プレスリリース
「食料がない時には、土手の可食草をおかずにした」 ―困窮するひとり親家庭の収入と実情:子どもの教育、体験、食事・・・あらゆるものを断念
認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは、困窮するひとり親家庭の生活状況を把握するため、当団体のフードバンク事業を利用するひとり親を対象に2件のアンケートを実施し、ひとり親家庭の収入額や経済的理由により断念した経験のある事柄、ひとり親が自身について抱える困難な状況(心身の健康問題や周囲からのサポート状況等)、子どもに関する困りごとの内容などについて調査しました。
調査の結果、十分な食事をとることさえままならないケースもみられるなど、きわめて厳しい暮らしを送るひとり親家庭の実態が明らかとなりました。
アンケート(1) 概要
アンケート名:グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業利用者の収入に関するアンケート
実施日程:2023年1月26日〜2月27日
対象者:グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業「グッドごはん」の利用者 ※利用者は、ひとり親家庭等医療費受給者証保有者に限る(ひとり親家庭等医療費受給者証とは、18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証)
回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)
回答者数:922名
回答者の主な居住地域:首都圏(東京・神奈川・埼玉 )および 近畿圏(大阪・京都・兵庫・奈良)
【年収】
2022年の収入額を調査した結果、回答者の47%が世帯年収200万円未満で暮らしていることが明らかとなりました(世帯年収には各種手当・養育費・同居家族の収入も含まれます)。
[画像1: https://prtimes.jp/i/5375/75/resize/d5375-75-a9ef860426299a9f10bc-7.jpg ]
【新型コロナウイルス感染拡大後の就労収入】
新型コロナウイルス感染拡大以前の2019年と比較し就労収入が「減った」または「無くなった」と回答した人は、全体の6割程に及びました。
[画像2: https://prtimes.jp/i/5375/75/resize/d5375-75-9ee43f0b755b9f9c7bd5-6.jpg ]
上記のとおり、調査回答者の世帯年収が低い傾向にあるほか、新型コロナウイルス感染拡大以降の減収も重なり、ひとり親家庭が厳しい生活を送らざるを得ない場合があるものと危惧されます。
アンケート(2) 概要
アンケート名:ひとり親家庭の困難状況に関するアンケート
実施日程:2023年6月1日〜6月10日
対象者:グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業「グッドごはん」の食品受取に申し込んだ首都圏および近畿圏の利用者(首都圏は主に東京・神奈川・埼玉・千葉 / 近畿圏は主に大阪・京都・兵庫・奈良) ※利用者は、ひとり親家庭等医療費受給者証保有者に限る(ひとり親家庭等医療費受給者証とは、18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証)
回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)
回答者数:2,537名(首都圏1,450名、近畿圏1,087名)
【暮らしの状況について】
現在の暮らしの状況について、「大変苦しい」「やや苦しい」と回答した人は、全体の9割近くに及びました。
[画像3: https://prtimes.jp/i/5375/75/resize/d5375-75-b6d58648d54da30380b2-0.jpg ]
【経済的理由であきらめた経験がある事柄】
ひとり親になってから、経済的に余裕がないことが理由で何かを制限したりあきらめたりした経験がある人(「特にない」「回答したくない」を選択しなかった人)の割合は、95%近くに達しました。
[画像4: https://prtimes.jp/i/5375/75/resize/d5375-75-a5c79af81cab698ed7d2-0.jpg ]
「家族旅行・レジャー」「子どもの習い事」など、子どもが触れる体験の量や質に直結し得る事柄の選択率が比較的高いことから、子どもが体験を通して得ることのできる学びや自信を育む機会の不足が懸念されます。
これに加え、「子どもの進学」「子どもの学用品を買うこと」など、子どもの教育に関わる事柄も選択されており、経済状況を背景に、子どもが適切な教育を享受できない可能性が示唆されます。
さらに、「家でエアコンやお風呂を使いたいときに使うこと」「必要な食事をとること」「自分/子どもの体調不良時に医療機関にかかること」が選択されており、健康を適切に維持することが困難なほど切迫した暮らしに陥っているケースがみられます。
<ひとり親になって以降、経済的理由であきらめた経験がある事柄について寄せられた声(自由記述)>
子供が部活や塾、 進学したい学校を諦めている
収入が少ないために、子供に習い事を諦めさせたことがとても悔しい
食料がない時には、土手の可食草をおかずにした
土日祝日は家族みんな1日2食にしています。自分は平日も極力2食です。朝からお腹空いたー!と連呼しているのを引き伸ばすのは、可愛そうで申し訳なく思います
子供のお誕生日にホールケーキを買ってあげることが出来ずみんなで泣いてしまった
過去に生理用品が買えない時は精神的にもとても辛かったのを覚えています
仕事を休むと給料にひびくので、学校行事はほぼ行かない
学校で販売される数千円の絵の具セットや書道セットさえ買えず、1番安いであろう物を近所で購入し少しでも可愛く見える様に工夫
お風呂をためることをしてあげられなく、冬の時期はほんとうに申し訳ない気持ちでいっぱい
【ひとり親自身の困難な状況 -5人に1人が「持病あり」-】
ひとり親が自分自身に関係することでどのような困難を抱えているかを回答する設問で、約6割の回答者が現在、経済的な困窮の他にも困難な要素を持っていることがわかりました[1]。
[画像5: https://prtimes.jp/i/5375/75/resize/d5375-75-6a43d7dd6793ecd0c0c9-7.jpg ]
