プレスリリース
認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは2017年より日本国内の子どもの貧困対策事業として、ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」を開始し、ひとり親世帯への食品配付を行っています。
今回、グッドごはんを利用するひとり親を対象にアンケートを行い、子どもの夏休みの過ごし方や夏休み期間中の家計に関し、ひとり親が抱える不安や困りごとについて調査しました。
調査の結果、困窮するひとり親家庭は夏休み中、健康が脅かされるリスクが懸念されるほど、より困難な生活に直面する可能性があることが明らかとなりました。
アンケート概要
「子どもの夏休みにおけるひとり親の不安・困りごとに関するアンケート」
実施日程:2023年7月1日〜7月10日
対象者:「グッドごはん」の食品受取に申し込んだ首都圏および近畿圏の利用者(首都圏は主に東京・神奈川・埼玉・千葉 / 近畿圏は主に大阪・京都・兵庫・奈良) ※利用者は、ひとり親家庭等医療費受給者証保有者に限る(ひとり親家庭等医療費受給者証とは、18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証)
回答方法:アンケート回答フォームへの入力(オンライン)
回答者数:2,643名(首都圏1,522名、近畿圏1,121名)
本アンケートでは、「子どもの今年の夏休みの過ごし方に関する心配・困りごと」(選択式)、および「夏休みの家計や生活全般で不安に思うこと」(自由記述式)について回答を得ました。
その結果、回答者全体の約9割が、子どもの今年の夏休みの過ごし方に関して何らかの心配や困りごとを抱えていることがわかりました。
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●「夏休みの思い出を作ってあげられない」 ―体験活動の予定がないことへの不安
子どもの今年の夏休みの過ごし方に関する困りごとの内容として、上図のとおり、「体験活動(旅行やレジャー、文化的体験など)をする予定がないこと」の選択率が最も高くなっており、回答者の過半数が当項目を選択しました。
この困りごとに関連した内容で、自由記述の回答には下記のような声が寄せられました。
周りの友達のように旅行に連れて行ってあげられず、夏休み明けに学校で友達と話す時悲しい思いをさせてしまう
外食やイベントに連れていってあげられない
子におこづかいを渡して友達とお出かけさせてあげることもできない
子供達に習い事さえさせられず、遊びに連れて行ってあげられず辛い
夏休みの思い出を作ってあげられないのが、可哀想です。 やはり移動するにも交通費がかかりますし、お金のかからない場所に行くにしても現地の物を食べたがるので、やはり難しいかなと思います。 今年の夏休みも近くの公園で過ごそうと思います
●家で子どもだけで過ごさせることへの不安 ―熱中症や栄養不足の心配も
子どもの今年の夏休みの過ごし方に関する困りごととして、4割を超える回答者が「一人またはきょうだいだけで家で過ごす時間が多くなること」を選択しており、次いで「家で冷房を使いたいときに使えないこと」の選択率が比較的高くなっています。
自由記述の回答では、下記のとおり切実な声があげられました。
エアコンがありません 日中私が仕事で不在の時、子どもが一人で留守番になるのですが、熱中症が心配です
電気代高騰で冷房をセーブしなければいけないので子供たちが体調不良にならないか不安
電気ガスの値上げで暑い時もエアコンつけずに我慢している娘に申し訳ないです…熱中症が心配
さらに、夏休み中に子どもだけで家で過ごす間の心配や困りごととして、以下のように子どもの食事に関する回答がみられました。
子供が夏休みでずっと家にいるのに、充分な食事を用意してあげられない
私が仕事の日は三食自宅で子供1人で食べるので、不規則な時間だったり、栄養が偏った食事になってしまうのが不安
夏休み期間中お昼を自宅で一人でたべるので、衛生管理ができるかどうか心配
夏休み中のエアコンの使用や食事の準備に関しては、費用面での不安を抱える回答者も多くみられ、以下のような声が寄せられました。
子が家にいる時間が長くなるので光熱費が高くなり払えなくならないか凄く心配。食費も上がりそうなので何か対策をしたいが、これ以上どこを削れば良いか途方に暮れる
水道光熱費が上がるのと、給食が無いため食費が更に上がるので赤字確定です
夏休みに子どもが家にいるときにエアコンを使わない生活で体調を崩さないか心配。本当ならエアコンを使っていいと言いたいところだけれど、電気代が高騰しているので難しい
●家庭環境の影響をより受けやすい、夏休み中の子どもたちの生活
本アンケート調査では、子どもの夏休みに際し、ひとり親が抱える心配や不安、困りごとの内容を明らかにしました。
子どもの夏休みの過ごし方に関する心配について、「体験活動(旅行やレジャー、文化的体験など)をする予定がないこと」の選択率が高く、夏休み中子どもに旅行や習い事、外食などの体験を十分にさせてあげられないことに対し、ひとり親が不安を抱えているケースが浮かび上がりました。
子どもが様々な体験に触れることは、主体性や豊かな感性、問題解決力など、あらゆる能力や個性を育む点で重要であることが文部科学省の調査などでわかっています。学校のある期間よりも家庭で過ごすことの多い夏休み期間中はさらに、家庭環境を主因とし、子どもが触れる体験機会の質や量に差が生じやすいことが危惧されます。
夏休み中の生活面に関係することでは、昨今電気代が高騰している中、夏休み中に在宅時間が長くなることによりさらに支出が増える心配や、節約のためエアコンの使用を控えることによる体調不良への不安があるとの声が多くあげられました。
また、電気代のみならず、食品をはじめとする物価の高騰も同様に、夏休み中におけるひとり親家庭の家計を大きく脅かすと懸念されます。2023年に入ってからの食品の値上がり品目数は、6月末時点で少なくとも29,000品目にも及んでいます。本アンケートの回答者からは、ただでさえ食費が高騰している中、給食がない夏休み中に十分な食事を子どもに用意してあげられるのか、不安に思う声が寄せられました。
気温の高い夏休み期間、家で適切にエアコンを使用できないことや十分な食事をとれないことにより、子どもの健康が保たれないリスクが懸念されます。
夏休みのような長期休暇における子どもの生活は、家庭環境の影響をより直接的に受けやすいと予想されます。しかし、どのような環境であっても、安全で健やかに生活する権利をすべての子どもがもっています。
光熱費や食費など家計の支出が増えやすい長期休みにおいて、家庭環境に左右されることなくすべての子どもたちが安心して暮らすことのできるよう、困窮する子育て世帯を貧困から守るための仕組みや支援体制が求められます。
文部科学省「令和2年度青少年の体験活動に関する調査研究結果報告〜21世紀出生児縦断調査を活用した体験活動の効果等分析結果について〜」
団体について
特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパンは、国際組織グッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、2004 年に開設されました。「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指し、国内外の子ども支援を行っています。公益性の高い団体である「認定NPO 法人」として東京都から認可を受けています。
https://www.gnjp.org/
ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」とは
「グッドごはん」とは、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭を対象に、食品を無料で配付する事業です(※)。
企業や個人の寄付によって集まった、お米や調味料、レトルト食品、お菓子など、約10,000円相当のカゴいっぱいの食料を毎月ひとり親家庭に配付しています。
※通常、配付拠点に直接取りに来られる方を対象に食品を配付しています。2023年7月時点で、首都圏および近畿圏において約30か所に配付拠点を設けています。
https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
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