プレスリリース
ベンチャーキャピタルによる世界最先端の基礎研究に取り組む学生を対象とした給付型奨学金
独立系ベンチャーキャピタルANRI(東京都港区:代表パートナー 佐俣アンリ、以下 ANRI)は、日本の基礎科学研究への支援として、数学や物理学、生物学、化学など実用化までに時間がかかる基礎研究の分野に取り組む学生を対象とした給付型奨学金プログラム「ANRI基礎科学スカラーシップ/The ANRI Fellowship」 を実施しており、この度、第6期生として、日本や世界で研究に取り組む学生15名を採択したことをお知らせいたします。
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/40191/43/40191-43-f5045786702de50ae26ca94090845690-1920x1080.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
ANRIでは、2019年より日本の科学技術の発展に寄与することを目的とし、基礎科学研究に取り組む学生への給付型奨学金プログラムを運営してまいりました。今回もたくさんのご応募をいただき、心より感謝申し上げます。
ANRIは、創業当時からの強みであるインターネット領域に加え、ディープテックやライフサイエンスなどの幅広いテクノロジー領域の研究開発型スタートアップへの投資をしており、日本の研究技術を世の中へ創出する支援を行っております。一方で、その世の中に出る研究技術は、それまで多くの研究者が携わった基礎研究の基盤があるからこそと考えております。そのため、ANRIでは基礎科学研究に取り組む学生への給付型奨学金プログラムの運営を行ってまいりました。
現在、1期生〜6期生まで総勢59名の研究者がANRI基礎科学スカラーシップに採択され、ANRIが得意とするコミュニティの輪を広げる取り組みも行っております。各期での研究発表会やSlackによるコミュニティ運営、また、分野も年齢も異なる研究者が集まるコミュニティイベントなども開催しています。
今後もより研究者同士の横や斜めの接点を持つことができるような運営を心がけると共に、ANRI基礎科学スカラーシップを通じて、日本の科学技術の発展に寄与することを目指してまいります。
■ ANRI基礎科学スカラーシップ 第6期生の紹介(順不同)
宇治 雅記 九州大学大学院 工学府応用化学専攻
我々の身の回りに溢れる光エネルギーのうち、波長 400 nm 未満の紫外光(UV)は光触媒や人工光合成などへの幅広い応用が期待される高エネルギー源です。従来のUV発生法では、水銀やキセノンといった持続可能性が低く劣化が早い光源が用いられてきました。そこで私は、低エネルギー光である可視光を、高エネルギー光である紫外光(UV)へと変換可能な「フォトン・アップコンバージョン(UC)」という技術を用いて、新規 UV 発生技術の開発に取り組んでいます。
この度はANRI基礎科学スカラーシップ6期生に採択頂き、大変嬉しく思います。エネルギー溢れる同世代と交流し、異分野の最新研究にたくさん触れることで、自身が科学技術の発展にどのように貢献できるかを考える機会としたいと思います。
山内直寛 沖縄科学技術大学院大学神経計算ユニット
ヒトで大きく発達した大脳皮質は、感覚情報処理、運動制御、意思決定など様々な機能を担い、高度な知能の実現の鍵となっている可能性が高いと考えられます。一方で、なぜ大脳皮質が一見全く異なる働きを担う領野で解剖学的に類似した構造を普遍的に保持しているのかはわかっていません。計算論的モデリングとマウスを用いた神経活動イメージング、動物行動実験を組み合わせることで、哺乳類の大脳皮質の計算機構を明らかにしていくことを目標に私は研究を行っています。この度はANRI奨学金6期生に採択していただき、大変感謝しております。応用可能性に関わらず、本研究のような基礎研究を支援していただけることに感銘を受けています。期待に見合うように研究に邁進し、計算論的モデルを分子や神経回路といった生物学的実体で裏付ける形で、知能とは何か、という問いの解明に少しでも貢献していきたいと考えています。
今野直輝 東京大学大学院理学系研究科生物科学専攻
採択していただき光栄です。私はこれまでバイオインフォマティクスの研究をしてきましたが、最近になって生化学や構造生物学などの生物学実験を活用した研究に挑戦するようになりました。新しい挑戦をこのような形で支援して頂き心から感謝しております。
西尾萌波 ペンシルベニア大学心理学博士課程
この度はANRI奨学金へ採択をいただき嬉しく思います。
健全な発達とは何か、身体面はまだし精神面においてその解は明確でなく、保育・教育業界は様々な迷信で溢れています。私は神経科学的指標の活用を通じて、成育環境が脳の発達に与える影響を定量評価していくことに関心があります。現在博士課程ではMRI, fMRIをはじめとする脳画像を活用し、脳の構造的発達が機能的成熟をどのように制御するのかについて研究しています。また、日本で立ち上げた会社では動画を用いた行動の定量化と、行動-神経科学的指標の接合に取り組んでいます。将来的には、子どもに対する介入プログラムの評価に活用できる指標を開発し、実社会で役立てていきたいと考えています。
ANRI奨学金では、国内外の多様な分野の方と交流できることが大きな魅力の一つだと考えております。これからがとても楽しみです!
