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滋賀県立琵琶湖博物館

水族施設の飼育水から絶滅危惧魚類の長いDNA配列の解析に成功(長浜バイオ大学・琵琶湖博物館の共同、同時提供)

(PR TIMES) 2022年03月06日(日)02時40分配信 PR TIMES


長浜バイオ大学バイオサイエンス学部の掛橋竜祐 特任助教と倉林 敦 准教授、滋賀県立琵琶湖博物館の金尾滋史 主任学芸員らは、飼育水槽の水から、国の天然記念物および国内希少野生動植物に指定され、環境省レッドリスト2020において絶滅危惧IA類に位置付けられている、コイ科イタセンパラ(タナゴの仲間)の長いDNA(最大8600塩基対)の増幅に成功し、そのミトコンドリアDNAの全塩基配列を初めて決定しました。

[画像: https://prtimes.jp/i/58617/39/resize/d58617-39-075f7b71af2207e51388-0.png ]

今回、琵琶湖博物館の保護増殖センターに設置されているイタセンパラ水槽の飼育水から環境DNAを抽出し、その環境DNAからPCR法によってイタセンパラのDNAの増幅を試みました。その結果、およそ5000〜8600塩基対の長いDNA配列の増幅に成功しました。また、増幅したDNAを分析し、イタセンパラの細胞小器官のミトコンドリアDNAの全塩基配列(16,772塩基対)を初めて決定しました。イタセンパラなど希少生物の多くは、絶滅のおそれが非常に高いことから、種によっては保護・保全のため、法律や条例によって採集や個体の取り扱いが制限されています。今回の研究では、このような希少淡水魚の飼育水から、研究対象の生物に全く影響を与えることなく、長いDNAを解析可能であることが分かりました。この結果から、様々な希少野生生物を保護増殖・系統保存している動物園・水族館・博物館では、その「飼育水」をはじめとする飼育環境が新たな種の解明や保全にむけた研究リソースとして活用可能であることも示されました。
本研究成果は、令和4年(2022年)3月3日(木)、科学雑誌「Journal of Ichthyology」においてオンライン公開されました(DOI:https://doi.org/10.1134/S0032945222020072)。

※環境DNAとは? 生物から放出され、水や土壌などの環境中に存在するDNA。最近、環境DNAの技術は発達が著しく、希少種の分布地の調査や生物の存在量の推定などに利用されています。ただし、DNAは生物から放出されると速やかに分解されるため、環境DNAから分析できるDNAの長さは通常数百塩基対までとされていました。

【倉林 敦 准教授のコメント】
希少生物の研究には、なるべくその生物に影響を与えない方法を選択することが重要です。たとえ動物園・水族館で継代維持されている動植物であったとしても、生きた個体を直接利用することは避けるのが望ましいでしょう。実際、希少生物の多くは法律によって守られており、標本や飼育個体であってもその利用には制限がかかっていることが多いです。今回、飼育水から長いDNAの解析が可能であることが示され、DNAレベルの研究の多くが生物に全く影響を与えずに実施可能となったと言えます。また、「飼育水」にこれまでにない用途があることを示した今回の研究結果は、研究者にとっても動物園・水族館・博物館にとっても大変有益だと考えられます。

プレスリリース提供:PR TIMES

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