• トップ
  • リリース
  • 短距離光通信向け光コヒーレント伝送方式を開発し、高速光信号伝送に成功

プレスリリース

  • 記事画像1
  • 記事画像2

国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)

短距離光通信向け光コヒーレント伝送方式を開発し、高速光信号伝送に成功

(PR TIMES) 2022年11月05日(土)02時40分配信 PR TIMES

データセンター内ネットワーク等の大容量化に向けた革新的技術

 NICT(エヌアイシーティー)は、短距離光通信の大容量化のため、簡易な装置構成の光コヒーレント伝送方式を開発し、高速光信号伝送に成功しました。NICTの独自技術により光送受信器を高度化し、毎秒400ギガビット級の高速光信号伝送に成功したもので、データセンター内ネットワーク等の大容量化に向けた革新的技術として期待されます。
[画像1: https://prtimes.jp/i/98970/23/resize/d98970-23-f1db2808780d761880da-0.png ]


【ポイント】
■ 短距離光通信の大容量化のため、簡易な装置構成の光コヒーレント伝送方式を開発
■ NICTの独自技術により光送受信器を高度化し、毎秒400ギガビット級の高速光信号伝送に成功
■ データセンター内ネットワーク等の大容量化に向けた革新的技術として期待

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT(エヌアイシーティー)、理事長: 徳田 英幸)ネットワーク研究所のボリブーン・ブッサラ研究員とソアレス・ルイス・ルーベン主任研究員らのグループは、短距離光通信の大容量化のため、簡易な装置構成の光コヒーレント伝送方式を開発し、高速光信号伝送に成功しました。
 急激な通信量の増加に対応するため、近年はデータセンター内ネットワーク等の短距離光通信においても基幹系光通信で実用化されている光コヒーレント伝送方式による大容量化が期待されています。今回、短距離光通信に光コヒーレント伝送方式を適用するため、簡易な装置構成により信号再生可能な自己ホモダイン検波方式を採用しました。NICTの独自技術により本方式の光送受信器を高度化し、毎秒360ギガビット(シンボルレート90ギガBaud)の16QAM信号の高速光コヒーレント伝送に成功しました。
 本成果は、次世代基幹系光通信で研究中のシンボルレートが高い光コヒーレント伝送方式が、簡易な送受信器構成で安価に導入できる可能性を示しており、将来のデータセンター内ネットワーク等に要求されるテラビット級の大容量短距離光通信に向けた革新的技術になることが期待されます。
 なお、本実験結果の論文は、第48回欧州光通信国際会議(ECOC 2022)にて非常に高い評価を得て、最優秀ホットトピック論文(Postdeadline Paper)として採択され、現地時間2022年9月22日(木)に発表しました。

【背景】
 近年の急激な通信量の増加により、低コスト化や低消費電力化が要求される短距離光通信においても毎秒400ギガビットを超える通信速度が要求されてきています。現在の短距離光通信では強度変調・直接検波方式が採用されていますが、更なる大容量化には、光コヒーレント伝送方式が有効です。しかし、光送受信器の複雑さやデジタル信号処理の負荷等によるコスト面や消費電力に課題があり、短距離光通信では実用化されていません。
 NICTはこれまで、簡易な装置構成により光コヒーレント伝送を実現できる自己ホモダイン検波方式の光送受信器の高度化の研究を進めており、独自技術を特許登録していましたが、原理検証に留まっていました。

【今回の成果】
 今回NICTは、短距離光通信に光コヒーレント伝送方式を適用するため、簡易な装置構成によりコヒーレント信号を再生可能な自己ホモダイン検波方式の光送受信器を開発し、高速伝送実験を行いました(図1参照)。光送信器は、短距離光通信で一般的な(線幅が太い)レーザと100ギガBaud以上で動作する高速光変調器を用いました。光受信器は、NICT独自の高速光検出器の機能的な組合せとデジタル信号処理を持ち、高度化(高速化と偏波無依存化)を実現しています(図2参照)。

[画像2: https://prtimes.jp/i/98970/23/resize/d98970-23-f1db2808780d761880da-0.png ]

[画像3: https://prtimes.jp/i/98970/23/resize/d98970-23-7baf0c50496fe85c90b4-1.png ]


 伝送実験では、光送信器からコヒーレント信号(毎秒360ギガビット(90ギガBaud)16QAM)とパイロットキャリアを同時に送信し、光受信器においてホモダイン検波することにより、高速光コヒーレント伝送を実証しました。従来の自己ホモダイン検波方式の光受信器では、時間的に変化するパイロットキャリアの入射偏波状態により、受信信号品質が変化することが問題でしたが、開発した偏波無依存型の光受信器では、安定した信号再生に成功しました。また、実用化されている検波方式は高精度な狭線幅レーザが必要ですが、本実験では一般的なレーザでも受信信号品質が大きく変わらないことも確認しました。
 本実験により、簡易な光送受信器構成(光送信器の高精度レーザと光受信器の信号再生用レーザが不要)によるシンボルレートが高い(毎秒100ギガBaud級)高速光コヒーレント伝送を実証しました。本成果は、将来のデータセンター内ネットワーク等の超大容量短距離光通信に向けた革新的技術になることが期待されます。

【今後の展望】
 今後、今回開発した高速光コヒーレント伝送方式と波長多重技術や空間多重技術を組み合わせることにより、毎秒10テラビットを超えるテラビット級短距離光通信技術を確立していきたいと考えています。
 なお、本実験の結果の論文は、スイス・バーゼルで開催された光ファイバ通信関係最大の国際会議の一つである第48回欧州光通信国際会議(ECOC 2022、9月18日(日)〜9月22日(木))で非常に高い評価を得て、最優秀ホットトピック論文(Postdeadline Paper)として採択され、現地時間9月22日(木)に発表しました。

<採択論文>
国際会議: ECOC 2022 最優秀ホットトピック論文(Postdeadline Paper)
論文名: Polarization Insensitive Self-Homodyne Detection Receiver for 360 Gb/s Data Center Links
著者名: Budsara Boriboon, Ruben S. Luís, Georg Rademacher, Benjamin J. Puttnam, Satoshi Shinada, and Hideaki Furukawa
参考: 「欧州光通信国際会議(ECOC 2022)の最難関セッションに、NICT筆頭の論文4編が選出」(2022年10月4日)
https://www.nict.go.jp/publicity/topics/2022/10/04-1.html

<関連特許>


R. S. Luis, B. J. Puttnam, J. M. D. Mendinueta, Y. Awaji, and N. Wada, "POLARIZATION INSENSITIVE SELF-HOMODYNE DETECTION RECEIVER FOR SPATIAL-DIVISION MULTIPLEXING SYSTEMS," 欧州特許第3281314号, Dec. 2021.
R. S. Luis, B. J. Puttnam, J. M. D. Mendinueta, Y. Awaji, and N. Wada, "POLARIZATION INSENSITIVE SELF-HOMODYNE DETECTION RECEIVER," 欧州特許3281313号, Sep. 2021.



プレスリリース提供:PR TIMES

このページの先頭へ戻る