西尾祐哉 スタンフォード大学工学研究科電気工学専攻
現在、エレクトロニクスは主に硬い材料をもとに構築されています。その一方で人間の肌や脳といった組織は柔らかく、エレクトロニクスと人体には機械的なミスマッチが存在しています。私は柔らかい次世代ソフトエレクトロニクスの創出により、人間とエレクトロニクスの関わり方を変えようとしています。ソフトエレクトロニクスを用いることで従来の硬いエレクトロニクスでは取ることができなかった生体信号を読み取ることができたり、ロボットと人間のかかわり方を変えることができるが、そのユニークな柔らかい機械的な特性があるが故に特有の課題が存在します。従来とは異なる材料、デバイス、回路技術を包括的に開発して用いることにより、これらの課題を本質的に解決しています。また、この新たなエレクトロニクスを人間やマウスへ適応することにより、神経科学の発展にも貢献します。この度はANRI基礎研究スカラーシップに採択いただき大変ありがとうございます。この支援をもとに今後もさらに研究に邁進していく所存です。
宮田寛生 カーネギーメロン大学生体医工学研究科ニューロエンジニアリング専攻
この度、奨学生として選ばれたことを大変光栄に思います。私の研究は、侵襲型脳デバイスの可能性を探るもので、人間の認知機能への介入という新たな領域に挑んでいます。この奨学金によって、私は研究に更に専念し、この革新的な分野での貢献を目指すことができます。研究の進展に伴い、侵襲型脳デバイスが持つ無限の可能性を探り、それを社会に還元する方法を模索します。特に、脳卒中の患者の運動機能の回復や、精神疾患のより良い診断と治療法の開発など、実用的な応用にも焦点を当てています。最後に、このプログラムが提供するネットワーキングの機会を通じて、他分野の研究者や専門家との交流を行い、異なる視点やアイデアを取り入れられることを楽しみにしております。
高橋悠貴 カリフォルニア大学バークレー校数学科
モデル理論は、純粋数学の数理論理学に属する研究分野です。分類学者が生物を分類するように、モデル理論では数学的構造に対応する形式言語の文を分類しています。例えば、生物が「脊椎動物」と「無脊椎動物」に分けられるように、形式言語の文章は「安定」と「不安定」なものに二分できることが分かっています。私は特にこの形式言語の文章の分類を、グラフ理論や加法的組合せ論の定理に応用することを研究しています。純粋数学の研究は短期的な実用性が不明瞭なこともあり資金獲得が難しいので、今回ANRI基礎科学スカラーシップに採択していただき本当に感謝しています。純粋数学は非常に抽象的ですが、例えばインターネット通信等で私たちが毎日のように使っている楕円曲線暗号という暗号化技術は、数学者の純粋な知的好奇心による研究成果に支えられています。私も今回のご支援を活かして自分の興味と知的好奇心を糧にモデル理論の研究に邁進していきたいと思います。
村井 裕希 京都大学医学部医学科
ANRI基礎科学スカラーシップ第6期生として採択して頂き、大変光栄に存じます。私は、中学生の頃から記憶障害や精神疾患の発症メカニズムに対する興味と、それらの治療薬を作りたいという夢があり、大学入学以降は、長期記憶の形成メカニズムに関する研究に取り組んで参りました。この度、私の研究に対する期待を込めてANRI様に奨学金を提供して頂くことになりましたので、記憶障害や精神疾患によって障害される、記憶や情動、社会性といった現象の神経的基盤解明に向けた研究に益々邁進して参りたいと思います。脳に対するより深い理解、そして我々の脳が持つ面白さを世の中に届けられる、そんな研究を目指して頑張りたいと思います。
小幡愛 東京大学農学生命科学研究科生圏システム学専攻
生態系では生物多様性が、炭素貯留能力や送粉能力などの生態系のもつ機能を向上させる関係が知られています。この関係は全球的に観察されているものの、関係の強さは地域、生態系によりさまざまです。メカニズムの解明や関係を解明することは生物多様性と生態系の持つ機能を高い水準で両立した生態系の実現に有用であり注目されています。今回、私はこれまで区別されてこなかった生態系の環境要因に着目し、多様性と生態系の関係の強弱を説明することができる環境要因を探索したいと考えております。
