• トップ
  • リリース
  • 【FoE Japan】第7次エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画に向けた提言と緊急記者会見(12/17)

プレスリリース

  • 記事画像1

【FoE Japan】第7次エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画に向けた提言と緊急記者会見(12/17)

(PR TIMES) 2024年12月12日(木)17時45分配信 PR TIMES


[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/77060/55/77060-55-d7f38585f70385543a70fe7f04679ae9-1920x1080.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]


エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画の素案が来週にも提示されようとしています。市民参加のほとんどないプロセス、そして原発推進をさらに強め、化石燃料を維持温存する現状の審議会議論に対し、FoE Japanとして以下の提言をまとめました。

合わせて、17日(火)に緊急共同記者会見を開催します。(詳細は調整中)
ぜひご取材いただければ幸いです。

------------------------------------------------
第7次エネルギー基本計画に対する緊急共同記者会見

日時:2024年12月17日(火)11:00-12:30
オンライン会議システムZoom(ミーティング形式)利用
https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZ0tcemsqT8tH9ZZRP-QxZnT5Ksvdub1UfsO


発言者(予定、敬称略):
松久保肇(原子力資料情報室事務局長)、武藤類子(ひだんれん共同代表)
大島堅一(原子力市民委員会座長)or 村上正子(原子力市民委員会事務局長)
桃井貴子(気候ネットワーク東京事務所長)、ワタシのミライから ほか
------------------------------------------------



第7次エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画に向けた提言
2024年12月12日
国際環境NGO FoE Japan


 第7次エネルギー基本計画策定に向けた議論が進み、まもなく、地球温暖化対策計画、GX2040ビジョンとともに素案が提示される。

 2011年の東京電力福島第一原発事故から14年近くが経つが、事故はまだ収束していない。また、本年1月1日の能登半島地震は、あらためて原子力発電のリスクと現在の原子力災害対策指針では住民のいのちと暮らしが守れないことを如実に示した。にもかかわらず、エネルギー基本計画素案では、原発事故以来の大前提であった「原子力依存度の低減」が削除されること、また原発の建て替えを敷地外にも容認することなど原発回帰の内容となっていることが報じられている(*1、2)。


 気候危機は年々深刻さを増し、日本でも多くの人のなりわいやくらし、命が脅かされている。化石燃料からの脱却は、不可欠であり、一刻も早く取り組まなければならないが、審議会では化石燃料を維持・延命するための議論が行われている。


 気候危機への解決策は、先進国・多国籍企業等の利益や大量生産・大量消費の経済を前提とする社会から、自然や自然と共に生きる人々を中心にすえた持続可能で民主的な社会への抜本的な変革(システム・チェンジ)である。汚染やリスク、気候変動の被害などを一部の人や地域に負わせるのではなく、持続可能な形での省エネルギー・再生可能エネルギー社会の実現をめざし、FoE Japanは以下を提言する。

*1 朝日新聞「原発依存度「可能な限り低減」の文言削除へ 経産省のエネ基本計画」、2024年12月11日
*2 日本経済新聞「原発建て替え、敷地外も容認 次期エネ計画で経産省案」、2024年12月5日

1.多様な立場の専門家・市民の議論への参画と、複数の市民参加プロセスが不可欠
 エネルギー基本計画について議論する審議会「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」の17名の委員の構成は、化石燃料や原子力、産業界につながりのある委員が多数を占めている。気候変動、再エネ、自治体や地域、SDGs、原発事故などに関わる専門家や当事者、環境NGO、そして若い世代も含めるべきである。
 市民参加の機会も、現在「意見箱」とパブリックコメントのみに限られている。また「意見箱」の意見は審議会に提示されるのみで議論には反映されていない。パブリックコメントも最終段階での実施のため、反映されるとしてもごく軽微にとどまる。世論調査、討論型世論調査、各地での公聴会など複数の手段を組み合わせ、意味のある市民参加および市民意見の聴取・反映を行うべきである。
 既得権益を守ろうとする一部の人たちによる閉ざされた議論のみで、市民参加も国民的議論もほぼないまま、原子力や化石燃料技術の維持・推進が強化されることを強く危惧する。

