プレスリリース
三菱地所・みなかみ町・日本自然保護協会の3者で連携協定を締結
公益財団法人日本自然保護協会(以下「日本自然保護協会」)は、群馬県みなかみ町(以下「みなかみ町」)で、ネイチャーポジティブ ※1 を目指した新たな活動を始動します。これに伴い、三菱地所株式会社(以下「三菱地所」)、群馬県みなかみ町、日本自然保護協会の3者で、2023年2月27日に、10年間の連携協定を締結しました。
生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)でも注目される生物多様性の損失は、今後10年で最も急速に悪化するリスクのひとつとも言われ、気候変動とも並ぶ地球環境についての世界的な重要課題となっています。課題解決に向け、政府、企業を含むあらゆるセクターによる一層の取り組みが必要とされています。
※1 ネイチャーポジティブ:人と地球のために、生物多様性の損失に歯止めをかけ、自然を回復させること。COP15でも2030年までにネイチャーポジティブな社会を実現することが国際社会の使命とされ、そのための世界目標が定められた。
今回、関東圏の水源である利根川の源流部に位置するみなかみ町、その流域である丸の内エリアを中心に事業を営む三菱地所、環境NGOとして生物多様性の保全に高い専門性を持ち全国で活動する日本自然保護協会の3者が協定を結び、新たに生物多様性の保全、復元へ取り組みます。企業・行政・NGOが一体となって連携し、それぞれの知見を活かしながら、ネイチャーポジティブな社会の実現を目指します。
本取り組みには、企業版ふるさと納税制度(正式名称:地方創生応援税制)を活用し、三菱地所は、みなかみ町に「環境・生物多様性保全活動への支援」として、協定期間内に6億円の寄付を予定しています。世界的にも生物多様性保全へ大規模な資金動員が必要とされる中、同制度を活用した国内初*の大規模な取り組みとなります。
[画像1: https://prtimes.jp/i/27546/122/resize/d27546-122-27673d0b8895ad679600-0.jpg ]
*企業版ふるさと納税を活用した大規模な生物多様性保全の活動として国内初となります。(当協会調べ(2023年3月))
主な取り組み
1. 生物多様性が劣化した人工林を自然林へ転換する活動(約80ha)
管理の行き届いていない人工林は、自然の林よりも生物多様性が低いことがわかっています。この取り組みでは、そのような人工林を本来の植生等を踏まえた自然の林へ戻していくことで、生物多様性の保全と回復を目指します。みなかみ町内を舞台に10年で約80haを目標に活動予定です。自然林へ戻していく過程では、植樹や除伐などの手法を用います。また、イヌワシやクマタカなど、生態系の指標種にもなる動植物の保全と一体となった取り組みを推進します。
2. 生物多様性豊かな里地里山の保全と再生活動
里地里山は、長い年月をかけて人と自然が関わり合い形成された日本の特長的な自然環境のひとつで、水田やため池、草地などの多様な環境に、多くの動植物が生息しています。しかし、耕作放棄や外来種の移入などに起因した里地里山の荒廃は、日本の生物多様性を保全する上で大きな課題となっており、みなかみ町も例外ではありません。本取り組みでは、みなかみ町の里地里山を舞台に、ため池の外来種防除などに取り組み、生物多様性豊かな里地里山の保全と復元を目指します。
3. ニホンジカの低密度管理の実現
ニホンジカの増加は、農林業への被害や森林生態系の破壊など、全国的な課題となっており、みなかみ町でも増えつつあることからその対策が急がれます。森林生態系のバランスを保ち生物多様性の損失を防ぐだけでなく、増えすぎてからではその対策に膨大なコストと時間を要することから、科学的なモニタリングと効率的な捕獲技術の開発を急ぎ、ニホンジカの低密度管理を実現させます。
4. Nbs(Nature-based Solutions)の実践
1.〜3.までの取り組みを通して、生物多様性を活かした防災・減災、水源涵養、獣害対策、持続的な地域づくりなど、Nbs ※2 を実践していきます。具体的には、人工林を自然林へ転換する活動のなかで出た木材の利活用や、生物多様性豊かな里地里山で育まれた一次産品の高付加価値化、低密度管理実現に向けたシカ肉の利活用などの検討を進めていきます。また、自然の守り手を増やすべく、本取り組みへの市民参加や教育への活用の検討も進め、関係人口の増加や特色のある教育の推進にもつなげていきます。
※2 Nbs:Nature-based Solutionsの略。「自然に根差した解決策」と直訳され、社会課題解決におけるアプローチとして世界的に注目されており、国連環境計画でもその重要性が訴えられている。
5. 生物多様性保全や自然の有する多面的機能の定量的評価への挑戦と活用
