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東大発サンゴベンチャーイノカ 国内初成功、完全人工環境下で産卵時期をコントロールしたサンゴ抱卵

(PR TIMES) 2022年01月07日(金)18時15分配信 PR TIMES

〜海洋生物25%の住処であり、2050年までに90%消失が危惧されるサンゴのモデル生物化に向けた人工産卵実験を進行中〜

東大発サンゴベンチャー企業の株式会社イノカ(本社 : 東京都港区、代表取締役CEO : 高倉葉太)は、1月6日未明、人工的にサンゴ礁の海を再現した閉鎖系水槽(東京虎ノ門)でサンゴ(種目:コユビミドリイシ)の抱卵時期のコントロールに国内で初めて成功しました。
今回、再現性の高い完全人工環境下での抱卵実験に成功したことにより、自然界では多くのサンゴ種が1年に1度と限定的な抱卵を、人為的に導くことが可能となりました。
さらに国内初となる2022年の完全人工環境下におけるサンゴ産卵成功に向けた実験を継続中です。
[画像1: https://prtimes.jp/i/47217/25/resize/d47217-25-9d97619ab28535690de0-1.jpg ]

今回、抱卵の判定については、黒潮流域の生態系に関する調査研究を行っている公益財団法人 黒潮生物研究所・目崎拓真所長に画像データを元に確認いただいております。
今回の実験は、当社の管理する水槽で2年以上飼育し、2021年8月時点では抱卵が確認されなかったサンゴを使用しております。


[画像2: https://prtimes.jp/i/47217/25/resize/d47217-25-83eebd5bb8e7603ad364-3.jpg ]

[画像3: https://prtimes.jp/i/47217/25/resize/d47217-25-8032ae075045ee2a570b-2.jpg ]


株式会社イノカでは、独自技術である環境移送技術(※)により、完全人工環境下においてサンゴの健康的な長期飼育に成功しております。
完全人工環境とは、人工海水を使用し、水温や光、栄養塩等のパラメーターが独自IoTシステムによって管理された水槽(=閉鎖環境)のことを指します。
さらに今回の実験は、環境移送技術を活用し沖縄県瀬底島の水温データを元に、自然界と時期をずらして水温を同期することで、抱卵時期のコントロールに成功しております。
本実験が進むことで、ハツカネズミやショウジョウバエのように何世代にもわたって研究調査を行うモデル生物としてサンゴを扱うことができるようになれば、サンゴの基礎研究が大きく進み、サンゴ保全に寄与すると考えられます。
※ 環境移送技術とは、水質(30以上の微量元素の溶存濃度)をはじめ、水温・水流・照明環境・微生物を含んだ様々な生物の関係性など、多岐に渡るパラメーターのバランスを取りながら、自社で開発したIoTデバイスを用いて、特定地域の生態系を自然に限りなく近い状態で水槽内に再現するイノカ独自の技術のこと。

サンゴ礁の経済価値は8000億ドル
サンゴは、約4億年前に誕生し、熱帯を中心に生息している動物です。
生物多様性の面でも重要な役割を果たしており、海の表面積のわずか0.2%に過ぎないサンゴ礁海域に、海洋生物の25%が暮らしています。
また、人間の社会生活を支える上で必要な護岸効果や漁場の提供、医薬品の発見、建築材料や生活の道具の材料といった重要な役割を果たしています。
世界のサンゴ礁の経済価値は、期間50年で推定8000億ドル(日本円で約93兆円)と言われています。(※1)
しかし、20年後には気候変動に伴う海水温の上昇によりサンゴ礁の70~90%が消滅する可能性が高い(※2)と言われており、海の生物多様性やそこからうまれる経済価値を守るためにサンゴ礁の保全は最重要課題です。

コメント
再生医療とサンゴの研究を進める関西大学先端科学技術推進機構 上田正人教授
現在、サンゴ礁は破滅的な状況に曝されており、多岐にわたる専門家がその保全に取り組んでいます。断片移植などによりサンゴを増殖させることは可能になっていますが、自然界のサンゴと同様の生活史を再現することは、海洋中であっても非常に難しいことが知られています。その「抱卵」を「完全閉鎖系」で再現されたことはサンゴの研究分野おいて非常に大きな進歩です。完全に制御された環境下で、 サンゴに関する精緻なデータを取得できることはサイエンスの観点からも極めて重要です。脊椎動物の骨とサンゴの骨格には類似性があることから、今回のブレークスルーは骨再生の研究分野にも大きく貢献するものと期待しています。

北海道大学大学院理学研究院/NPO法人喜界島サンゴ礁科学研究所理事長 渡邊剛 講師
海洋の生物の多様性を育むプラットフォームであるサンゴ礁生態系が地球温暖化でどうなるのかが危惧されている。一方で、サンゴの産卵による幼生が海流により運ばれることにより分布域が北上をしていることが確認されている。サンゴの産卵の研究が進んできているが、未解明な部分も多い。天然の環境や大型水槽では、産卵の時期を決める条件が多くあることが一因にある。今回のような小型の水槽で産卵時期を人工的にコントロールできる技術の開発は今後のサンゴの産卵研究の発展やサンゴ移植事業の新しい展開に寄与するものと期待される。

出典
※1:WWFレポート サンゴ礁の世界的な衰退による経済への影響 (2003)
https://www.wwf.or.jp/activities/lib/pdf_marine/coral-reef/cesardegradationreport100203_Ja.pdf
※2:国連気候変動に関する政府間パネル (IPCC = Intergovernmental Panel on Climate Change)Global Warming of 1.5°C (2018), p8. B.4.2
https://www.ipcc.ch/site/assets/uploads/sites/2/2019/06/SR15_Full_Report_High_Res.pdf



プレスリリース提供:PR TIMES

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