プレスリリース
--年間約5,000トン・玉ねぎ残渣の循環利用へ--
きたみらい農業協同組合(センター所在地:北海道北見市、以下「JAきたみらい」)と株式会社AGRI SMILE(本社:東京都千代田区、以下「AGRI SMILE」)は、玉ねぎの出荷や加工の段階で発生する残渣を用いたバイオスティミュラント素材の開発に成功し、共同で特許出願を行いました(特願2023-110942)。
今後、JAきたみらいの生産する農作物に対して、玉ねぎ残渣型バイオスティミュラント(以下「玉ねぎ残渣BS」)を使用し、収量や品質の向上・化学肥料の使用量低減を検証します。さらに、玉ねぎ残渣BSを製造する「地域専用の製造プラント」の建設や、地域の農業残渣を地域の農業に利用する「地産地消の環境保全型農業」の確立を目指します。これら技術は、海外展開も視野にいれ、地球規模のCO2排出量削減に貢献していきます。
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【背景】
<JAきたみらいの課題>
JAきたみらい管内では、玉ねぎ、じゃがいも、麦類、てん菜、豆類などの多様な耕種作物を生産しており、水稲・飼料作物を合わせた耕作面積は約2万5千ヘクタールに及びます。中でも玉ねぎは日本一の取扱量(年間25万トン、全国取扱量の約25%)を誇っています。
しかし、一方では玉ねぎ処理施設での、年間約5,000トンの皮やむき玉の残渣が発生しており、堆肥化原料としての処理方法も限界が近づいていることからカーボンニュートラル実現に向けた対策が喫緊の課題となっています。
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<AGRI SMILEのバイオスティミュラント技術>
バイオスティミュラント(注1)は、植物本来の機能を引き出すことで環境ストレスを緩和させる特長を持ち、収量や品質の向上効果で注目されている新しい農業資材です。
このうち、食品残渣を原料として開発されたバイオスティミュラント(以下「残渣型バイオスティミュラント」、注2)は、フードサプライチェーンの食品廃棄問題を解決しながら、農業生産量の拡大や化学肥料の使用量低減に寄与できるため、脱炭素社会の実現と、環境保全型農業の実現が両立できる画期的な生産技術です。
AGRI SMILEは、様々な農作物から残渣型バイオスティミュラントの開発に成功しており、実績をもとに業界唯一の特許技術を保有しています。開発期間を大幅に短縮する「スクリーニング方法論(特許7319731、注3)」、バイオスティミュラントの作用メカニズムを科学的根拠をもとに有効度を測定する「AGRI SMILE 評価指標(特許7295591、注4)」、農業資材として有効性の高いバイオスティミュラント原体を集めた「AGRI SMILE ライブラリー(注5、特願2023-93984)」を活用することで、バイオスティミュラントの新規開発や改良開発が可能です。
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【共同検証の内容】
JAきたみらいとAGRI SMILEは、玉ねぎ施設(JAきたみらい管轄)で発生する残渣を活用して、玉ねぎ残渣BSを開発し、実圃場で、化学肥料の使用量を低減した栽培技術の検証を行います。
さらに、栽培技術確立後には、JAきたみらい管内に専用の製造プラントを新規設立し、玉ねぎ残渣BS資材の製造・販売・利用の取り組みを検討しています。
(1)玉ねぎ残渣BSの共同特許出願
JAきたみらいとAGRI SMILEは、玉ねぎ残渣を用いたバイオスティミュラント化に成功し、共同で特許出願を行いました(特願2023-110942)。今後、複数の加工処理を行い、肥料吸収効率30%増の玉ねぎ残渣BSに改良することで、化学肥料の使用量10〜30%低減を実現する資材を開発します。
農林水産省の「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに化学肥料の使用量を30%低減の目標が掲げられており、JAきたみらいでは年間4億強の肥料代削減、日本全国の国内肥料流通では約249万トン・1,200億円の肥料代削減に繋がります。
(2)玉ねぎ残渣BSの共同検証
2023年6月からJAきたみらいの試験ほ場にて、バイオスティミュラントの基本検証を開始しており、2024年春からは玉ねぎ残渣BSの検証を計画しています。玉ねぎ残渣BSの検証は、玉ねぎ栽培だけでなく、将来のJAきたみらいの全作物栽培(栽培面積:約2万5千ヘクタール)への活用を目指し、段階的に拡大していきます。
(3)製造プラントの立ち上げ
JAきたみらい管内では、各生産者によって収穫された玉ねぎを集約し、玉ねぎ処理施設で一括処理を行っており、年間約5,000トンの玉ねぎ残渣が発生しています。この玉ねぎ処理施設の近隣に、玉ねぎ残渣BSの製造プラントを新規建設し、残渣回収や資材製造の工数・費用を削減する計画を検討しています。
(4)海外展開
本取り組みで確立した「玉ねぎ残渣型BSの栽培手法」および「地産地消の環境保全型農業」は、カーボンニュートラルの対策として、グローバルへ展開することを視野にいれており、本活動を通じて取得した技術や特許をもとに、国際特許出願の準備を進めてまいります。
JAきたみらい 代表理事組合長 大坪広則コメント
JAきたみらいでは、近年、温暖化や異常気象に対し、気象変動に負けない農業の確立にむけて、土地改良・技術導入等、種々の対策に取り組みを行ってきました。さらに、海外情勢を受けた化学肥料高騰など、農業・JAを取り巻く外部環境が急激に変化しつつあります。
AGRI SMILE様と連携して進めている玉ねぎ残渣型バイオスティミュラントの実用化は、農業経営の安定・所得向上つながり、「食と緑を守り、地域農業を振興することで、地域社会の活性化を図る」という当組合の経営理念を体現するものとして、大いに期待を寄せています。