2.原子力からの脱却を
 東電福島第一原発事故以降、日本でも世界でもエネルギーをめぐる情勢は大きく変化している。原子力については、事故の被害やリスク、放射能汚染や解決不可能な核廃棄物の処分の問題などが山積している。経済的にみても、原発の維持費や建設費は高騰し続けており、今や世界的にも最もコストの高い電源となっている。また、原発はトラブルが頻発している上、ひとたび停止すれば広範囲に影響をもたらすこと、調整力に欠けることから、決して「安定」電源とはいえない。
 2024年1月1日に発生した能登半島地震は、地震国日本における原発の危険性および現在の原子力災害対策指針に基づく避難計画の非現実性を改めて私たちにつきつけた。
 第7次エネルギー基本計画に向けた議論では、電力業界や産業界などが、原子力の建て替えに加え、新増設をも書き込むことを強く要請しているが、原子力のかかえる様々な問題を考えればこれらはまったく現実的ではない。
 原発の新増設・建て替えに関しては、事業者らも長期脱炭素電源オークションなど既存の制度のみでは投資を進めることができないと主張し、新たな制度的措置を強く求めている。原子力小委員会で英国のRABモデルなど海外の事例を参考として、原発の建設費や維持費などを稼働前から電気料金で回収する新たな制度の必要性が議論されているが、それらは国民に新たな負担を強いるものである。原子力の建設を後押しする新たな制度の必要性を書き込むことに強く反対する。
3.1.5℃目標に整合し先進国としての責任を果たす気候変動目標を
 近年、世界の平均気温は上昇し異常気象が頻発している。世界気象機関は「今後5年以内に、産業革命前とくらべ1.5℃以上上昇する確率は80%」としている(*3)。日本を含む先進国が、化石燃料を維持し続け、不十分な気候変動政策を方向転換しない間に、気候変動をめぐる状況は後戻りのできない危機へと進行しつつある。気候変動目標は、エネルギー基本計画と一体で議論され策定されるものである。「世界の気温上昇を1.5℃に抑える」ことを明確に掲げていなかった第6次エネルギー基本計画に対し、第7次では明確に掲げ、そこに整合する政策を掲げるべきである。
 IPCCは第6次統合評価報告書において、世界の気温上昇を1.5℃までに抑えるためには、世界全体で温室効果ガスを2030年までに43%、2035年までに60%(いずれも2019年比)以上削減する必要があるとしている。Climate Action Trackerは、1.5℃に整合させるためには、日本は2030年に66%以上、2035年に81%以上の削減目標が必要だとしている(*4)。産業革命以降の歴史的責任を加味すればそれ以上である。
 今回、エネルギー政策の方向性と密接に関わる削減目標(NDC)の案が示されたのは、11月25日の環境省・経産省合同審議会の終盤になってであった。12月3日に基本政策分科会でも複数シナリオが紹介されたが、素案の提示の直前というぎりぎりのタイミングである。委員への十分な説明や実質的な議論の時間すらごくわずかで、まさに「シナリオありき」となっている。このようなプロセス自体、大きな問題である。

*3 世界気象機関(WMO)”Global temperature is likely to exceed 1.5℃ above pre-industrial level temporarily in next 5 years”、2024年6月5日
https://wmo.int/news/media-centre/global-temperature-likely-exceed-15degc-above-pre-industrial-level-temporarily-next-5-years
*4 Climate Action Tracker「1.5-aligned 2035 targets for major emitters and Troika countries」、2024年11月 14日 https://climateactiontracker.org/publications/the-climate-crisis-worsens-the-warming-outlook-stagnates/
同、日本に関するページ:https://climateactiontracker.org/countries/japan/2035-ndc/

4.化石燃料からの脱却を
 COP28ですでに、世界は「化石燃料利用からの脱却」に合意している。またG7では2022年から「電源の大部分を脱炭素化」すること、さらに2024年には「2035年までに石炭火力から脱却」する方向性にも合意している。一方で日本では、「あらゆる可能性を追求」するとし、石炭火力を含む、発電部門の化石燃料利用を継続することを強く主張している。
 LNG火力には水素を、石炭火力にはアンモニアを混焼することで「化石燃料の脱炭素化」をしていくとするが、これには莫大なコストがかかる。また当面は化石燃料由来・海外製造の水素・アンモニアを輸入して利用する計画であり、温室効果ガス排出量は実質的に増える。再エネ由来の水素・アンモニアについては、発電以外の排出不可避分野での使用に限定すべきである。
 CCSについても、国内では適地が限られ、2050年までのロードマップで示される量(年間1.2〜2.4億トン、日本の温室効果ガス排出量の1〜2割、圧入井240〜480本もしくはそれ以上)の実現はまったく見通せない。マレーシア等にCO2を輸出しての貯留も検討されており、国内外から批判の声があがっている。
 水素・アンモニアやCCSに関しては、民間では支えきれないコストを政府が支援することがGX基本方針等ですでに決められ、具体的な政策策定に進んでしまっている。温室効果ガス排出削減につながらず、化石燃料の利用をむしろ延命する新技術に頼ることはやめ、その資金を省エネ・再エネに振り向けるべきである。