今回、ANRi基礎科学スカラシップ第6期生に採択していただき非常に光栄に思います。頂いたご支援に応えられるよう研究を進め、持続可能な社会の実現に有用な知見を明らかにできるよう努力してまいります。
渡邉圭一 東京大学 理学系研究科 物理学専攻
素粒子標準理論は、素粒子の間に働く電磁相互作用・弱い相互作用・強い相互作用の3種類の相互作用を記述する理論であり、非常に良く実験と整合しています。これらの相互作用は、宇宙創生の瞬間には統一されており、時間が経つにつれて相互作用が分化していったと考えられています。上述の3種類の相互作用を統一する理論は、大統一理論と呼ばれており、宇宙の始まりを理解するためには、この理論の検証が必要不可欠となります。大統一理論は、標準理論では起こらないと考えられている陽子崩壊を予言します。そこで私は、陽子崩壊の観測を通じた大統一理論の検証可能性を、理論的な側面から明らかにすることを目指しています。この度はANRIの皆様に研究の魅力をご理解して頂けたこと、ANRI奨学金に採択して頂いたこと、心から感謝しております。今回のご支援を活かして研究に邁進し、面白い成果を出せるよう尽力したいと考えております。
大蘆彩夏 岡山大学環境生命自然科学研究科環境生命自然科学専攻
この度は、奨学生に採択され、非常に光栄に思います。この結果を自信に変えて研究成果で還元できるようにより一層精進していきたいと思います。また、同世代の学生とのご縁も大事に今後の研究活動にも生かしていきたいと思います。
金泉水 早稲田大学 先進理工学部 電気・情報生命工学科
アルツハイマー病は、認知症の原因の大半を占める病気で、平均寿命が延びているこの高齢化社会で世界的に年々患者数が増加し大きな健康問題になっています。その一方で、その原因、さらには確定診断法、根本的な治療法はいまだに分かっていません。現在、私は、アルツハイマー病の発症メカニズム・病態の解明に向けて、関連タンパク質であるタウが神経細胞の受容体の動態に及ぼす影響を研究しています。この受容体分子の挙動を可視化するために用いているアプローチが、生きた神経細胞で分子の振る舞いを直接「観る」ことができる一分子イメージング法です。この度は、ANRI基礎科学スカラーシップ6期生に採択していただき、心より感謝申し上げます。この奨学金を通じて、能力と情熱溢れる奨学生との繋がりを得ることができることも、非常に嬉しく思います。本研究費を有効に活用し、さらに研究に邁進していく所存です。
吉本賢一郎 筑波大学生命環境学群生物学類
わたしは円口類の研究をしています。円口類はヤツメウナギやヌタウナギが含まれる分類群です。脊椎動物の進化史においてもっとも初期に分岐し、祖先的な特徴を多く残しています。そのため、脊椎動物の初期進化を研究する上で注目されてきました。一方で、円口類だけが持っている形質が、脊椎動物の祖先的なものであるのか、それとも円口類が独自に獲得したものであるのかという問題はいまだ解かれていません。これは初期脊椎動物が化石に残りにくいことや、円口類が含まれる動物群である「無顎類」が円口類以外すべて絶滅していることに起因します。そこでわたしは最先端のCT技術を用いて現生円口類特有の形質の発生過程や絶滅した無顎類の化石を詳細に観察することで脊椎動物の祖先形質や円口類独自の進化を解明しようとしています。
まだ学部生にもかかわらず採択いただけたこと、大変感謝しております。古くから多くの人々の関心を集めてきた動物の形の進化について、一石を投じる研究成果を出せるよう努力していきます。
清原大慈 ハーバード大学数学科数学専攻
