プレスリリース
「子どもが眼鏡を買うお金がうちにはないだろうと思い、必要なことを黙っていた」経済的格差が、健康格差や教育格差も生み出す
ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」を運営する認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは、国内外でメガネ・サングラスの製造販売を行うメガネブランド「OWNDAYS」様と、メガネを必要としている「グッドごはん」の利用者にメガネを届ける支援活動を実施しています。今回、メガネ支援を受けた利用者にアンケート調査を行ったところ、視力が低下しても子どもにメガネを買うことができないひとり親家庭の「経済的背景」や、ひとり親家庭の貧困によって生まれる「健康格差」、「教育への影響」が明らかになりました。
2020年に大田区が行った「子どもの生活実態に関するアンケート調査」によると、生活困難層は非生活困難層に比べて健康に課題を抱えているということが明らかになっています。健康状態が「よい」と回答したのは、非生活困難層が53.8%であるのに対し、生活困難層では39.5%でした。実際、虫歯の本数についての質問では、生活困難層の方が保有率が高いという結果が出ています。にもかかわらず、「過去1年間に、お子さんを医療機関で受診させた方がよいと思ったが、実際には受診させなかったことがありましたか」という質問に対し、生活困難層の17.2%が「あった」と回答(非生活困難層では10.1%)しています。経済的時間的に余裕のないひとり親家庭では、子どもの健康にまで手が回らなくなってしまう状況が予想されます。
(参考:令和3年版「大田区子どもの生活実態に関するアンケート調査報告書」)
グッドネーバーズ・ジャパンは2017年より、国内の子どもの貧困対策事業「グッドごはん」を開始し、ひとり親世帯への食品配付を行っています。
そして2020年12月より、メガネブランド「OWNDAYS」様と共同で「ひとり親支援プロジェクト」を開始し、「グッドごはん」利用者であるひとり親家庭の満7歳〜満18歳未満の子どもを対象に、メガネを届ける支援活動を実施しています。
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当団体が事前に「グッドごはん」利用者へアンケートとヒアリングを行い、家庭状況とアンケート内に記載している学校健康診断での視力検査「ABCD」の4段階評価に基づき、「D」「C」「B」評価の子どもを優先的にプロジェクトの対象としています。当団体が毎月作成する申込者のリストをもとに、株式会社オンデーズ様の対象店舗にてメガネの受け渡しをしています。
メガネ支援について詳しくはこちら(https://www.gnjp.org/reports/detail/20210226_iwa/)
【アンケートの概要】
アンケートに回答したのは、認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンが運営する、ひとり親家庭を対象としたフードバンク「グッドごはん」を利用する、首都圏および大阪近郊のひとり親です。
※「グッドごはん」の利用には、「ひとり親家庭等医療費受給者証」(18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付されている医療費助成制度の医療証)の提示が必要です。
実施期間:2022年3月16日(水)〜2022年3月23日(水)
対象者:本メガネ支援事業の支援を受けた、「グッドごはん」の関東1都3県および大阪の利用者 (東京は主に大田区、品川区、その他神奈川・埼玉・千葉 / 大阪は大阪府を指す)
有効回答数:269件
【調査結果】
1.メガネ支援を受けた利用者の属性
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2.メガネ支援を受ける前のひとり親家庭の抱える課題
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支援前の視力を、学校健康診断での視力検査「ABCD」の4段階評価の結果を参考に聞いたところ、約80%が「前の方の席でも黒板の文字がやや見えにくい」程度である「C」以下の視力だったことが分かりました。その中で、「一番前の席でも黒板の文字がほとんど見えない」「D」以下の視力だった子どもは26%にのぼりました。
