プレスリリース
神戸市では、国の法改正に先駆けて、「神戸市マンションの管理状況の届出・情報開示制度」を2021年3月にスタート。今回、ポートアイランド住宅が補助制度を活用し、全国最大規模の耐震改修を2022年より実施することが決まりましたのでお知らせいたします。耐震改修工事は3年計画で、2024年に完了予定です。
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全国に約675万戸あるとされるマンションは、近年も毎年約10万戸前後が供給されつづけています。※1中でも築40年を超えるマンションは、現在の103万戸から10年後には232万戸(約2.2倍)、20年後には405万戸(約3.9倍)になるなど、今後、老朽化や管理組合の担い手不足が顕著な高経年のマンションが急増する見込みです。適正な管理運営に支障をきたす管理組合が表面化してくることが危惧されています。
神戸市においても約20万戸のマンションがあり、築35年以上のマンションはすでに3割を超えており、全国と同様の傾向です。一昔前から「マンションは『管理』を買え」と言われてきましたが、上記のような将来予測を考慮すると、今後の老朽化を抑制し、周辺への危害等を防止するための維持管理の適正化はまさに差し迫った課題です。
1.マンション管理の難しさと全国に先駆けた神戸市の取り組み
マンションは構造体1つ隔てて、様々な価値観や事情を抱える複数の人々(区分所有者)が共同で生活をするスタイルであり、適正な管理を行うための意思決定は、都度合意形成が必要になってきます。
ただでさえ多様な価値観をまとめる必要性がある中で、マンション自体の経年に加え、区分所有者の高齢化や非居住化などが進行、さらには、管理組合役員の担い手不足や修繕積立金の不足等により、組合運営が困難になりうる課題は山積の状況です。
そのような状況の中、国はマンションの管理適正化を一層推進するため、令和2年にマンションの管理の適正化の推進に関する法律を一部改正(令和4年4月全面施行予定)し、行政も更なるマンションの管理適正化に向けた取り組みを行うこととなりました。
神戸市では、市長自ら「タワーマンションを都心に林立させることで、安易に人口を増加させる施策を取らない」と明言し、都心部のタワーマンション規制に取り組むなど、大規模マンションが抱える構造的課題と早くから向き合ってきました。令和3年2月には、国の法改正に先駆けて、「神戸市マンションの管理状況の届出・情報開示制度」※2をスタートさせ、市内マンションの管理状況の把握や管理適正化に向けた取り組みを進めています。
2.ポートアイランド住宅の取り組み
この届出制度の受付開始直後に届出を提出した管理組合の1つに、ポートアイランド住宅管理組合(41号棟〜49号棟:全9棟941戸)があります。この管理組合は、以前から「マンションの資産価値の維持向上」を念頭に置き、適切な修繕等に加え、防災用品の備蓄促進や震災対策としての家具固定推進、近隣大学との総合防災訓練など様々な取り組みを進めてきました。また、マンションみらいネット(平成18年7月開始:(公財)マンション管理センター)にも制度開始当初から登録し、管理組合の状況をつぶさに情報公開するなど、その取り組みには目を見張るものがあります。
そんなポートアイランド住宅が、来年から、全国最大規模の耐震改修を実施します。先に述べたような適正管理への意識の下地があったポートアイランド住宅ですが、耐震改修への道のりは容易ではありませんでした。
ポートアイランド住宅が、耐震化に向けて動き始めたのは、今から12年前の2009年です。神戸市の補助制度を活用して耐震精密診断を実施し、耐震性が不十分であることが明らかになりました。その結果を受け、耐震補強設計を実施し、耐震改修工事を行う予定でした。しかし、工事業者を公募していた2011年3月11日に東日本大震災が発生したことで、見積を辞退する業者が続出し、見積価格も高騰したため、工事はやむなく中止となりました。
3.不屈の精神で耐震化を実現
それから約10年の時を経た2022年、ポートアイランド住宅はついに耐震改修工事に着手します。工事を実施するのは、全9棟941戸のうち、耐震性が不十分と診断された7棟727戸。これは、マンションの耐震改修工事としては、全国で最大級の規模です。この10年間、ポートアイランド住宅は、防災意識を高く持ち続け、耐震改修に取り組むという強い意志のもと、再度耐震改修の資金を確保するためにマンション管理の経費削減に積極的に取り組み、住民の合意形成にも尽力しました。また、補助制度を活用するため、神戸市とも協議を続けてきました。工事の実現に向けて困難を乗り越えられたのは、管理組合の強い想い、リーダーシップがあったからです。耐震改修工事は3年計画で、2024年に完了予定です。
耐震化に向けて、先頭に立ち取り組みを進めてきた、同管理組合計画修繕委員会委員長の高柳章二氏は「耐震性が不十分な旧耐震基準のマンション※3は、今後生き残っていけない。住民が安全に暮らすため、また、資産価値を上げるため、耐震改修をすることが不可欠であるという想いで進めてきた。」と話します。
全国でも類を見ない熱意と規模でマンションの管理適正化に先駆的に取り組む姿は、神戸にとどまらず全国の他の管理組合のお手本や参考になる部分も多いと思われます。今後の取り組みにも目が離せません。
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(※1 令和2年度末時点:国交省資料より)
(※2 神戸市マンション管理状況の届出制度・情報開示制度)
・マンション管理組合による自主的な適正管理の取り組みを促し、マンションの管理の適正化を推進することを目的として、令和3年2月に制度開始(3月から届出受付)
・届出により、市内マンションの管理状況の把握に努め、管理状況に応じた助言・支援を実施していく
・令和3年10月末時点、385組合636棟が届出、うち約7割がマンション名などの情報を神戸市HPに開示
(※3 昭和56年5月31日以前に建てられたマンションのこと)
プレスリリース提供:PR TIMES