「実親のサポートが受けられない(他界、遠方等)」の選択率が最も高く、次に「日常生活の悩みやストレスを相談できる相手がいない」が続き、身近な人からのサポートを受けづらい状況が推察されます。回答者からは、「友達に誘われても食事や買い物には行けない。時間もない。交友関係が減り、孤立する。」という声も聞かれました。
ひとり親は、子育てや家事等、生活を一人で担うケースが多く、周りの人と交流する時間が物理的に削られ、日常的に孤立感や疎外感を深めていくリスクが危惧されます。
本設問で42.7%の回答者が、現在における困難な状況を複数選択しました。自身に関する困難な要素を複数抱えている回答者からは、下記のような声があげられました(自由記述回答より)。
[画像6: https://prtimes.jp/i/5375/75/resize/d5375-75-25ae5dea39eb3deff40e-6.jpg ]
[画像7: https://prtimes.jp/i/5375/75/resize/d5375-75-0046757543405f2966e4-7.jpg ]
[1]現在における困難な状況を抱える回答者は、以下の項目を選択しなかった回答者を指す ※下記( )内は、本設問有効回答者のうち該当項目を選択した人の割合
・「現在はあてはまらないが、過去に選択肢のいずれかの状態にあったことがある」(6.6%)
・「あてはまるものはない」(26.9%)
・「回答したくない」(5.3%)
【子どもに関する困りごと -5人に1人が「子どもの栄養状態が心配」-】
養育する子どもに関係する心配ごとや困りごとの内容を選択する設問では、7割を超える回答者が現在困りごとを抱えていることがわかりました[2]。
[画像8: https://prtimes.jp/i/5375/75/resize/d5375-75-3098aad2356177741f24-7.jpg ]
「勉強・学力」の選択率が最も高く、次いで、「こころの不調」「栄養状態」と続き、子どもの健康に関係する困りごとの選択率が比較的高い値を示しています。
回答者からは、勉強が好きな子どもが塾に行きたがっているが経済的に厳しく断念している、成長期の子どもに毎食食べさせることができないため栄養状態を心配しているなどの実情が挙げられました。
子どもの成長過程において学力や心身の状態を良好に保つことが困難なことによる、長期的な負の影響が懸念されます。
[2]子どもに関する困りごとを現在抱えている回答者は、以下の項目を選択しなかった回答者を指す ※下記( )内は、本設問有効回答者のうち該当項目を選択した人の割合
・「現在はあてはまらないが、過去に選択肢のいずれかの状態にあったことがある」(4.7%)
・「あてはまるものはない」(18.0%)
・「回答したくない」(3.2%)
【おわりに】
本アンケートの中で、「今、興味のあることや目標・夢」を聞く質問(自由記述回答)を設けたところ、「今は苦しい生活だけどいつか家族と自分に余裕が出来た時に人の役に立つ活動がしたい」「子供が医療の仕事を目指しているので応援したいし叶えてあげたい」「介護の勉強をし、次は自分より困っている人や障がいがある人、介護が必要な人を支えられる人になって、たくさんの人を支えて、サポートをして頑張っていきたい」などの回答が寄せられました。
このような目標や夢をもつ一方で生活は困窮しており、目の前の一日一日を生きるために、子どもの進学や自身の仕事のための資格取得など、将来に関わるあらゆる選択をあきらめざるを得ないひとり親家庭が少なくありません。中には、「日々の生活に手一杯で、夢も希望も持てない」というような回答もみられました。
厚生労働省から7月4日に公表された最新の国民生活基礎調査(2022年実施)の結果では、ひとり親家庭の貧困率が44.5%であることが示されました。この数値は、前回調査実施時(2019年)の48.3%と比較し減少しています。
しかし、グッドネーバーズ・ジャパンは、既述のアンケート結果にみられるような、逼迫した暮らしを送っているひとり親家庭が確実に存在している現状を強く懸念します。なぜなら、経済的理由などにより様々な体験・教育機会を得ることや、健康的な生活を送ることが難しい子どもたちは将来、就労などの選択肢が狭まる可能性があると考えられ、成人後も貧困のリスクに陥ると危惧するためです[3]。
子どもたちが、社会に出る前に自身の可能性や能力を伸ばす力を身につけ、大人になった時に自分の価値を最大限発揮し社会で安定的に活躍することは、社会全体にとって大きなメリットになるはずです。そのため、困難な状況に置かれた子どもたちが社会から取り残されないよう、子どもの貧困を社会全体の課題として捉え、困窮家庭の生活状況の実態把握や改善に向け対応していくことが急務であると考えます。
[3]ひとり親家庭であること自体が子どもにとって悪影響という見解ではなく、ひとり親家庭の貧困状態が将来に及ぼし得る一つの可能性について述べています。
団体について
特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンは、国際組織グッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、2004 年に開設されました。「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指し、国内外の子ども支援を行っています。公益性の高い団体である「認定NPO 法人」として東京都から認可を受けています。
https://www.gnjp.org/
ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」とは
「グッドごはん」とは、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭を対象に、食品を無料で配付する事業です(※)。
企業や個人の寄付によって集まった、お米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約10,000円相当のカゴいっぱいの食料を毎月ひとり親家庭に配付しています。
※通常、配付拠点に直接取りに来られる方を対象に食品を配付しています。2023年8月時点で、首都圏および近畿圏において約40か所に配付拠点を設けています。
https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
プレスリリース提供:PR TIMES