5.エネルギー需要削減と効率化を
 基本政策分科会においては、エネルギー基本計画改定の議論開始時より「データセンターやAIにより電力需要が急増する可能性がある」とし、「そこに対応するために脱炭素電源、特に原子力の拡大が必要ではないか」という方向性を強調している。データセンターやAIの役割の増大はあっても、それによる電力需要の増加については、政府の資料においても幅がある。AIによる業務の効率化やデータセンター自体の省エネを見込めば増加幅がそれほど大きくない、もしくは減る可能性もあるとする試算もある(*5、6)。
 不確実な仮定に基づき原子力や脱炭素火力の設備容量増強を議論するのは誘導的であり、必要な政策の方向性を大きく誤るおそれがある。気候危機対策が急務である現在、電力消費を抑えるための政策こそとるべきである。 
 省エネ・エネルギー効率の向上は最優先課題である。機器の高効率化などとともに建築物の断熱等エネルギー性能の向上も、自治体や業界と連携して取り組む必要がある。
5 未来のためのエネルギー転換研究グループ「グリーントランジション2035: 2035年に再エネ電力割合とCO2排出削減のダブル80%を実現する経済合理的なシナリオ)」、2024年9月9日 https://green-recovery-japan.org/
6 日経クロステック「AIデータセンター急増で電力需要は”激減”か」、2024年8月21日
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/082001588/

6.持続可能な形での再エネ拡大を
 化石燃料にも原子力にも依存せず、再エネおよび省エネをエネルギー政策の根幹に据える方向へ一刻も早く転換しなければならない。再エネを主力電源とする方向性は、すでに日本も第6次エネルギー基本計画で掲げているが、今こそあらゆる政策資源を投入すべきである。COP28では「2030年までに世界の再エネ設備容量を3倍、エネルギー改善率を2倍」を目指すことが合意文書に書き込まれた。日本でそれをどのように目指していくのか、具体的な議論が必要である。
 「あらゆる選択肢の追求」として化石燃料や原子力に政策資源が大きく割かれていることが、日本での再エネの導入を妨げている。さらに現場レベルでも、再エネの出力抑制による経済的損失や系統への接続の遅延による工期の延長やコスト増加など課題が山積している。
 同時に、輸入バイオマス燃料の拡大による森林破壊および人権侵害も懸念される。また、国内においても再エネ事業の乱開発による自然環境の破壊が生じている。これを防ぐため、適切な規制の整備やゾーニングを行うとともに、事業者による住民への事前説明と協議の徹底、自治体の権限を強化することが必要である。そのうえで、再エネをどこにどのように設置し活用していくのか、各地域で自治体が地域住民とともに計画を策定していく必要がある。

7.鉱物資源の需要削減を
 再生可能エネルギー技術や電気自動車(EV)への移行のため、多様な鉱物需要の大幅な伸びが予測される中、鉱物資源の獲得競争が国際的にも激化しているが、真の「公正な」エネルギー移行のためには、国内外また陸海問わず、鉱物資源の際限ない採掘から脱却しなければならない。鉱物資源等の海外権益獲得や安定供給の重要性が強調されているが、鉱物資源開発の現場で従来起きてきた自然・生態系の破壊、貴重な生物多様性の喪失、土地の収奪、人々の暮らしの破壊、超法規的殺害を含む深刻な人権侵害などが、気候変動対策の名の下に繰り返されることがあってはならず、鉱物資源の可能な限りの需要削減が大前提である。
 鉱物資源開発は広大な面積の開発を伴うため、プロジェクトレベルの環境社会影響の緩和には限界がある。鉱物資源の開発を前提とするのではなく、保護価値の高い生態系に影響が及ぶ開発を行わない、先住民族や現地住民が鉱山開発を拒否する権利を保護・尊重する、企業による責任ある鉱物調達を徹底するなどの取り組みを実践していくことが重要である。
 このため、前述の通り、エネルギー・電力の需要抑制を最優先で進め、公共交通機関の利用促進、カーシェアリングなどによる自動車の削減にも積極的に取り組むべきである。

プレスリリース提供:PR TIMES

このページの先頭へ戻る