プレスリリース
学校法人日本女子大学(東京都文京区、理事長:今市涼子)は12月9日(土)、第17回「平塚らいてう賞」贈賞式を目白キャンパス内の新泉山館大会議室で開催し、顕彰を受賞した三浦まり(みうら まり)氏、奨励を受賞した山中仁吉(やまなか じんきち)氏、特別を受賞した海老原志穂(えびはら しほ)氏、に対して、篠原聡子選考委員長から賞状と副賞賞金を贈呈いたしました。
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17回目の今回は、顕彰7件と奨励7件の応募がありました。顕彰はこれまでに際立った功績をあげた方へ授与し、奨励は研究や活動を継続的に行っている方、あるいは新たに取り組もうとしている方に授与します。今回は厳正な審査の結果、顕彰受賞1名、奨励受賞1名を決定しました。また本年は、海老原氏の「チベット女性詩の翻訳・紹介とその発展に関する文学史的研究」の功績に対して「特別」を設けました。選考理由につきましては平塚らいてう賞ホームページにて公開しております。
https://www5.jwu.ac.jp/st/grp/raiteu/prize.html
「平塚らいてう賞」は「平塚らいてうの記録映画を上映する会」のご芳志をもとに、人生を女性解放や世界平和のための活動に捧げた平塚らいてう氏(1906年日本女子大学校卒業)の遺志を継承し、男女共同参画社会の実現および女性解放を通じた世界平和に関する研究や活動に対して、顕彰と奨励をはかることを目的に創設されました。
募集にあたっては、本趣旨を社会に広く伝えることや今後の活動が進展することを願い、全国で研究や活動を行っている個人または団体を対象としています。
本賞は平塚らいてうの精神を受け継ぎ、平和で平等な21世紀の社会をつくるために行っております。今後もこれからの社会を担う多くの若い研究家や活動家の本賞への応募を期待しております。
■平塚らいてう賞選考委員長 篠原聡子 あいさつ
本年も多くの皆様にご応募いただき、誠に有難く、この賞にご賛同いただきました皆様に心から感謝申し上げます。
平塚らいてうの足跡をたどれば、激動の時代に生きながら、常に社会を直視して、自分がなすべきことをひるまずになした人であった、と思います。
らいてうの多面的な活動のそれぞれの延長にあるような3名の皆様の研究、活動の受賞が、混沌とした現在の社会で、らいてうがあきらめなかった未来に、私たちが共に向き合う活力となることを願っています。
■受賞スピーチ(要旨)
<顕彰> 三浦まり氏(上智大学法学部教授)
研究テーマ:「女性の政治参画に関する包括的研究:『男性政治』を打ち破る」
性別役割規範によって引き起こされるさまざまな抑圧、葛藤、矛盾から女性も男性も解放されるためには、「男性政治」を打ち破る必要があります。日本の政治経済の停滞状況は甚だしいですが、それは女性の政治参画を促し、男性政治から脱却することで、変えられると思っています。女性リーダーを増やすことの必要性は随分と認知されるようになりましたが、腹落ちしている人がまだ少ないために、実効性のある取り組みが進んでいないのが現状かと思います。
ジェンダーギャップの解消や女性政治家を増やす必要性を心から納得してもらい、市民が政治をどうやって変えていくことができるのかを伝えたく、『さらば、男性政治』(岩波新書)を執筆しました。本書の意図が伝わり、顕彰を頂戴できたことを大変嬉しく思います。受賞を通じて、さらに多くの人に本書を読んでもらえればと思います。
<奨励> 山中仁吉氏(北海道大学大学院法学研究科法学政治学専攻博士課程)
研究テーマ:「平塚らいてうの秩序構想―大正・昭和期を中心に―」
この度は、このような名誉ある賞を賜りまして、大変感激しております。
日本では政治領域においていまだ著しいジェンダー格差が存在しています。その歴史的淵源はどこにあるのか、という問題意識を念頭に置きながら、私は日本の女性参政権運動の歴史の研究に従事してきました。
研究活動のなかで、先人たちが明らかにしてきた平塚らいてうの事績を知り、そして平塚の残した言葉に直に触れることで、平塚が女性参政権運動に大きな貢献をしたことを改めて認識しました。 その一方で新婦人協会が女性の政談集会への参加・発起を実現して以降における平塚の活動が十分に知られていない現状があり、大正・昭和を通して政治領域において平塚が目指したものを解明したいという研究計画の発展可能性や今日における意義を評価していただいたことを嬉しく思います。
受賞によって研究活動をより多くの方々に知っていただく機会を賜ったことに感謝し、そしてジェンダー格差の解決の一助になることを信じて今後も研究に邁進して参りたいと思います。
<特別> 海老原志穂氏(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所フェロー)
研究テーマ:「チベット女性詩の翻訳・紹介とその発展に関する文学史的研究」
思いがけず、名誉ある賞をいただき、光栄に感じております。
チベット語で現代文学が書かれるようになったのは1980年代。その作品を翻訳する中で気になったのが、女性の作品が極端に少ないということでした。チベット文学の穴をうめるようにチベット女性の創作について調べていると、仏教の強い影響のもとで、チベット文学が長らく男性中心的なものであったことがわかりました。そして、その探求の中で生まれたのが『チベット女性詩集 チベットを代表する7人・27選』(2023年, 段々社) という邦訳版オリジナル・アンソロジーです。
チベット女性たちの創作の歩みを追っていると、日本の近代文学を切り拓いていった女性たちの姿が重ね合わされます。本受賞をはげみに、主要な作家へのインタビューや文献調査をつづけ、チベット女性による文芸創作がどのように進展していくのかを注視し、それらをグローバルな文脈の中に位置づけていきたいと思っています。
[表: https://prtimes.jp/data/corp/73471/table/56_1_b25c0dfa8410d6c0b09537260af029f7.jpg ]
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