私が専門としている数論幾何では、整数の性質を理解するために、代数方程式によって定められる幾何学を調べる学問である代数幾何学の手法を応用します。たとえば、楕円曲線と呼ばれるy^2=x^3+ax+bの形の方程式で定められた曲線がありますが、楕円曲線上の整数点や有理点を調べる時には代数幾何学の基本的な概念であるスキーム論が有効になります。20世紀終わりにはワイズルがフェルマーの最終定理を証明しましたが、そこでも楕円曲線の理論が応用されています。
数論幾何の分野では最近パーフェクトイド空間という新しい概念が導入され、新たな研究のフェーズを迎えています。数論幾何の応用はホモトピー論、(正標数の)代数幾何学など多岐に渡ります。私自身はp進ホッジ理論やラングランズ対応などに興味があり、博士課程でさらに知見を深めていきたいです。このたびAnri基礎科学スカラーシップに採択していただいたことを大変光栄に思います。今回いただいた研究費をもとに、国際的な研究集会に参加したり世界中の数学者たちと議論をすることで、オリジナルな研究を見つけていきたいと思います。
大継美来 明治大学大学院農学研究科生命科学専攻
現在、子供を持ちたいと願う男女の5組〜10組に1組が不妊症であると報告されており、「不妊症」の原因解明は緊急の課題です。不妊の原因として、胚が子宮に着床しない「着床不全」があります。近年、子宮内pH変化が「着床不全」を引き起こし不妊に繋がるのではないかと考えられていますが、それに至る機構はほぼ未解明です。そこで私は、不妊治療への応用や少子高齢化の解決の一助となることを目指し、子宮内pH変化における「着床不全」原因の解明を目指しています。今回ANRI奨学金に採択いただき、大変嬉しく思います。今回のご支援を活かしさらに研究を加速していくことに加え、ANRI奨学生とのネットワークにより自身の研究にさらに柔軟性を付加していきたいと考えております。
■「ANRI基礎科学スカラーシップ/The ANRI Fellowship」について
- 給付金額:1人当たり50万円- 募集対象:数学や物理学、生物学、化学などの分野において優秀な成績を収めた学生 (※具体的な年齢の制限は設けません)- 選考方法:書類選考後、面接を予定※第7期生の募集について※2024年夏頃にANRI公式メールマガジンにてお知らせいたします。通知をご希望の方は、ご登録ください。
■ ANRI Fellowship Conference 2023|ANRI
ANRI基礎科学スカラーシップ5期生の研究交流会の様子をご紹介しています。よろしければご覧ください。
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/40191/43/40191-43-bf8b76f908df2008ba807d56cc666ab6-1234x644.png?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]
■ ベンチャーキャピタルANRIについて
ANRIは2012年のANRI1号ファンド設立より、一貫して創業初期(シード期)に特化してスタートアップへの投資を実行、現在5つのフラッグシップファンドと脱炭素問題に特化したANRI GREENファンドなどを運営し、累計約780億円を運用しております。
「未来を創ろう、圧倒的な未来を」というビジョンのもと、創業当時からの強みであるインターネット領域に加え、ディープテックやライフサイエンスなど幅広いテクノロジー領域への大学発研究開発型スタートアップへの支援も注力しております。また、創業期の出資先を支援するため、六本木ヒルズに1200平米のインキュベーションオフィスを運営し、より起業家と近い環境で、起業の準備段階からサポートできる体制を整えております。
■ 会社概要
社名:ANRI株式会社
代表者:代表パートナー 佐俣アンリ
所在地:東京都港区六本木6丁目101六本木ヒルズ森タワー15F CIRCLE by ANRI
企業HP:https://anri.vc
プレスリリース提供:PR TIMES