりある社会の実現に貢献します。社会・環境を豊かにしながら事業を発展させる「トレード・オン」の活動を加速させ、サステナビリティを実現します。また、デジタル基盤「Serendie」を活用し、お客様から得られたデータをデジタル空間に集約・分析するとともに、グループ内が強くつながり知恵を出し合うことで、新たな価値を生み出し社会課題の解決に貢献する「循環型 デジタル・エンジニアリング」を推進しています。1921年の創業以来、100年を超える歴史を有し、社会システム、電力システム、防衛・宇宙システム、FAシステム、自動車機器、ビルシステム、空調・家電、情報システム・サービス、半導体・デバイスといった事業を展開しています。世界に200以上のグループ会社と約15万人の従業員を擁し、2023年度の連結売上高は5兆2,579億円でした。詳細は、www.MitsubishiElectric.co.jpをご覧ください。

※1 非常に短い時間にエネルギーを放出する電磁波や光のパルスのことで、パルスの時間は、通常1ナノ秒(10億分の1秒)以下。短パルス化により同じエネルギーでもピーク出力を高めることが可能で、レーザー加工などで有用
※2 2024年11月26日時点、当社調べ。サブナノ秒パルス深紫外波長レーザーとして
※3 レーザー装置の高出力化に必要なレーザー光の増幅に使用される特殊な結晶やセラミックで、レーザー媒質で発生する発熱が高出力化の課題

<お客様からのお問い合わせ先>
三菱電機株式会社 情報技術総合研究所
〒247-8501 神奈川県鎌倉市大船五丁目1番1号
https://www.MitsubishiElectric.co.jp/corporate/randd/inquiry/index_it.html



プレスリリース提供:PR TIMES

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