株式会社 AGRI SMILE 代表理取締役 中道貴也コメント
JAきたみらい様は、約2万5千ヘクタールの広大な農用地で、幅広い品種を生産されています。
弊社の研究開発力が、産地の資源循環や環境保全に貢献できることを、非常に嬉しく思っています。
現在、我が国では食品廃棄物削減の取り組みは積極的に実施されていますが、国内食品ロス約523万トンの中には、農業残渣(産地で収穫したが出荷できずに廃棄したもの/非可食部廃棄など)は含まれていません。本取り組みのように、地域の残渣を利用したバイオスティミュラントを普及させていくことで、生産力向上と資源循環・化学肥料低減の両立を目指し、脱炭素化に貢献していきたいと考えています。
※注1:バイオスティミュラントとは
バイオスティミュラントは、「作物の活力、収量、品質および収穫後の保存性を改善する資材」として期待されており、2030年に約7500億円のマーケットとして注目されている新しい農業用資材です。気候変動によるストレス耐性に寄与し、植物の免疫系を活性化することで、根張り・収量の向上や、乾燥/過湿耐性、耐病性、耐高/低温性、耐塩性といった効果をもたらし、栄養吸収の強化に効果のある資材も確認されています。そのため、生育状況を考慮しながら利用することで、過剰な化学肥料の使用を抑えた事例もあります。
原料候補は、微生物/多糖類/ペプチド/有機酸/ミネラル/腐植酸など多岐に渡り、加工処理を施し、植物試験や遺伝子発現解析等の検証を進めることで、バイオスティミュラントの性質を発揮する素材を発見することができます。
※注2:食品残渣型バイオスティミュラント
AGRI SMILEが開発した食品残渣型バイオスティミュラントは、「食品」から「食品」を作り出していく、資源循環を実現します。地域の食品残渣をバイオスティミュラントに変えることで、再資源化・化学肥料低減・気候変動にも強い作物を生産し、環境にやさしい持続的なフードサプライチェーンの循環を生み出します。
フードサプライチェーンにおける温室効果ガス排出量は、人為起源温室効果ガス総排出量の21〜37%で、このうち、農業生産活動では総排出量の10%、フードロス等の食品加工製造活動では総排出量の8〜10%に相当するといわれています。
※注3:AGRI SMILE スクリーニング(特許7319731)
AGRI SMILEの独自技術で、均一化処理をほどこした高い再現性を持つスクリーニング方法論です。通常よりも、少ない標本数で有意性を安定的に示すことができます。そのため、新規の資材開発であっても開発期間を大幅に短縮することができます。AGRI SMILE ライブラリーは、このAGRI SMILE スクリーニングを使用することにより、短期間で、有効なバイオスティミュラント原体群の構築に至っています。
※注4:AGRI SMILE 評価指標(特許729559)
AGRI SMILEの独自技術で、国内唯一のバイオスティミュラント資材の有効度を測定する評価指標です。元素解析・遺伝子解析・植物ホルモン解析等、科学的アプローチでバイオスティミュラントの作用機序を評価し、産地現場での適正を可視化します。資材を共通のものさしで評価しスコアリング(点数化)することで、生産者様にわかりやすく情報を提供できるようになります。
※注5:AGRI SMILE ライブラリー(特願2023- 93984)
AGRI SMILE 評価指標を用いて有効と判断したバイオスティミュラント原体群を集め、データベース化した「ライブラリー」を保有しています。ライブラリーを活用して新たなバイオスティミュラント資材の開発や、市販資材とライブラリーを掛け合わせることで、市販資材の効果を改善・向上します。
JAきたみらいについて
『JAきたみらい』は、北海道のオホーツク管内の旧8JA(温根湯・留辺蘂・置戸・訓子府・相内・上常呂・北見・端野)が平成15年2月1日に合併して誕生した農業協同組合です。
旧8JA組合員の基盤たる北見盆地の輝かしい未来を祈念し、「北見(きたみ)」と「未来(みらい)」をあわせ、『きたみらい』と名づけられました。
西方には、大雪山国立公園旭岳、南方には、阿寒国立公園雄阿寒岳を主峰に仰ぐ、北見盆地の中にあって、大雪山系を源とする常呂川と、その支流無加川が横断する肥沃な大地を生産基盤としております。そのため、北海道における農畜産物の大半が生産されており、とりわけたまねぎは、全国一の産地としての地位を確立しています。
【組合概要】
代表者:代表理事組合長 大坪広則
センター所在地:〒090-0813北海道北見市中ノ島町1丁目1-8
組合URL:https://www.jakitamirai.or.jp
株式会社AGRI SMILEについて
AGRI SMILEは、「テクノロジーによって、産地とともに農業の未来をつくる」を経営理念に据え、豊かな経験を持つ産地と、進化を続けるサイエンステクノロジーを融合することで、環境に優しい魅力あふれる農業の実現に取り組んでいます。
国内最大規模の産地ネットワークを活かし、データサイエンス技術による農業DXソリューション、最先端バイオテクノロジーによる生産技術、産地のブランディング支援などを展開しています。また、技術創出の源泉であるアカデミアの交流を活発化するプラットフォームを提供し、社内外で技術を連携させています。今後も、産地と調和した革新的なサービスを通じて、笑顔(SMILE)のある未来を創造し続けてまいります。
【会社概要】
代表者:代表取締役社長 中道 貴也
事業内容:農産業DXサービス、脱炭素に資するバイオテクノロジーの開発及び提供
設立:2018年8月31日
所在地:〒101-0052 東京都千代田区神田小川町3丁目28-5 Axle御茶ノ水
会社URL:https://agri-smile.com/
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