生物多様性保全の定量的評価は、COP15においてもネイチャーポジティブな社会を実現していく上で重要議題となりました。本取り組みでは、研究機関や大学等とも連携し、国際的な先駆事例にもなり得る生物多様性の評価手法を開発して定量評価に挑戦します。評価は、適時開示やユネスコエコパークの定期報告などに活用し、世界に向けて発信していきます。
<活動イメージ>
[画像2: https://prtimes.jp/i/27546/122/resize/d27546-122-50b5daa43900f6ac8a7a-1.jpg ]
[画像3: https://prtimes.jp/i/27546/122/resize/d27546-122-819a9f4e8c895386030e-2.jpg ]
[画像4: https://prtimes.jp/i/27546/122/resize/d27546-122-3abb8a3a3ef636ab8f20-3.jpg ]
協定調印式について
協定締結日:2023 年 2 月 27 日(月)
【各者コメント】
・みなかみ町長 阿部 賢一
みなかみ町の代表的な自然資源は、森林、水です。森林資源について、SDGs未来都市計画で中心的な取り組みとして「森林資源循環プロジェクト」を掲げ、主に自伐型林業という、採算性と環境保全を高い次元で両立する林業経営を推進しています。今回、目標に掲げている「人工林から天然林への転換」が、この森林資源循環プロジェクトの一段の推進に繋がると期待しております。水については、大水上山から最初の一滴が生み出される利根川が、首都圏3000万人の生活を支えています。近年、鹿による下草等の食害が、水源涵養に影響を及ぼす事例もあることから、町としても深刻な課題に感じています。今回の協定は、まさに町の課題を解決に導くこととなり得る、と確信しています。これからも、みなかみ町の豊かな自然、そして人と自然が共生できる持続可能なまちづくりを進めていく所存です。
・日本自然保護協会 執行理事、事務局長 志村 智子
みなかみ町との関係が始まったのは約30年前。雪山の上に広がる大空をつがいで飛ぶイヌワシと出会ったことからでした。絶滅が危惧されるイヌワシの営巣・子育ての場になっている可能性があり、生物多様性上の重要な意味を持ちます。イヌワシと同じ高い視座で地域を捉えることで、従来の自然保護活動よりも大きな取り組みに発展し、試行錯誤しながら、自然保護の最先端の取り組みを重ねてきました。今回の協定は、これをさらに大きくステップアップするものです。自然の仕組みにはまだまだわからないことがありますが、生物多様性の劣化の方向は何としても変える必要があると考えています。日本自然保護協会は、地域から積み上げて、日本のネイチャーポジティブを実現していきたいと思っています。
・三菱地所 執行役専務 中島 篤
企業として、自然資本に関するリスクと機会についての情報開示と事業活動を通じて、ネイチャーポジティブの実現に向け主体的に取り組んでいくことが求められています。特に不動産開発事業においては自然環境の改変を伴うことがあるため、自然資本に今まで以上に関心を持ち、回復に貢献すること、そのことを世の中に説明することは非常に大事だと考えています。一方で、我々の知見だけではできないこともあるため、積極的な行政、また知見・経験のある学識者やNGO等とのパートーナシップで取り組むことが重要だと考えていました。これから10年にわたる活動の中では、様々な困難に直面することもあろうと思いますが、一歩ずつ着実に、3者で協力して進めていくことが重要だと考えています。
参考
1.群馬県みなかみ町
群馬県最北部に所在し、町(広さは東京23区の1.2倍)の約90%が山林。豊かな生態系を有し、地域の自然資源を活用した持続可能な経済活動を進めるモデル地域であるユネスコエコパーク(生物圏保存地域)に認定されている。利根川の源流を存しており、その水の一部は武蔵水道・荒川を経由して丸の内を含む首都圏3千万人の暮らしを支えている。
2.公益財団法人日本自然保護協会
日本で最も歴史のある環境NGO。三菱地所は2015年より企業会員。皇居外苑の水辺環境の復元に取り組む「濠プロジェクト」、宮古島での環境保全活動にて継続的に連携。みなかみ町では、国や地域の三者で連携して生物多様性の保全と持続的な地域づくりに取り組む「赤谷プロジェクト」を実施。「自然のちからで、明日をひらく。」という活動メッセージを掲げ、人と自然がともに生き、赤ちゃんからお年寄りまでが美しく豊かな自然に囲まれ、笑顔で生活できる社会を目指して活動している。
3.三菱地所株式会社
130年以上にわたり丸の内エリア(大手町・丸の内・有楽町地区)をはじめとしてさまざまな場所でまちづくりを推進している総合デベロッパー。三菱地所グループは、2050年に目指すべき姿として「三菱地所グループのサステナビリティビジョン2050〜 Be the Ecosystem Engineers」を制定。立場の異なるあらゆる主体が、経済・環境・社会の全ての面で、持続的に共生関係を構築できる場と仕組み(=エコシステム)を提供する企業(=エンジニアズ)であることを目指している。
プレスリリース提供:PR TIMES