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学校法人常翔学園 摂南大学

昆虫寄生菌が病原菌も抑えるメカニズムを解明

(PR TIMES) 2023年10月10日(火)12時45分配信 PR TIMES

微生物農薬1剤で害虫と病気を防除

摂南大学(学長:荻田喜代一)農学部農業生産学科の飯田祐一郎講師と農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)、アリスタライフサイエンスらのグループは、本来は殺虫剤の有効成分として利用される昆虫寄生菌「ボーベリア・バシアーナ」が野菜の重要病害うどんこ病に対しても殺菌効果をもたらすことを発見し、そのメカニズムを解明しました。同菌を含む微生物農薬1剤で害虫と病気の両方を同時に抑えること(デュアルコントロール)が可能となり、農薬散布の労力やコストの削減が期待できます。
本件のポイント


●ボーベリア・バシアーナによる植物の局部的抵抗性を誘導するメカニズムを解明
●ボーベリア・バシアーナを有効成分とする微生物農薬「ボタニガードES」1剤で害虫と病気の同時防除が
 可能に
●ボタニガードESは化学農薬が効かない害虫や病原菌にも効果があり、自然環境への配慮から次世代に継承
できる持続可能な防除法として注目されている
[画像: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/40230/49/40230-49-069df0b20dab861c9452daba84a63f3b-1280x414.jpg ]

    微生物農薬が植物の病気に対する免疫を誘導することを解明し、害虫との同時防除が可能となった

 近年、ヒトの病気において抗生物質が効かない耐性菌のまん延が問題となっていますが、植物の農薬も同じ状況になりつつあり、化学農薬が効かないために病気や害虫の防除が難しくなっています。新たな化学農薬の開発は数億円にのぼる莫大な開発コストとおよそ10年の期間が必要とされ、耐性菌の出現によりすぐに使い物にならなくなるリスクを抱えています。
 研究グループは昆虫寄生菌のボーベリア・バシアーナが植物の表面や内部に定着し、うどんこ病に対する植物の免疫を誘導することを解明しました。
 同菌を有効成分とする微生物農薬ボタニガードESは広範な害虫への優れた殺虫効果に加え、病気にも効果のある殺菌剤としても使用できるようになり、有機栽培農家や特別栽培農家にとって有力な微生物殺虫・殺菌剤として期待されます。
 この成果は、生研支援センター「イノベーション創出強化研究推進事業」の支援を受けて得られたもので、スイスの植物学系学術雑誌「Frontiers in Plant Science」に論文が掲載(2023年8月24日付)されました
https://doi.org/10.3389/fpls.2023.1211825)。
ボタニガードESの害虫と病気の同時防除の仕組みは、以下のサイトでアニメーション等でも説明しています。
https://www.setsunan.ac.jp/~pp/inobe

論文情報


論文名
Entomopathogenic fungus Beauveria bassiana-based bioinsecticide suppresses severity of powdery mildews of vegetables by inducing the plant defense responses
(昆虫寄生菌Beauveria bassianaを含む微生物殺虫剤は植物の防御応答を誘導して野菜類うどんこ病の発病を抑制する)

著者名
飯田祐一郎 1,2、東佑実子2、西大海2、幸田真梨子1、前田和弥1、芳田侃大3、
浅野峻介3、川上拓4、中嶋香織4、黒田克利4、田中千晴4、佐々木彩乃4、
神谷克巳5、山岸菜穂6、藤永真史6、寺見文宏2、山中聡7、窪田昌春8

1 摂南大学農学部
2 農研機構・野菜花き研究部門
3 奈良県農業開発研究センター
4 三重県農業研究所
5 岐阜県農業技術センター
6 長野県野菜花き試験場
7 アリスタライフサイエンス
8 農研機構・植物防疫研究部門

雑誌名 Frontiers in Plant Science

DOI 10.3389/fpls.2023.1211825

公表日 2023年8月24日(木)(オンライン公開)

プレスリリース提供:PR TIMES

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