支援を受ける前に、メガネがなかったもしくは度数が合わなかったことでどのような困難があったかを聞いたところ、以下のような回答が寄せられました。
「前の席でも黒板の文字が見えにくく、授業に集中ができない。黒板の文字をノートに書くのが時間がかかる」
「クラブ活動をやっていた時に、ボールが見えなかった」
「前の方の座席になっても黒板の字が見えにくく、何とか見ようとするため、目の疲れや頭痛を引き起こしてしまう事も度々でした」
「近視性乱視の為、学校ではよく転び、怪我が絶えませんでした」
「目つきが悪いとクラスメイトに言われ、避けられてた」
「毎回、担任の先生に頼んで、一番前の席にして頂いていました。それでも見にくかったようです。金銭的な問題で眼鏡を買ってあげられず、もどかしく情けなかったです」
「眼鏡が真ん中で折れてしまい、子どもに新しい物を買って欲しいと頼まれましたが、先立つものが無く、接着剤で留めて夏のボーナスまで待つようたのんでいましたが、度々外れてしまうようで、恥ずかしい思いをさせていました」
黒板が見えにくいことで授業に集中できなかったり、スポーツなどのクラブ活動が困難だったりと、学校生活に大きな支障が出ていたという声が多く寄せられました。また、メガネを買うことができず精神的苦痛を感じるなど、単純に生活へ支障があるというだけでは語り切れない多くの課題があったことが分かりました。自分に合ったメガネを購入できないことは、子どもの教育や健康に少なくない影響を与えていると言えます。
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メガネが必要にもかかわらず購入できなかった理由については、78.5%が「経済的余裕がなかった」と回答しており、ひとり親家庭の厳しい経済状況が改めて明らかになりました。また、「時間的余裕がなかった」「精神的余裕がなかった」という回答も少なくなく、ひとりで育児や家事、仕事をしなくてはならないひとり親の生活の厳しさが浮かび上がりました。
詳しい理由については、以下のような回答が寄せられました。
「仕事が飲食店の為コロナ禍での時短営業になり、収入が無かった為。他にも子どもがいるのでメガネよりお米に調味料だと思った為」
「子どもが眼鏡を買うお金がうちにはないだろうと思い、眼鏡が必要なことを黙っていた。実際知っていても経済的に余裕がなく無理だった」
「朝から晩まで働いている為買いに行ってあげる気力体力がなかった。でもずっと気になっていてはやく眼科に行って視力をはからなきゃと感じていた」
「眼鏡の度数があっていないことをおしえてくれなかった。メガネ支援で検査をしたら 0.1しかありませんでした。持っていた眼鏡が0.6ぐらいのものだったので、子どもにかなりの我慢をさせていたことに後から気がつきました」
コメントからは、新型コロナウイルスの影響を受けてさらに経済的余裕がない中で、生きるために必要な食品や生活費を優先せざるを得ない状況が明らかになっています。
グッドネーバーズ・ジャパンが2021年3月〜5月にかけて行ったひとり親家庭の収入に関する調査では、グッドごはん利用世帯の約50%は1か月3万円以下、1日に換算すると1000円以下の食費で暮らしていることが分かりました。このような切り詰めた状況の中、メガネにまでお金を回す余裕がないということは想像に難くありません。
ひとり親家庭の多くは女性であり、非正規雇用で働いています。仕事を掛け持ちしている方もいます。ひとりで家事・育児・仕事に追われて時間的にも精神的にも余裕がない中で、メガネを買いに行くことのハードルが高くなっていると考えられます。
さらに、子どもが家庭の経済状況を気にして「メガネが欲しい」と言い出せず、必要であることに気づいていなかったという声もありました。
3.メガネ支援の成果
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メガネ支援を受けたひとり親家庭に、支援後の見え方をABCDの4段階で評価してもらったところ、支援前と比べて大幅に視力が改善されていることが分かります。
また、メガネ支援を受けたことで改善されたことや、支援を受けて良かったと思うエピソードを聞いたところ、以下のようなコメントが集まりました。
