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構造物の高速振動を簡単・高精度に計測する圧縮センシングを用いた新手法を開発

(PR TIMES) 2023年09月11日(月)17時15分配信 PR TIMES

論文誌『Mechanical Systems and Signal Processing』に掲載、日本機械学会のオーディエンス表彰を受賞

 構造計画研究所(東京都中野区、代表執行役社長:渡邊 太門)と独立行政法人 国立高等専門学校機構 広島商船高等専門学校(広島県豊田郡、校長:河口 信義 氏)商船学科 加藤由幹助教の共同研究成果が、オランダ エルゼビア社の論文誌『Mechanical Systems and Signal Processing』に掲載されました。また、一般社団法人 日本機械学会が主催する「Dynamics and Design Conference 2022」における本研究成果の発表が、この度、2022年度機械力学・計測制御部門 部門一般表彰:オーディエンス表彰を受賞しました。
 圧縮センシングと呼ばれるデータサイエンス技術とデジタル画像相関法(DIC)を組み合わせた新技術により、高価な高速度カメラを用いることなく構造物の高速振動の分析を実現します。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/23284/62/23284-62-981aed30e969286c5f873c970203583c-1480x594.png ]


■ 本リリースの要点
1. モノづくりの現場における振動計測の常識を変える、簡単・高精度に計測を実現する新技術を開発
2. 同成果が著名論文誌『Mechanical Systems and Signal Processing』に掲載され、また日本機械学会のオーディエンス表彰を受賞
3. 国内での特許も出願済みであり、今後は自動車業界での実用化を皮切りに、電力や航空宇宙など他業界への展開を想定

■ 背景
 自動車などの輸送機器、回転機械、配管など多くの人工物は絶えず振動にさらされており、振動がそれらの性能や製品寿命、安全性を大きく左右します。そのため、設計・製造・維持管理といった現場においては振動の計測が不可欠です。
 これらの現場では、加速度センサと呼ばれる接触式センサを用いて計測を行うことが一般的です。しかし、センサは手作業で貼り付ける必要があり、設置や配線等にかかる手間と労力が課題となっていました。また、複雑形状を持つ対象物や、センサの質量が対象に影響するような軽量または柔軟な構造物は計測が困難でした。さらに、空間的な振動の把握が難しいことから製品の性能や安全性を低下させるリスクがありました。
 
 一方、デジタル画像相関法(DIC)と呼ばれる画像計測技術と高速度カメラを用いることで、センサを貼り付けることなく、高速で振動する対象物の変位やひずみを非接触かつ面的に計測することが可能になります。しかし、高速度カメラそのものが非常に高価かつ大型であるため導入のハードルが高く、また画素数が低いため高速な微細振動を計測できないといった多くの制約が残ります。当社は2017年から同技術を活用した事業開発に取り組んでいますが、その中でこうした振動計測の現場における課題を認識しました。

 上記の課題を解決し高速かつ高精度な振動計測を実現するため、この度、広島商船高等専門学校 加藤由幹助教との共同研究を通じて、DIC技術に圧縮センシングと呼ばれるデータサイエンス技術と特殊な撮影方式、およびその数学モデルを組み合わせた新手法であるCompressed Sensing DIC技術を開発しました。

[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/23284/62/23284-62-a185b67dfc99f299827882f54068af82-1016x438.png ]

[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/23284/62/23284-62-09502f228d940080993be889ab472c62-1015x435.png ]


■ 実現できること
 圧縮センシングとは、少数のデータからより複雑な情報を抽出するデータサイエンス技術です。MRI などの医療機器分野で用いられているほか、電波天文学の分野におけるブラックホールの可視化などでも実用化されています。
 
 この技術と既存のDIC技術を組み合わせることで、低速度の撮影画像から高速度の情報を復元するCompressed Sensing DIC技術を開発し、低速度カメラを用いた高速現象の振動計測を実現することに成功しました。これにより、従来の課題であった解像度と撮影速度のトレードオフを解消し、高解像度かつ高速な画像振動計測が可能になります。
 本技術は特殊な専用のハードウェアは必要なく、一般的な小型・軽量カメラに、既製品の信号制御装置とストロボ光源を追加するだけで、ソフトウェアで高速な振動計測を可能にします。これにより、従来技術と比較して大幅に機材のコストを削減しながら、手軽に高精度な計測を実現することが期待できます。将来的に、超高解像度カメラを利用した超高分解能な振動計測だけでなく、低価格カメラを利用した画像振動モニタリングシステムの実現も期待されます。
 
 現時点では 1200 万画素の単眼またはステレオカメラを用いた 10fps(1 秒間に 10 枚撮影)の撮影条件で、10μm 以下の微細な振動(参考:髪の毛は 40μm 程度)に対して、撮影速度を大きく超えた 3000Hz超の振動が計測できることを実験とシミュレーションで実証しています。
 本成果は2022年5月に国内特許を出願済み、および2023年5月にPCT出願済みです。
[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/23284/62/23284-62-f708fc8d3ef18dc697712c12c43bf825-1514x728.png ]


■ 論文詳細
・論文掲載誌: Mechanical Systems and Signal Processing
・論文タイトル::Vibration mode identification method for structures using image correlation and compressed sensing
・著者: Yuki Kato; Soma Watahiki
・掲載日:2023年6月8日
詳細はこちら:https://doi.org/10.1016/j.ymssp.2023.110495

■ 表彰詳細
・学会名:Dynamics and Design Conference 2022
・受賞名:一般社団法人 日本機械学会 2022年度機械力学・計測制御部門 部門一般表彰:オーディエンス表彰
・受賞者:広島商船高等専門学校 加藤 由幹
・受賞日:2023年8月30日
・表彰対象講演:加藤由幹、綿引壮真 “画像相関法と圧縮センシングを用いた構造物の振動モード同定手法の開発” , 351, Dynamics and Design Conference 2022.

[画像5: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/23284/62/23284-62-ce15dfa469fbd47a5f831016e6e13490-2423x2700.jpg ]


■ 今後の展望
本技術は、製品の振動に対する特性を正確に把握する必要がある自動車業界に向けた新たな振動分析ソリューションになりうると考えています。自動車業界では電動化や材質の変化に伴い、高品質な振動計測が求められているなど、非接触での計測ニーズが高まっています。本技術を活用することで、自動車製品の品質や乗り心地、騒音の制御に貢献できると考えています。
 今後は、電力、航空宇宙・防衛、工場設備、ロボットなど他の業界への展開も視野に入れ、引き続き学術界との綿密な連携を図りながら共同研究および事業化に取り組んでまいります。

■ 会社情報
【株式会社構造計画研究所】
構造計画研究所は、工学知を用いて社会の諸問題の解決に挑む技術コンサルティングファームです。1956年に構造設計事務所として創業して以来、「大学、研究機関と実業界をブリッジする Professional Design & Engineering Firm」として、建設・防災、情報・通信、製造分野や意思決定支援など多様な領域に事業を拡げてきました。工学知をベースにしたエンジニアリングコンサルティングおよびプロダクツサービスの提供を通じて、複雑化する社会課題の解決に日々取り組んでいます。
会社ウェブサイト:https://www.kke.co.jp
DICソリューションサイト:https://dic.kke.co.jp/



プレスリリース提供:PR TIMES

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