プレスリリース
NEDOは助成事業である「脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業」の一環として「エネルギー消費行動の変容を目的としたスマートモビリティの実証研究(フィリピン)」(以下、本実証研究)にフィリピン基地転換開発公社(BCDA:Bases Conversion and Development Authority)と取り組んでいます。本実証研究の助成先であるZenmov株式会社は、現地協力企業のMC Metro Transport Operation Inc.(以下、MMTOI)と連携して、Zenmovが開発したクラウド型交通管制システム「Smart Mobility Operation Cloud」(以下、SMOC)の導入を完了し、2024年9月より実証運転を開始しました。
実証運転の対象地は、フィリピンのスマートシティとして開発中のクラークエリアです。SMOCを導入・運用することで、同エリアでの公共交通の利便性、輸送効率を向上させ、エネルギー消費量と温室効果ガス(GHG)排出量の削減を目指します。
なお、これに併せて2024年9月10日に、クラークエリア内ニュークラークシティの陸上競技場で関係者による運転開始式を開催しました。
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図1 SMOC※1を活用したデバイス・導入設備連携とデータ分析による交通管制のイメージ
1.背景
経済成長と人口増加が著しいフィリピンでは、交通分野において利用者の急激な増加、個人事業主ドライバーの自己裁量の運行による渋滞や混雑といった交通事情が社会問題となっています。こうした交通事情は、経済的損失、大気汚染、無駄なエネルギーの消費といった問題の原因でもあります。フィリピン政府は交通政策として公共交通車両近代化プログラムを開始し、交通機関の定時性やキャッシュレスなどによる利便性向上と、公共交通で使用する車両の安全性や快適性、環境性能を高めることを目指しています。
2.実証研究の概要
このような背景のもと、NEDOとBCDAは効率的な公共交通の運行を可能にするシステムを導入・運用することで、公共交通の利便性、輸送効率の向上、消費エネルギーの削減などを目的とした本実証研究※2のために、2023年2月に基本協定書を締結しました。同時に実証研究を実施するZenmovは現地協力企業のMMTOIと、プロジェクト合意書(Project Agreement、PA)を締結しました。
これを受け、ZenmovとMMTOIは、フィリピンのスマートシティとして開発中のクラークエリアで、実証研究を開始しました。Zenmovのクラウド型交通管制システムSMOCを、自動運転車を含む電動バスなどの環境性能の高い車両に搭載し、移動需要に合わせた最適スケジュールによる定時性の確保、車間調整機能による待ち時間の軽減、キャッシュレスによる利便性の向上などを通じた運行効率の改善により、GHG排出量の削減、省エネの実現を目指します。
実証研究の内容:
13台の電動バス(内1台は自動運転)と5台のクリーンディーゼルエンジンバスの位置情報や乗降客数などのデータに加えて、スマートポールやドローンからのデータをクラウドに蓄積します。これらの蓄積されたデータをもとに移動需要を分析し、最適な運行スケジュールを自動生成し、効果的で無駄のない運行の実現を実証します。
実証研究で実現したい効率化や貢献は以下の通りです。
1.運行の効率化:AIなどのデジタル技術を用いて、移動需要に合わせた最適な運行スケジュールを生
成することで、より少ない台数で、最大の輸送力を発揮する効率的な運行を提供します。
2.マルチモーダル:幹線道路で中長距離を担うクリーンディーゼルエンジン(ユーロ4エンジン※3
搭載)のバス、短距離・ラストマイル(自宅からバス停まで、バス停から目的地までなど)を担う
電動バス・自動運転車・電動アシスト自転車の異なる交通手段を組み合わせて、効率的かつ柔軟に
目的地に到着するマルチモーダルな交通を実現します。これにより利用者が自宅や目的地からバス
停 まで長距離を歩かざるを得ない、そもそもバスを利用できないといった不便さを解消します。
3.スマートシティ化への貢献:フィリピンで初めてとなる自動運転車両の運行や、スマートポール、
ドローンとITを活用した移動需要のモニタリングで、フィリピン政府が推進するクラークエリアの
スマートシティ化に貢献します。
3.今後の予定
蓄積されたデータの分析をもとに運行効率の向上や乗降客数の増加などを検証しながら、より利便性が高く、GHG排出量を削減し、省エネに貢献するシステム構築を目指します。実証された仕組みはフィリピンの各都市のみならず、周辺の国や地域へも広く展開していきます。
4.運転開始式
2024年9月10日、フィリピン・ニュークラークシティの陸上競技場で、日本・フィリピンから多数の関係者が出席のもと、本実証事業の運転開始式を開催しました。運転開始式では、NEDOの弓取理事、Zenmovの田中社長を始めとする関係各者のスピーチやZenmovから本実証事業の概要を説明した後、出席者が自動運転車などへの乗車体験を行いました。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/135644/104/135644-104-4adc505802fa016d52e727926fb41478-467x317.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
図2 運転開始式でテープカットする様子(弓取理事:左から2番目、田中社長:右から2番目)
【注釈】
※1 SMOC
Smart Mobility Operation Cloudの略で、Zenmovが提供するスマートモビリティを実現するクラウド型交通管制システムです。2020年よりフィリピンにおいて交通事業者(バス)向けにSaaSサービスとして提供を開始しました。配車スケジュール、ドライバー管理、運行モード管理、チケット発券などの管理者機能、ドライバーアプリ、乗客アプリを備えたソリューションとして運行効率の改善やドライバーの生産性向上に寄与しています。都市開発デベロッパーなどのスマートシティ関連事業者向けには、マルチモーダルやマルチデバイス管理、GHG排出量可視化などを備えたMaaSプラットフォームとして提供しています。定期ルート運行だけでなく、オンデマンド、チャーターなどの事業者の目的に応じた運行モードの管理や、送迎や配送管理など特定用途への拡張にも対応しています。
※2 本実証研究
事業名:脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業国際実証事業/エネルギー消費行動の変容を目的としたスマートモビリティの実証研究(フィリピン)
事業期間:2022年度〜2025年度
事業概要:脱炭素化・エネルギー転換に資する我が国技術の国際実証事業
※3 ユーロ4エンジン
欧州連合(EU)が設定した第4回排出ガス基準を満たしたエンジンを指します。この基準は車両から排出される有害物質(特に一酸化炭素、窒素酸化物、炭化水素、粒子状物質)を制限するもので、2005年から基準化されました。ユーロ4エンジンは、この基準に基づいて、有害物質の排出を制御・削減した上で排出ガスを低減する技術を搭載しているため、環境への負荷が少ないことが特徴です。
プレスリリース提供:PR TIMES