「黒板が見えやすくなり、学力が向上した。大切なことのに、後回しにしてしまっていたことを反省した」
「いつかメガネを買ってあげたいと思っていたのが叶い親の方もほっとしましたし、子どもも今まで以上に学習に取り組むようになり、将来の夢に向かい頑張っています」
「軽くて好きな物を自分で選んだので、外さずずっとつけている。数学で100点が取れた」
「支援を受けて本人自身明るい性格に変わったので良かったです」
「お店でそれはそれは長い時間どれにするか悩んで、やっと決めて作っていただいたときの照れくさそうな顔が忘れられない。子供があんなにうれしそうにしている顔を久しぶりに見た。眼鏡を大事に大事にして友達にも見せている。初めてのメガネなので何度も『似合う?』と嬉しそうに聞いてくるので、母子ともに笑みがこぼれる。『今までどれだけ黒板が見えなかったかがよくわかった!』『友達の顔がよくわかった』と嬉しそうにして、親子の会話も増えた」
「度数の合っているメガネはやはり良く見えるようです。そんな事当たり前なのですが、当たり前に購入してあげられませんでした。」
コメントからは、本メガネ支援を受けたことによって、単に子どもの視力を上げるだけでなく、それに伴って子どもが集中して思い切り学んだり、親子が明るく笑顔で過ごしたりするためのきっかけになったことが伺えます。
4.子どものこころと身体を支えていくために
今回のメガネ支援は原則1人につき1回ですが、支援を受けた方々の声で、「子どもの視力はすぐに低下してしまうため、複数回支援できるようにしてほしい」というものが少なくありませんでした。視力が低下してしまってからその矯正のための支援をすることも大切ですが、ひとり親家庭の子どもの「健康格差」が起こってしまう原因にも目を向けなければなりません。
どうしてその他の家庭の子どもよりも虫歯が多くなってしまうのか。健康状態が「よい」割合が少なくなってしまうのか。その背景には、親が長時間働きに出ていて面倒を見てもらえる時間が少ないことや、バランスを考えた食事を取るのが難しく、栄養が偏ってしまう栄養格差の問題などさまざまな要因があります。経済格差・健康格差・教育格差などは相互に関係しており、どれかひとつが改善されれば問題がなくなるわけではありません。
グッドネーバーズ・ジャパンでは、ひとり親家庭の親子が困窮する今を乗り切り、子どもたちが自ら未来を切り開くための支えになることができるよう、これからも支援を続けていきます。
みなさまの温かいご支援をどうぞよろしくお願いいたします。
●OWNDAYS株式会社 とは
国内外でメガネ・サングラスの製造販売やを行う。
「ひとり親支援プロジェクト」の他にも、「OWNDAYS EYE CAMP」というアジア途上国でのメガネ配布活動や盲導犬育成支援など、SDGsへの取り組みを積極的に行っている。
詳しくはこちら(https://www.owndays.com/jp/ja/company/sdgs)
●特定非営利活動法人グッドネーバーズ・ジャパン(https://www.gnjp.org/)とは
国際組織グッドネーバーズ・インターナショナルの一員として、2004 年開設。「子どもの笑顔にあふれ、誰もが人間らしく生きられる社会」を目指し、アジア・アフリカの7カ国および日本国内の子ども支援を行っています。公益性の高い団体である「認定NPO 法人」として東京都から認可を受けています。
■ひとり親家庭のフードバンク「グッドごはん」とは
「グッドごはん」とは、主に東京および大阪近郊のひとり親家庭(※)を対象に、食品を無料で配付する事業です。企業や個人の寄付によって集まった、お米や調味料、レトルト食品、お菓子、生鮮食品など、約18,000円相当のカゴいっぱいの食料を毎月ひとり親家庭に配付しています。
※1 当事業の対象者は、ひとり親家庭等医療費受給者証をもつ、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭で、通常は東京都大田区および大阪市の配付拠点に直接取りに来られる方を対象としています。
https://www.gnjp.org/work/domestic/gohan/
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